サポーター体験記
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家庭で眠っているものが太陽光発電の電力になる!「元気力発電所」とは?
- 取材日
- 令和4年11月9日
- 更新日
練馬駅からほど近い練馬弁天通り商店会に、見た目も鮮やかなオレンジ色の看板「元気力発電所」があるのはご存知でしょうか?
その、一見柔らかい雰囲気とは異なり、確固たる意思のもと市民発電所を普及すべく奮闘しています。
団体の代表にお話を伺ってきました。
環境まちづくりNPO元気力発電所
<取材先情報>
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:代表 江原 文子さん / 副理事長 松尾 郁子さん
所在地:練馬区石神井町1-24-6(練馬ステーション/練馬区練馬2-2-20)
電話:03-5393-5944(同上/03-3557-6044)
URL:https://www.npo-genkiryoku.org
地道に活動を続けて、20年!
――NPO発足のきっかけと経緯を教えてください。
江原 「もともと別のNPO法人として活動をスタートしています。練馬も石神井のステーションも、開業・地域の活動としては20年経過していますが、NPO元気力発電所としては8年となります。NPO元気力発電所になってからは、従来「店」と呼んでいた活動拠点を「ステーション」と呼ぶように変更しました。それは物を販売する場所ではなく、地域からの情報を受け取りつつ情報を発信していく場所にするという意味からです。

そもそもの設立のきっかけは、前理事長の新藤がチェルノブイリの原発事故を受けて『原子力発電所をなくしたい、でもただ反対の声をあげるだけではなく、自然エネルギーを利用した市民発電所を設置しよう!』と考えたことです。設立時に私はまだ参加していませんでしたが・・・。
2001年に任意団体として発足し、関町に第1号のリユースショップを開設、それに続いて2002年に練馬、石神井の2拠点が加わりました。
活動が練馬区外にひろがるなかで、2003年にNPOエコメッセが設立されましたが、活動目的は市民発電所の設置だけではなく、幅広い領域となりました。
その後、NPOエコメッセの活動は都内10カ所以上に広がっていきますが、そのなかで運営上の様々な課題が生じていることを感じ、練馬区内で地域に根差してシンプルな目的を掲げて活動しようということで、2014年に新しいNPO元気力発電所が設立されました」
――現在関わっている会員やスタッフについて教えてください。
松尾 「正会員は現在47名です。石神井町に本部と石神井ステーションがあり、ここ練馬に練馬ステーションがあります。会員のうち、日常的に関わっているスタッフは20名弱でしょうか。1つのステーションに7−9名のスタッフがいまして、このほかにスタッフとしては活動をしない理事や監事がいます。それからボランティアのスタッフさんも、現在3名いらっしゃいます。
他に面白いのは、会員でもなくボランティアでもなく、ふらりとお手伝いに来てくださる方もいらっしゃいます(笑)。この団体としての肩書は無いのですが、もともとメーカーに勤務されていらしたようで、電気にとても詳しく、寄付される電気製品などの点検を買ってでてくれています」

――会員になるためにはどうすれば良いのでしょうか?
江原 「入会申込書を書いていただいて、会費をいただければどなたでも会員になれます。ステーションスタッフになるためには会員にならないといけないのですが、必ずしもスタッフになりたいと門戸を叩く方ばかりではなく、『興味があったから』『地域で頑張っているから』『発電に興味があるから』と理由は様々です。スタッフ以外では男性の会員が比較的多いのも特徴かもしれません。大きく看板に“元気力発電所”と書いてありますから、『ここで発電をしているのですか?見せてもらえますか?』というお問い合わせも多いです。実際には、いわゆる発電設備がある発電所ではなく、団体の活動拠点です」
※参考:元気力発電所ウェブサイト(入会のお申し込みや営業日時・活動など)
https://www.npo-genkiryoku.org
自分の「もう使わない」は、誰かの「必要」かもしれない。
――この活動では、市民発電所の設置に経費がかかると思うのですが、資金はどのように集められ、そのうちのどのくらいがリユースの活動によるものなのでしょうか?

江原 「詳しくはサイトの活動計算書を見ていただけるとわかるのですが、活動の収入のほとんどがリユース事業によるものです。この活動はそもそも資金を作るためにリユース事業を行おう!と始めたものですから、それは当初からずっと継続して行っています。イギリスのオックスファムという団体をモデルにしており、リユース品を集めて販売することで地域活動を行う基盤にしています。前の理事長である新藤がイギリスに行った時に触れたのが原点と聞いています。
現金を寄付するのは誰でもなかなか躊躇うところがありますが、使わなくなったものですと気軽に寄付できますからね。現在は社会的にも“モノを大事にしよう”というムーブメントがありますから協力してくださる方は多いです。
他には会費、それからリユースに関わる寄付金、発電所の設置先の団体さんからの会費も大きいですね」
――設置したソーラーパネルで発電された電気はどこで使われるのでしょうか?
松尾 「私たちが設置したものは、その施設で使われます。例えば幼稚園であればその幼稚園が自由に使い、仮に電気が余るような場合は、余剰売電と言って、電力会社に売ることができるのですが、この収入もその施設のものとなります。難しいのは、私たちの活動に共感してくださる方は多くいても、その施設なり建物なりが、必ずしも発電に適してないケースもあるという点です。主に老朽化や賃貸条件の制約などで、設置の条件に合わないこともあります。

それから、広さも重要になります。例えばですが、ごく普通の一戸建てにソーラーパネルを設置すると、発電量はおよそ4kWくらいなのですが、このくらいの発電量がないとなかなか設置工事費用の元がとれないことになります。ただ、年々、工法の工夫やパネルなど機器の性能も向上していますから、活動開始当初の金額では3.22kWだったものが、最近では同じ費用感でおよそ3倍の発電量を実現できるまでになりました。発電機器は意外と長持ちで、私たちも毎月発電量をチェックしているのですが、パネル自体は18年前とほぼ変わらず発電されているんですよ」
――皆さんはやはり、こういった機器や業界事情にはお詳しいのですか?
江原 「それが、全然知らないんです(笑)。ただ、現役時代に太陽光発電に関わっていた方が会員さんの中にいるものですから、設置に際し、業者さんから見積もりが来て『なんとなく全体的に高いな・・・』と感じた時にどこをどうチェックしたらいいかわからないものを、アドバイスしてくださったりなどはあります。
1号機を武蔵大学に設置するときは“市民発電所をつくろう会”という組織を立ち上げて、助成金を申請するにあたり、細かい申請書類作成など頑張ったそうです。書類作成から外部に依頼するケースもあるようですが、自分たちですべての書類に記入し、担当者から『よく自分たちだけで申請書を作りましたね』と褒められたこともあったと聞いています」
活動は身近なところから。まずはステーションを利用してみよう!
――最近では発電の事情も変わってきていると思いますが、私たち区民に身近なものになっているのでしょうか?

江原 「TVCMやインターネットでも話題のJackery(ジャクリ)というポータブル電源が人気ですね。自宅でも蓄電できて、停電や災害時に気軽に利用できる製品です。個人で購入するには若干高いかもしれませんが、一番規模の小さなものですと一式で5万円くらいからで、私たちが取り入れているのはセットで10万円程度の製品です。メーカーのサイトを見ていただけばわかりますが、ポータブル電源の大きさによって、使える電気製品が変わります。小さなポータブル電源ではモーターなどの出力が大きいものは使えません。使用したい電気製品の消費電力を考えて選ぶことが必要です。小さなものでもスマホやパソコンなどの充電には十分使えます。
屋根にソーラーパネルを設置するのは難しいケースも多いのですが、私たちの関連団体は福祉系団体も多いので、非常時への備えとして、こういったミニタイプの需要も増えているんです。「ミニ市民発電所」と呼んでいるのですが、それを寄付する活動も昨年度からはスタートさせました。」
松尾 「この練馬弁天通り商店会にも1セット寄付をして、商店会の中で利用してもらっています。1番日当たりの良い場所に設置させていただき、賛同いただいた各商店さんに、順番に使っていただく活動を、ちょうど今年の9月から始めました」

――最後にリユース事業について教えてください。例えば売れ残ったものとか。。。なんでも引き受けてくれるですか?
江原 「なんでも、ではないです(笑)。食品や本、CDやビデオ、化粧品や大型の電気製品など、寄付いただけないものもあります。ただ練馬のステーションでは“お譲り”と言って、販売ではなく、お譲りする。つまりタダで持っていっていただき、お気持ちのカンパをいただく形で成り立っているものもあります。今は¥200以上のものは値札がついていて、それ以下のものはお譲りとなっています。ですので、売れ残りというのは殆ど無いですね」


――この他にも、毎月11日は『支援の日』として、福島の子供たち・ご家族を一定期間、線量のより低い地域で過ごしていただく活動への寄付を行うなど、精力的に活動されています。大きな団体への寄付でなく、知り合いも多く、直接どのように使われているか目にみえる活動への寄付を推進しているとのこと。
再生可能エネルギーの考え方や政策などは大きな流れのため、必ずしも活動に直接的なプラスにならない面もありますが、身近なところやできるところから信念を持って地道に活動していくことが大切だと語ってくれました。
サポーターの取材後記
- たてみーな
- 今回の取材で一番知りたかったこと、『元気力発電所って何をしているところなの?』が、ようやく理解できました。この「市民発電所」というのは、地域の公共施設や団体などの建物の屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電をしているところなのです。設置費用はこのNPOが用意し、設置先からは会費という形で入金いただくとのことで、なるほどと合点がいきました。しかも、地域の皆さんから、使わなくなったものを寄付していただいた収益が事業資金の多くを占めているということにも驚きます。20年も前からこの活動に取り組んでいると知り、なんと先見の明のある人たちなのか、と敬服します。
多くの人がこの活動のためなら寄付もいとわない。そしてボランティアでもない自由な立場の助っ人がいる。このことの裏には、「地球のために良いことの役に立てばれば」と応援する市井の人々の熱意があると感じます。今後も末永くこの活動が継続されるよう、私も身の回りの使わない物をせっせと探そうと思います(笑)。
- みゅうにゃん
- ご近所の小さな発電所って何だろう?そう思って今回の取材に参加しました。世界経済が大きく変動して、ここ最近の電気代の高騰は各家庭でも頭痛の種です。石油、石炭、天然ガス、原子力、水力発電には及びませんが、「元気力発電所」が行っている活動は、私たちが私たちの出来る範囲で少しずつ電気を作り、世の中を明るくして行く「元気の元」になっていると思いました。自然エネルギーの普及、省エネルギーの推進を目指して、学習会やイベントなども開催しているそうです。この活動が末永く続き練馬区から他の区へそして全国へと広がっていきます様に心から応援します。
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