サポーター体験記288

練馬から発信! 指1本で音楽家になれる指笛の魅力

取材日令和5年5月1日
更新日令和5年6月12日

指1本で音楽を奏でる指笛音楽をご存じでしょうか。
練馬区高野台に住む指笛奏者の片山陽一さん(74)は、指笛音楽の創始者である故田村大三先生の教えを受け、現在は日本指笛協会の会長補佐としてその普及に尽力しています。片山さんに、指笛音楽の魅力や、音を出すコツなどについてたっぷりとお話を伺い、生演奏もご披露いただきました!

日本指笛協会

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。

会長補佐/片山 陽一さん
所在地:スタジオK(練馬区高野台4-1-25)
 毎月第2日曜14時〜16時 「指笛教室」
 毎月第4土曜13時~16時30分 「日本指笛の集い」
 毎月第3日曜13時30分〜16時30分 「MMC(指笛・草笛・口笛の集い)」
 毎月第3金曜14時~16時 「コール練馬」
電話:03-6700-2111
メール:1233nvel@jcom.home.ne.jp

指笛で音を出してみよう♪

ーーーまずは指笛の特徴を教えていただけますか?
片山 「指笛は、どんな時でも身ひとつ、指1本だけで音を出せるのが特徴です。とてもよく通る音なので、2km先ぐらいまで届くんですよ。船で遭難した人が、指笛で助けを求めて救助されたというニュースを聞いたことがありますから、災害時に備えて身に付けておくとよいと思いますよ」

ーーー指笛はどのように音を出しているのですか?
片山 「親指と人差し指を使ったり、両手を使ったりといろいろな方法がありますが、指笛音楽を演奏するには、人差し指を使う方法がいちばん良い音が出ます。人差し指をかぎ型に曲げ、『え』の形にした口にくわえて演奏します」

ぬいぐるみを使って指笛の吹き方をわかりやすく解説

ーーーやってみましたが、全く音が出ません…。コツはありますか?
片山 「人指し指の第二関節が口と平行になるように、指をくわえこむつもりで奥まで入れてみてください。ホイッスルを口の中で作るイメージです。口の大きさや歯並び、指の長さなどによって個人差はありますが、音が出る構造はいたってシンプルなので、コツさえつかめば誰でも吹けるようになりますよ。諦めなければ必ずできるので、1日5分でよいので練習してみてください」

指は口の中にホイッスルをつくるイメージ

生演奏の美しい音色に感動

さっそく片山さんに指笛音楽を演奏していただきました♪

指笛で歌謡曲『森の水車』を演奏する片山さん

指1本で出しているとは思えないような音量と、澄んだ音色の美しさに、思わず聴き入ってしまいました。音の強弱や表現も自由自在で、まるで楽器を奏でているよう。聴く人の心に響き、感動を与える指笛音楽の素晴らしさを実感しました。

ーーー片山さんが指笛で演奏する曲のレパートリーはどれくらいあるのですか?
片山 「数えたことはありませんが、知っている曲なら演奏できますから、数百曲はあると思います。よく演奏するのは、『芭蕉布』や『花の街』、『森の水車』です」

指笛音楽の普及活動

ーーー国内に指笛音楽の奏者はどのくらいいるのでしょうか?
片山 「100人前後ではないかと思います。日本指笛協会は全国に指笛を普及させることを目標に活動をしており、会員は現在40名ほどですが、残念ながら高齢化で年々会員数が減っています」

取材に伺ったのは、片山さんが設計・運営しているレンタルスタジオ

ーーー片山さんご自身はどのような普及活動をされていますか?
片山 「仲間と一緒に、小学校や幼稚園、福祉施設などへ出向いて演奏するボランティア活動をしています。子どもたちが喜ぶ姿を見ると嬉しいですね。また、月1回、このスタジオKで指笛教室を開いています。防音完備なので、どんなに音を出しても大丈夫(笑)。みなさん、一生懸命練習に励んでいますよ」

指笛音楽の創始者の思いを、練馬から届ける

ーーー片山さんが指笛を始めたきっかけは?
片山 「16年ほど前、練馬文化センターに、指笛音楽の創始者である田村大三先生の指笛コンサートを聴きに行ったのがきっかけです。指笛で演奏できるということに驚いて感銘を受け、 教えていただけないかと田村先生にお願いしたところ、『まずMMC(マウスミュージックの教室)で学び、指笛が吹けるようになってから来てください』と言われました。入会して1日目に音が出て、童謡の『ちょうちょう』を吹くことができたんです。褒められ、おだてられて夢中になり…おかげで楽しく指笛を続けています(笑)」

ーーー指笛音楽は日本発祥なのですね?
片山 「そうです。田村先生が考案した奏法です。田村先生が子どもの頃、小学校の先生が生徒を呼ぶために指笛を吹いたのを見て感動し、『できるようになりたい!』と猛練習をしたそうです。それが高じて演奏できるまでになり、昭和9年(1934年)、神保町の路上ライブで指笛音楽を披露したことからテレビやラジオで紹介されるようになりました。その後は国内外で精力的に演奏活動を行い、ニューヨークのカーネギーホールで演奏したことも。2010年に97才で逝去するまで、指笛音楽の確立に尽力されました」

ーーー日本指笛協会は田村先生の意志を継がれているのですね?
片山 「田村先生が確立された指笛音楽を残していくために何とかしようと、協会を設立しました。私が練馬で登録の手続きを行ったので、日本指笛協会は練馬が拠点ということになります」

スタジオには様々な国の楽器があり、見ているだけでワクワクします!

ーーー海外にも指笛音楽はあるのですか?
片山 「スペイン領のゴメラ島には指笛を使ってコミュニケーションをとる人たちがいるそうですが、演奏はしないので、指笛音楽は日本独自と言ってよいと思います」

多才&多彩にシニアライフを楽しむ秘訣

ーーー片山さんは、指笛のほかにも、童謡やカンツォーネを歌い、タップダンスや絵付け、水墨画、川柳など、多彩な趣味をお持ちです。
片山 「居場所が多いほど幸福度は高いと言われていますから(笑)。足腰を鍛えておこうと思い、タップダンスを始めたのは56歳の時。タップダンスの第一人者である中野章三さん(中野ブラザーズ)たちと、銀座博品館の舞台に出演したこともあるんですよ。カンツォーネについては、童謡のコンサートでカンツォーネの歌手の方と知り合ったのをきっかけに教えていただくようになりました。妻が川柳をやっていたので、故時実新子先生に弟子入りし、夫婦で川柳を楽しむようになりました。また、江古田の喫茶店「ぶな」(毎月第1木曜18時~20時)で、定期的に歌声教室を開いています。そういえば、59歳で富士山登頂も果たしました」

片山さんが絵付けをしたカップ。絵付け教室を開いていたこともあるそう
片山さんが淹れてくださったコーヒーのカップを手に取るサポーター。1つ1つ異なる絵柄が描かれていました

ーーー習うだけでなく、人に教えるレベルまで極めるのは大変だと思います。壁に当たったり、途中で投げ出したくなったりすることはないのでしょうか?
片山 「『人がやっていることなら、チャレンジしてみよう』と思っているので、投げ出すことはないですね。途中でやめたら失敗者ですが、やめなければ失敗者にはならないでしょ(笑)。私のすぐ上の兄は60歳からウエイトリフティングを始め、シニア部門の大会で優勝しました。ものすごく刺激をもらっています」

ーーー人生を楽しむ秘訣は何でしょうか?
片山 「まずは元気でいること。そして、興味を持ったものには、年齢に関係なくチャレンジすることでしょうか。私の場合、人とはちょっと違うことに挑戦することが多いですが(笑)。指笛でずいぶん人生が楽しくなると思いますよ♪」

次の世代へつなげていくために

ーーー今後の目標は?
片山 「年齢的に先がそんなに長いわけではありませんし、指笛協会のメンバーも高齢化が進んでいます。指笛音楽の文化が廃れてしまわないよう、若い人を育てていきたいという思いは切実です。そのためにも指笛をもっと極め、聴いた人が『やってみたい』と思うくらいの感動を届けられるように精進したいです」

明るく温厚な片山さんには、会った人を引きつける魅力があります

ーーー指笛の演奏はどこで聴くことができますか?
片山 「毎年、指笛のコンサートを開催しています。今年は10月28日(土)に東久留米市の成美グリーンホールで行う予定です。個人の演奏のほか、会場のお客さまと一緒に歌うパートナーソングもあるので、楽しんでいただけると思いますよ」

片山さんの謙虚で温厚な人柄に触れ、こちらまで穏やかな心持ちになりました。また、年齢にとらわれず、いつまでも好奇心とチャレンジ精神を持ち続けて人生を楽しむ姿に勇気と元気をもらいました。

決してあきらめることなく、指笛で音を出るまで練習に励みたいと思います!

サポーターの取材後記

草笛のけん

片山さんとは熊本県山都町の同郷。私が草笛を始めたきっかけは、片山さんの指笛の演奏会を聴いたこと。感動した私は「72歳の私でもできますか?」と質問。「もちろんできますよ」と、MMC(世話人は故斎藤秀元先生)を紹介された。2週間後、MMCを訪ね、片山さんが最初に従事した斎藤秀元先生から草笛を学び、斎藤先生を草笛の師匠と仰ぐようになった。斎藤先生はアメリカの音楽療法を例に、「音楽には精神的・心理的・身体的苦痛や問題を軽減させ、治癒する力を持っている」と話された。片山さんの指笛音楽は、まさに聴く人の心を動かす力を持つ音色。取材中、片山さんの生演奏で“指笛療法”を受け、ドーパミンが引き出されたような気がした。

とっとり君

まだ現役で仕事をされ、多彩な趣味を持つ片山さんは、まさに人生を“跳び続けている人”。取材で初めて指笛の生演奏を聴いてびっくり仰天! 片山さんの“指1本の芸術”にすっかり魅せられた。思わず「弟子入りさせてください」と口走ったところ、「ぜひ、遠慮なくお越しください」と、何ともやさしいお言葉をかけてくださった。指笛ができるようになったら人生面白いだろう。とはいえ、草笛のひとつも音が出せない体たらく。嗚呼。


PDF形式のファイルを開くには、Adobe Acrobat Reader が必要です。お持ちでない方は、Adobe社から無償でダウンロードできます。