サポーター体験記
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生まれ変わった清掃工場!見た目だけでなく、中身も超近代的に!
- 取材日
- 令和4年6月21日
- 更新日
私たちの生活と切っても切れない関係にある、ごみ。
練馬区には清掃工場が2つもあるのはご存知でしたでしょうか?
今回は、2021年の3月に竣工したばかりの光が丘清掃工場に取材に行きました。
最新の設備や環境に配慮された工場を紹介します。
光が丘清掃工場
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:技術係長/木俣 正吾さん
所在地:練馬区光が丘5−3−1
電話:03−5967−1356
URL:https://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/kojo/hikari/index.html
ごみ処理だけでなく、発電から売電まで!
――こちらの清掃工場で、以前の古い工場と、今、建て直して新しい工場との違いはどんなところですか?
木俣 「“公害防止処理設備”の要件が、その時代によって変わり、最新のものを導入しますので、その点が異なります。他には、建物の高さが今まで40.7m でしたが、今は27m以下にし、地域に住んでいる皆さんや環境との調和を考慮し圧迫感を抑えています。旧工場の建物の外壁は “白亜の殿堂”と言い、真っ白な建物でした。新工場は大地をイメージした土気色の優しいアースカラーにしました。
一方で変わらない点もあります。ご覧のように施設の周りには桜の木がありますが、これは地域の方から『どうしても残してほしい』というご要望がありましたので残しました。あとは練馬区のコンセプトに合わせて“緑豊かな工場”とし、敷地内の緑化はもちろん、建物に壁面緑化、それから煙突にも緑化を施しています」


――自宅でもリフォームをすれば、その時の最新の設備が入りますものね。納得です。あとこれは反省も含みなのですが、家庭ごみは出してしまうと、その瞬間に関心が薄れてしまいます。私たちは終わりでも、清掃工場の皆さんからすればスタートだと思います。昨今、環境問題や持続可能性、SDGsなどが取り上げられるようになり、ごみに対しても世の中の見方が変わってきていると思いますが、収集されている皆さんの感覚に変化はあるのでしょうか?
木俣 「まず、収集と中間処理は別の事業ですので(収集は区の事業)、収集に関してはお答えすることができません。私どもの事業は中間処理、つまり“ごみを燃やすこと”のみです。燃やした後に残る灰の最終処分は、東京二十三区清掃一部事務組合と23区から東京都に委託しています。ですので、他の自治体では「収集と運搬」・「中間処理」・「最終処分」が一つのものであるケースも多いのですが、23区にある清掃工場はこのうちの中間処理に特化しています。
例えば、プラスチックは、少し前までは燃えないごみでしたよね?プラスチックのサーマルリサイクルによる施策の変更で資源化できない廃プラスチックは燃えるごみに分別が変更され、それに加えて今は『これくらいは燃えるだろう』と、それぞれのご家庭の判断で出されていますから、燃えるごみとしては不適物が入ってしまっているケースが多いと聞いています」
※サーマルリサイクル:廃棄物を燃やすときに出る熱(熱エネルギー)を、回収して利用するリサイクル方法のこと
――こちらも守ろうとは思っているのですが、どちらに入れていいか迷う時が多いです。
木俣 「それには他の理由もあると思います。東京23区が同一の基準ではないのです。例えばパンなどの商品パッケージの袋がありますよね?練馬区は“容器包装リサイクルによる資源回収”を実施していますので、練馬では資源ごみになりますが、実施していない区では“燃えるごみ”になります。
そうなりますと、区民の方が他の区へ引っ越しされると戸惑いますよね。私どもの立場だけで言えば、23区で今以上にリサイクルを推進してくれるとごみの減量が進んでありがたいのですが、現実的には、各区によって施策も違います。どこまで資源化するかは、各区がそれぞれの状況に応じて自主的に判断している状況です」
――東京二十三区清掃一部事業組合という名刺の名称を見て、東京二十三区はよく“特別区”などのように言われますので、ごみ処理に関しても、何か違った特別なルールが適用されているのだろうな、とは思っていましたが、そのような事情があるとは全く存じませんでした。
木俣 「以前は東京都の清掃局が「収集と運搬」・「中間処理」・「最終処分」をやっていたのですが、自治権拡充の一環で、清掃事業は23区で担当することになりました。しかし、区でやろう!となっても、清掃工場がない区が6つあります。その区が出したごみはどう処理すればよいか議論になりました。
そこで、23区で共同処理することになり、東京二十三区清掃一部事務組合が特別地方公共団体として誕生したのです。平たく言いますと、清掃工場で行う「中間処理」を現在、私どもで行っています」
――環境に対する影響の測定の仕方や測定値がどのように変化したか、また、歴史や技術の革新によって進化した点などを教えてください。
木俣 「それがかなり専門的な話になりますので、全て説明するのは難しいです。例えば電気集じん機からろ過式集じん器に変わったりして、技術・設備的には大幅に進化しています。
今煙突から出ているのは、主に水蒸気です。白煙防止設備もあります。

また、煙突の高さも周辺の状況によって違いがあります。例えば豊島区にある豊島清掃工場ですが、あの煙突が23区内で一番高くて210m、一番低いのが大田区にある大田第一工場の煙突は41mです。大田清掃工場の場合は羽田飛行場があるからです。ちなみに光が丘清掃工場の煙突は150mで、ここから2kmほど離れている練馬は100mの高さです」
――なるほど。ありがとうございます。では別の質問を。そもそもこの施設の動力源などについて教えてください。
木俣 「動力は電気ですが、この施設は発電所でもあります。
ごみを燃やすと熱が出ます。この熱を回収して、ボイラーで水を沸騰させ蒸気にし、その蒸気を蒸気タービン発電機に送って発電をしています。
ここの発電最大出力が9150kW です。2炉稼働時は1時間当たり7000kWh程度を常に発電しています。この施設で使う分がおよそ2000kWhですから、残りの5000kwhは全て売電しています。この収入がありますと、区が使おうとしていた税金や予算がこの施設ではなく、教育や福祉など他に回せますよね。この点が施設の最大の利点の一つです。
まとめますと、動力は電気なのですが、動力はほとんど買っていません。自前で賄っています。

また、安定稼働するために定期的に点検や補修工事(オーバーホール)も行っています。これをやらないと、設備点検や予防保全ができません。万一重大な故障が起こったときに、ごみが燃やせなくなります。するとごみが受け入れられなくなり、燃やせないので先程の売電収入も無くなります。ですから、点検や補修工事はとても重要です。
その中で、2炉停止する期間もあります。通常の考え方であれば、片方の焼却炉を止めている間、片方を動かすなどでリスクを最小限にしているのですが、どうしても共通の機械がありますので。
そこを整備するのに約2週間、契約した電気事業者から電気を買っています。それ以外はずっと発電して、ずっと売電しています」
――昔の工場に比べるとすごい効率の良さですね。先程のオーバーホールやその他の定期点検以外には、基本的に24時間稼働しているのですね!
木俣 「そうです。ちゃんと整備すれば、故障で止まることも少ないですが、不適物、入れてはいけないごみが入って施設が止まるとします。そうすると、このトラブルを解消する時には焼却炉を止めることもあります。売電収入もありません。 それに加えて、1回焼却炉を止めてまた立ち上げるのに、数百万円単位でガス代や電気代がかかるのです。ですから私達は、焼却炉をいかに止めないか、事故やトラブルを未然に防ぐか、ということに注力しています。
日々の点検もしていますから、少しでも不具合が出たら、整備係が動きます。点検を行なって、その結果、例えば水漏れや油漏れがあれば、修理を行います。それで極力止めないように焼却炉を稼働させ、それでも傷んできたり修理が必要なものを、オーバーホールで専門のメーカーが直すということをしています」
万一の災害時でもしっかりと対応、生活に欠かせない頼れる存在
――先日、石川県の方で地震があって気になったのですが、万一地震が起きた場合には、どのようになっていますか?
木俣 「この建物はかなり頑丈にできていますので、震度5・6では揺れは小さいと思います。例えば皆さんが外で『結構大きな地震だな!』と感じられても、後で見学しますが中央制御室では揺れを小さく感じると思います。ただ、情報は入りますので、ルールとして東京23区でのどこか1区でも震度4の地震が発生しましたら、場内点検をする取り決めになっています。それから250ガル(Gal=地震の揺れの強さを表すために用いる加速度の単位)を感知しますと、焼却炉は自動的に非常停止に入ります。ただ、私がこの清掃工場に来てからは、1回も非常停止は起きていません。
万が一、とても大きな地震が起こっても安全に止める手順・体制は組んでいます」
――頼もしいですね。そうなると、万一この光が丘エリアで大きな地震があった際に避難場所などに使えるようなことはないのでしょうか?
木俣 「基本的には、避難される方は受け入れられません。その理由は、ここが東京都やその他と協定を結んでいまして、防災の活動拠点になっているためです。非常時の際には自衛隊や消防、警察等にこの場所を貸しますよという協定を結んでいます。また光が丘清掃工場ではBCP(事業継続計画)も定めています。災害発生時にも、ごみや災害廃棄物が出ますよね。ここはインフラ設備なので、その時はそれを処理して生活の復旧に努めるという使命があります。まずそれが優先されます」
――こちらの施設の排熱とか排水は、全て内部で処理をしているのでしょうか?
木俣 「そうですね。ここには汚水処理設備がありまして、工場内からの排水は、ここで下水道として定める水質の基準値以下になったら、初めて下水道に放流することができます。だから例えば雨が降りますよね?私どもはこの水でさえそのまま下水道に流せません。工場内の汚れた雨水は汚水処理をきちんと行わなければならないからです」

――こちらには、どのくらいの地域から清掃車がやってくるのですか?
木俣 「まず入ってくる区ですが、当然、練馬区がメインです。他には板橋・中野・新宿区などからも来ますね。これらは搬入計画があります。このうちいくつかの区は清掃工場がありませんので、ここで少し受け入れているのですが、この工場がオーバーホールなどの場合は受けられませんので、その時は練馬清掃工場や杉並清掃工場等に行きます。23区全体で言うと、千代田・新宿・文京・台東・中野・荒川の6つの区には清掃工場がありませんから、その意味でも練馬区にある清掃工場の責任は重大なのです。もう、なんとしてでも練馬の2つの工場は止めずに、練馬区のごみはもちろん、近隣他区のごみも処理すると。それぐらいの気概でやらないといけないと思っています」
――職員の皆さんは何人くらいで稼働していらっしゃるのでしょうか?
木俣 「61名です。運転係が1班6人で4班ですから24名、整備係が13名、私の所属する技術係、これは搬入の受付やその他を担当するのですが、これが20名です。あとは管理係が3名、工場長の合計で、総勢61名です」
インタビュー後は工場見学へ!
――すごく近代化されていて、電気も発電する、というところでちらっと思ったのですが、あらゆることが計画されていても、例えば福島の原発事故みたいな突発的な事故が起こる可能性は、やっぱりゼロではないとは思います。比べるものではないかもしれませんが、先の事故を見て、お感じになる部分はありますか?
木俣 「そうですね。私たちはインフラ設備ですから、普通に滞りなく処理を続けるのが当たり前なんですね。これが滞ると『何をやっているんだ?』って必ず言われますからね。
現実的に、本当に想定外の事態が起きた場合でも廃棄物の処理は、絶対に滞らせてはなりません。東日本大震災を例にすると災害廃棄物がいっぱい出たのですが、あの時は23区の清掃工場でもごみを受け入れていました」
――最後に改めて工場の建設費や建設期間を教えてください。
木俣 「建設費は約350億円です。建設期間は長かったですよ。7−8年はかかりました。今建てている目黒清掃工場は7−8年、江戸川清掃工場も9年くらいです。建設するときには、必ず環境アセスメントをやらなければいけません。元の建物を解体する時、建てる途中、建てた後に環境への影響を東京都に報告しないといけないのです。私たちも去年の3月に建てたばかりですから、その報告も継続中です。おかげさまで今のところこれらのデータは全く問題ありません」
――工場の見学スタート!




サポーターの取材後記
- 豆柴
- 資源リサイクルセンターに続き、今回は新築の清掃工場取材、大いに参考になった。
光が丘駅より徒歩5分、緑に囲まれた敷地内に見上げる巨大煙突に圧倒される。木俣係長のご説明はユーモアたっぷり、分かり易く、多く訪れる小学生の社会科見学でも大人気になること間違いない。工場内は騒音無し、におい無し、まるで研究所である。
帰途、周囲を歩いてみた。外部に向け稼働状況、各種測定値が時々刻々と表示されており、地元の方も安心して受け入れているのであろう。
ただ、ごみの受け入れルールが、区により異なっているとのこと、早期のルールの共通化が喫緊の課題である。清掃工場の無い区が6区、他方、練馬区には2つあるのは、どんな理由があるのだろうか?
いずれにしろ、ごみの処理は私たちの日常生活で大きな課題、常に分別、ごみ減らしを心がけなければならない、何がなんでも練馬区のごみは受け入れる、工場は止めないとの木俣氏の言葉が心に染みた。
- Mita?
- 私は分別したごみは決められた曜日に地域のごみ集積場に出し、それで終わり!という行動パターンを取っていました。今回の取材はごみの清掃工場です。清掃工場では私が終わり!と思って出した、地域のごみ集積所から収集車がごみを収集するところから仕事が始まります。
工場は地下1階・地上4階と以前の建物より高さを抑えて、アースカラーの落ち着いた色合いに生まれ変わっていました。近隣住民の要望通りに桜並木を残し、樹木や草花に囲まれ、かなり圧迫感が減っています。
ルーフテラスにはハーブ系のグリーンが植えられ、触ると良い香りがしていました。清掃工場というと臭いが気になるものです。以前は真夏には風向きのためかごみの臭いを感じることもありました。新工場は、どこも清潔・ピカピカで訪問日は暑い日でしたが臭いを感じることはありませんでした。
無駄を出さない取組として、ごみは焼却し灰にすることにより、容量は1/20に減り、埋立処分量の削減につながります。
焼却灰を民間のセメント工場に運び材料の一つである粘土の代替原料として使用したり、民間の施設で溶解処理をした後、ゆっくりと冷却(徐冷)させ、石状のスラグを作り道路工事の材料として使用するなどに取り組んでいます。
実際に工場に行ってみて感じたことは、敷地に緑が多く、ゆったりと空間を取った建物の配置がなされてたことと、清掃工場だからきれいなのかと思うくらい清潔感にあふれていました点です。見学の際も移動の際もほとんど人とすれ違うことがなく、焼却の工程は機械化されているので人がいないのは当然ですが、中央制御室にも数人のみで本当に人が少ないと感じました。ごみについて改めて考えることのできた、楽しい工場見学でした。
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