サポーター体験記
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地域で守り、繋げていく。かつての屋敷林は、今も区民の憩いの場

地域で守り、繋げていく。かつての屋敷林は、今も区民の憩いの場
取材後の記念撮影!地域の皆さんの熱意と優しい気持ちで緑地は今も、大切に守られています

大泉学園駅南口からロード富士見の商店街を通り越し、突き当りを右方向に程なく進んだ場所に、「石庭の森緑地」はあります。
一見すると公園なのですが、たくさんの石や竹藪など、通常のそれとは、少し趣が異なるようです。
石庭の森の維持管理を行う「石庭みどり会」を取材してきました!

石庭みどり会

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:会長/加藤みえ子さん
所在地:練馬区東大泉6-55-7
電話:03-3922-0898

元は大豪邸の屋敷林!地域の自然(みどり)を守りたいと立ち上がる

――私自身がこのあたりを良く通り掛かるものでして、皆さんの活動をよく見ていました。
この緑地は江戸時代から続く屋敷跡と聞きましたが、まずそのあたりの歴史を簡単に教えていただけますか?


加藤 「まさに江戸時代からの名主の家でした。明治の頃は、最近の大河ドラマにもなった渋沢栄一。あの家業と同様に藍玉を作っていたそうですよ。
その後は魚を獲る時の網の材料となる、太くて丈夫な糸を製造していたようです。
今の町の北から南の端まで、糸を撚るための長い工場が建っていたと主人から聞いています。
糸を撚っていると、細かい繊維が出ますよね?それを集めて座布団にしていた、と伝わっていますから、とにかく一大産業で、大変盛んだったみたいです。
農家になったのは昭和になってからのことですね。
元々は加藤仙右ヱ門という方が所有していて、その次の加藤源蔵さんが亡くなったところから、石庭の森緑地の歴史が始まります」

 代表の加藤さん、お話に出てくる源蔵さんの弟さんが、義父にあたります
代表の加藤さん、お話に出てくる源蔵さんの弟さんが、義父にあたります

――元々は相当な名主のお屋敷だった、と言うわけですね。


加藤 「その後、まあ簡単に言えば、事業が上手くいかなくなり、相続税融資の担保のためお屋敷も土地も銀行に差し押さえられそうになっているという情報を耳にし、
『なんとか地域に残したい』その一心で署名を集めて区に陳情して、練馬区に一部を買っていただいたのが経緯です。
源蔵さんご自身が売りたかった訳ではなく、どうやら財産を目的に、あまり良くない不動産屋さんが介入してきて、当時借地権で管理されていたものがあれよあれよという間にどんどん売られてしまって。
それが昭和58年くらいのことです。
このままでは地域の土地が全部なくなってしまう、と危機感を覚えて陳情につながります。
陳情に関わったのは、この辺りの4町会です。井頭、富士見、長月、宮本南と私たちです。
議会にかけるための準備の日数が2日しかなくて、2日で400近く集めました」

 この写真が当時の様子を物語っていて、当時の様子がうかがえますね
この写真が当時の様子を物語っていて、当時の様子がうかがえますね
 当時、議会にかけた書類(陳情書)も残っています!石庭の森の原点です
当時、議会にかけた書類(陳情書)も残っています!石庭の森の原点です

地域みんなのものだから、使い道もみんなで納得するまで考える

――そのワークショップの内容はどのような物だったのでしょうか?


加藤 「全部終わるのに2−3年かかったと思うのですが、主な内容は“どのような緑地にしていくべきか?”の議論と整理でした。
何を残していくのか?いわば石庭の設計図づくりですね。
源蔵さんが郵便局長だったこともあり、敷地内には数多くの丸ポストの台座が保管してありました。
今もそうですが、ポストといえば地域住民の接点でもありますから、思い出を残すためにこれは利用しよう、ですとか、かつて屋敷を囲んでいた大谷石の塀の一部を崩して道石にしたり、蛇籠(じゃかご)に再利用したりですとか。

 よく見ると・・・!確かに丸いポストの台座の石ですね
よく見ると・・・!確かに丸いポストの台座の石ですね
 蛇籠・ふとん籠とも、冬の間の小動物の貴重な住処となります
蛇籠・ふとん籠とも、冬の間の小動物の貴重な住処となります

他に当時から残っているものは、緑地の門柱もそうですね。植えられている大木などは8割がた当時のままです。
中央にある竹林も、当時はもっと森といいますか、生い茂っていました。
竹林の中に源蔵さんのお家がまるまる一軒入っていましたからね。
それこそ玄関まで辿り着くまでに2分かかるとか、そのくらい広大な敷地だったんですよ。

 緑地の入り口にある立派な門柱、こちらもかつて屋敷を隔てた塀
緑地の入り口にある立派な門柱、こちらもかつて屋敷を隔てた塀
 緑地の中央部、一際目を引く竹林そんな歴史があったのですね
緑地の中央部、一際目を引く竹林そんな歴史があったのですね

武蔵野台地の植物を保存しましょう、というのが陳情の一部でもありましたので、外来種は入れていません。
そこにそのまま生えていた物を極力活かすように、ワークショップでも話し合われました。
最近になってようやく、花壇の一部については、区から植栽の許可が下りましたので、緑地の本当に外側だけやっています。
維持管理だけですと、関わる皆さんも少し張り合いがないですから、こうやって皆の手で綺麗にできることは、嬉しいですね」

 まちで見かける可憐な花も、こうした地域の皆さんの思いで植えられているんですね
まちで見かける可憐な花も、こうした地域の皆さんの思いで植えられているんですね

――石庭みどり会というのは、すぐに誕生したのでしょうか?


加藤 「最初からこの名前と団体があった訳ではなく、緑地ができてから、その緑地を守る会として名乗り始めたんですよ。
ただ現在の定義では、石庭の森緑地の維持管理にボランティアで関わる団体のことを指していて、平成18年から活動をしています。メンバーはおよそ30名でしょうか。
基本的にはこの一帯の4町会がメンバーなのですが、現在は私たちの町会がメインとなっており、区から委託を受けています」



――緑地は、一般の方はどのように利用してらっしゃるのでしょうか?


加藤 「2つあると思います。まず公園ですから基本的にはどなたでも自由に楽しんでいただいて構いません。
ボランティアも随時募集していますから、会報などで見た方はお声がけ頂きますし、時には別の区からも手伝いに来てくれたりすることもあるんですよ。
他には、5月に開園祭、7月に七夕まつり、12月は落ち葉まつり、と四季折々でイベントを開催しています。
七夕まつりなどでは、近所の幼稚園や小学校の皆さんにもきていただいて、短冊を飾るなど、小さなお子さんからも愛されている場所なんですよ。
遊びに来るだけではなく、ヨーヨー釣りをしたり竹細工を作ったり、すいとんを振る舞うなど積極的な交流も行っています。
ただ、公園としては十分な広場があるわけではありませんので、150人も集まるともういっぱいになりますけどね」

 イベントの様子、こちらは開園祭竹細工や 輪投げなども開催されます
イベントの様子、こちらは開園祭竹細工や 輪投げなども開催されます
 七夕の様子、本物の大きな竹に短冊を飾ると迫力が違いますね!
七夕の様子、本物の大きな竹に短冊を飾ると迫力が違いますね!

緑地のよさを自由に感じてほしい、今のままがずっと続くのが希望

――さまざまな活動で盛り上げていらっしゃいますね!今後についてはどのようにお考えですか?


加藤 「今のままで十分かな、とも思います。運営メンバーの人数を考えると、これ以上に規模を拡大したり、内容を充実させたりすることは難しいと思いますから。
このままがずっと続けば、それが最高かなと考えています。
固定メンバーの中でも積極的なメンバー16−7名は、特に打診や確認をしなくても毎週緑地の清掃に来てくれます。
こういう方が居れば、運営に困ることはないんです。
一つ心配なことはメンバーの高齢化ですけど、こればかりは仕方ないですから(笑)。


石庭の森はあくまでも緑地ですから、見学、つまり鑑賞目的の方が本当に多いです。
広場で体を動かしたりはなかなかできません。
私たちボランティアも木曜日だけですから、常駐してこの緑地の由来を説明したり、素晴らしさを伝えるような活動は、あえて行っていません。
風通しの良い場所ですから、気分転換やお弁当を食べに立ち寄ったり、皆さんがそれぞれ、思い思いの使い方をしていただいて、素敵なところだな、って感じてもらったら、嬉しいですね」

 掃除の様子、毎週木曜の朝9時から有志で行っています
掃除の様子、毎週木曜の朝9時から有志で行っています
 地域皆んなで力を合わせて活動する姿に、背筋が伸びる思いです
地域皆んなで力を合わせて活動する姿に、背筋が伸びる思いです

――これほど素敵な緑地をここまでしっかりと管理されているのに、とても奥ゆかしいなと感じました。
私たちの周りにある何気ない日常の景色が、もし突然無くなる事態になった時、同じようには動けないかもしれません。
地域を愛すること、地域を守ること。様々な環境が便利に変わっていくこの国で、大事なものを見たような気がした取材でした。

サポーターの取材後記

みかちゃん
「石庭の森緑地」とその維持管理をする「石庭みどり会」を取材訪問し、沢山の素晴らしい発見をいたしました。
その中で特に気になったことを3つほどご披露したいと思います。
まず第一に、行き届いた四季折々の草花と木々の緑が素晴らしい点。
関東ローム層に生き残る武蔵野のありのままの自然を大事にしているそうで、7~8割が旧所有者から引き継いだ昭和38年(約60年前)当時の欅林・竹林・草花だそうです。
次に、引き継いだ歴史がすばらしい点。
江戸時代この地の名主でもあった祖先の屋敷を旧所有者が引き継ぎ、(自らの職業が郵便局長だったこともあり)ポストの台石をふんだんに敷き詰めたり、大谷石の門柱を使用した、このような素晴らしい自然林(屋敷林)ができたのですが、いろいろあって取り壊しになることを惜しんだ地元住民が、練馬区へ陳情して守ったストーリーがありました。
最後に、「石庭の森」の緑を活用した地域住民の交流と努力が素晴らしいことです。
毎週数十名のボランティアが参加して、緑地の清掃や植樹など維持管理を行っています。
地域の交流行事として開園まつりや七夕まつり、落ち葉まつりなども開催し、現在でも地域との交流や小学校などとの交流を行っているそうです。
こんな素敵な「石庭の森緑地」に是非立ち寄ってみませんか?またボランティアとして参加してみるのも楽しいと思います。

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