サポーター体験記
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生活に欠かせない給水所とは? 水道事業を知ろう

生活に欠かせない給水所とは? 水道事業を知ろう
光が丘にあるこのタンク、どんな仕組みになっているのでしょうか?

私たちの生活に欠かせない、水。
蛇口を捻ればいつでもどこでも一定の水量で使えますが、
74万人に迫る、私たち練馬区の水は、一体どこから来ているのでしょうか?
また、それらはどのように管理されているのでしょうか?

身近すぎて意外と知られていない、水道事業について、取材してきました。

東京都水道局浄水部

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。

取材ご担当:浄水課 課長代理/小見山さん、課長代理/師岡さん、管理課/柳澤さん
URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/

大人数の練馬区民の飲み水は、どこから来るの?

――まず、練馬にある給水所の規模から教えてください。日本最大級なのだとか。

 今回お話を伺った東京都水道局の皆さん、
手前から小見山さん、師岡さん、柳澤さん
今回お話を伺った東京都水道局の皆さん、
手前から小見山さん、師岡さん、柳澤さん

小見山 「練馬給水所は、東京都内、水道局の中でも最大級の量を取り扱っている給水所です。給水所のある光が丘地区は、もともとアメリカ軍の宿舎があったところが昭和48年に開放され、その後、現在の光が丘団地をはじめとした居住区や公園ができました。公園の一部を水道施設として活用している形ですね。

多くの区民の方がご存知の通り、公園の中にグラウンドが三つあり、この下に配水池があります。この貯水の合計量は20万立方メートルと、非常に大きなものになります。一般的な25mプールでおよそ540立方メートルですから、約370倍の大きさです。練馬給水所は地上に見えているのはほんの一部で、ほとんどが地下に潜っているタイプの配水池になりますから、実際はもっと広大な設備になります。

そもそも給水所とは何をする施設かというと、まず都内を中心に10ヶ所ある浄水場から送られてきた水を、給水所では配水池に一時的に貯留しまして、その水を都民の皆さまにお配りするという施設です。このうち、練馬給水所は周辺の都民の皆さんに水をお配りするのが大きな役目ですが、もう一つ、給水所の中継的な役目もあります。浄水場から練馬給水所で受けた水を、さらに世田谷区などの給水所にも送ってあげる役目です。つまり、直接的な水の供給と別の南側のエリアの方へ水をお送りする給水所として稼働しているんですよ」


――供給される水(水道)の量というのは常に一定なのでしょうか?

小見山 「常に一定ではありません。一日24時間の人間の生活リズムがありますが、これがイコール水を使うことだと捉えていただくと分かりやすと思います。多くの皆さんが、朝起きるとトイレに行って、洗顔したりシャワーしたりご飯を作って、家事をされている方であれば掃除・洗濯をして、日中は少し落ち着いて、また夕方になると夕食の準備をして、夜にお風呂に入る、という行動をされていると思います。こういった生活のリズムに合わせて水の使用量が変化しますので、その変化を調整するために配水池で一時的に貯留しています。

それから大事なのは災害時です。大きな地震で電気が止まったり、皆さんの家の蛇口まで水がお配りできなくなったときに、ここに貯めてある水をお配りします。『災害時給水ステーション』と呼ばれていますが、災害用の水としても蓄えています。

このように、水道の使用量の変化に合わせて、ポンプから送り出す量を調整して、24時間365日皆さんに安定的に供給するのが水道局の使命です」


――水源から給水所までは、どうやって水が届くのですか?

小見山 「練馬給水所については、主に埼玉県三郷市にある三郷浄水場からの供給です。埼玉と千葉の境にあります江戸川から取り入れて、水道水に浄水処理したのち、練馬給水所に送られてきます。また、一部を板橋区にあります三園浄水場で作られた水もポンプを使って、練馬給水所に送られてきます。

この絵で説明しますと、各浄水場は各所に点在していまして、練馬給水所には、三郷と三園の2ヶ所の浄水場から水が来ています。三郷浄水場からは江戸川から取水したものが、一方の三園浄水場については荒川から取水したものがそれぞれ浄水処理されて、送られてきます。ホームページでも確認できますので、ぜひご覧ください」

<東京都水道局ホームページ>
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/map.html

 私たちが何気なく蛇口をひねり使用している水は、どこから来る?
私たちが何気なく蛇口をひねり使用している水は、どこから来る?

小見山 「練馬給水所に送られてくる水の8割が三郷浄水場の水で、その水が江戸川から、ということなのですが、では江戸川の水はどこから来ているかといいますと、江戸川というのは関宿町というところ(現在の野田市)が起点なのですが、本線は利根川で、分派と言いますが、利根川から水が分かれて江戸川に流れてきています。

ちなみに利根川のさらに上流は、矢木沢ダム・奈良俣ダム・藤原ダムなど、利根川水系のダムがありますが、これらは新潟県や福島県との境の群馬県にあります。この場所から水がずっと長い時間をかけて送られてきます。江戸川に流れ込んだ水の一部を三郷浄水場で取水します。

一方で三園浄水場につきましては荒川からの取水ですが、こちらは秩父に滝沢ダムや二瀬ダム、浦山ダムがありますが、これだけでは少ないので、同じように利根川水系ダムから利根川を流れてきた水を、埼玉県行田市にある利根大堰で一度堰き止めまして、その水を武蔵水路という人工の水路で利根川から荒川に渡し、荒川の水と混ざって流れてきたものを取水して三園浄水場に運び入れています。

ちょっと複雑でわかりづらかったかもですね(笑)。簡単に言いますと、基本的にはほぼ“利根川の水”と思っていただいて大丈夫です。東京都の水源の約8割は、利根川・荒川水系のダムの水源を活用しています」
<参考URL>
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/antei/02.html

災害時への備えは、連携したバックアップシステム

――ありがとうございます。今度は非常用のバックアップ体制について教えてください。

小見山 「都内の浄水場や給水所は水道管で繋がれていますので、どこかの浄水場・給水所で何か不具合が発生した場合、お互いが助け合えるようにネットワーク化がされています。練馬給水所で、もし何かがあった場合、または練馬給水所に水を送ってくる三郷、三園浄水場で何か起きた場合など、通常の状態で水をお配りできないようなときは、東村山市にある浄水場や埼玉県朝霞市にあります浄水場から杉並区の上井草給水所を経由して、練馬給水所からお配りさせていただいている皆さんに供給できるような体制を整えており、バックアップできるよう体制を構築されています。

また、大地震などの災害発生時の際は、光が丘公園グラウンド下の配水池に貯めてある水を災害時にお配りする給水拠点『災害時給水ステーション』になっております。大地震が発生した場合、水道・電気の供給が止まったり、ポンプなどが壊れたりして水をお配りできない状態になることも考えられます。その場合は皆さんに取りに来ていただくことになりますが、災害時への備えとして、この青い看板をつけた給水拠点を日ごろから配備しております。

これは練馬区に5箇所あり、練馬給水所のほか、大泉公園、学田公園、はやいち公園とみんなの広場公園となります。実際に震災が起きると水の確保と運搬も大変かと思いますが、この拠点に水をストックして、いざという時に練馬区と協力してお配りできる体制となっています」 
<参考URL>
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shinsai/kyoten.html

 災害時給水ステーションのマーク、いざという時のために覚えておきましょう
災害時給水ステーションのマーク、いざという時のために覚えておきましょう

――なるほど。例えばそこに、地域の自治会の方が取りに行く、という形ですね。

師岡 「はい。定期的に訓練を行っていますので、参加できる機会もあると思います。スーパーなどで水を1リットル買って、自宅まで持って帰るのは結構大変ですよね。災害時用には背中に背負えるような袋のタイプもありますし、なかなか両手で水を持っていくのは大変だと思うので、機会があれば実際に持ってみたり、背負ってみたりしてどちらがより良いかなどを体験しておくのも良いと思います」

――東日本大震災の際は災害救助などで発動されたと思うのですが、最近ではそういった発動の事例はないでしょうか?

師岡 「都内で起きた災害活動では、直近で令和元年10月の台風19号による被害で奥多摩町の水道施設で被害が出まして、給水活動を行いました。また、他県への派遣では、昨年9月に発生した台風15号の被害により、災害支援として給水車を持ち込んで給水活動を実施しました。水道局は水道施設だけでなく給水車という、水を運べるタンク車を持っていますので、静岡派遣では学校や公民館などを給水拠点とし、給水タンクを仮設して、その拠点に水を配って回る活動や、地区ごとに水を車で直接お配りするという活動もしました。

幸い、まだ大災害を経験していませんが、常日頃から意識しておくことが重要と思っています。」

 万一の際、水が出なくなると命に関わる。あらゆる体制で水を届ける準備がされている
万一の際、水が出なくなると命に関わる。あらゆる体制で水を届ける準備がされている

東京の水が美味しくなった理由とは?

――1日の水の使用量を教えてください。

柳澤 「少し前の令和2年度データにはなりますが、東京都だと1日で使われる水の量は約412万立方メートルとなっております。このうち約7割が家庭で使われていて、都市活動、つまりビルや社会活動で使われているのが3割弱、残り1割弱が、工場などで使われています。

412万立方メートルというのは、東京ドームの体積に例えると約3.3杯分です。が、膨大すぎて、ちょっと想像しづらいかなと思います(笑)。とにかく、1日でそれだけ多くの水がたくさんの方々に使われているということになります」

――その話を聞くだけでも、私たち家庭用の水道管と浄水場のものは、規模に違いがありそうですね。

小見山 「皆さまの家庭に敷かれている水道管は、直径13−20ミリと細い水道管になりますが、私ども水道局が扱う送水管では、太いもので直径2700ミリの大口径があります。これらの水道管はほとんど、道路下に埋まっていることが多いです」

 水道局が管理する配水管のうち半分は、すでに耐震継手管※に変更されている
※耐震継手管・・・継手(管と管の接続分)に特殊な構造が施され、災害時でも管同士が外れにくくなっている。
水道局が管理する配水管のうち半分は、すでに耐震継手管※に変更されている
※耐震継手管・・・継手(管と管の接続分)に特殊な構造が施され、災害時でも管同士が外れにくくなっている。

柳澤 「水道局で使用している水道管すべてを1直線上に並べたとすると、約2万7000キロメートルになります。地球の周囲がおよそ4万キロメートルですから、およそ地球を2/3周する計算になります。」

――続いての質問です。味の話をお願いします。

小見山 「昔、私がまだ就職する前の頃は、東京の水は美味しくない、とよく言われていたりしたようですが、今は、浄水場の水処理技術も大きく変わりまして、オゾンと生物活性炭を使い有機物、つまり味の素になる成分を酸化分解し、活性炭で吸着して、パンフレットやホームページにもあるように悪い敵をパンチして砕いてもらい、これを微生物に食べてもらう、という高度浄水処理を利根川水系の浄水場で全量行っていますので、昔に比べれば水質は劇的に改善されています。
<参考URL>
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/kodojosui.html

もう一つ、改善の大きな要因としては、下水処理(技術・施設)の発達もあると思います。水道水の元となる水は川から取水しますので、下水道などの整備により川の水質も改善され、さらに浄水場での処理も発達したことで、味や匂いに関する問い合わせなども改善している状況です。

 私たちが安心・安全に美味しい水が飲めるのも水道局の皆さんのおかげです
私たちが安心・安全に美味しい水が飲めるのも水道局の皆さんのおかげです

ちなみに味そのものは、どこが美味しいとかではなく、最も左右するのが水温です。川から取水していますから、夏は必然的に高めになります。そんな時は冷蔵庫で冷やしてから飲んでいただければ、より美味しく感じられると思います」

大きなスポーツ大会などがあると、水道の使用量が通常と変わる?!

――水道局が行うイベント等の活動について、具体的にどのようなものがありますか?

柳澤 「まず水道局でやっているものの中で一番大きな広報は “水道キャラバン”で、水道の仕組みについて学ぶ小学四年生を対象にした出前授業です。都内ほとんどの小学校で実施していますので、小学生には水道局と言ったら“水道キャラバン”と覚えてもらっており、かなり認知度が高いイベントだと思っています。この“水道キャラバン”は、児童館や自治体でやっている防災イベントなどで大人の皆さん向けにも実施していますので、もし機会があれば、練馬区の皆さんもぜひ参加していただきたいなと思っています。

あとは、区民まつりなど、区でやっている防災訓練ですとか、そういった地域イベントに“水道何でも相談”という形で、水道について知りたいことをご相談に来ていただいたり、場所によってパンフレットやグッズをお配りして水道について興味を持ってもらえるようなイベントも行っています」

 地道な活動により小学生へのキャラバン認知を高めるのも、局の大事な仕事
地道な活動により小学生へのキャラバン認知を高めるのも、局の大事な仕事

小見山 「私どもが主催するイベントについて話ましたが、水道量の変化に密接に関係するのが、実はこのイベントなんです。少し前にサッカーのワールドカップがありましたし、その前にはオリンピックがありました。

普段の生活のリズムは誰しもおおよそ変わらなく、時間差はありますが、夜になれば寝ますし、朝になれば起きます。ただ、何か大きな、例えば世界的なイベントがあると、皆さんが普段と異なる生活リズム、活動に転じ、一斉に同じ行動をすることで、一気に水を使われたり、逆に全く使わなくなったりということが起きます。

この間のサッカー大会の時は、まさに試合の放映中は普段の状況と比較しますと、全く水が使われなくなる。前半戦が終わった瞬間に、皆さんがトイレに駆け込むので今度は逆に凄い勢いで水が使われます。ハーフタイムが終わる頃に、また使用量が下がり、試合が終わると使用量が上がるといった特徴的な水の変化となります。

普段の水の(使用量の)動きは、朝の7〜10時くらいまでのピークと、夜の18〜19時ぐらいがピークと、大体2つの山のグラフが生活リズムとして見られるのですが、こういう特徴的なイベントがあると、突然変化が起こります。特に遅い時間になればなるほど普段は水を使っていないのに水を使うので、変化量が大きくなります。この辺りの情報もホームページに出ていますので、よろしければ御覧ください」
<参考URL>
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/event/

――先ほど、水は循環しているという話がありましたが、やはり生活排水が綺麗ですと、処理の負担が減るのでしょうか?私たちにできることはありますか?

柳澤 「元々の川の水が綺麗であれば、浄水場での大掛かりな処理は不要で、そのまま美味しくて綺麗な水が使えますから、なるべく下水に流すものを綺麗にすることが重要です。例えば油をそのまま流さないですとか、川に物を捨てないなどです。そういうことをしないというのが、皆さんができる一番身近な取り組みだと思います。それが巡り巡って水道に戻って来るのだという点は覚えていただけると嬉しいです」

小見山 「小学生のご案内時にお子さんによく言っていたのは、“地球は自然の浄水場だよ”ということです。地下水って結局、雨が降って浸透して、地層で綺麗にろ過されて、地下水の層に蓄えられたものを汲み上げたり、川に注ぎ込んだりしますからね。ですから、地表が汚れてしまうと、もう入り口の段階から機能しなくなってしまうので、汚しちゃ駄目だよ、ゴミを捨てちゃ駄目だよ、綺麗にしなきゃいけないんだよ、と話しています。とにかく環境を守るというのが、綺麗な水を保つ一番大きな行動だと思います」

 私たちにとって欠かせない水、改めてその当たり前の環境に感謝の気持ちが出ます
私たちにとって欠かせない水、改めてその当たり前の環境に感謝の気持ちが出ます

――最後に、世界で起きている水資源問題について、東京で当てはまる問題と対策について教えてください。

小見山 「気候変動などは、最近世界的にもいろいろと問題が起きていますけれど、東京都でもそういった問題は他人事ではありません。お話しした奥多摩町での災害支援活動ですが、台風の影響で水道管が流れてしまい水が供給できなくなったことが原因です。そういった大きな台風による被害ですとか、逆に雨が長期間降らないことによる渇水などは、今後も起きうることが考えられます。


その中で、東京都水道局としましては、多摩川の上流域に水道水源林という山を管理しています。これは水道局で所有していまして、既に約120年間管理を続けています。この水源林を健全に保つことで、ダムへの土砂の流入を抑制するなど様々な要因を軽減し、末永く安定した水道水を供給できるよう対応していきたいと考えております」

サポーターの取材後記

豆柴
今回の取材は都庁で行われた。事前に光が丘の給水所を訪ねると、特に看板は無く、立ち入り禁止の看板のみ、この地下に大規模な貯水池があることはなかなか想像ができない。先方の説明で、水源から各家庭まで水道事業全般につき理解した。
水は空気と同じ、当たり前なようだが、安心・安全な水を24時間安定供給する。水道事業は大変重要なインフラであり、担当者の日々の活動に頭が下がる。日本の水道事業は世界でも最先端であり、発展途上国への技術指導が大いに期待される。
紹介された多くのサイトを見て、より水道への理解が深まった。水道水源林を散策する見学のツアーもあるとのこと、機会があれば参加したい。
何より節水への協力、また非常時に備え備蓄する、トイレの足元に水道水を2リットルペットボトル3本くらい備えて置いておくなど、限りある水資源、地球そのものが大きな浄水場との言葉を肝に銘じたい。
ミムちゃん
子どもの頃、浄水器が普通に家にありましたが、まさか自分が水を買って飲むとは想像もしませんでした。
今は、人それぞれにこだわって水を飲む人も多くなったように思います。
そんな中、東京の水は、「世界と比べても美味しい」という話は良く聞きます。理由の一つは日本は国土面積が小さいから、インフラ整備が比較的簡単である点に加え、約200種の水質検査を行う技術もあるからとのこと。とても勉強になりました。しかし、やはり最終的には、皆がよく知るとおり、まずは水の大元である川の水を、なるべく汚れない様にするのが重要とのこと。蛇口から美味しい水がいつでも出る、という有難さを、改めて感謝したいと思いました!

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