サポーター体験記301

「デジタル終活」を今から始めよう!〜スマホやパソコンの大切なデジタルデータ〜

取材日令和5年11月3日
更新日令和5年12月25日

今や、高齢者にとっても生活必需品であるスマホやパソコン。その中には多くの重要なデジタルデータが保存されています。これらのデジタルデータを整理し、万が一の場合に備えて、残された人が困らないようにしておくのが「デジタル終活」。今から何をすればよいのか、日頃どんなことに気をつければよいのか、練馬区在住の終活アドバイザー・西岡恭史さんに教えていただきました。

練馬区在住の終活アドバイザー、西岡恭史さん。元システムエンジニアの知識を生かし、高齢者への終活セミナーやIT支援活動をしています。

西岡 恭史(にしおか やすし)さん

※以下、文中敬称略。

終活アドバイザー、ハッピーエンディングプランナー
メールアドレス:y-nishi@yn-net.com
ICT相談と、ICTを利用した安心できる終活・供養サービス「yn-net」:https://anshin-shuukatsu.com

「デジタル終活」って、どんな終活?

――終活に関する情報はいろいろありますが、「デジタル終活」という言葉を初めて聞きました。

西岡「スマホやパソコンの中には、電話番号や写真、メール、SNS、ログイン情報、金融情報など、重要なデジタルデータがたくさん保存されていますよね。本人が亡くなったら、これらは“デジタル遺品”と呼ばれる資産になるので、元気なうちから整理し、備えておくのが『デジタル終活』です」

――デジタル遺品について詳しく教えてください。

西岡「大きく3つに分けられます。1つ目は、パソコンやスマホ、USBメモリなどに入っている『オフラインデータ』。写真、動画、アドレス帳などがこれにあたります。2つ目は、インターネット上に存在する『オンラインデータ』。FacebookやX(旧Twitter)などのSNSや、ブログなどの投稿、クラウドサービスのアカウント、ネット銀行などの情報が該当します。そして3つ目が、それらが保存されているスマホやパソコンなどの『デジタル機器』です」

サポーターによる取材の様子。サポーターも全員スマホユーザーなので、次々と質問が飛び交いました!

――「アカウント」や「クラウド」といった言葉の意味がよくわからないのですが…。

西岡「シニア向けの講座でも、意味がわからないという方は多くいらっしゃるので大丈夫ですよ。『アカウント』とは、インターネット上のサービスを利用する際に必要な個人管理情報で、IDとパスワードで管理されています。『クラウドサービス』は、インターネットを通じて利用できるサービスのことです。Web上にデータを保存しておく場所として使っている人も多いと思います。GoogleドライブやiCloud、OneDrive、Dropboxなどがあります。そこにアクセスするのに必要なのが、『アカウント』なのです」

1番大切なのは、スマホやパソコンを開くためのパスワード!

――デジタル終活の備えをしていないと、実際にどのようなトラブルが起こるのでしょうか?

西岡「1番の問題は、スマホやパソコンの所有者以外に誰もパスワードを知らないと、中を見ることができず、必要な情報にアクセスできないということです。実際に、誰に葬儀の連絡をしたらよいかわからず、生前の思い出や、遺影用に撮った写真が取り出せないといったトラブルが起こっています」

――パスワードがわからないと、中の情報を取り出すのは難しいのでしょうか?

西岡「パソコンの場合は取り出せることもありますが、スマホはかなり難しいと思います。顔認証や指紋認証、パスコードなどでロックがかかっていると思いますが、誤ったパスワードを何回か入力すると、自動的にデータが消えてしまうケースもあるので注意が必要です。顔認証についても、本人が亡くなってしまうと不可能です。かといって、スマホにロックをかけないのは、紛失した際、非常に危険なので、お勧めできません」

スマホ(iPhone)のパスコード入力画面。これがわからないと大変なことに!

――スマホが開けなくて困ることは他にもありますか?

西岡「サブスク(月単位や年単位などの一定期間、定額料金を支払うことでサービスを利用できるしくみ)のような有料サービスを利用していた場合、解約の手続きをしないと課金され続けることがあります。また、LINEが電話番号と紐付いている場合は、電話の解約だけでなく、LINEアカウントの削除も必要です。なぜなら、携帯電話の番号は使い回すので、その電話番号を新たに割り当てられた人にLINEの情報が流れていってしまうからです」

「デジタル終活」は、実はアナログな作業⁉︎

――スマホは便利ですが、ちゃんと対処しておかないとさまざまなトラブルの元になるのですね。デジタル終活の重要性がだんだんわかってきました。具体的に何から始めればいいのでしょうか?

西岡「まずは、デジタルデータの洗い出しをしてみましょう。メール、写真、動画など、スマホやパソコンに保存しているもの、ネット証券・銀行の情報、電子マネー(PASMO、Suicaなど)、スマホ決済(PayPay、d払い、楽天ペイなどのQRコード決済)などお金に関するもの、ExcelやWordファイル、ブログやSNSなどのWeb上の記録など…。保存場所、ID、パスワードなどをリストに書き出していきましょう」

西岡「その次は、情報の仕分けです。絶対残したいもの、できれば残したいもの、絶対隠しておきたいもの、できれば隠しておきたいものの4種類に分けます。Webサイトの閲覧履歴や成人向けコンテンツなど、見られたくないものは、不要になったら日頃からこまめに消しておくとよいでしょう」

――「デジタル終活」と言っても、意外とアナログな作業なんですね。

西岡「そうですね。なかでも重要なのは、先ほどからお伝えしているとおり、IDとパスワードです。この情報をパソコンのファイルに保管しておいても、パソコンにロックがかかっていては意味がないですから、エンディングノートなど紙に書いておくのが確実です。アカウントについては、サービスごと、IDとパスワードを書いておくとよいでしょう」

サービスごとにIDとパスワードの情報をまとめておける「デジタル資産メモ」(作:古田雄介)

※「デジタル資産メモ」はこちらからダウンロードできます。

――利用しているサービスがたくさんあるので、漏れがないか心配です。

西岡「下記の7大デジタル遺品チェックリストに沿って確認するとよいですよ。これはスマホの機種変更の際などにも役に立つと思いますので、参考にしてみてください」

7大デジタル遺品チェック

  • ネット金融:銀行、証券、FX、暗号資産など
  • スマホOS純正クラウド:iCloud、Googleなど
  • 大手ネットサービス:LINE、楽天、Amazon.com、Yahoo!JAPANなど
  • その他サブスク型サービス:音楽配信、動画配信など各種サブスク、フリマ、ブログなど
  • SNS:Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなど
  • キャッシュレス決済:PayPay、Suica、nanacoなど
  • 企業ポイント:各種ポイント、航空マイレージなど

――IDとパスワードを書いたものをどこに保管してあるかをわかるようにしておく必要がありますね。

西岡「信頼できる家族や知人など、周りの人に伝えておくことが大切です」

デジタル終活のためのツールやサービスも要チェック!

――紙にパスワードを書くのは、ちょっと抵抗がありますが…。

西岡「そういう方は、『スマホのスペアキー®』というカードを利用してみてはいかがでしょうか。IDとパスワードを記入したら、白い修正テープで目隠しをします。いざという時コインで削ると、スクラッチカードのように文字が出てきます。財布の中などに携帯しておくのもよいでしょう。持ち運びの際は紛失などに十分ご注意ください」

名刺サイズの「スマホのスペアキー®」(作:古田雄介)。パスワード部分に修正テープを2度貼りして目隠ししておきます

※「スマホのスペアキー®」はこちらからダウンロードできます。

――「追悼アカウント」という言葉を聞いたことがあります。

西岡「SNSのアカウントの持ち主が亡くなった後、そのアカウントを削除せず、故人の思い出として残しておくサービスのことです。アカウントをそのまま放置しておくと乗っ取られたり悪用されたりするリスクがありますから、遺族が申請し、追悼アカウントに移行しておけば安心です。SNSの追悼アカウントはFacebookとInstagramにあります。そのほか、Googleは『アカウント無効化管理ツール』を予め設定しておくと、一定期間ログインされないアカウントを自動的に抹消してくれます。Appleには「デジタル遺産プログラム」があり、データ相続人を設定してアクセス権を移行できます。

自身の経験とITの強みを生かして

――西岡さんがデジタル終活に取り組まれたきっかけは何ですか?

西岡「15年ほど前に母を亡くしたのですが、突然のことで、集中治療室に入ったまま話すこともできず、後悔が残ったんです。母を見送るのにも、これでよかったのか?とずいぶん悩みました。それに加え、葬儀やお墓など様々な手続きが本当に大変でした。システムエンジニアとして働いていたので、ITを使ってこの経験を生かし、地域に貢献できないかと考えたのが始まりです」

かつてはシステムエンジニアだった西岡さん。終活にITを生かせないか考え、デジタル終活の専門家へ

――区内の終活セミナーなどで幅広く活動されているとのことですが、デジタル終活以外にも取り組まれているのですか?

西岡「もともと専門家ではないので、デジタル終活という言葉を知った5~6年前から、本格的に勉強を始めました。デジタル終活は、“終活”という広いくくりでの1つの取り組みなので、他にも何かできることはないかと考えるようになりました。現在は、終活セミナーで『ハッピーエンディングカード』を使ったワークショップも行っています。相続や介護など老後の不安をクリアしていくきっかけを作り、残りの人生を前向きに生きるためのお手伝いです。ゲーム感覚で誰でも取り組めるので、機会があったらぜひ体験してみてください」

ハッピーエンディングカード(一般社団法人 日本Happy Ending協会)。介護、葬儀、相続などについて書かれた49枚のカードを使って、終活について考えるきっかけに

家族とのコミュニケーションが終活の第一歩

――デジタル終活にとって一番大切なことはなんでしょうか?

西岡「デジタルに限らず、“終活は元気なうちから”。家族や周囲の人たちとのコミュニケーションを大事にすることが、終活の第一歩だと思います」

――せっかくデジタルデータの整理をしても、それを生かせないと意味がないですよね。それを前提として、今から取り組めることは何でしょうか?

西岡「まずは、IDとパスワードをメモすることから始めてみてください。パスワード変更した際は更新することも忘れずに。放置せず、日ごろからこまめに管理することが重要です。スマホやパソコンの中のデータも、普段からこまめに整理をしておきましょう。“万が一”は誰にでも起こることです。シニア世代に限らず、若い人たちにも、ぜひ取り組んでほしいと思います」

サポーターからも「家計など、家の中のことを管理していた家族が突然倒れ、パソコンのパスワードがわからず、開けなくて困った」という体験談が…。誰もが自分だけのスマホを便利に使用できる今だからこそ、目に見える形で残しておくことが大切なのだと思いました。

サポーターの取材後記

splash

デジタル終活と聞き、事前の資料でその範囲の広さに驚きながら、取材でお話を伺うとそんなに大仰なものでなく、通常の終活の延長線上にデジタル終活があることがわかりました。デジタル終活の要諦は「デジタル遺産の仕分け」に尽きます。端的に言えば、ネット証券や銀行の情報などの絶対に残したいものと、ウェブサイトの閲覧履歴など絶対に隠したいものを明確にすることです。
特に残したいものはアカウント(ID・パスワード)を明記して、信頼できる家族に生前に託すことです。
個人的には、死後もSNSが公開され続けるのは嫌なので、家族に頼んで休止にしてほしいと思っているのですが、いつ頼めばいいかわかりませんでした。それについても西岡さんから、「終活は家族との話し合いであり、日頃のコミュニケーションが大事である」とのお話により、何もかしこまって家族に言うことではなく、家族の協力の中で行うものであると認識しました。

NOKKO

「デジタル終活」がどういうものなのか、何となくわかるのですが、まずお話を伺ってみようと取材に参加しました。現代的でデジタルを駆使していた人には必要で簡単なのかもしれませんが、アナログで暮らしている人が改めて取り組むには大変なことだと思いました。今でもID・パスワードを忘れずにいるのは大変です。メモをしていますが、誰が見るか、わかりやすくするかも難しいと感じました。
その前に人間関係を考え、託す人を選ばなければと思いました。ある部分はアナログも必要ですね。

草笛のけん

デジタル終活においてのIDやパスワード管理の重要さを認識しました。10年前から作成している「幸せエンディングノート」に、デジタル関連のことは書いていません。西岡さんに教えていただいたデジタル遺品の棚卸・仕分けを進めてエンディングノートに追加修正しようと思います。また、終活の一環として、家族や友人関係を良好にしてコミュニケーションを取る大切さを再認識でき、感謝しています。

トマト

今やスマホ全盛、各自で携帯電話を持ち、データを管理・確認するのが当たり前になりました。また最近、官公庁などがデジタルに舵を切ったこともあり、急激に紙文化からデジタルに移行しているものと思われます。それが終活となると少し複雑です。例えば、紙だと銀行の通帳が家にあれば家族の目に入り、どの金融機関と取引があるかなど知ることができますが、通帳がなくスマホなどだけでの確認となると、本人しかわからないという難点があります。スマホは便利ですが、本人が万が一の時は、パスワードがわからず、その内容を取り出せないということもあるので、上手に付き合うことが大事です。今回のデジタル終活の取材は、そんなことを考えさせられる機会になりました。私も万が一に備えて、デジタル資産を整理しておかなきゃと思いました。

ミスターヒワダ

西岡さんの「デジタル終活」の話をお聴きして、危機感を持ちました。パスワードは、本人でないと会社は対応してくれない。パソコンなら、業者に依頼して判明することも多いが、スマホは難しいという。本人がしっかり、パスワードを管理して、かつ、それを家族等に引き渡せるようにしないといけない。まずは、パスワードの書き出しから始めようと思います。これをきっかけに「終活」について、真剣に考え、取り組んでいきたいです。


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