サポーター体験記
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家族が亡くなった時の力強い味方、ワンストップで手続きができる 「おくやみコーナー」が練馬区にできました

家族が亡くなった時の力強い味方、ワンストップで手続きができる 「おくやみコーナー」が練馬区にできました
区役所本庁舎2Fの廊下の中程に新設されたおくやみコーナー

家族が亡くなった場合、お葬式やお墓、納骨に法事など、
いくつか思い当たるかと思いますが、戸籍の手続きなどについては、
知らない方も一定数はいるかと思います。


残された家族の方が困らないよう、転ばぬ先の杖として、
区に新設された「おくやみコーナー」を取材しました。


今から準備をしておきましょう。

練馬区 区民部 戸籍住民課 窓口サービス担当係

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:係長/石木 良太郎さん、宮澤 茉里愛(まりあ)さん
所在地:練馬区豊玉北6−12−1
電話:03−5984−1273
URL:https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/bamen/shibo.html

まずは『おくやみハンドブック』で、全体像の把握を

 ご担当の石木係長、コーナーやハンドブックについて、ご説明いただきました
ご担当の石木係長、コーナーやハンドブックについて、ご説明いただきました

石木 「身近な方が亡くなられた後、おくやみに関する手続きについて、そもそもどういうものがあるのだろうか?とまず全体像で悩まれる方が多いです。また、法的な手続きの他にも、電気やガス、相続についてなど、本当に複雑で多岐に渡りますので、何から始めれば良いのかわからないという方が非常に多い印象です。


そこで、お手元にある『おくやみハンドブック』の冒頭に、時系列で何をすべきかの整理をしており、全体像を把握いただけるようにしています。その上で、相談に来られた皆さんの生活実態に合わせて、必要なお手続きが何なのかをお話をお伺いしながら特定し、該当の窓口をご案内しています。

 おくやみハンドブック、必要な手続き全般が表組みで一覧化されています
おくやみハンドブック、必要な手続き全般が表組みで一覧化されています
 2−3Pには、備考欄やチェックボックス付きのリストがあり、一つひとつ確認しやすい設計に
2−3Pには、備考欄やチェックボックス付きのリストがあり、一つひとつ確認しやすい設計に

――私が携わっていたNPOでも、よく受ける質問として、“死亡届を見たことないんだけど、どこに行けば手に入るのか?”とか“お医者さんに診断してもらった時に書いてもらうのか?”など、本当にご存知ない方がいっぱいいらっしゃるので、こういう冊子があると理解度が全然違うと思います。
本当に何も知らないでおくやみコーナーに伺った場合、具体的にどんなことをしていただけるのかを教えてください。

 ご担当の宮澤さん、必要な情報を区役所内で共有することで相談者の負担を軽減する
ご担当の宮澤さん、必要な情報を区役所内で共有することで相談者の負担を軽減する

宮澤 「一連の流れをご説明させていただきます。
まず、おくやみコーナーは電話で予約を承っております。その際に亡くなられた方のお名前や、予約の窓口にいらっしゃる方のお名前やご住所など、基本的な情報を伺っております。その情報をもとに、予約日の前までに、私どもの方で各部署と連携し、入っていらっしゃる保険などの情報をチェックリスト化して共有しております。
例えば国民健康保険に関する部分であれば、区役所内の担当係にそのチェックリストを渡して、事前にお亡くなりになった方の情報の確認を行います。最終的にはその担当部署の方で、この方は葬祭費が出る、出ないなどの情報をチェックリストに書き入れてもらい、私どもに返送してもらいます。」


石木 「その上で、当日予約でお越しになったときに、事前にお調べした情報をなるべく簡潔にお伝えします。例えば葬祭費が出ますので、この申請書に名前を書いてください、などという具合に、その場で手続きが完結するようにご案内しています。国民健康保険に加入していますと、葬儀をした場合に7万円の葬祭費が支給されます。こういった情報をきちんと把握されていない方に対して、丁寧にフォローしています」



――区役所内で連携してもらって、煩雑な手続きが1回で済めばこれほどありがたいことはないですよね。予約を受けるときの電話を有効に活用して、情報収集に当たっているということですね。次にこの“おくやみハンドブック”について、こちらを作った時のご苦労や、ぜひここは読んで欲しいなどあれば教えてください。


石木 「現在は、専門の業者に依頼をして、綺麗にデザインしてもらっていますが、実はこの体裁のものが最初に発行されたのが昨年5月頃になります。その前までは私どもが自前で作成・印刷していました。そもそもハンドブックを作るきっかけになったのが、冒頭のお話のように、おくやみ関係で必要となる手続きが一覧化されているものが区役所のどこにも無くて、お客様が大変困っていたことが大きな理由です。


この冊子のいちばんのセールスポイントは、区役所の手続きだけではなく、区役所以外の手続きも含め、比較的長いスパンで必要となる手続きが網羅的にまとめてある点かと思います。他にも、戸籍のこと、例えば、謄本と抄本の違いや、生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍を取りたい、でも、取得の方法がわからないといった方への対応のために、戸籍の基本的な情報なども掲載しています。今後もお客様に有益な情報を随時加えて、内容の充実を図っていきます」



――現代は、昔と違って多様性といいますか、さまざまなケースが出てくるようになりました。例えば結婚も、離婚されてまた再婚して、また離婚するなど、すごく複雑になってきていますもんね。ただ、基本形を押さえておけば、すごくわかりやすいし、いろんなところで安心できます。

 シニア世代にとって身近なことであるからこそ、疑問が多いです
シニア世代にとって身近なことであるからこそ、疑問が多いです

――残されたご家族のために、貴重品マップというものがあると聞いたのですが、教えてください。


石木 「区役所内では貴重品マップ、という名称のものはないのですが、おそらく、ご家族がお亡くなりになった後に、通帳などがどこに置いてあるのかわからなくならないように探せるようにしておく、というものだと思われます。


“終活”という言葉が認知されるようになって久しいですが、自身の貴重品がここにあるよ、という情報を生前に自分で書き記しておいて、万一の際にご遺族に知ってもらうためのノート、いわゆるエンディングノートと呼ばれるものの相談も、まれにおくやみコーナーでお受けしています。
今、特に多いのは“デジタル遺産”と言いまして、例えば株の口座や取引情報、運用サイトのパスワードなどは、スマートフォンなどに全部保存されてしまっていて、後でご遺族が探そうと思っても探せない、見つけてもスマートフォンがロックされて開かない、などのケースはよく耳にします。デジタル遺産が社会問題化している側面もありますので、その点についても、常にアンテナを伸ばしています」

区民のニーズを汲み取り、ワンストップにこだわった窓口が誕生

――今回このおくやみコーナーが設置された一番のきっかけはどのようなものでしょうか?また、運営体制についても教えてください。


石木 「先ほど申し上げたことと重なるかもしれませんが、やはり身近な人がお亡くなりになると、その手続きを何から始めたらいいのかわからないという声が、本当に多かったためです。このような事例が全国的に増えているという背景も相まって、大きなニーズがあるのだなと感じ、一元的に相談や手続きが完結する窓口があった方が便利なのではないか、ということで設置が決まりました。


おくやみコーナー(もしくはそれに準ずるもの)自体は、今ではそれほど珍しいものではなく、23区でもいくつかの区に設置されています。参考にしましたのは豊島区で、実際に見に行ったり話を聞きに行ったりもしました。おくやみコーナーの開設までにはおよそ1年の準備期間を要しましたが、これはワンストップ窓口で実施するために、他の部署との連携・調整を慎重に行ったためです。

 ワンストップ(一度で用事が済むように)にこだわりつつ、1年で窓口を開設
ワンストップ(一度で用事が済むように)にこだわりつつ、1年で窓口を開設

また、運営体制についてですが、窓口サービス担当係の職員4名を中心に、他の部署からの応援職員とともに日々ローテーションで回しています。」


宮澤 「窓口が開設されてからは、おかげさまで多くの方にご利用いただいておりまして、利用者のアンケートのコメントでは、『何をすればいいかわからなかったが教えてもらって助かりました』というような感謝の言葉をいただくことが多い状況で、改めて、本当に多くの要望があるのだと実感しています」

 利用者の声から、窓口の需要を実感しているという宮澤さん
利用者の声から、窓口の需要を実感しているという宮澤さん

――先が見えない不安感は、“わからない”という状況でさらに増幅すると思います。家族が亡くなったその状況は変わらないのですが、せめて、これをすれば少し前に進みますよとか、次にするべき手続きはこれです、という説明をしていただいて、それがわかると、不安感はすごく減ると思うんですね。そういう意味で区民にはすごくいいサービスかなと思います。


――少し具体的に質問します。死亡届に関する手続きはどのように行えば良いのでしょうか?


石木 「お亡くなりになりますと、お医者さんが交付する死亡診断書を死亡届に添付して区の窓口に提出することとなります。死亡届は、区役所に常備してありますので誰でも入手は可能ですが、多くの場合、ご遺族の方が直接記入するのではなく、葬儀屋さんに作成・届出をしていただくことが一般的かと思います。このため、コーナーを利用する方の多くは、葬儀が終わり、一段落した段階で、区役所の手続きは何があるのかな、ということで来られるケースが殆どです。」


 


――おくやみコーナーの利用で、費用がかかるもの/そうでないものはあるのでしょうか?例えば遺産関係の相続の手続きなどが発生する場合もあると思うのですが。

 たまたまNPOで終活関連の業務をしており、おくやみ関連の複雑さも実感するサポーター
たまたまNPOで終活関連の業務をしており、おくやみ関連の複雑さも実感するサポーター

石木 「コーナーの利用は無料ですが、お手続きの中で、戸籍の証明書や住民票が必要だという場合は、その分の手数料がかかることはあります。
相続に関しては、非常に専門的な内容になりますので、ハンドブックの14ページに記載の区民相談窓口をご紹介しています。無料で弁護士などの先生に相談ができます。区内に複数の相談窓口がございますので、お近くの場所でご相談いただければと思います。

おくやみコーナーの見学へ。カーテンで仕切られ、配慮されたスペース

――人が1人亡くなるって本当にすごい手続きの山だなあと、改めて冊子の表を見て思いました。葬儀のことやその後の手続きも、いつか必ず来ることなのに、事前に勉強する事はほとんどないですから、結局、葬儀屋さんの言うがままになってしまうと思います。今後のおくやみコーナーについてはどのようにお考えですか?


石木 「ご遺族の方は、突然のことに動転してしまっている場合もありますから、余裕を持って対応するということは難しいと思います。

 こじんまりとしたスペースだが、利用時はカーテンで仕切られ、周りに配慮される設計
こじんまりとしたスペースだが、利用時はカーテンで仕切られ、周りに配慮される設計

おくやみコーナーは、1回の利用につき最低でも一時間程度は必要となりますので、1日、最大4枠までの受付となっています。今のところ区役所だけの設置ですが、今後の需要の高まりを見据えつつ、増設についても検討してまいります。

 時代の変化や社会のニーズに合わせて、窓口を変化させていきたいと語る
時代の変化や社会のニーズに合わせて、窓口を変化させていきたいと語る

また、おくやみに関するニーズは、庁内の関連部署と共有しながら、引き続き区民の皆さまの声もお聞きし、もっと使いやすく、役立てるコーナーにしていけたらと思っています」

サポーターの取材後記

Mita?
「おくやみハンドブック」にある表のこまごまとした文字を見ていると、亡くなったお一人お一人が様々な制度を支え、また支えられていたのだ、と分かります。人が一人亡くなるというのは大変なことなのだと改めて感じました。
取材の最後に「おくやみコーナー」の相談室を見せていただきました。机を挟んで係の方とご家族の方が向かい合い、話ができるようになっています。仕切られていて安心してお話ができるしつらえです。
ある時に電車の中で目にした「ご家庭にあってはならない、世の中になくてはならない」という葬儀社のキャッチコピーをなぜか覚えています。ご不幸はご家庭にはあって欲しくない出来事ですが、ご不幸を適切に処理しなければ世の中は回っていきません。
ご不幸があった際に、区の戸籍担当の方が「おくやみコーナー」という場所で、ワンストップで各種の処理が済むというのも大きな魅力なのですが、インタビューを通してご家族の方に真摯に向き合ってくださると感じられて温かい気持ちになりました。
トマト
以前は祖父母と一緒に住んでいたり、隣近所とのつきあいが多かったりしたことから、「死」というものがわりと身近な存在でしたが、現在は核家族や単身者世帯の増加、隣近所とのつきあいの減少などから、死というものが、少し遠いものになっている感があります。
でも、自分を含めた身近な人の死は、必ず訪れるものなので、心の準備が必要。まだまだ先と思ったり、早いうちからそうしたものを準備するのは、縁起が悪いと思ったりすることもありますが、こうした「おくやみコーナー」や「おくやみハンドブック」があることを知っているだけでも、いざという時頼りになるので、心の準備になると思いました。

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