サポーター体験記
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世界に羽ばたく企業が東大泉に!見えない場所で大活躍する製品とは?

世界に羽ばたく企業が東大泉に!見えない場所で大活躍する製品とは?
風力発電などに使う超大型トランス・リアクタ前にて記念撮影、その大きさがわかります。
※トランス…電圧を調整する変圧器のこと。電気を使う製品にはほぼ使われている。

皆さんも頻繁に使うスマートフォンや自動販売機。
また、最近目にする機会が増えたハイブリッド車をはじめとする次世代自動車。
これらの製品内部や、そもそも世の中で大量に消費される電気を制御するためのパーツや化学材料の分野で世界的なシェアを誇る会社が、東大泉にあるタムラ製作所です。
見えない場所で、実は練馬の企業が大活躍!なんて、ちょっと誇らしくありませんか?

株式会社 タムラ製作所

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:経営管理本部 /田村 直久さん
所在地:練馬区東大泉1-19-43
電話:03-3978-2111
URL:https://www.tamura-ss.co.jp/

ラジオ販売から製品開発、材料へ!こだわりの会社の創業秘話

――まずは御社の会社概要や事業内容について、簡単に教えてください。


田村 「当社は電気機械器具製造業、つまり電気製品を扱う会社で、事業内容としては大きく3つの分野があります。
まず、大正13年(1924年)にラジオの輸入販売業からスタートします。
日本のラジオ放送が始まるのがその翌年でして、放送開始前にどこよりも早くラジオを取り扱うことを目指しました。
2024年に丁度、この会社は創業100周年を迎えます。
日本におけるこの業界の中では古い方に入るのではないかと思います。
表に銅像があるのですが、田村得松と言う人物が創業者です。今の会長のおじいさんに当たります。
当時彼が、単身アメリカに渡り、自動車のフォードと言う会社で技術者をしておりました。
ちょうどその頃、アメリカでラジオ放送が始まり、『これからはラジオの時代が来るぞ』と、いち早く日本でラジオ事業に着手したというわけです。

 創業者の田村得松氏、どこか開放的な社の雰囲気は彼のアメリカでの経験が反映されている
創業者の田村得松氏、どこか開放的な社の雰囲気は彼のアメリカでの経験が反映されている

ラジオは最初、輸入販売をしていたのですが、製品として販売しますと、当然修理が必要になってきます。
そこから、よりいい音をだせるラジオを作りたいと考えるようになり、今度はラジオ内部の電子部品に注目するんですね。
特に音を出す上で重要な部品がトランスと呼ばれる部品なのですが、現在のタムラの電子部品で主要な製品の一つです。
創業間もなくの1930年くらいからこの電子部品の自社内製造を始めます。
今も“音を作る”と言う観点では、ハンダづけのハンダ、つまり電子回路を結ぶつなぎ目の金属材料は重要です。
音の元、と言うのは電気の信号なんです。
信号がこれらのつなぎ目で飛び出していってしまうと音質が悪くなりますから、ハンダ付け材料のような電気に関わる化学材料、これを“電子化学材料”と言うのですが、この製造も始めます。
ですので、タムラの現在の主要な製品は、電子部品・電子化学材料・放送機器などのセット製品、この3つということになります」

 ご担当の田村さん、難しい分野のお話をわかりやすく解説してくださいました
ご担当の田村さん、難しい分野のお話をわかりやすく解説してくださいました

――トランスと電子化学材料について、もう少し詳しく教えてください。


田村 「トランスは音を出すパーツとして使われていますが、現在主に使われるのは各種電気製品の電源部です。
電気製品は、動かすためにそれぞれ必要な電圧や電流が必要なのですが、
それに合わせて電気の量を調節しないといけないんですね。
トランスは、この電気を調節する蛇口のようなものだと思っていただければわかりやすいと思います。
トランスはあらゆる電気製品の制御に使われており、当社も相当数の製品に供給しています。
今は中国の会社など様々な国のメーカーが作っていますが、歴史的に見ても、当社もかなり古くからこの事業を行っている会社だと言えるかと思います。
次に電子化学材料ですが、ハンダの工業用のものをソルダーペーストと言います。
皆さんがイメージするハンダは針金状で、ハンダゴテで溶かして使うと思いますが、工業用のものは最初からドロドロとした液状になっており、これを印刷のように基板に塗ってそこに部品の方を上から置いてくっつける目的で使います。
これを表面実装と言いますが、これ用のソルダーペーストを世界的に供給できる規模の会社は3社ほどしかありません。
このうちの1つが当社となります」


――最初はラジオの輸入販売から始まり、良い製品を作りたくてパーツに展開し、最後はそれを作るための素材・材料に至るとは、とことんこだわりがある会社なのですね!
しかも電子化学材料で世界規模のシェアだと。
このような企業が練馬にあるとは、全然知りませんでした!


田村 「ありがとうございます。他にも、皆さんの身近なところで言えば、自動販売機(以下、自販機)用の電動押しボタンなども手掛けています。
こちらはわかりやすい製品ですから、練馬のケーブルT Vにも取り上げられました。
シェア的には、日本に置いてある飲料用自販機の9割ほどになっています。

 私たちも頻繁に利用する自販機のボタン、まさかこの製品もタムラ関連だったとは…
私たちも頻繁に利用する自販機のボタン、まさかこの製品もタムラ関連だったとは…

こちらは化学・部品・放送機器と言うタムラの製品の中で若干異質でして、自販機のボタンは株式会社光波(こうは)というLEDを扱う元々は別の会社の事業なのです。
実はこの会社は創業の地が大泉で、創業者が一代で築いた会社でしたが、後継者問題や、自販機事業一本だけですと企業の成長が限定されるという思いから、タムラと一緒にやりましょう、と2008年に当社のグループに入っていただきました。
自販機関連製品はそれから一緒に手がけるようになったものですので、タムラ単体で考えますと直系の事業ではありません。
しかし、練馬区全体の産業界を考えますと、こういった連携も必要ではないかと思います。
同じ練馬区に本社がある会社同士だったのでご縁が成立したのもあると思います」

 タムラ製作所の入り口看板には確かに(株)光波、とあります
タムラ製作所の入り口看板には確かに(株)光波、とあります

――将来に向けての、この分野での展望や御社の方向性などあれば、知りたいのですが。


田村 「電気製品の中で、今大きな変わり目・変革期を迎えているのが、自動車の電動化・電装化です。自動車がガソリンと歯車で動く時代から、電気仕掛けで動く時代に変わってきています。
そうなりますと、中で使われるエネルギー変換の部品や、ハンダの材料、配線板の材料などが必要になってきますので、大きく市場が伸びることが予想されます。
それから昨今カーボンニュートラルと言って、できる限り二酸化炭素を排出しない、地球を温暖化させない、という流れが世界的に進んでいます。
とはいえ、現代の暮らしでは電気製品を使わざるを得ません。
そのため、極力電力を消費しない製品でカーボンニュートラルに貢献する製品作りにシフトしています。
元々、エネルギーの変換を扱う過程において、実はかなりのロスがありますので、効率の良い電源の開発や次世代の半導体などでこの辺りを極めて行こうと言うのが、当社の戦略です」


※カーボンニュートラル…二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を同じ量にして、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること

タムラのこだわりは、成長とともに大型化・世界規模へ

――ありがとうございました。
ちなみに、自販機のボタン以外に、私たちの身の回りにある身近なもので、御社の製品はどのようなものがあるのでしょうか?


田村 「残念ながら、そのまま見える・目にすることができるもの、はほぼ無いと思います。
しかし、例えば皆さんがお使いのスマートフォンの中に“フレキシブル基板”と言って、紙のような基板が入っています。
皆さん、小学校の工作などでは、板状の基板を使用したと思いますが、これだとスマホの中には1枚程度しか入りません。
そこで、ペラペラとした薄い基板を作り、これを何層も入れたり、特殊な形で折り曲げて使っています。
これらに使われる絶縁材=電気が通らない材料をフレキシブル基板用ソルダーレジストと言いますが、これのみのシェアですと、世界で8割くらいではないでしょうか?
細かくは話せませんが、大手スマートフォンメーカーでも当社のフレキシブル基板用絶縁材が使用されています。
ホームページにも出ていますが、これを使用したフレキシブル基板は折り鶴が折れるなど、大変な柔軟性を誇り、割れにくくかつ絶縁性を保つ、ユニークな製品だと思います。


他に身近なものですと、多くの鉄道で使用されている駅員のワイヤレスマイクなども作っています。
家電系で言えば、エアコンの室外機やハイブリッド車をはじめとする次世代自動車に入っているリアクタと言う製品もあります。
これはモーターを回す前に、電圧をあげるための部品です。


それから、今の70代くらいの世代の方には、タムラといえばオーディオ機器だ、と言う方も多いと思います。
今のオーディオ機器はシリコンオーディオ、と呼ばれ、ヘッドホンで楽しむタイプが主流だと思いますが、昔のアナログで音を作るタイプのものは、真空管と大きなトランスを何個も組み合わせて音を作りました。
そうなるとほぼ、音=部品の良し悪しなんですね。
音出し用のトランスを自分で買ってきて、組み合わせてアンプを作ると言うオーディオマニアの方が、昔は結構いらっしゃって、このトランス製造の分野では、当社はかなり有名だったと思います」

 マニアの方にはお馴染みの真空管アンプ、音へのこだわりに絶大な信頼があります
マニアの方にはお馴染みの真空管アンプ、音へのこだわりに絶大な信頼があります

――ちなみに今は、その部品は作ってないのでしょうか??


田村 「細々とやっています。
どうしても欲しいと言う方のためにだけ、特別にお出しする程度ですね。
完全にマニア向けの製品ですから、これで儲けようとは思っておらず、当社製品の愛好家さんへの気持ちで続けています。
ただ、当社の事業が盛り上がるきっかけが、まさにこのトランス事業で、戦後、日本の電機メーカーがトランジスタラジオを製造・販売して成長していったのですが、この中のトランス部品を一手に作っていたのです。
これを機に当社も大きくなり、世界に工場を持つまでになりました」


――壁の地図を拝見しますと、世界規模で拠点があることがわかるのですが、海外展開はいつ頃から始められたのでしょうか?


田村 「1969年の台湾が最初ですね。
ですから50年近い歴史を持つ海外の工場もあるということです。
やはり、70年代、80年代当時は、オーディオ・ビジュアル機器の全盛期でして、日本の電機メーカーが世界のオーディオ・ビジュアル機器を全て作っていたと言っても過言ではない時代でした。
ショールームにもありますが、V T R戦争があった頃が一番華やかだった、と業界では言われています。皆さんにわかりやすくいえば、ビデオのベータとV H Sでどちらが勝つか?なんてことを言っていた時です。
当社は両方の規格に電源用の部品を納めていましたので、どちらが勝ってもよかったのですが(笑)。
それからASEAN圏、その後中国にも進出しました。
ちなみに現在のメイン工場は主に中国にあり、売り上げも海外全体の比率は国内のそれを上回ります。
欧米、ヨーロッパあたりが手薄だったのですが、昨今ではこのエリアを強化するような動きになっています。

 世界規模で展開されていることが事業拠点の地図でわかります
世界規模で展開されていることが事業拠点の地図でわかります

社内でも、風力発電など、環境エネルギーの分野が伸びています。
“電気を調整する”という意味では家電製品でも大型の工業製品でも原理は全く一緒です。
小さい家電製品ですと、どうしても薄利多売になってしまいますので、会社としてもより高付加価値で大きく利益が出るものを、となりますと、必然的にこの分野になります。
発電所などで使われる超大型トランスなどはブラジルなど世界8ヵ国の拠点で作っています。
イギリスやブラジルでは洋上風力発電が盛んですから、このあたりにも当社の製品を納入させてもらっています。
他、少し専門的になりますが、発電所から電気を必要とする場所まで電気を送り届ける送配電用のトランスやリアクタも、当社の製品が使われています。
日本国内ですと、人口も頭打ちですから、世界で勝負していかないといけないと思っています。
これから大きな発展を迎えるブラジルなどの新興国は、石炭から一足飛びで、風力発電など環境エネルギーから電気を作ろうという動きになっています。
タムラグループは世界に工場が展開しているので、より近くで作ってお渡しできる、という点でも優位性があると思います」



――ちなみに、創業が新宿区だったそうですが、練馬区にうつられた経緯を教えてください。


田村 「そうでした。大事な話を忘れていましたね。
実は大戦中、新宿に空襲が来るだろうという話がありました。
というのも当社が作るトランスはエネルギーを変換する装置ですから、これは軍事用途でも使うことができる製品なのです。
ですので、工場疎開で練馬の大泉の地があてがわれ、丸ごと移転したのがきっかけです。
これは、当時の食糧難から、食料調達に便利な農村地帯を探したという経緯もあるようです。
当時の写真も社史に残っていますが、森と畑しかない場所にポツンと工場がある状況でした。
移転してまもなく、山の手の大空襲が来まして、新宿の方は燃えてしまいました。
それでこちらが本社となった、というわけです」

 昭和5年ころ、新宿にあったタムラ製作所の趣のある外観
昭和5年ころ、新宿にあったタムラ製作所の趣のある外観
 昭和19年ころ、東大泉に移転間もない同社の門のあたり、位置関係に現在の面影が感じられます
昭和19年ころ、東大泉に移転間もない同社の門のあたり、位置関係に現在の面影が感じられます

多岐にわたるタムラ製品の宝庫、ショールームをご案内いただきました!

実はタムラの社屋は、創業者の田村得松氏自らデザインしているそう。
曰く、自社製品の巻物部品をモチーフにしているそうで、鉄の芯に銅線をぐるぐる巻きつけるこのパーツは、銅線を巻けば巻くほど電圧が上がり、強い力を生むという事から、社屋も中庭の池も(まるで銅線が)たくさん巻けるようなドーナツ型なのだそうです。
昔は工場のラインもこの社屋の中にあり、ぐるりと一周するとちょうど一つの製品が出来上がったのだとか。すごいこだわりですね。

 社屋が開放的なのは、アメリカを意識し日差しやロータリーをデザインしたからだとか
社屋が開放的なのは、アメリカを意識し日差しやロータリーをデザインしたからだとか
 よく見ると確かに池が正方形のドーナツ型をしています、製品がモチーフだとは!
よく見ると確かに池が正方形のドーナツ型をしています、製品がモチーフだとは!
 電気蓄音器、デザインやロゴがアメリカンなのも創業者のセンスを感じます
電気蓄音器、デザインやロゴがアメリカンなのも創業者のセンスを感じます
 放送などプロ用の音声調整卓、実に様々な製品を手掛けています
放送などプロ用の音声調整卓、実に様々な製品を手掛けています
 こちらが車載用リアクタ、電気でより大きなものを動かすために欠かせない部品です
こちらが車載用リアクタ、電気でより大きなものを動かすために欠かせない部品です

サポーターの取材後記

豆柴
NHKのラジオでこの会社を知り、ぜひ取材をと申し出、快諾頂いた。
結論から言えば実に有益で興味深い取材だった。
100年にわたり時代の要請に応じ、数限りない製品を送り出し、今や日常生活に欠かせない自動販売機、スマートフォン、次世代自動車、風力発電、宇宙人工衛星まで幅広い貢献をされている。
表の創業者の胸像を見るに、井深氏や松下氏など、そうそうたる経営者と比肩される。
このような企業が練馬にあることを誇りに思う。ぜひ「創業者田村得松の一代記」の著作を世に送り出してほしい。
今後のIoT、AI技術の進展、環境問題への対応で未来の産業、社会、暮らしにどのような貢献をされるのであろうか。5年、10年先を想像しワクワクする。
取材してすっかりファンとなり、機会があれば最先端の工場も見学したいと思う。
素晴らしい業績を挙げながら謙虚、しかし今後の技術開発には強い意気込みを感じた。
このような企業で働く従業員は幸せ、さぞ内外からの希望者が多いであろう。
私個人は、今後、電気の効率的な使用に繋がるため家庭用の安価で小型の蓄電器を開発してほしい。
一貫した企業の理念、オンリーワン企業を目指す姿勢に感銘した取材であった。
みかちゃん
大泉学園駅北口から旧清戸道を歩いて8分、タムラ製作所本社はありました。
近隣に住む私は、幾度となくこの前を通っていて「この会社はどんな会社なんだろう?」と思っていましたが、今回の取材で念願が叶い、嬉しく思います。
印象的なのは、中庭の大きな池。錦鯉が数匹、そして飛来してきて住み着いた鴨が3羽、仲良く泳いでいて、電機部品メーカーとは思えない趣がありました。
タムラは電子部品・電子化学実装・情報機器などの商品開発で、今や国内のみならず、海外はアジア・中国・欧米に拠点を展開するグローバルな企業です。
しかし、地元とのつながりも大切にしているそうで、モノづくり教室や職場体験学習、ボランティア活動の実施なども行なっているのだとか。
世界博覧会レベルの多種多様な商品が展示されているショールームの一角には、あの昭和の名歌手愛用のタムラ製マイクロホンがあり、ファンとしては嬉しい発見でした。
地元に住んで50有余年、こんな素晴らしい会社が身近にあったことを初めて知りました。
ぜひ、地元のシニア仲間やできれば小中高生の科学教育にすすめてみたいとつくづく感じました。

サポーター紹介

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