サポーター体験記
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貴重な楽器のオンパレード!4月にリニューアルした世界に誇れる楽器ミュージアム

貴重な楽器のオンパレード!4月にリニューアルした世界に誇れる楽器ミュージアム
珍しいピアノの数々、グランドピアノは展示のメインの一つだそう

学校や趣味で誰でも親しみのある楽器。幾つの種類を知っていますか?
ここ、武蔵野音大の楽器ミュージアムには、どなたでも楽しめる構成と展示品の
豊富さで密かに注目を集めているとか。思わず質問を忘れ、見入ってしまう
美しい楽器たち。これは私たち知的好奇心に貪欲な世代こそ必見の施設です!

武蔵野音楽大学楽器ミュージアム

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:ミュージアム課 課長/守重 信郎さん
所在地:練馬区羽沢1丁目13-1
電話:03-3992-1410
URL:https://www.musashino-music.ac.jp/guide/facilities/museum

演奏するだけではない、楽器のさまざまな価値

――楽器ミュージアムの簡単な概要を教えていただけませんか?


守重 「この楽器ミュージアムは、昨年の12月に江古田の新キャンパスとして建て替えたものの中に新設し、オープンしました。コロナの関係でしばらくは限定的な公開だったのですが、2022年の4月から一般公開を始めました。火・水・土曜日の12時から16時で公開をしております。

 今回、楽器ミュージアムをご案内いただいた守重さん、楽器の数・種類にも驚くが、ほぼ全てに精通するその知識量にも驚かされる
今回、楽器ミュージアムをご案内いただいた守重さん、楽器の数・種類にも驚くが、ほぼ全てに精通するその知識量にも驚かされる

ワンフロアが展示室で、4つのエリアとフリースペースに分かれており、入ってすぐのフリースペースにはモニュメントとして、当館を代表する楽器『グランドピアノ』を展示しております。東洋風の絵が描かれておりますが、P L EY E L(プレイエル)というフランスのメーカーです。こちらに代表されるように“東洋と西洋のコラボレーション”が当館のコンセプトとなっています」

 こちらがそのプレイエルのピアノ、黒地に金で描かれた模様はまるで蒔絵のよう!
こちらがそのプレイエルのピアノ、黒地に金で描かれた模様はまるで蒔絵のよう!

守重 「円形ホールには、ディスク式のオルゴールがあります。こちらはお金を入れないと聴けない作りになっています。イギリスの1ペニー、100年前くらいに使われていたものですね。レストランに置かれていたようで、現代で言うところのジュークボックスというわけです。
ディスク式なので、ディスクを入れ替えることで、別の曲をリクエストできるんですね。リクエストをいただいてディスクを交換し、1ペニーいただいて回転させます。1周分オルゴールが鳴るわけです。曲はカヴァレリア・ルスティカーナ、マスカーニが作ったオペラの間奏曲ですね」

 実際に鳴らしていただきました!場所の影響もあるでしょうが、普段イメージするオルゴールより音に深みがあり、ずっとはっきり聴こえます
実際に鳴らしていただきました!場所の影響もあるでしょうが、普段イメージするオルゴールより音に深みがあり、ずっとはっきり聴こえます

――すごい!1周でピタリと終わるんですね。


守重 「さらに聴きたい場合は、もう1ペニーというわけです(笑)。


楽器には様々な種類と多面性があります。大学で学んでいる西洋音楽で使われる楽器の歴史的な側面、それから世界中の民族が使うものは民族学的な視点でも価値がありますし、美しい装飾が施された楽器などは、美術的な側面があるなど、歴史学的・美術的・民族学的視点で触れていただこうと、ミュージアムが設計されているのです。
4つのエリアの最初は現存楽器展示室です。こちらは主に歴史的視点での展示になります」

ピアノの展示だけで60台!さまざまな表情で私たちを魅了する

守重 「年代順に並んでいまして、内装は落ち着いたギャラリー風になっております。以前はかなりたくさん楽器が並んでいて倉庫のような感じだったのですが、今回はそこからより良いものを厳選し、ゆったりと展示をしています。ここではピアノが誕生する以前から現代に至るまでの移り変わりを確認いただけます。グランドピアノを中心にピアノという楽器の発展の歴史を展示しています」

 ピアノ誕生以前、まさに黎明期の楽器たちがこちら
ピアノ誕生以前、まさに黎明期の楽器たちがこちら
 楽器の他にも壁には音楽画が展示されています音楽を絵にした面白い絵画です
楽器の他にも壁には音楽画が展示されています音楽を絵にした面白い絵画です

――今ここにピアノは何台くらいあるのでしょうか?


守重 「60台くらいですかね。初期のピアノはチェンバロの影響で、鍵盤の白黒が逆なんです。こちらはベートーベンの頃のピアノのオリジナルです。

 ベートーベンは、およそ1770年から1827年の作曲家。つまり最低でも190年以上前のものです
ベートーベンは、およそ1770年から1827年の作曲家。つまり最低でも190年以上前のものです

こちらも同じ時代、1820年のピアノです。ペダルが5つあります。1800年頃にピアノのペダルが発明されるのですが、それまでは“膝ペダル”といって、膝で押し上げていたんですよ。モーツアルトの頃ですね。とても演奏しづらいため、足で踏む形が発明されました。ここを踏むと、楽器に内蔵されたベルが鳴るものもあります。即興で効果音をつけて、当時流行したトルコマーチを演奏したと言われています。

 よく見るとペダルが5つあるのがわかりますペダルと本体の間の装飾も可愛らしいですね
よく見るとペダルが5つあるのがわかりますペダルと本体の間の装飾も可愛らしいですね

古いピアノは現代のものと異なった音の美しさがあると私は思います。深くて雄大な感じでなく、決して大きな音ではないのですが、柔らかな音色です。シューベルトなどの時代はこういった音で弾かれていました」

 クララ・シューマンが自宅に置いて愛用していたピアノ、世界的な文化財といえます
※クララ・シューマンは、ピアノソナタ第1番や子供の情景(作品15番)、幻想曲作品17番)などで有名なロベルト・シューマンの妻。
クララ・シューマンが自宅に置いて愛用していたピアノ、世界的な文化財といえます
※クララ・シューマンは、ピアノソナタ第1番や子供の情景(作品15番)、幻想曲作品17番)などで有名なロベルト・シューマンの妻。

守重 「クララは晩年、亡き夫の作品の普及に努めたんですね。残された手紙にも『私は夫のことを思いながらトロイメライを弾いています』とありますので、おそらくこのピアノで弾いたのではないかと考えられます。晩年、自宅にありましたから、親交のあったブラームスなども弾いている可能性があります。
ピアノは元々、チェンバロ同様サロンで演奏されるものでしたから、大変装飾的なものが数多く作られています。調度品としての要素もあり、特にアップライトピアノは工夫を凝らしたものが多いですね」

 リラ(竪琴)型のピアノやキリン型のピアノ、ナポレオンの帽子型など風変わりなものも!
リラ(竪琴)型のピアノやキリン型のピアノ、ナポレオンの帽子型など風変わりなものも!

展示品の演奏が聴けるかも?!大学ならではの取り組み

守重 「それでは次の部屋に行きましょう。こちらは管弦打楽器の展示です。初めに弦楽四重奏の楽器があります。バイオリン2梃にヴィオラ、チェロで構成されますが、これは日本の宮本金八(みやもときんぱち)というバイオリン製作の第一人者であり草分け的な方が作りました。彼が最高傑作と呼び、生前絶対に手放さなかったものを親族の方から譲り受けました。
この4梃は同じ木で作られており、大変に音が合うと言われています。実際に演奏会を行いましたが、大変にマッチしたしっくりする音を奏でていました」

 宮本金八は、個人でバイオリンを専門に作った日本で初めての方と言われています
宮本金八は、個人でバイオリンを専門に作った日本で初めての方と言われています

守重 「こちらが古楽器です。バロック時代(17世紀初め〜18世紀中頃まで)のものです。ヴィオラ・ダ・ガンバやヴィオラ・ダモーレといったものやハープなどに加え、バイオリンの名器が展示されています」


――あの、、、一番お高いものはどちらになるのでしょうか?


守重 「どれも価値が高いのですが、有名なところですと、ガルネリがあります(アンドレア・ガルネリなのだそう)。ほかにはアマティの息子であるアントニオとヒエロニムスの楽器もあります。これらは全て、イタリアン・オールド・バイオリンですね。学生にも供与し、ソリストに選ばれた学生などは実際に演奏することがきます。

 展示されている貴重な楽器が、学生の演奏にも使われるとか。是非一度、聴いてみたいものです
展示されている貴重な楽器が、学生の演奏にも使われるとか。是非一度、聴いてみたいものです

この辺りは弦楽器でして、先ほどはバイオリン属に代表される、弓で演奏する擦弦(さつげん)楽器とギターのように指で弾く撥弦(はつげん)楽器が展示されています。奥の方は木管楽器、金管楽器に続いて打楽器という構成です。こちらには厳選して置いてありますので、入間キャンパスの方は、この何倍もの楽器類が保管されています。全部で5700点ほどでしょうか」



――ところでこちらは日本初の楽器ミュージアムとお聞きしましたが。


守重 「はい。昭和42年にオープンしましたが、日本で第一号の楽器ミュージアムです。ほかにも浜松市に同様の施設がありますし、音楽大学では国立音楽大学、大阪音楽大学、また、民音音楽博物館なども同様の施設となります」

 ストローコントラバス(ラッパの形状)の状態の良いものは、世界でもここ、武蔵野音楽大学にしかないそう!
ストローコントラバス(ラッパの形状)の状態の良いものは、世界でもここ、武蔵野音楽大学にしかないそう!

日本人にこそ見てほしい、実は貴重な和楽器の数々

日本人にこそ見てほしい、実は貴重な和楽器の数々 雅楽で使われる和楽器の一部、西洋楽器とは違った凛とした美しさがあります
雅楽で使われる和楽器の一部、西洋楽器とは違った凛とした美しさがあります

守重 「日本の楽器というのは、実は意外と知られてないです。見た目も非常に美しく、また音も独特でして、かつての文化の一面を味わうことができるんですね。例えば雅楽。発祥は中国ですが、完全に廃れてしまっています。しかし日本ではちゃんと維持管理されており、今でも宮内庁で演奏されています。私どもの大学でも雅楽の授業がありますので、学生たちも演奏しております。それから琵琶楽や三曲合奏・箏に尺八に三味線、こういったジャンルでもまとめています。歌舞伎で使われる楽器も松羽目(まつばめ)で展示をし、舞台の雰囲気を演出しています」

 歌舞伎で背景に能舞台を模し、大きく松を描いた松羽目を使い、能をもとにした形式の作品を「松羽目物」というそうです
歌舞伎で背景に能舞台を模し、大きく松を描いた松羽目を使い、能をもとにした形式の作品を「松羽目物」というそうです

――日本で開発された、日本発祥の楽器というのはあるのでしょうか?


守重 「改良されたものはあります。中国の三線(さんしん)が沖縄に伝わり、本州で三味線に変化したり、胡弓(こきゅう)などは、似たようなものはヨーロッパ各地にありますが、ここまで三味線に近い形のものは、日本にしかないと思います。和太鼓などの打楽器は一見日本風ですが、実は世界各地にあります。打楽器を持たない民族はいないんじゃないか、というほどメジャーなものなんですよ」

 珍しい「四角い太鼓」、なぜこのようになっているかははっきりわかっておらず、調査中とのこと
珍しい「四角い太鼓」、なぜこのようになっているかははっきりわかっておらず、調査中とのこと
 こちら、笙(しょう)。有名な雅楽、越天楽の冒頭に使われるので馴染みが深いかも
こちら、笙(しょう)。有名な雅楽、越天楽の冒頭に使われるので馴染みが深いかも

守重 「こちら側が邦楽器のコレクションで、これもまた貴重で歴史的なものです。というのは、まず邦楽器を展示している場所が少ないのと、昔は美術工芸的な楽器もたくさんありましたが、それを作ったり修理できる職人が減少してしまった点、また戦争で多くが焼かれてしまったものですから、これほどの展示はなかなか珍しいわけです。
こちらは水野佐平(みずのさへい)という個人の方がコレクションしたものです。戦争中も楽器をわざわざ疎開させて守りました。邦楽の研究家でもあり箏づくりもされていましたので、研究用に数多くの邦楽器を集めたようです。東西2つの大学に寄贈していまして、東が私ども、西が大阪音楽大学です。どちらもこの寄贈を契機に楽器ミュージアムができたんですよ」

 世界各地の民族楽器の数々、色彩や種類だけでなく、奏法や音色を想像してみるのも楽しい
世界各地の民族楽器の数々、色彩や種類だけでなく、奏法や音色を想像してみるのも楽しい

――最後に民族楽器をご案内いただきましたが、まだまだ話は尽きません。とにかく、今はまだリニューアルオープンしたばかりですから、まずは見学していただきたいとお話しされていました。これだけのものを丁寧に管理し後世に残すことは大変かと思いますが、それを通じた音楽文化の普及がこのミュージアムの目的とのこと。この先もさまざまな企画を考案中だそうで、私たちもますます目が離せない施設になりそうです!
なお、現在は予約制での入場となりますので、ホームページの「見学申し込みフォーム」からお申し込みください。


【見学申し込みページUR L】
https://www.musashino-music.ac.jp/guide/facilities/museum/application


【楽器ミュージアム3Dマップ】
リアルな楽器ミュージアムの3Dマップです。バーチャルなミュージアム体験をお楽しみください。
https://my.matterport.com/show/?m=ADm8gcQyVzN

サポーターの取材後記

みかちゃん
リニューアルオープンされた、「武蔵野音楽大学楽器ミュージアム」を取材してきました。戦前~戦後を生き抜いてきたシニアの私には、音楽とは小・中学校唱歌を歌う”声”の文化と思っていましたし、楽器と言えばハーモニカや音楽の先生が伴奏してくれるオルガンくらいのものでした。そんなおり練馬に来て、仲間と武蔵野音楽大学と併設の江古田楽器博物館を見学したのは十数年前のこと。その江古田楽器博物館が、入間と合流し、新しく「楽器ミュージアム」になると聞き、どう変わるのだろうと楽しみにしていた取材訪問。
まず設置場所が旧3階建てから「地下1階」に移った点。そして平面の接続展示場になり、特に日本の楽器展示室には入間からの多くの楽器が移動してきてより多彩になっていました。隣あわせで一挙に見やすくなり、東洋一を誇る新しい「楽器ミュージアム」と大きく進化していました。
練馬区の小・中・高生はもとより、区民の”音楽文化向上”と”心のオアシスと憩いの場づくり”に、新しい「武蔵野音楽大学楽器ミュージアム」がご協力いただけることを祈っております。
豆柴
楽器といえば、小学生時代、ピアノを触った程度、その後は、才能なく縁もなかった。
期待しつつ入館し荘厳な展示空間、ピアノがずらり、こんなに種類があるのかと驚き、雰囲気、豊富さにまず息を飲んだ。長期にわたる入念な企画、準備の賜物である。
世界地理に興味を持つ私には、民族楽器に関心あり、テレビで見かける楽器を多数実物で見ることが出来た。人々の生活や文化、それぞれどんな音色なのか興味をそそられた。アフリカの少数民族が奏でる色々な打楽器、これらで王の権力を象徴し民族の力を鼓舞していたのであろう。当館はオープンしたばかりだが今後の音楽文化の普及、発展に大いに寄与することを期待したい。国内外の博物館とのコラボ、珍しい楽器での演奏会の開催、多くの収蔵品の中からの特別展示の実施などを提案したい、
この機会に興味ある楽器をWEBで検索して、名前の由来などを知ろう。又、楽しみが増えた。
ヒロちゃん
江古田はウォーキングルートのため、数年前から武蔵野音大がリニューアルされる姿を見ていました。モダンな外観に生まれ変わり、以前から関心があった楽器ミュージアムを取材できる機会が得られて、ワクワクしながらお伺いした次第です。大学HPで、ミュージアムの3Dマップを事前に拝見していましたが、実物の楽器の量・質には圧倒されました。特に、鍵盤楽器室で、西洋音楽が貴族のサロン社会を中心に発展した歴史が良く理解でき、大変興味深かったです。アップライトピアノは、設置スペースを節約するためにグランドピアノの共鳴部を立てたことや、チェンバロとピアノの鍵の白黒が逆なのは、材料コストの影響等、守重課長のお話は、目から鱗の連続でした。
学生だけでなく、地域の音楽にも貢献されている武蔵野音大に、ベートーベンホール等での演奏会にもお伺いしたいと思います。

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