サポーター体験記300

ミツバチから広がる地域の輪!「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」

取材日令和5年10⽉28⽇
更新日令和5年12月11日

江古⽥にある武蔵⼤学の3号館屋上で養蜂を続けている「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」。養蜂で地域活性化の役割も担っているという、興味深いプロジェクトです。⽴ち上げ当初の代表の⾕⼝さんと、現在の代表を務める⼤⽮さんに活動内容や思いなど、お話を伺ってきました。

江古⽥ミツバチ・プロジェクト

※以下、文中敬称略。
※養蜂作業の写真は取材別⽇に撮影したものです。

代表:⼤⽮ 昇治(おおや しょうじ)さん
広報担当:⾕⼝ 紀昭(たにぐち としあき)さん
所在地:練⾺区豊⽟上 1-26-1 武蔵⼤学 江古⽥キャンパス
URL:https://634honeybee.wixsite.com/634honeybee

地域活性化を⽬指した「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」

⾕⼝「ミツバチの養蜂を通して、地域の特⾊づくりと活性化を⽬指すプロジェクトです。平成22年(2010年)から武蔵⼤学江古⽥キャンパスの3号館屋上で活動を続けています」

⾕⼝さん(左)、⼤⽮さん(右)

−−−どのようなきっかけで立ち上げられたのですか?

⾕⼝「平成14年(2002年)、練⾺区武蔵⼤学特別履修⽣制度を利⽤して、武蔵⼤学の環境講座を受けたことがきっかけです。これから少⼦化が進めば、江古⽥の街も学⽣が減っていくなかで、大学にも特色づくりと地域貢献が求められてくる…。そんな中でますます悪化する環境問題への関心と取り組みの向上を図るとともに、具体的に地域貢献・地域活性化につながる活動をしてゆきたいと思ったのです」

−−−なぜ養蜂を活動のテーマとして選んだのですか?

⾕⼝「さまざまな⼈のご縁があり、銀座のビルの屋上で養蜂活動を⾏っている田中さんという方の話を聞きました。後の話し合いの中で、その方が練馬在住ということがわかり『ミツバチを練⾺でもやりたいからご指導を!』となったのです。そして武蔵⼤学の校舎屋上で養蜂ができないだろうかと相談し、最後は武蔵学園の有馬学園長(当時)から了承をいただき、『江古⽥ミツバチ・プロジェクト』が平成22年(2010年)3⽉からスタートしたのです。『小さなミツバチの大きなはたらき』をテーマにして、環境問題、農業問題からハチミツスイーツづくりなどを通して具体的に地域貢献・地域活性化のお役に立てることが分かったからです」

ミツバチのこと、養蜂のこと

−−−育てているミツバチの種類について教えてください。

⾕⼝「セイヨウミツバチを育てています。年に1回しかハチミツが採れないニホンミツバチと違って、セイヨウミツバチは春から夏にかけては⽉に複数回ハチミツを採取することができます」

ハチミツが採れる巣板。ミツバチがびっしり!

−−−ミツバチの種類によって、ハチミツが採取できる頻度も違うのですね。ミツバチは何匹くらいいますか?

⾕⼝「養蜂は分類としては家畜にあたります。毎年3⽉にミツバチが⼊った巣箱を購⼊するのですが、巣箱には9枚の巣板が⼊ります。勢いのある群には巣板1 枚の両⾯に3,000匹ほどミツバチがいますので、巣箱ひとつで2万匹強いることになります。さらに増えると継箱を上にのせてゆき、巣箱が3段になる群もありますが、群によって全部状態が違いますから、⼀概に何匹とは⾔えません」

−−−「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」の養蜂作業はどのように⾏われていますか?

⼤⽮「毎週⼟曜⽇の午前に集まり、内検作業をします。巣箱の中を⾒ながら、①女王バチはいるか、②卵は十分に産まれているか、③蜜や花粉の量は採れているか、④(※)王台はできていないか、⑤ミツバチの健康や病気はどうか、⑥ミツバチの数や蜜などと巣板の数は適切か、⑦スズメバチなどの外敵に襲われていないか、などをチェックして、蜜がたまっていれば採蜜をします」
(※)王台…ミツバチの巣で女王蜂の幼虫が育てられる房。

安全な服装で巣箱の中を念⼊りにチェック

プロジェクトでは、どんな活動をしているの?

−−−参加メンバーはどのような⽅々ですか?

⼤⽮「⼩学⽣から武蔵⼤学の学⽣、現役会社員、80代までと幅広い年代の約60名。その中でも毎週⼟曜⽇の作業に来るメンバーはだいたい決まっており、20名前後です。熱⼼に活動している中には⼩学生もいます」

−−−先ほど少し⾒学させていただきましたが、世代を問わず和気あいあいと楽しそうに作業されている姿が印象的でした。週 1 回の養蜂作業のほかにも活動があれば教えてください。

⾕⼝「武蔵大学での一般人を対象にした養蜂場⾒学とミツバチ講座、ミツバチ講演会、大学祭への出展をはじめ、練馬区の6月の「環境月間行事」や3月の「つながるフェスタ」への出展、対象を小学生親子に絞った「夏休み自由研究応援教室」(ミツバチの秘密調べとハチミツケーキづくり)や練馬区教育委員会委託講座「遊遊スクール」(小さなミツバチの大きなはたらき講座)、今年は、さらに幼稚園の先生や幼稚園児にまで出前講座が広がってきています。また、養蜂場見学、ハチミツ試食、ハチミツケーキづくり実習、ミツロウからのロウソクづくりやハンドクリームづくり、ハチミツ商品販売、小学生の自由研究資料や関連図書の展示と説明など、多様な内容を組み合わせた講座構成や行事対応ができるのも、参加した皆様から喜ばれる要因になっていると思います」

武蔵⼤学「ミツバチとハチミツを活かす講演会」(2019年2⽉) 
武蔵⼤学「⽩雉祭」への出展、1日目はロウソクづくり・2日目はハンドクリームづくり(2023年11⽉)
勤労福祉会館での「夏休み⾃由研究応援教室」小学生親子対象のハチミツケーキづくり(2023年8⽉)

異常気象でハチミツの採取量が減った!?

−−−年間どれくらいのハチミツが採れますか?

⾕⼝「かつては年間400kg のハチミツが採れた時期もありましたが、今年は150kgほどです。ハチミツの採取量が減っていくのは悩ましいですね」

採取したハチミツ

−−−昨今のハチミツ採取量の減少に原因はあるのですか?

⾕⼝「巣箱からミツバチがハチミツ採取に⾶⾏できる距離は3km 圏内といわれます。ハチミツの採取量が減少したことにはいろいろな原因があると思いますが、やはり気候異変の影響が大きいのではと思っています」

−−−それは近隣の花が減ったということですか?

⾕⼝「いいえ、近隣を⾒ても花が減っているとは思えません。花⾃体がミツや花粉を作り出す⼒が減っているのではないでしょうか。今までは、例えば桜の花が咲くと、ミツバチを始め昆虫やメジロ、スズメ、ヒヨドリなどが群がっていましたが、今年はそれが見られませんでした。アカシアでも同様ですし、自宅の前の公園のクローバーの花にも一番に来ていたチョウが極端に少なかったです」

−−−メディアの報道でも地球環境の変化はよく聞きますが、ミツバチからもその知らせが届いているのですね。

⾕⼝「ハチミツの採取量としてこんなに明らかな違いが出てくると、地球温暖化の深刻さに危機感を感じずにはいられませんね」

−−−採取したハチミツは、どのように活⽤されていますか?

⾕⼝「地元のカフェや製菓店に卸しています。売り上げはプロジェクトの活動費⽤に充てているので、採取量によって次年度の活動費⽤が左右されます。ですが、地域を活性化するためのプロジェクトで、協⼒してくださるお店のことを考えると、値上げはあまりしたくないですね」

取材の様⼦

江古⽥産のハチミツは商品化されています!

−−−私たちが「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」のハチミツを味わえるお店を教えてください。

⾕⼝「卸したお店で、それぞれハチミツを使った商品づくりを展開しています。『ねりコレ』に選ばれている商品もあり、地元のお⼟産としても喜ばれていますし、会合や打ち合わせなどのお茶菓子にもよく利用されています」

※商品の情報は下記のサイトでご覧ください。
江古⽥ミツバチ・プロジェクト「お菓⼦紹介」
https://634honeybee.wixsite.com/634honeybee/sweets

⾕⼝「江古⽥産のハチミツを地域で使ってもらって、多くの⼈にハチミツスイーツを味わってもらえる。地産地消が実現したのも、⼈と⼈とのコミュニケーションがあったからこそ!と、 本当にうれしく思います。どれもおいしく、魅⼒的な商品ですのでぜひ⾷べてみてください」

武蔵⼤学「⽩雉祭」 ハチミツマドレーヌなど、ハチミツを使った商品販売(2023年11⽉)

元気の秘訣と、シニア世代へのメッセージ

−−−今までないものを⼀からつくり上げていくのは、とてもエネルギーのいることだと思います。「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」を始められたのはおいくつの時だったのですか?

⾕⼝「平成14年(2002年)、武蔵⼤学で環境講座を受講し、その後、準備期間を経て平成22年プロジェクトを⽴ち上げたときが74歳、現在は87歳です」

−−−お元気の秘訣はズバリなんですか?

⾕⼝「毎⽇の会話を⼤切にすること。プロジェクトの⽴ち上げも⼈とのご縁でしたし、ひとつひとつのコミュニケーションを⼤切にしてきたからこそ多くの方のご協力がいただけ、⻑く活動が続いているのかもしれません。それにミツバチ活動がそれなりに地域のお役に立てているかなと思えることが『やりがい』になり、元気の源になっているように思います。⼤⽮さんもすごいんですよ。交流の輪が広く、様々な⽅とのつながりがあり、応援団もやっていたんですよ」

⼤⽮「私は今年で 77歳です。⽇々を楽しく過ごすことが⼀番ですね。ハチミツを採取する瞬間、みんなで喜び合う、そういうことが⼤切なんだと思います。これからも無理をせず、⾃分のペースでやっていきたいですね」

⾕⼝「コミュニケーションは⾃分も周りの⼈も元気にしてくれます。細かいところに気を遣いながら話していくと、そこから良い”つながり”や”広がり”へと結びついていくはずです」

プロジェクトに関わる皆さんのお話から、包み込むような温かさを感じました。私たちも地球に、周りの⼈や⽣き物に、そして⾃分⾃⾝に、気遣いをもって⽣きる⼤切なことを教えていただきました。ありがとうございました。

サポーターの取材後記

プカプカ

武蔵⼤学の3号館は築100年という歴史ある建造物。軽やかな⾜取りで階段を上る⾕⼝さんに続いて、養蜂場がある屋上へ。残念ながら働き蜂の活動期は過ぎてしまったようでしたが、養蜂箱や採取した蜂蜜などを拝見後、⾕⼝さんから蜂の⽣態や飼育の仕⽅をはじめ、⼈的ネットワークづくりなど多岐にわたるお話を伺いました。中でも印象に残ったのは、養蜂作業を⾒学したり、⼿伝ったりした⼦どもたちがまとめた記録や作⽂が⾒事だったこと。まさに⽣きた環境学習の賜物といえます。そんな次世代への期待が膨らむ⼀⽅で、⾕⼝さんは、ハチミツの採取量がピーク時から減少していて、異常気象の影響を危惧しています。「農作物や植物の受粉を助けるミツバチが地球上から絶滅すると、⼈間は⽣きられません」とのこと。プロジェクトの活動に敬意を表するとともに、ミツバチがいつまでもミツを集めることができる⾃然環境を残すためにも、環境問題に真摯に向き合いたいと思いました。

野⾯

「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」…なんと夢を感じさせる名前だろう。⾕⼝さんご⾃⾝がプロジェクトに関わるようになった経緯からこれまでの活動の全体像を、流れるような語り⼝でお話しいただきたました。ミツバチが好きで始めたのではなく、現役引退後に環境問題の視点から勉強を始め、養蜂にたどり着いた話は少し驚きでした。晩秋で花も少なく、ミツバチの活発な活動を⾒ることはできませんでしたが、プロジェクトが2010年のスタートから現在まで続いてきた理由の⼀端が、単にミツバチを飼育するだけでなく、活動を通じ⼈と⼈とのつながりに重点を置いていることにあると分かりました。また、養蜂は届出が必要な「飼育」であり、⼀から育て、管理してハチミツという果実を得るもの、という話も新鮮でした。今年は異常気象のためか花やミツの量が少なく、ハチミツの採取量も少なかったそうです。⼤きく変わりつつある地球環境の変化の⼀端を、この活動で知ることができたというのも興味深いものでした。春、江古⽥の町に花が咲くころ、元気なミツバチがたくさん⾶ぶところを⾒たいものです。

とっとり君

武蔵⼤学のキャンパス内を拠点とした「江古⽥ミツバチ・プロジェクト」は、区⺠参画も⼿伝って教育的にも事業展開ぶりも模範的なグループだと痛感した。「ミツバチは家畜なのです」との⾕⼝紀昭さんの⾔葉にはビックリ仰天であった。ミツバチの箱が飼育箱と呼ばれているから納得だ。ミツバチの社会は役割分担がしっかりしていて、フランスのナポレオン・ボナパルトはミツバチを「家紋!?」にしているという話も初めて知った。あのルーヴル美術館にもヴェルサイユ宮殿の絵や彫刻にも、ミツバチのモチーフが飾られているという。ミツバチと⼈間には昔から深いつながりがあるということに、毎朝⾷事にハチミツを味わいながら感慨深さを感じている。⾕⼝さんのミツバチに関する博学ぶりには只々感服するばかりで、取材の時間はアッという間に過ぎてしまった。⾕⼝さんはもうすぐ⽶寿を迎えるという。「これからも『江古⽥ミツバチ・プロジェクト』の活動に努め、楽しい⼈⽣を送っていきたい」と宣⾔されたが、この⼈の健康の秘訣はひょっとしてハチミツかも。


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