サポーター体験記286

詐欺だけじゃない!あなたの暮らしの隣にある「消費者問題」について考える。

取材日令和5年2月27日
更新日令和5年5月11日

消費者問題と聞いて、皆さんは何を想像しますか?
詐欺や不当契約関連のイメージがあるかも知れませんが、
消費者問題を簡単に言えば、「暮らしに関わるすべてのこと」です。
つまり、必ずみなさんご自身に関連する内容があります。
あなたのすぐ隣にある消費者問題について取材してみました。

活動室は、石神井公園駅前すぐの 石神井公園区民交流センター2階にあります!便利!

練馬区消費生活センター運営連絡会

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。

取材ご担当:連絡会会長/川端法子さん、事務局/大島いずみさん
所在地:東京都練馬区石神井町2−14−11
電話:03−3996−6351
※こちらの団体は、情報の伝達が主となる区民の自主的な集まりです。直接的に問題を解決できる組織・機関ではありませんのでご注意ください。

時代を先取り!消費者センター創設前にできた、市民団体がそのはじまり

―まず、こちらの連絡会の設立経緯や消費者センターとの関わりについて教えていただけますか?

会長の川端さん、実は練馬区内でも数少ない
女性の町会長でもあります

川端 「センターの起源は、消費者活動についての先輩たちの頑張り、と言えるでしょう。全国的に起こった消費者視点での問題提起が、練馬区でも広がって、連絡会が誕生しました。
この連絡会は、日本ではさきがけ的な存在で、消費生活センターという概念を作った最初の団体とも言えます。消費者団体として、この運営連絡会が現在でも継続されているのですが、23区の中できちんと継続している団体は年々減ってきています。その中で、行政と上手く連携ができている所となると、それこそ2つ3つしか無いのではないかと思います。活動の詳細についてはまとめた冊子がありますので、そちらをぜひご覧いただきたいです」

川端 「1975年に消費生活センター設立準備会議が作られて、1979年に練馬区消費者団体連絡会が誕生しました。この後に消費者センターが出来るのですが、みなさんよく、『センターが先で、連絡会が(その下部組織的位置付けとして)出来たのでは?』と勘違いされます。当時は消費者団体とは言わず、婦人団体と呼んでいました。
それぞれの婦人団体が消費者問題ごとに小さなグループを作り、お互いに連絡し合い、(当時の呼び方で)主婦目線でそれを解決していこうと集まったのです。そして問題解決のためには公的な「消費者センター」が必要だと、最終的に、区に要請をして消費者センターに設立に至った。というのが経緯です。どうしても物を作っている企業の側が優位であり、消費者は立場的に弱い側面もあると思います。それを同等の立場で解決するための補助機関として設立されたのが消費者センターです」

連絡会はそれこそ、たったひとりの
主婦の疑問から始まったといいます
運営連絡会の募集チラシ。少しでも
興味があれば、ぜひお問い合わせを

――なるほど。協働という概念がない時代から、現場目線を入れることで、消費者の視点を大切にされてきたのですね。今では当たり前ですが、その当時からすると、かなり革新的な考え方ですね。

大島 「そうなんです。今でも会長と『やっと時代が追いついたね』と話します。行政とお付き合いを続けていくうちに、私たちの協力(当時協働という考えはなかった)が、いいと現場で起きている問題や困っていることが正しく把握できない、と言われるようになり、その重要性を認識いただいているのではないかと自負しています」

事務局担当(10年ほど会長を経験した)の大島さん、
5つのテーマで分かれているグループの事務局として会を運営しています

――このビルには、ハローワーク関係等の公的な機関もあり、私も仕事をリタイアした後に何度か訪れたことがありますが、このような立派な事務所があるなんて、正直驚きました。

川端 「こちらは基本的には区の施設で、私たちは登録された消費者団体を取りまとめとこの活動室の管理運営を任せられているのですが、様々な消費者団体が自由に使える環境は他の区からするととても珍しいようです。その団体がこの活動室にあるボードに予定を書いてもらえれば、無料で使うことができます。(年間の団体登録料=賛助会費は必要とのこと)
元々、消費生活センターは中村橋の図書館・美術館の向かい側にある地区区民館にあり、当団体も長く活動を続けていました。
こちらのビルに消費生活センターが移転する時には、設計面でもアドバイスさせていただいたんですよ。例えば、消費者問題の中の「食」を取り上げるために調理ができる場所が必要で、当時はこういった建物内では安全性を重視した電磁調理器メインだったのですが、当時の電磁調理器は『火力が弱すぎ』と、ガス調理器を入れてもらうなどしました」

――私は、いわゆる学生運動後期の世代なのですが、個人的な印象としては、練馬区は消費者問題を含め様々な課題に関心のある人材・団体が多い印象です。

多くの区民が暮らす練馬区は、いわゆる
「情報感度」の高い方が多い印象があります

大島 「確かに、先日も珊瑚礁の死滅などの“温暖化が海に及ぶ”をテーマにした講演を行なったのですが、ご参加のみなさんは割と前提となる知識がある方が多い印象です。練馬区の特性の一つとして、そういった知的好奇心が高い層が集まっているのかもしれませんね。また何より、この施設が駅から近いというのも、他の場所から来やすい点で興味がある方を集めやすいのかもしれません」

詐欺だけじゃない、生活全てに関わる消費者問題

――シニアナビを閲覧する読者の皆さんは、比較的高齢の世代ではありますが、その中でもネットに抵抗が少ないという特徴があると思います。そんな皆さんに『こういう点は注意した方がいい』と言った情報はありますか?

川端 「消費者問題と聞くと、皆さん構えてしまうと言いますか難しく考えがちなんですけど、簡単に言えば、生活に関わる諸問題のことですから、例えば【食べる】【いきいきと暮らす】【経済】【環境】など幅広いですし、必ず自身に関連する内容があります。もちろん、詐欺や不当契約なども入りますが、それが全てではないのです。広い意味での【暮らし】に目を向けることで、皆さん自身のすぐ隣に、消費者問題がある、と思っていただきたいですね。

昨今、特に高齢者を狙った詐欺被害が拡大しているが
消費者問題はそれだけにとどまらないのです

それから、例えば詐欺に関して言うのであれば『絶対に私は引っかからない』と思われる方が大半なんですね。そのことも講座では「詐欺に遭う人の心理」として取り上げました。診断を受ける形の講座でしたが皆さん自分も危ないというところがわかりドキッとしました。温暖化もプラスチックゴミも、食の安全や高齢者問題に福祉、そして詐欺も、全て皆さんに関わる問題だと私たちはずっと発信しています。その意味において、機能で役割を分割する行政を、「生活」と言う視点で繋ぐ団体と言えるかもしれません」

大島 「一昔前行政は、環境は環境の問題、福祉は福祉の問題、と区民を問題別に分けて考えることが一般的でした。連絡会ではグループに分かれて活動していますが、その中の広報グループが練馬区発行の消費者情報紙「ぷりずむ」の企画・編集に参画しています。様々な広報を行う中で、毎年11月には、「特集号」を発行しています。これが結構な反響があるんです。
例えば、身近な人が亡くなったら、と言うテーマでは、すぐに動かなければいけないことが多いのですが、区の広報では、それぞれの部署がそれぞれの管轄の範囲で様々な情報を出していますので、我々消費者は、様々な部署に尋ねて様々な資料を見なければいけないんですね。この保存版には、戸籍の問題から死亡届、資産の処理や葬儀場の手配まで、一つにまとめられていますから『これは具合がいい』と評判だったのです。あくまで一例ですが、こんな観点で編集をしているのが11月の特集号なんです」

川端 「他にも災害時の特集もあります。高齢者の皆さんが、体調が悪く自宅から離れたくない・離れられない場合、また、練馬区は地盤が比較的硬いと言われますので、自宅が全壊することは想定されていない認識もあるため、一時的に電気やガスがストップしても、住み慣れた場所を捨ててまで避難拠点に出向くかと言うと、皆さんほぼ、自宅に居たい、とおっしゃります。でも区の広報では避難拠点へ、と勧めるわけです。安全性はもちろん大切なことなのですが、『住み慣れた家でどのように過ごせば安全なのか?』と言う視点も必要なのです。ですので、町会などでは私たちの発行する冊子を教科書として、災害時の在宅避難を考えたりしてもらっています。古い時代の冊子も、家庭科の先生から『使わせてもらいました』なんて言われることも少なくないんですよ」

有事の際でも、住み慣れた家で過ごしたいもの。
在宅避難について分かりやすくまとめられている

――高齢者施設の特集号では、我々区民が最初に気になる費用面が具体的に明記されていて便利ですね!費用と希望を天秤にかけて検討できますから、とても実用的です。相当ご苦労されたと思います。

大島 「どうしても行政機関ですと、価格面での比較については手を出しにくいですからね。発行後、『新人のヘルパーさんの基礎知識を補うことができた』とか『当事者である高齢者だけでなく、その子供の世代や孫の世代まで見てもらうことで、家族みんなの問題として捉えられた』と言ってもらえます。
一方で問題も抱えていまして、講座でも、興味がある高齢者の皆さんは熱心に参加していただけますが、若い方が高齢者の周りにいませんから、もしどこかで少しでも会話する機会があるのであれば、これらの情報を若い世代に広げてほしい、と言う思いはあります」

ぷりずむは隔月発行、特集号は年1回発行。
冊数が限られているので、人気の号は早くなくなることも!

自ら行動・自ら発信、周りへの相談と巻き込みが重要

――先ほどの話にも関連しますが、昨年、区でおくやみ関連のワンストップの窓口が設立されました。そう言ったところにも直接・間接はさておき、関わっているのですね。
※参考:シニアナビねりま「練馬区におくやみコーナーができました」(PDF)

行政ではなかなか着手しづらい「お金」の話こそ、
我々消費者が必ず知りたい情報の一つです

大島 「そうですね。区役所の立場としてはどうしても予算や人員の関係がありますから、守備範囲が限定的にならざるを得ないと思います。先ほどの詐欺の話を例にとれば、直接的な被害は警察の管轄になります。最近では障がい者の方の被害が多いことも分かってきて、そうなると福祉の分野、障がい者センターも巻き込むことが必要になります。私たちの活動同様に、各セクションが横断で連携して練馬区消費者安全確保地域協議会ができましたが、まだまだ足りないと思います。もう一歩踏み込んで具体的に取り組まないと、消費者の現場の問題は解決しない場合が多いです。」

川端 「練馬区でも最近、環境問題への配慮のため、プラスチック製品であるクリアファイルは使わない、と条例で決められたのに、例えば警察署や消防署、水道局などのイベントでは、たくさんのクリアファイルが出てきます(笑)。私たちが気づいた時は、物おじせず、その場で直接交渉したり、それこそ組織の代表に手紙を書くなどして、少しづつ改善してもらっています。やはり、誰かが発信していかないと、なかなか浸透しませんから」

想像以上に幅広い「消費者問題」にサポーターも
驚き。海洋ゴミ問題等にも5年前から把握していたそうです。

――例えば詐欺の問題でも「自分は大丈夫」と一人で完結せずに、周りに相談したり、発信することが重要だそうです。消費者問題は、なんでも話せるコミュニティ・環境をいかに自分の周りに作るかが大事なのだと感じました。このほか、インタビューの中で「重要なことは大抵小さく表示されている」と言う話や、今では当たり前になった牛乳パックの回収&リサイクルも、元を正せば練馬区から発信されたと聞き、大変興味深かったです。一区民団体の真摯な取り組みが大きな輪として広がるのです。消費者問題を自分ごととして捉え、気になることは積極的に受信、また発信していく重要性を、改めて感じた取材となりました。

サポーターの取材後記

ヒロちゃん

取材に伺うまで、この会は消費生活センターに集まる課題に関し、消費者に分かりやすいようにかみ砕いて広報するために活動しているものとばかり思っており、これが大きな誤解であることに気づきました。大変恥ずかしい思いでした。
高度経済成長により様々な消費問題が起きた1970年代に、消費者センターの設置提案から始まり、その後もリサイクル等の時代を先駆ける運動を強力に推進された、練馬の諸先輩の熱意と行動力に、頭が下がります。地球温暖化だけでなく、最近取りざたされるようになった海水温の上昇にもいち早く関心を持たれ、議論されているとのことでした。
グループごとに定期的に集まっての議論、検討が大変楽しいとのお話でした。この先駆的で素晴らしい会の内容を取材でご紹介することにより、消費者問題に関心のある新しいメンバーが加わるお手伝いができると嬉しいです。


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