サポーター体験記
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古くて新しい?!畳の不思議と秘密を、プロに聞く

古くて新しい?!畳の不思議と秘密を、プロに聞く
代表の白澤さん、畳作りを行う軒先で取材をします!

日本人の生活から切り離せない“畳”。
使ったことのない人はいないのではないかと思います。
最近ではその住宅事情などから新築では畳の和室がほとんどないことも。
長く続いた日本の文化、この先どうなるのか?白澤畳店さんにお尋ねしました。

取材ご担当:代表取締役社長/白澤 聡一さん

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
名称:有限会社 白澤畳店
所在地:東京都練馬区旭丘1-63-6
電話:03-3954-2064
URL:www.shirasawa-tatami.co.jp

畳の良し悪しはいぐさの成長で決まる。畳屋さんに教わる畳のアレコレ

まさに畳の製作作業の真っ最中!お仕事の現場にお邪魔しました。
――いぐさのいい匂いですね!早速ですが、畳の中身はどのようになっているのでしょうか?


白澤 「昔ながらのわら床もありますが、最近は木くずを固めたボードの間にポリスチレンフォームが挟まれた、3層構造の床がほとんどです。
皆さん、畳をそのままひっくり返すと使ってない面が出てくると思っていませんか?
畳替えには裏返し・表替え・新床(あらどこ)の3パターンがあって、裏返しは表面のゴザを剥がして裏返して使用すること、表替えは表面のゴザを新しいものに取り替えること、新床は表面のゴザと畳床の全てを新しくすることを言います。
畳替をして5年程度であれば、使用頻度にもよりますが、裏返しも可能ですよ」

 近年ではあまり見ることのない畳の“中身”、こんな風になっているんですね
近年ではあまり見ることのない畳の“中身”、こんな風になっているんですね

――若い人たちは知らないかもしれませんね。
私たちサポーター世代は常識で、小さい頃は、畳屋さんに家まで来ていただいて、家の前で表替えの作業をやってもらっていたものです。


白澤 「懐かしいですね。大きな家ですと、畳を外に出して作業できますからね。
最近ではヘリの種類も相当あります。子供用のキャラクターものからワンちゃんをイメージした足跡のデザインなんかもありますよ。
必ず見積もりに出向きますから、その時にお客さんに選んでもらっています。
畳表のサンプルも持参します。
これなんかは、中に防虫シートが入っていたり、ボード材だけで出来ているシンプルなタイプもあります。
耐久性は、もちろん本来の構造の畳の方が長持ちしますが、ボード材だけのものでも10年以上は持ちますね」



――畳自体の寿命もそのくらい、ということでしょうか?


白澤 「そんなに使っていなければ、畳本体は20年くらいは持ちます。
ただ本当に使い方によります。
例えば練馬区の学童クラブなどへは、年間500枚程度納めているのですが、これは毎年、先ほどの表替えを行います。
子供たちが100人くらい、しょっちゅう歩きますからすぐに毛羽立つためです。
でも床やコンクリートよりも当然安全ですし、快適ですからね。
ただ、本体もあそこだと10年は持たないかなぁ。
開けると砂だらけだったりね。子供は元気だから(笑)」



――そもそも畳の良し悪しというのはどうやって決まるのでしょうか?


白澤 「いぐさの長さに関係があります。白い方が根元で緑の方が先です。
これを交互に合わせて、経糸と麻糸で編み上げて仕上げます。
1枚で大体6000本くらいのいぐさを使っていますかね。
根元が白いのは色褪せているわけではなく、もともとこういう色です。
だからちょうど良いバランスになるように、上下をひっくり返して交互に配置して編んでいくんです

 ヘリを付ける前の状態、いわゆるゴザですが、明らかに色が違いますね
ヘリを付ける前の状態、いわゆるゴザですが、明らかに色が違いますね

高級な畳はこの端のヒゲの部分が長いです。
短いいぐさだと、ここから枯れていってしまうので、長持ちしなくなります。
いぐさは成長しても長さは全部で140cmくらいなので、ここから畳の面を取る場合、最大でも1m程度のサイズ、ということになります。
京間の方が幅が広い分、それだけ長くいぐさを使いますから高級ということになります。
折って触ってみると違いがよくわかりますよ。
ランクによって、厚さも弾力も全然違います」

 ランクの違いを触って体験、つまんでみるとその違いは明確です
ランクの違いを触って体験、つまんでみるとその違いは明確です

素材はなんと…和紙?!畳の需要に隠された社会の変化

――この、ヘリが無い畳は、どのように使われるのでしょうか?


白澤 「こういう感じです。

 タブレット端末に、サンプルの写真がたくさん!便利な世の中になりました
タブレット端末に、サンプルの写真がたくさん!便利な世の中になりました

これはいわゆる琉球畳ですね。
ヘリが無い分、部屋が広く見えるのが人気の背景だと思います。
最近では表面もいぐさの代わりに和紙を使っているものもあります。
防ダニ・防カビ・撥水加工がされていますから、マンションでは需要が高いですよ。
ちなみに価格は、いぐさのものも和紙のものもそれほど変わりません。
畳半畳のサイズで12枚作って大体15万くらいでしょうか。
6畳の畳でも同じくらいです。作るのが大変、というのもありますね」



――最近の洋間は昔のものよりも小さいと思いますが、やはりそこに使う畳は小さくカットするのでしょうか?


白澤 「そうなります。畳は既製品ではなく規格品ですから。
注文をうけて寸法を測ってサイズを合わせて制作するんです。
良いものですと1枚で2万5000円くらい。安いものだと5000円くらいでしょうか。

 薄畳(15mm厚)シートタイプを持たせてもらいました!サポーターでも軽々持ち上げられます
薄畳(15mm厚)シートタイプを持たせてもらいました!サポーターでも軽々持ち上げられます

今は薄畳の需要が多いです。
昨今は畳のないフローリングだけのご家庭が多いこともあり、洋間に畳を敷き詰めてほしいというご依頼がとても多いです。
今は色々な色もありますし、先ほどの和紙のように機能的なものありますから。
いぐさでも同じことはできますけど、和紙の方が丈夫なんですよね。
和紙を1本1本こより状にして、いぐさと同じように編んできますから、作り方は全く一緒です。
これらは大手の住宅メーカーが製造しており、いぐさの畳に対して、“化学表(かがくおもて)”と呼んでいます。
今では旅館や居酒屋、ホテルなどでもかなり使われていますね」



――和紙の畳が世の中に出てきてから、どのくらい経つのでしょうか?


白澤 「もう20年くらい経ちますかね。ここ10年くらいでだいぶ普及してきたと思います。
ペットを飼っていたり、小さいお子さん、それからアレルギーなんかに対応するためにバッと広がりましたね。時代の流れにマッチしたのでしょう」

畳のこれからを考える

実は取材したタイミングは、1年の中で、比較的手が空いている時期なのだそう。
お正月の前に畳を変えて、1月に残りの作業を終えると少しゆっくりできるのだとか!


――いぐさの生産農家さんは今どのような状況なのでしょうか?


白澤 「今は国産の農家はほとんど熊本県にしかないですね。
以前は広島・福岡・岡山などにもありましたが、今は96%が熊本で、農家さん自体も500軒を切っていると思います。
昔は何百軒もあったんですけどね。ですから市場に出回っている製品の6〜7割は中国産だと思います。
やはりいぐさは編むのに手間がかかるのです。
直接熊本まで見にいったこともありますが、1枚のゴザになるまで1時間くらいはかかります。
もちろんこれは編む工程だけの時間です。
その前に刈り取りから始まって、泥染(どろぞめ)と言って泥で染めて、鮮度を保ったまま、耐久性を上げていきます。
ですからいぐさも最初はもっと青々としているんですよ。
畳の落ち着いた色合いは、泥染によるものなのです。
鮮度を保っているので中に空気が通り、暖かく、柔軟で弾力があるのです。
こんなに薄いのに、これを1枚敷くだけで暖かさが全く違います。
フローリングに敷くだけでも変わります。
弾力もありますから、最近では若いご夫婦にお子さんができ、ハイハイするくらいの年齢になると和室にしてくださいってお願いが良くありますよ」



――今の時代、畳の部屋が少なくなっていると思います。需要や市場規模についてはどうでしょうか?


白澤 「大体今のご家庭は、4L D Kくらいのお宅にならないと、和室が1部屋も無い場合がほとんどです。
新築のワンルームタイプでは当然和室では作りませんし、広めのお宅で1部屋あるか、といったところでしょうか。
ただ、今は畳コーナーと言って、3枚分だけとか、あえて洋間に畳を入れるとか一部分だけ畳にするケースは多いですね。
ですから普通の張り替えはもちろんですが、新築の場合は洋間に合わせるご依頼が増えました。
置き畳も依頼されますけど、都内だとそこまで面積が広くないですから『敷き詰めてほしい』とお願いされます」



――ところでそちらの大きなカバンはなんですか?


 

 白澤さんオリジナルの畳のヘリ素材でできた営業カバン!残念ながら非売品です
白澤さんオリジナルの畳のヘリ素材でできた営業カバン!残念ながら非売品です

白澤 「これは畳のヘリの材料で作った特製のバッグです。
お客さんのところに見積もりに行く際に、畳のサンプルを入れて持っていきます。
ヘリの素材で出来てますから、このバッグ自体が見本になります。ご年配のお客さんは趣味でパッチワークなどされますから、自然と“なんですかそれは?!”ってなって商談につながる、なんてこともありますよ(笑)。
お店の入り口ではペット用とか小さいサイズのものを同じように作って販売もしています」



――お仕事中、ありがとうございました。最後にこのお仕事の魅力を教えてください。

 喜ばれることが嬉しいと語る白澤さん、歳を重ねるごとに畳に愛着が湧いているそう
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白澤 「うーん。やっぱり直接喜ばれることかな。
家の中に入らないといけないからとても気を使いますが、その分『替えてよかったです』と言われると嬉しいですよね。
『いい匂いです』と言われることも。
先ほどの通り、住宅事情でなかなか頻繁には替えられませんから、皆さん結構限界ギリギリまで使われるんですよね。
だからやっと替わると、皆さん『気持ちいい』と言ってくれます。その時はやっぱり嬉しいなって思います」



――畳とは実によく出来た機能的な製品であることが、あらためてわかりました。
昔の技術はすごいんですね。そういえば昔は必ず近所に1軒、畳屋さんがあったものです。
今、練馬区では大小含めるとおよそ100軒ほどの畳を取り扱うお店があるのだとか。
現代の住宅事情やペットとの同居などで、素材やサイズなどを変化・進化させながら残っている畳の文化にあらためて感心した取材となりました。

サポーターの取材後記

れんげそう
私の家では今、畳が1畳分しかない。ベッドの上に敷いてある、60㎝×90㎝のもの3枚。
昔の畳のよさにノスタルジーを感じて、箱の上に敷いたものである。
夜はベッド、昼はイスとなる。
昔の、庭先で、手にやかんと口で水をつけながら、糸で一針一針かがっていった畳屋さんと今では全く異なり、機械化されて作られているのを見せてもらった。
家の状況も、昔とは全く異なっている。
カタログで見せてもらった市松模様の畳の部屋はモダンで感動であった。
畳の大きさを昔の2分の1か、8分の1にして、周囲に置いてある家具をどけないで、汚れたり痛んだりした真ん中の部分のみ、表返しする、そんな風にでもしたら、畳も現代の暮らしの中でよみがえるのでは、と思った次第である。
2番さ~ん
畳が時代に合わせてここまで進化しているとの事、お教え頂きました。
生活が和室のない洋式になったがために、やれ絨毯だ、カーペットだと考えてしまいます。
私自身も、“日本の文化は大切に残しでいくべきだ”と常々思っていたのに、気付かぬうちに和室や和の文化を二の次にしていたなと気付かされ、改めて反省するとともに、伝統の畳、その良さを再認識しました。
作業場の壁に掲げられた、素直な心や反省の心など、日常で大事な5つの心がけを示した社是、家訓に白澤畳店の隆盛が凝縮されていますが、その背景には、「お客様にやって喜ばれる事」と白澤畳店社長の一言にあると強く感じとりました。
私達もこの社是、家訓をもう一度立ち止まって読み直し体験して、これからの楽しい人生の糧に、道しるべにしたいと思います。

サポーター紹介

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