サポーター体験記
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5つのRがコンセプト「使い方はなんでもあり!」 石神井に誕生した「シェアキッチン」の魅力とは

5つのRがコンセプト「使い方はなんでもあり!」 石神井に誕生した「シェアキッチン」の魅力とは
お話を伺った合同会社シェアリアル代表の谷口さん、37歳の若き実業家

通りかかって中を覗くと、ずっと工事中のような、いつも違うお店のような
不思議な空間がありました。そこは「シェアキッチン」と呼ばれる、
厨房設備や什器、内装はそのままに、出店者だけが入れ替わるという新しい形態のお店。
シニア世代には馴染みが薄いかもしれない「シェア」という概念と、その運営者の谷口さんを訪ねてきました。

シェアキッチン R SPACE

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:合同会社シェアリアル/谷口 裕紀さん、Rumah Ayu(ルマアユ)/西 由佳子さん
所在地:練馬区石神井台3丁目20-9-103
電話:070-1409-5305
URL:https://rrrrre.space

シェア…と名のつくものが仕事のベース。アーーーーールが伸びている理由

――まず、谷口さんがなさっている会社や組織について教えてください。


谷口 「私の会社は、『合同会社シェアリアル』と言います。
シェアハウスやシェアキッチン、シェアオフィスなど、シェアという言葉がつくお仕事をメインでやらせていただいています。規模はまだ小さくて、シェアハウスが三鷹・目黒・目白など都内に、他には、神奈川県内と静岡の下田にもありますので、全部で6物件を管理しています。シェアオフィスはこの部屋のちょうど斜め上にあります。この他に、賃貸も1つ運営しています。
シェアキッチンは初めての業態だったので、この場所のみの運営です。
運営組織と活動内容ですが、ここの名称が『R SPACE(アールスペース)』(以下R)で、“R”はブランド名と考えてください。


“R”は『アーーーーール』と表現しています。伸ばしている『-』が5つなのには理由があり、“R”を意味するポイントが5つある、ということです。少し前までは“3つのR”といって、リデュース・リユース・リサイクル※でしたが、そこにリフューズ(refuse)とリペア(repair)が加わって5つのRです。リフューズというのは、“拒否する”ということです。例えばプラスチックバッグやビニール袋をもらわないなどがそうですね。もう一つのリペアは“修理”です。修理して長く使いましょうということです。この5つのRをコンセプトとして掲げています。
※…リデュースは製品を作るときに使う資源の量や廃棄物の発生を抑えることで、リユースは使用済みの製品やその部品を繰り返して使用すること。リサイクルは廃棄物等を別の原材料やエネルギー源として有効活用することを指します。

 5つのR、今後の世の中のキーワードとして覚えておいて損はないかもしれませんね!
5つのR、今後の世の中のキーワードとして覚えておいて損はないかもしれませんね!

ここはシェアキッチン・シェアスペースなので“R SPACE”という名前にしており、上はシェアオフィスですから“R OFFICE(アールオフィス)”と呼んでいます。
このマンションの全ての部屋に全部Rがついている訳ではなく、普通に賃貸でお住まいになられている方もいらっしゃいます。弊社とRのコンセプトを作ってくれた深津さんとの共同事業で空室対策をやらせていただいていますので、そのブランドを作りました。
整理すると、『R』はブランド名で、私どもは『シェアリアル』という会社。コンセプトを作ってくれた深津さんは、『ノウ株式会社』という別の会社の代表で、シェアリアルとノウの共同事業としてここを運営しているのです」

ノウ株式会社、深津さんとの出会いで「街の共用スペース」を作る!

――ノウ株式会社にも触れた方が良さそうですね。差し支えなければ、こちらも教えてください。


谷口 「はい。今ちょうど、鉄道会社さんが石神井公園の高架下をいろいろ活用しようとしています。マルシェとかやっているのもその一環ですね。いま石神井公園から大泉学園の間の高架下って、ほとんど活用されていないんですよ。そこで、詳細は省きますが、高架下に総合施設を作ろうかとかいろいろと検討されているようです。そのワークグループに深津さんが入られて、いま“PLAY!高架下”というイベントを運営しています。もともと深津さんの会社のコンセプトや事業内容は、“生活に関わること全部”を掲げてらっしゃいますので、深津さんにとっては地域に住む方の生活に関わることならばと、二つ返事で繋がることができました。


石神井で運営することになったきっかけは、元々シェアリアルが運営している目白のシェアハウスのオーナーさんがこの物件も所有する法人だったんですよ。おかげさまで目白のシェアハウスがうまくいきましたので、この石神井の空室もシェアハウス化することで、さらに有効活用できないかとご相談をいただいたのがきっかけです。
ただ、シェアハウスだとちょっと厳しいかもしれないなと思いました。というのも、電気の総使用量は足りなさそうですし、エアコンを付けられない部屋もありそうで、駅からもやや遠い立地。総合的に考えると、ここはシェアハウスにできたとしても、お客さんを見つけるのが大変だろうと判断しました。ただ、せっかくお話をいただいたオーナーさんに申し訳なかったので、こういうシェアキッチンとかシェアオフィスを作ってみたらどうでしょうか?と提案したんです。地域に開かれた、いわば『街の共用スペース』を作るのはどうでしょうかと。街のいろいろな人がここに来て、自分たちの使いたいように使える場所があったら、住む人はすぐには増えないかもしれないけど、交流人口が増えて、ここにこういう建物があるんだ、じゃあ住んでみようかな?と思う人も増えるかもしれない。ゆくゆくはこういった施設が併設された物件の人気が上がると、家賃も少し上げられるかもしれませんねとご提案しました」

ほぼ自前で作り替え。天井が窓枠に、ドアがテーブルに変身?!

――このマンション自体は何年ぐらい経っている物件ですか?


谷口 「もう30数年は経ちますね。ギリギリ昭和の時代ですが、この部屋も普通にご家庭のシステムキッチンがついているなど、近代的な設備で使えるものはそのまま上手く活用してリノベーションしました。例えば向こうに白い壁があるじゃないですか。今は映像などを投影できるスクリーンになっていますが、実は元からある内装の壁紙です。コンクリートに断熱材のウレタンフォームが吹き付けられていて、そこに石膏ボードが貼られ壁紙があったのですが、全部手作業で剥がしました。
テーブルを見てください。よく見るとこれ、ドアなんですよ。取手がありますでしょ?このキッチンカウンターの天板も、元は床板に使われていたものです。この場所は、ほとんど新しい材料は使わずに作っていますね」

 コンクリートの壁にあつらえられた白壁、以前の内装をそのまま残しています
コンクリートの壁にあつらえられた白壁、以前の内装をそのまま残しています
 打ち合わせ中の机の天板をよく見ると、ガラスの下に取っ手が!!ドアですね
打ち合わせ中の机の天板をよく見ると、ガラスの下に取っ手が!!ドアですね
 このカウンターを支える角材も廃材を利用!まさに、リユースですね
このカウンターを支える角材も廃材を利用!まさに、リユースですね

――どうしてわざわざ、自分たちで剥がすなど、手間がかかることをしたのですか?


谷口 「まず空間をなるべく広く見せたいというのはありました。元は全部白い壁だったんですよ。でも大変でしたね。ちょうど工事の時期が7月くらいでしたので、めちゃくちゃ暑かったです。建築家さん曰く、デザインの基本は無いところに足していく“足し算”なのだそうですが、今回は元々の物件の内装から何をどう省いていくのかという“引き算”だと。もう1つ、畑で収穫した野菜でご飯のおかずを作るのと同じで、とりあえず解体して出てきた材料を活用して別の物を作るので、非常に不確定要素が多くて難しかった、とはおっしゃっていましたね。
あと、私が一番好きなパーツがこちら(出入り口)です。実は天井裏に入っていた材料をここに持ってきて、建具屋さんにわざわざガラスをはめてもらったんですよ。枠をここの辺の材木から選んでいただいて。『建具屋さん、この中からこれ(出入り口)を作れそうなものを選んで持って帰ってください』と話すと、流石にちょっと怒られました(笑) 建具って、一番いい素材を使うので、本来はこういう節などがあっては駄目なのだそうです。なぜかというと、特に木の建具は湿気を吸いますので、反ったり曲がったりの影響が一番出てはいけない場所の一つなのです。湿気で寸法にわずかな誤差が出ると、閉まらなくなりますからね。だから『そんなことは普通、絶対にしませんよ』って怒られながら、でもやってくださいとお願いしました。ちなみに材料は至って普通のものです。こういう普通のマンションを建てるときに使うものですから、そこまでいいものではないのですが、その中でも程度がいいものを選んでいただき、表面を削ったりしてもらいながら4枚作ってもらいました」


 


――面白い発想ですね。アイデアはどこからくるものなのでしょうか?


谷口 「リノベーションやシェアハウスは、どちらかといえば、対象物件の基礎を活かしたり、元の内装をうまく使うことが多いので、もともと得意分野でした。むしろ今まで、そういう点に注力して仕事をしてきた感じですね。逆にいえば、建具屋さんにとっての常識は私たちの常識ではありませんから、とりあえず『こんなことをしたいのですが、なんとかなりませんか?』みたいに、ちょっと無理を言ってしまう感はありましたね。設計は全くできませんが、こういうコンセプトでやりたいんですとお話をした上で、設計士さんにプランを作っていただいた感じです。その結果、本当に今このままの見た目のプランを作ってくださって、おお!めっちゃいいじゃん!って話になりましたね。

 これがその、建具屋さん泣かせの出入り口です R SPACEに行って、ぜひ見てみてください
これがその、建具屋さん泣かせの出入り口です R SPACEに行って、ぜひ見てみてください

この場所は飲食店としての使用がメインですが、それだけにこだわっていなくて、例えば『絵本の読み聞かせをやりたい』ですとか、ついこの間の5月末までは、鍼灸師さんがここで治療もされていました。ホームパーティーや友達とのパーティー目的での一時貸しもしていますので、中を壊したりなど、想定外の使い方さえしなければ、自由に活用していただけます。今も地元のアーティストが作品の展示をされていたり、ウクレレ教室なども開催されています」

使い方はあなた次第、リスクを冒さないチャレンジを応援したい

――私はよくこの前を通りかかるのですが、いつもここは何なのかな?って思いながら見ていました。外観からの印象では、例えば完全にベジタリアンの人が利用するお店とか、何かこうマニア向けというか、一般の人向けじゃないようなスペースだな、という印象は持っていました。


谷口 「なるほど!確かにそう見えたかもしれないですね(笑) 道を通る人によく言われたのは、『ここは何の店ですか?』という質問と、『ここはいつ完成するんですか?』という質問ですね。いやいや、これで完成してるんです。こういう仕上がりなんですって説明することはよくありました。


でも、いま出店してくださっているお店のジャンルも本当に様々で、イタリアンの方もいれば、薬膳のスープとお弁当をされている方、アジフライの専門店をされている方もいれば、韓国料理も。そこにチラシが置いてありますが、裏側にお店の紹介があります。今日は水曜日なので“Rumah Ayu”さんの出店です。西さんという方が、しばらく前からされていて、もう1年経ちます」

 営業カレンダー(一例)、日替わりで楽しめるのは変化があって面白いですね!
営業カレンダー(一例)、日替わりで楽しめるのは変化があって面白いですね!

―――出店する場合の条件や費用について教えてもらえますか?


谷口 「出店条件はあってないようなもの、というと怒られちゃいますかね(笑)。ただやはり、運営する私たちのコンセプトが5つのRですから、極論ですが、『プラスチック容器をガンガン使って、ジャンクフードを売ります!』みたいな人たちは遠慮してほしいですかね。でもまずは、利用料金もそこまで高くはないですから、気軽に何かチャレンジして欲しいですね。例えば飲食店。今はこんな状況なので、いきなり飲食店に使えるテナントを自分1人で借りて、内装を全部自分で作り込むと、ものすごいお金と労力がかかるじゃないですか。もし仮に条件に合った物件が見つかってチャレンジしたとしても、一定期間運営して返却する時は、スケルトンと言って、原状回復が原則ですから、借りるのにお金がかかって・作るのにお金がかかって・それで辞めようと思ったらやめるのにもお金かかってっていう状況になるんですよね。


ここだったら初期費用とか辞めるときの費用はほぼかかりません。ここを借りるための月々のご負担だけで済みますから。家電や調理器具は最低限のものは一通り揃えています。ご自身がよっぽどこだわりがあって使いたいもの、例えばスムージーを作りたいとなったら当然ブレンダー(ミキサー)などは持ちこまないといけないですけど、裏に荷物を置く場所もありますので、置いてもらって大丈夫です。飲食店営業をしたいけど、いきなり自分で全てを用意するのは難しい方、お試しでまずやってみたいという方々に対して、ここでやってみたらどうですか、という思いはありますね。


それで、契約を終了する際にファンの方が増えて、やっぱり自分でお店出したいと思えば出せばいいでしょうし、ご自身のライフワーク的にお料理が好きだから、とりあえず趣味の範囲でお店をやってみたいですとか、こういう国のこんな料理を広めたいんだとか、そういう気軽な感じでチャレンジしてもらってもいいんじゃないかなと思っています」
※シェアスペースのレンタル料金に関する詳細は、こちらをご覧ください。
https://rrrrre.space/info/space


 


――リスクをあまり冒さずにできるっていうのはすごく助かりますよね。


谷口 「そうですね。こういった点が、まさにシェアハウスと同じ発想なんです。シェアハウスも、家具や家電などがあらかじめ揃っている状態で入居できますので、普通の引っ越しと比べるとすごく安いですし、出て行くときも、荷物が少ないですから楽ですよね。そういった方に使っていただけるといいかなあと。今は例えで飲食の話をしましたけど、全く違うものでも、使い方はご自身次第というところもありますし、新しく今度入ってくる方などは、焼き菓子と雑貨屋さんを2人の名義で借りられて、両方一緒にやります!みたいな業態ですから、本当に使い方は何でもありだと思っています」

Rブランドを育てつつ、どんどん地域と繋がっていきたい

―――今までで一番苦労されたことは何ですか?


谷口 「やはり最初ですね。ここをオープンした時は、場所は確保したけど、運営する人がいないから、お店としてオープンすることができなかったのです。お店が開いてないといつまで経っても『ここはなんだろう?』って思われて、結局何なのか、誰にも理解されないという負のサイクルにハマってしまいました。それで『シェアキッチンですよ!お店やってますよ!』ということを、まずは地域のみなさんに知ってもらうために、自分たちでお店を開けていた期間があり、それが結構しんどかったです。当時、私は他の仕事もしていましたので週1だけの開店で、カレー屋をやっていました。月曜日から金曜日まで仕事して、土曜日に準備して日曜日に開店する。それを去年の6月ぐらいまで続けていましたので、ざっくり7ヶ月間位はカレー屋さんでしたね(笑)
奇しくもコロナの時期でしたので、テイクアウトの需要が意外とあったのと、石神井公園が近いので、外で食べる需要もあったのだと思います。あの頃は密を回避するために、公園とかキャンプ場に関心が集まったことがありましたよね。そんな時期に大泉学園から石神井公園に出かけようとすると、ちょうどこの前を通るんですよ。看板を立ててカレー屋さんだとP Rすると『こんな場所にカレー屋があるんだ!じゃあ買って公園で食べるか』みたいな人がたくさんいて売れましたね」


 


――最後に今後の見通しや計画などがあれば教えてください


谷口 「R SPACEとしては、徐々に地域の方に知っていただけるようになってきましたので、まずはこの活動を継続してやっていきたいです。他には、今ここで運営していることでイベントなどに関わらせていただく方が増えてきていますから、そのつながりをさらに発展させていきたいです。
例えば、この3月には石神井公園で“THINK ETHICAL PARK DAY(シンクエシカルパークデイ)”というイベントをしました。石神井公園の管理をしている東京都公園協会さんからご相談をいただいて、そのときにマーケットイベントを提案したんです。元々Rのブランドとして“サステナブルマーケット”というイベントを、光が丘IMAで去年4回、やらせていただいていましたので、それを公園でするのも面白いかもねという話になりました。
おかげさまでここの活動とかRのことを知っていただける機会が増えてきましたので、それをもっと行政さんとか、他のエリアに持っていったり、あとは、Rが付く・付けられるものを他の地域で作れるのかとか、そういうチャレンジをしながら拡大していくことも考えています。
でもまずは、もっともっと多くの人に知っていただいて・来ていただいて・使っていただける場所になれば嬉しいですね」

取材後のお楽しみ?!出店者さんの薬膳料理を食べながら

――ここに出店することにしたきっかけを教えてください。

 店子・出店者の西さん、この場所の他にも2店舗を運営する経営者です
店子・出店者の西さん、この場所の他にも2店舗を運営する経営者です

西 「私自身が、元々石神井公園と西荻窪で飲食店を経営しているんです。ビアバーと串焼き屋さんですね。
薬膳は5年ぐらい前から個人で習っていまして、元々は自分の体調の不調がきっかけでした。その時は仕事に繋げようと思ってはいませんでしたが、ちょうど更年期に差し掛かる位の年齢で、元々飲食店を経営していることもあり、食事にはすごく興味がありました。そこで、身体の変化に則した食生活とはどんなものなのだろう?と考えてたどり着いたのが薬膳でした。
コロナ禍になって、バーも居酒屋も閉めてテイクアウトの営業は続けていたのですが、やはり何かちょっと違ったこともしないといけないなというのもありました。コロナで先行きがわからなかったので、薬膳で何かやってみたいけど、どれくらいの需要があるか、正直わかりませんでした。
そんな時、先ほどお話しに出てきた『ノウ株式会社』の深津さんと私は、元々ちょっとした繋がりがありまして。深津さんが新しいことを始められたのは、Facebookや他の方からの噂で聞いていましたので、『どんな場所なんだろう?』と思ってここを見に来たのがお店を始めるきっかけですね」



――オープンして1年ほどとのことですが、聞くところによると、今月でここから卒業されるとか。振り返ってみて、運営面で難しかったことはありますか?


西 「オープンは2021年の5月ですからちょうど1年ですね。元々1年間はここで続けようと思っていましたので、それは計画通りなのですが、この先新しい物件をこの周辺で探すとなると、石神井周辺は空き店舗が全然出ないんですよね。ですので、絶賛、店舗(物件)探し中です!

 彩も鮮やかな薬膳ランチ!食べられなくなってしまうのは、残念ですね
彩も鮮やかな薬膳ランチ!食べられなくなってしまうのは、残念ですね

今は、お弁当とスープのセットを1300円で出しています。これは決して安い値段ではないと思うのですが、やっぱり最初はお弁当箱とかも、資源のことや環境のことを考えるともったいないから、しっかりした作りの曲げわっぱを使いたい、と色々と考えていたんです。でもやっぱりコロナで、衛生面などから容器を繰り返して使用しない方がいい、エコでは無いけれど使い捨て容器の方がいい、という風潮もありました。これはとても難しい問題でしたね。
また、お店は2時半までですが、シェアキッチンですから、そのあと片付けて4時までには出なきゃいけない条件だったんですね。曲げわっぱを使うとなると、閉店後に干して乾燥させてから片付けないといけないんですが、その時間がないので、残念ながら諦めました。
ただ、コロナを機に多くの方が自分の体に向き合うというか、食べ物に注目する方がいらっしゃるというのは、この1年での発見でした。
薬膳自体が、漢方とよく混同されてしまうのですが、薬膳とはその時の旬のお野菜で、その季節や気候を考え、その人の体調に合わせた献立を組み立てたお食事のことなのです。ですので厳密にいえば、お客さんお一人お一人でメニューも違うはずなのですが、さすがにここではそこまでの細かな対応ができないですから、メニューを絞っています。例えば今日みたいな梅雨時は、人によってはむくみが出やすいので、それに対応したメニューを考えるなどしています。
食材についていえば、私は基本的に練馬区のお野菜を中心に使っています。他では農薬を使っているか、良くても減農薬なんですけど、練馬区の農家さんは完全無農薬で頑張っている方もとても多いです。」


 


――1人で全部作って出されるのは大変ですよね。最後になりますが、出店してよかった点を教えてください。


西 「そうですね、どなたか雇いたいと思いつつ、常に忙しいわけではありませんからね。今は昼しかやっていませんし。
出店して良かったのは、薬膳に対して皆様が想像していたよりも注目してくださったことと、シェアキッチンの仲間や他の店舗さんとの繋がりができたことですね。
私は2006年から石神井で商売をしていますから、今までにいろいろなお付き合い・地元の繋がりがありましたが、このスペースで始める人は今まで全く商売をやったことがない方とか、いろんな方がいるんですよね。むしろ私みたいに他でも店舗をしている方が珍しい。ですからそういった新しい人たちとの繋がりもできたのは面白かったです」


 


――シェアリングという概念自体、シニア世代には馴染みが薄いものです。ただ、谷口さんは「シニアの方でも今は普通にフラリと毎週来てくれる方も多いです」とおっしゃいます。谷口さん・西さんのような若い世代とシニア世代が、世代を超えて同じ建物に住んだり、新しい何かを生み出したりといったケースが一般に浸透するまでには、まだ少し時間がかかるかもしれませんが、ここ石神井から、新しい風が吹くと素晴らしいなと思いました。

サポーターの取材後記

たてみーな
以前から気になっているお店でした。今まで普通のマンションだったところが、ある日、ベランダ側の垣根が入り口になり、何やらお店になっていました。「ここはいったい何だろう?」知りたくて取材を申し込みました。お話を伺って、時代はこんなにも進んでいるのかと実感しました。
「R」のネーミング、には、現在世界中で取り組みを進めているサスティナブルな社会実現への意志が感じられます。「シェア」という考え方も、これからもっともっといろんな分野で必要とされると思います。出店者募集も、ホームページやインスタグラムで行っていると聞き、我々シニアには及びもつかない新しい世界だと思いました。
私たちも取材終了後、その日スペースを借りていたお店「Rumah Ayu」さんの薬膳ランチを注文しましたが、ビーツのスープ、多種類のそれぞれの下味のついた野菜を上にのせた炊き込みごはん、手作りのインドネシア味のソースなど、珍しくとてもおいしかったです。メニューの詳しい説明書もついていて自分が料理を作る上で参考になります。お値段は1300円と格安とは言えないかもしれませんが、今日のメニューのテーマである「むくみ解消」の効果はあると個人的には感じました。
定年退職後の第2の人生を考えている方には、この場所は夢を叶えるためのいい実験場所ではないかと思います。私も何かできるだろうかと思い巡らしはじめています。
トマト
飲食店やシェアオフィス、シェアキッチンなどは、人が集まりやすい駅の近くや街の中心で流行るものだと思っていました。ここは、石神井公園駅から20分近くある閑静な住宅街にもかかわらず、「R」の運営者は、逆の発想で運営し、上手に成り立たせていました。特にシェアキッチンは、一般的には初期費用が少なくて済むので、自分のお店を出したい人には、一歩前に進めてくれる場所だと思います。「R」の発想には、いろいろな発見や驚きがありました。
また、「Rumah Ayu」さんの薬膳料理は、練馬区の農家との知り合いが多いことを生かして、農家からいろいろな野菜を直接仕入れて多種類の野菜を使った薬膳料理を作っていました。コロナ禍で健康に関心を持つ人が増え、固定客が増えているとのことです。私も取材時に食べましたが、おいしいのはもちろんのこと、季節との相性を考えた料理は、体が喜んでいるような気がしました。

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