サポーター体験記296

練馬のブルーベリー観光農園の楽しみ方〜「高松四丁目宮本園」へ行ってきました!〜

取材日令和5年8月2日
更新日令和5年9月25日

練馬区には、ブルーベリーの摘み取りができる「ブルーベリー観光農園」が約30か所もあることをご存じでしょうか。今回はそのなかの「高松四丁目宮本園」を訪ね、農園主の宮本正裕さんに、ブルーベリー観光農園の現状や栽培方法、おすすめの食べ方などについて、たっぷりとお話を伺ってきました。収穫のピークは7月初旬から8月中旬頃まで。来年の夏は、大きくて甘〜い摘みたての練馬産ブルーベリーをぜひ味わってみてください!

高松四丁目宮本園

※以下、文中敬称略。

住所:練馬区高松4-21-26
電話:090-8037-4389(9:00〜17:00)
開園時期:7月上旬〜8月中旬  ※2023年は8月5日で終了
開園日:水曜(不定期・要確認)、土曜(予約不要)
開園時間:10:00〜11:30(早く終了する場合あり)
練馬区ブルーベリー観光農園HP(各農園の住所、開園日、予約の要不要など詳細情報が更新されます):https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/nogyo/hureai/casualfarm/blueberry.html

練馬ならではの夏の楽しみ

練馬区のブルーベリー観光農園は、ブルーベリーを摘んで100グラム250円で買い取るシステム(食べ放題ではありません)。どの観光農園でもこのシステムは共通ですが、ブルーベリーの品種や本数、農園の雰囲気などが異なるので、いろいろな農園に行って比べてみるのもおすすめです。

今回お邪魔した「高松四丁目宮本園」は、光が丘駅から徒歩15分ほど南下した住宅街の中にあります。まずブルーベリーの畑を見せていただき、そのあとゆっくりお話をお聞きしました。

防鳥ネットをくぐって、いざブルーベリー畑へ!

リピーターも多い「高松四丁目宮本園」の人気のワケとは?

ーーーここにはブルーベリーの木はどのくらいあるのですか?

宮本「10品種200本あります。品種によって収穫時期が少しずつ違うので、うちの場合、開園は7月初旬から8月中旬くらいまで。『タイタン』という品種はとても大きくて、500円玉くらいのサイズになることもあり、タイタン目当てにやってくるお客さんもいるんですよ」

ーーー園内がとてもきれいで歩きやすいですね。

宮本「来ていただく方々に気持ちよく摘み取り体験を楽しんでもらいたいので、開園日の前日には必ず清掃しています。春日町にある『社会福祉法人あかねの会』の障がいのある方や、練馬区の農サポーターのボランティアの方に、定期的に草取りを手伝ってもらっています。丁寧に作業していただいているので、とても助かっています」

ブルーベリー畑で説明をしてくださる宮本さん。全てのブルーベリーの木の根元には品種が書かれたプレートが付いています

ーーーお客さんはどのくらい来ますか?

宮本「1回で平均70〜80人位ですが、今年は7月上旬の初回が250人。翌週はさらに増えて350人。農園の入り口が人と自転車でいっぱいになりました」

大きな実にびっくり! 味見をしてみると、「甘くておいしい!」とみんな笑顔に♪

ーーーそんなにたくさん!すごいですね。どんなお客さんが多いのでしょうか?

宮本「摘み取り体験は子どもに大人気なので、やはり家族連れが多いですね。シニア層も多く、1人で2㎏も収穫する女性の方も。毎年6月中旬頃になると必ず『今年はいつから始めますか?』と電話をくださる常連さんもいます。外国の方も来るので、区にお願いして英語・中国語・韓国語の案内板を作ってもらいました」

「高松四丁目宮本園」ではコロナ感染予防対策として、摘み取り用の容器を大・中・小の3種類用意しています。来園時に希望の大きさの容器を買い、一杯になるまで摘み取る方式です

サラリーマンから農家に転身し、ブルーベリー栽培をスタート

ーーー宮本さんは何代目の園主ですか?

宮本「よく聞かれるのですが、実はよくわからないのです。 私の父が13歳の時に祖父が戦死してしまったので、それまでの歴史を聞くことができなかったんです。調べてみたら、江戸時代から続く農家のようです」

母屋に隣接する納屋の前で取材。なんと、江戸時代からある納屋なのだとか⁉︎

ーーーブルーベリー観光農園を始めたきっかけは?

宮本「私は長らく会社勤めをしていたんですが、50歳で農園を継ぐことに。学生の頃はキャベツの植え付けを手伝ったり、免許を取ってからはトラックで築地まで運んで出荷の手伝いをしたりしていましたが、自分で本格的に農園をやるのは初めて。最初は父に教わった方法で野菜を作っていましたが、父が亡くなり、野菜より果物の方が素人には育てやすいと考えて方向転換することにしました。果物のなかでも、病害虫が少ないこと、あまり栽培の手間がかからないことから、ブルーベリーを選びました」

ーーーブルーベリーの栽培はどのように学んだのですか?

宮本「練馬区でもブルーベリー栽培を推奨していたので、JAの普及員の専門家に付きっきりで教えてもらいました。どんな品種がいいのか、どこに植えたらいいのか、農園の設計図も書いてもらいました。平成17年(2005年)に苗を植え、平成21年(2009年)から観光農園を始めたので、今年で14年になります」

明るい笑顔が印象的な農園主の宮本正裕さん(67歳)。1つひとつの質問に丁寧に答えてくださいました

ーーーもともとはどのような作物を栽培していたのですか?

宮本「父の代までは専業農家でずっとキャベツとブロッコリーを作っていました。今はブルーベリーがメインですが、この農園はキャベツに育ててもらったようなものなので、キャベツとブロッコリーは絶やさないように続けていこうと思っています。また、ブルーベリーを摘みに来たお客さんのために、トウモロコシも作っています。自宅用と、毎年11月に開催される『JA東京あおば農業祭』で販売するために、キウイも少し作っています。今は果物と野菜が5:1くらいの割合ですね」

おいしいブルーベリーを作るためのポイントとは

ーーブルーベリーの栽培は比較的楽だということですが、苦労はないのですか?

宮本「それほど苦労を感じないですね(笑)。収穫が終わったら、1月〜2月の剪定まであまりやることはありません。肥料を1度入れ、9月頃に害虫の毛虫が出ないか気を付けるくらいです。強いて言うなら、剪定作業には気を使うということでしょうか」

ーーー剪定によって出来具合が変わるのでしょうか?

宮本「古い枝のままだと、実がたくさん付かなくなるので、脇芽が出てきたら、そちらを生かすようにしていきます。花芽が10個あったら残すのは3〜4個くらい。品種によっては2個しか残さない場合もあります。剪定は毎回、試行錯誤をしながらの作業ですね」

きれいに植えられたブルーベリーの木

ーーー栽培の観点で、ブルーベリーの木の特徴はありますか?

宮本「ブルーベリーは暑さに強いと言われていますが、今年の夏のような暑さだとダメになってしまうものもあります。暑いときは4日に1回くらい水まきをしています。一般的には、ブルーベリーの木は30年くらい持つようですが、植える場所によっては風の影響を受けて根が弱ってしまうので、もっと寿命が短い場合もあります」

ーーー観光農園のほかに、出荷はしていないのですか?

宮本「出荷はしていません。ブルーベリーは傷みやすく日持ちがしないため、出荷するとなると手間がかかるしリスクも大きい。それよりはお客さんに摘み取って楽しんでいただいた方がよいと思っています」

ーーーブルーベリー栽培のやりがいとは?

宮本「何と言っても、お客さんの『おいしい!』『大きくて甘い!』という言葉が一番の励みになりますね。来年も大きな実を付けられるよう頑張ろう!という気持ちになります」

農園主に聞く、ブルーベリーのおすすめの食べ方

ーーーブルーベリーのおいしい食べ方があったら教えてください。

宮本「そのまま食べるのはもちろんですが、砂糖を入れなくても十分に甘いので、ジャムにするのがおすすめ。ブルーベリーは肉によく合うため、ジャムに塩こしょうを加えてソースにし、とんかつに合わせても美味しいですよ! 冷しゃぶにも合います。練馬産ブルーベリーを使った発泡酒『ネリマーレンブルーベリーブロイ』もありますよ。ぜひ味見していきませんか? ねりコレ(練馬のオススメ商品コレクション)にも認定されている一品です」

練馬産のブルーベリーを使った発泡酒「ネリマーレンブルーベリーブロイ」をごちそうになりました。フルーティーな香りが印象的♪

ーーー敷地内に養蜂箱がありましたが、はちみつも売っているのですか?

宮本「地元の養蜂家のために場所を貸しているだけです。ブルーベリーの花は、スズランのような形をしたとても小さな白い花。蜜を吸いに来たミツバチたちが受粉をしてくれます。ブルーベリーの花が咲くのは桜の季節と同じ頃なので、ここのはちみつにはブルーベリーと桜の蜜が入っていると思います。とても美味しいですよ」

ブルーベリー畑の前に並ぶ養蜂箱

宮本さんの新たなチャレンジに期待が高まる!

ーーー近頃はブルーベリーの「養液栽培」が推奨されているようですが…。

宮本「大きな鉢植えのブルーベリーの木に、水に混ぜた肥料を点滴のように落とし、水やりを自動的に行う方法ですね。JA東京あおばのブルーベリー研究会には30園ほどが加盟していますが、現時点で養液栽培をしているのは1園だけです。いろいろ研究が進んでいるようなので、養液栽培を導入している山梨県のブルーベリー農家さんに秋に見学に行く予定です。今後、ブルーベリー畑をもっと広げていきたいので、養液栽培についても検討していきたいと思っています」

大きなポットで試験的に養液栽培に挑戦中。新しい試みにも積極的に取り組んでいます

ーーーブルーベリー畑を広げるんですね。

宮本「新しい畑では6月から摘み取りができるように、いま新しい品種の苗を植えているところです。4年後の開園を目指しています」

ーーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

宮本「地元で気軽に摘み取り体験を楽しめるのが、練馬のブルーベリー観光農園です。真夏の暑い時期なので、熱中症対策を万全にしてぜひ遊びに来てください。来年の夏、お待ちしています!」

サポーターの取材後記

Kooshoo

いつも自宅から「高松四丁目宮本園」の横を通って光が丘駅に通っている。その縁で宮本園を取材対象に選んだ。もっと大きな農園もあるが、私にとっては縁遠い。宮本園は、なにせほぼ毎日駅に通う道路沿いにあって、日常の風景の中に溶け込んだような存在だからだ。高松は“宮本さん”だらけで、双方は昔親戚だったようだが、最近はそれほどの付き合いはないという。取材はブルーベリー園そばにある母家とは別の家屋の木陰スペースにテーブルを置いて行われた。近くの大木でセミが盛んに鳴いている。取材が終わって園主から提供された練馬産のブルーベリーを使った発泡酒「ネリマーレンブルーベリーブロイ」が、なんとうまかったことか。

トマト

閑静な住宅街にある宮本園のブルーベリー観光農園。8月の酷暑の日に取材に訪れると、ブルーベリー畑は、雑草もなく整然と並ぶ木の1本1本に品種名が記され、すぐに品種名がわかるようになっていた。摘み取りに訪れるのはリピーターの方が多いようで、今年の最初の開園日には、250名も訪れたとのこと。今年の夏の半端ない暑さの中で、それだけ人が訪れるなんて、どれだけ収穫を待ち望んでいるリピーターがいることか。取材の際に味見させていただくと、今まで見たこともない大きな粒で、味も甘くてジューシー。どこのブルーベリー農園も味などは同じだろうと思っていたが、園によって違いがあることを知り、来年は、私もぜひ摘み取りに行きたい。

とっとり君

宮本さんは一度はサラリーマンの世界に身を投じたが、家業を継がなければいけないという意識は心の片隅にいつもあったと言う。50歳がその転換期だった。そして、先代とは違った農家の在り方を模索した。それがブルーベリーの観光農園であった。区民に開放して収穫の喜びを体験させるということが自らも励みとなり、それが効率の良い農業経営にもつながっていった。宮本さんの人柄の良さと、ていねいなお客様への応対術はただの農家の主(あるじ)ではないことをうかがわせる。早朝からブルーベリー畑を見回りながら隅々まで掃除している宮本さんの姿を見て、「観光農園のあるべき姿はこれだ」と思った。ブルーベリーの1粒1粒がダイヤのように輝いて見えた。


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