サポーター体験記
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「家で最期まで暮らしたい」を支える医療連携チームとは

「家で最期まで暮らしたい」を支える医療連携チームとは
地域医療の連携についてお話しいただいた長濱さん

多かれ少なかれ、人生の晩年には誰しもが自分の最期を考えると思います。
医療が発達した現代では寿命が飛躍的に伸び、さまざまな治療やケアが
可能となっています。しかし、薬や管で繋がれた延命が、必ずしも幸せなもの
とは限りません。
今だからこそ「自分の理想の最期」を考えたい。地域での医療やケアを
連携で支えるチームを取材しました。

医療法人社団 莉生会 メディケアクリニック 石神井公園 / 株式会社 むさしの薬局 三原台店 / 一般社団法人 あかり訪問看護ステーション

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:
医療法人社団 莉生会 メディケアクリニック 石神井公園 統括チーム 統括マネージャー/長濱 秀幸さん
株式会社 むさしの薬局 三原台店 管理薬剤師/齋藤 英男さん
一般社団法人 あかり訪問看護ステーション 代表理事/中江 志穂さん
所在地:練馬区石神井町2−8−21 M J Yビル 2F・3F
電話:03−6913−2278
http://medicareclinic.net/iryoseminar

チームを1つにまとめるために行う、多職種の連携会を主催

――あまり聞かない組織体だと思うのですが、こちらはどのような会なのでしょうか?


長濱(統括マネージャー:以下略) 「医療に関する多職種連携を推進しています。簡単に言えば、この地域の在宅医療に関わっている医療機関や介護事業所などの専門職の方たちを繋げるための会です。なぜ繋げる必要があるのかというと、病院であれば医師や看護師、薬剤師、他にも管理栄養士や理学療法士、そして事務のスタッフなどが一つの組織にまとまって所属していますが、在宅医療の場合は、これらの専門職が別々の組織に所属しています。それが1つのチームとなって、患者さんの在宅療養を支援します。
普段からお互いにスタッフ同士のことを知っているのとそうでないのとでは、対応力に大きな差が出ますし、患者さんご本人やご家族の方から見れば不安になると思いますので、私たちの組織がチーム力を向上させるために、お互いを知る・知ってもらうことを目的に、連携会を行なっているのです」

 日頃からのコミュニケーションの頻度、密度がポイントだという
日頃からのコミュニケーションの頻度、密度がポイントだという

――開催頻度はどのくらいなのでしょうか?


長濱 「コロナ前は月に1度、必ず行なっていました。80名集まることもありますので、庁舎などを借りて開催しています。集まっているのは、在宅医療に関わっている様々な職種の方です。先日開催された会では、医師、歯科医師、薬剤師の方の参加は多かったですね。理学療法士、ケアマネジャー、保険外サービスの人たちも来ていました。前回は久しぶりの集会でしたので、新しいメンバーが20名ぐらい来ていました。
新しい医療機関、介護事業所の方々も情報共有の目的で来られたりしますね」



――理解できました。ところで、もし自分で身の周りのことができなくなってしまった時には、まずどうすればいいのでしょうか?


中江(訪問看護ステーション理事:以下略) 「ケースによると思いますが、おそらくそこまでいく前に、基礎疾患があったり、何らか医療機関に繋がっていらっしゃると思います。ケアマネジャーさんが繋がっているか、介護保険の申請をされているのかなどを、まずは窓口になって総合的に判断やお手伝いしてくださる方に相談するところからになると思います。地域包括支援センターも相談に乗ってくれます。どの方も急に動けなくなるというよりは、基礎疾患が影響していたり、何か外傷などがあって今までの生活がお1人でできなくなるという傾向があるのではないかと思っています。


齋藤(薬剤師:以下略) 「例えば薬局は、結構皆さん利用されていると思います。月に1回ぐらいの通院があって薬局に来局されます。その時にお薬の量や飲み残しが多くなっていたり、お話している時のちょっとした患者さんの様子の変化があったり。他には、例えば家にお財布を忘れてくることが多くなったりとか。その方にご家族がいらっしゃらなくてお一人暮らしだった場合は、家族がいる方と違ってなかなかその変化に気づかれないこともあります。そこで『もしかしたら、この方、ご自宅にお一人暮らしで大丈夫かな?』と感じ取ったら、その患者さんの主治医に報告したりしています。小さな日常の変化も見逃さないように心がけています」



――薬局でそのようなサービスをしてくださるのでしょうか?


齋藤 「はい、行っています。薬局は練馬区内には315箇所あります。薬局はお薬を渡すだけでなく、渡した後が大切だと思います。例えば『この方心配だな』と思った場合は、後でお電話して困りごとを伺ったりもします。患者さんが嫌がらないようでしたら、ご自宅に訪問して家で話すこともあります。ご自宅に行かないとわからないこともとても多いですので。

 薬剤師の齋藤さん、薬剤師ならではの気づきで医師にアドバイスすることも
薬剤師の齋藤さん、薬剤師ならではの気づきで医師にアドバイスすることも

今、お薬は院外処方箋が主で、処方箋を薬局へ持っていくことになっているのですが、行けない患者さんの場合は薬剤師に来てもらいます。薬剤師は主に薬の管理をしますが、決められた用法で薬が飲めていないようなこととかは、自宅に行くとわかります。そんな時はやはり誰かが見ないといけませんし、確認しないといけません。この確認は看護師さんでもヘルパーさんでもいいと思います。


ケースによってはご自宅に薬剤師が登場しない場面もあります。例えば病気で身体は不自由だけど、薬の種類は少なくて、きちんと自分で管理ができている場合です。ただ、このケースの場合でも、お身体の具合は急に変わることもあり、状況に応じて種類も内容も変わることがあり、急遽、自宅に訪問しないといけなくなることもあったりします」



――介護保険の認定がされてないときでも、自宅に訪問をしてもらえるのでしょうか?状態にもよりますよね?


長濱 「訪問診療の一番の基準になるのが、通院できるかできないかです。この判断を医師が行います。例えば、ガンの末期で30歳だとします。早期だと介護保険の対象になりません。その場合、介護保険は関係なく訪問診療にお邪魔することになります。介護保険の認定を受けると様々な公的なサービスを使えるようになり、患者さんの自己負担も下がるため、その対象となる人にはまず介護認定を受けてもらうことになります」

 訪問診療の大きな基準は「通院の可否」、まずはここだけでも理解しておこう
訪問診療の大きな基準は「通院の可否」、まずはここだけでも理解しておこう

――そうなんですね。私は、介護保険の認定のない人は、地域包括支援の対象外なのかなと思っていました。


中江 「少し複雑なのですが、看護に関して言えば、今おっしゃっていました医療保険で入ってくださいと国が定めている事もあれば、介護保険で、という二つのパターンがあります。80代90代で、訪問看護で頻回に伺う必要がない方に関しては、介護保険を申請せずに医療保険だけで訪問看護の方が入ることもあるんです」


長濱 「この部分、複雑ですよね。一般の人は、医療保険を使うのか介護保険を使うのかわからない場合が多いと思います。介護保険でサービスを受けている方であっても、医療保険に切り替わることもあったりします」

介護保険と医療保険、詳細の違いがわからなくても、専門家が判断してくれる

――リハビリの先生にお願いするときに、医療保険で使える場合、3ヶ月か6ヶ月に1回、医師の見直しがあるという
話を聞いたことがあります。詳しく教えてください。



中江 「リハビリと訪問看護については、これまた少し違いまして、それぞれでいろいろ規定が変わってきます。看護に関して言えば、訪問看護が医療保険で入ったから期間が定まっているわけではないです。この点、本当に複雑なんです。介護保険で入っていても単位数が決まっている中で、例えば急に具合が悪くなって、連日訪問しなければいけないけど、要介護1の単位数でヘルパーさんが入っていて、看護師さんも毎日行くのに、もう枠がないような場合、主治医の先生の判断により、2週間だけ医療保険で訪問看護を行う仕組みに切り替えたりなどもあります。その方の状況に応じて、なるべく柔軟に公的保険でサポートできるような仕組みもあります。
その状況で、どうやってバランス良く行うかが難しいところです。医療がまず入る時期なのか、介護保険で落ち着いており週1回ぐらいで支えていくのかなどを、先生や薬剤師さん、ケアマネジャーさん、それからご本人やご家族とも相談して決めていくことが多いです。
とても複雑ですので、契約の時にご説明しても、私たち自身も訪問頻度などに悩むこともあります。ただ、私達や利用者さんご自身が介護保険か医療保険かを選ぶということはできないです。介護保険を申請されている方に関しては、介護保険が優先されます。
その時に、医療保険が優先となる疾病や状況が発生した時には、回数制限なく利用することができます」

 地域医療はチーム戦、多くの関係者が関わって最適な答えを探っている
地域医療はチーム戦、多くの関係者が関わって最適な答えを探っている
 それぞれの立場の違いから、臨機応変に対応していくことが重要とのこと
それぞれの立場の違いから、臨機応変に対応していくことが重要とのこと

――その人の症状が、認知症なのか、ガンや肝臓・腎臓系の疾病なのか、骨折なのか、1人で生活ができる・できないなどの状況で医療保険、介護保険の活用の仕方が分かれているイメージがあって、大きく病気系は医療保険で考えて、それ以外の認知症や怪我は介護保険なのかな、と思っているのですが、合っていますか?


長濱 「在宅医療では介護保険の様々なサービスを活用することが多いです。そのため、まずは介護認定の申請を行い、認定された介護度により、その割り振りは決めていきます。その判断は専門職の方から話があると思いますので、皆さんがあまり気にされる必要はないかと思います。ただ、訪問診療に入る医師の専門性、知識、経験によりその判断は変わってきますので、その判断を任せられる訪問医を普段から見つけておくことは大切なことかと思います」

連携支援が深くなればなるほど、できることが増えていく

――私たち一般人には、お医者さんにいろいろな専門性があるなどは、わからないと思います。
歳をとったらかかりつけ医や主治医を持ちなさいなど言われますが、そもそもそれをどうやって見つけたらいいのかすらわかりません。


長濱 「かかりつけ医や主治医の存在は、すごく重要です。医師には専門性があり、ご自身の症状、状態、相性によって自分のかかりつけ医を決めることをお勧めします。患者さんによっては、会話のやり取りを大切にされる方、医療判断を大切にされる方など、その選び方は様々ですが、バランスが大切かと思います。普段からそのあたりを意識して受診されるのが良いかと思います。また、症状による主治医の選択は、かかりつけ医にご相談し、連携している医師を紹介してもらうのが一番良いかと思います」

 情報の共有方法そのものの進化・変化も吸収し、連携のレベルをあげていく
情報の共有方法そのものの進化・変化も吸収し、連携のレベルをあげていく

齋藤 「私も20年、薬剤師をやっており、薬のことに当然責任を持って行いますが、在宅医療になってくると、ただ薬を届けるだけではあまり意味がありません。『連携』という言葉を使いますが、大切なのはその薬を使用して起こった出来事や情報を医師や訪問看護師や、その患者さんを支える多職種にきちんと伝えることです。
例えば、ある薬を飲むと便秘をしてしまう患者さんがいた場合、それは飲んですぐなのか、いつからなのか、などを伝え連携することで、ケア全体の精度が上がります。これはもう薬剤師以外でも言えることで、ヘルパーさんでも毎日、何らかの連絡をくれますとすごく助かります。
薬を調剤して渡すだけではない、プラスアルファの仕事を心がけるようにしています。


実はここ5年ぐらいで、こういった情報共有の仕方もすごく変化しています。MCS※というシステムの勉強会、情報共有の仕方なども、連携会では行っています。どう共有するかによって、従来の、病院の中の診療ではできなかったことが可能になります。一番の特徴はやはり生活面を見る点です。これが訪問支援の一つの大きな特徴であり、そこをどう正確に共有するかがポイントです。先生には言えないけど、ヘルパーさんには話せる、といったケースや、能力や役割に関わらず、言いやすい人や立場もあるわけです」
※MCS…メディカルケアステーション。全国の医療・介護の現場で利用される、連携のためのコミュニケーションツール。


長濱 「訪問診療では、本人の希望が尊重されることが多く、医療的にN Gのことでも対応する場合があります。ある患者さんが最後にステーキを食べたい、でも歯がない。どうするかといえば、簡易的な入れ歯を作ってあげて1本だけうまく引っ掛けて、本当のステーキではないけれど、ステーキの味がするもの(例えばソフト食と呼ばれるもの)を組み合わせで食べてもらって、ステーキを食べた気持ちになってもらうことも可能です。
チーム力が強化されることにより、その繋がりがどんどん強くなって、それでできることって、実はすごく深みが増えることで、病院ではなかなか難しいことに対応できるのです」



――そういうふうに、在宅で、最後までチームに関わってもらえるのはすごく理想なんですけど、そのためには何が大事なのでしょうか?その人の性格や家族関係や、病気の種類とかで、『こういう場合は在宅で最期を迎えることはできません』ということはあるのでしょうか?

 「在宅医療でできること」の研修などは、定期的に開催されるそう
「在宅医療でできること」の研修などは、定期的に開催されるそう

中江 「どの病気だから、家で最期まで過ごせない、ということはないと思います。それよりも “それを叶えてあげたい”と思っているご家族、医療者、介護者のチームであるかが大切です。チームの中に、これは無理です!という人がいたら、その方の願いは叶えられません。そのチームメンバーは、家族や専門職種だけではなく、近所の顔見知りでもいいのです。みんなでどんな形でどうしていったらいいかを対話をしながら、チームで同じ方向を向いているのが理想です。方法や手段は常に変えていかなければ支えていけないことが多いです。
ですからそれを話し合えるチームに育っていけるかどうかが大事です」


――今回の取材にご協力いただいた「地域医療のプロ」の皆さんはごく一部ですが、それぞれの立場からのご意見は大変参考になるものでした。訪問看護を含めた地域医療の中身・仕組みには、ぜひ敏感になっておきたいと思います。
それは単にお金や手間の問題ではなく、自分らしい最期を迎えるための選択肢の一つとなるのですから。

サポーターの取材後記

みゅうにゃん
最期の時を迎える場所は何処なのか?病院や施設ではなく、出来れば住み慣れた自宅で穏やかにその時を迎えたいと考える人が多いそうです。
お話を伺って、自分の思った最期を迎える為には、沢山の周りの方々の援助が必要なことが良くわかりました。その時が自分にとって理想のものである為には、どんな医療をどんな介護を受けたいのか?きちんと調べ理解し整理してベースとなる人脈を確保しておくことが大切だと痛感しました。
また、練馬区で地域医療を、医師、看護師、薬剤師、歯科医師、ケアマネジャーなどが迅速に連絡を取り合い、医療・看護・介護が必要な人に届く様々な連携がすでに構築されていることは本当にありがたいことです。
それぞれの立場でご活躍されている方々に感謝です!
たてみーな
私は伯母を101歳で病院で看取った経験から、自分は家で最期まで暮らしたいと願っています。最期の死の瞬間までは生きているのだから、死んだように生きていたくないと。今回お話を伺って、病院に行けば、あと数日、数か月、数年、長く生きられるかもしれない。でもそれはベッドの上で、全生活を管理されて生きること。最期まで好きなように生きる自由を選ぶことは自分にしかできない、ということを痛感しました。
また、「孤独死が必ずしも不幸とは言えない」という考え方もあると聞き、心が解放される思いがしました。他人から見て不幸でも本人が満足していたならそれで良いのだと思うことができました。そして、こんなにいろいろな種類の訪問医療があることを知り、驚き、感動しました。一番大切なことは、自分がしっかり、「家で最期まで暮らしたいのだ」という意志を持つことだとわかりました。いざとなると家族や周りに遠慮することになるかもしれません。どこまでそのための準備をしておけるか、「介護は情報戦!」ということがわかったことは大収穫です。元気なうちから在宅医療情報にアンテナを張り、講演会や勉強会に足を運ぼうと思います。

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