サポーター体験記
250
災害を平常時に体験?!コロナ禍の今こそ大切にしたい、在宅避難について学ぶ
- 取材日
- 令和3年8月17日
- 更新日
様々な災害・震災が発生している昨今、またコロナ禍の今、災害に対する備えも最新化が必要かもしれません。
防災関連の知識はご自身やご家族、大切な方の命を守ることに直結します。
実際の災害を練習することは出来ないですが、体験しなければまた、深く理解することもできません。
この矛盾を解決してくれそうなのが防災学習センターです。
4月に大幅にリニューアルした体験学習施設を取材してきました!
練馬区立防災学習センター
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
取材ご担当:所長/内田 浩二さん、副所長/萩原 洋介さん (練馬区危機管理室区民防災課)
- 所在地
- 練馬区光が丘6-4-1
- 電話
- 03-5997-6471
- URL
- https://www.city.nerima.tokyo.jp/shisetsu/bousai/bousaigaku/index.html
ローリングストックのメリットとポイントを知ろう!
――前回シニアナビねりまで取材をさせていただいた約5年半前と比べ、
現在ではコロナ禍など状況が大きく変わっていると思います。
そんな中、こちらのセンターで力を入れているポイントなどありましたら教えてください。

萩原 「元々、防災の考え方に自助・共助・公助とあります。
私たち危機管理室は災害が起こるたびに発生する課題に対応するべく取り組み、区民の方に自助・共助の部分をお話し・お願いさせてただいています。
防災面における自助活動が以前と比べて大きく変わることはありません。ですが、コロナ禍の状況において今まで以上に意識いただきたいのは“在宅避難”です。
地震の際の避難所のことを練馬区では避難拠点と呼びますが、ここは不特定多数の方が避難してこられます。
新型コロナウイルス感染症のリスクはゼロにはできませんので、その点も踏まえ、在宅避難について丁寧に説明しています」
――在宅避難という言葉は聞き慣れないのですが、どういうものでしょうか?
萩原 「簡単に言えば、被災後に今まで通りご自宅で生活を続ける、という意味です。
もちろん、大きな災害が起これば、ライフラインがストップしますので、それに備えて準備していただいて、その中でいかに生活を続けるかが在宅避難のポイントになります。
練馬区の場合は、在宅避難されている方の水や食料などの備蓄が無くなってしまった場合は、避難拠点で配給を行うなどの対策も行っています」
――私は、妻から東日本大震災の時に備蓄した缶詰を先日渡されて、食べる代わりに「お父さん、新しいのを買ってきて」と言われています。
ローテーションで回していくと良いと聞きますが、詳しく教えてください。

萩原 「それはローリングストックという備蓄方法です。あらかじめ多めに食料や水を購入しておいていただき、日常生活の中で消費して、消費した分をまた買い足していく流れになります。
使い切った瞬間に災害が発生すると家の中の備蓄がゼロの状態になってしまいますから、例えば週に1回しか買い物に行かないのであれば2週間分購入し、1週間分使ったらまた1週間分を買い足せば、常に最低でも1週間分の備蓄がある状態になります。
普段から消費と買い足しを繰り返せば、賞味期限切れギリギリのものを急いで消費する、なんてこともなくなります」
――10年前は慌てて買ってしまい、とりあえず店にあった缶詰を備蓄してしまいました。それらが妻の好みとは違いまして笑。ローリングストックですと、普段使う前提ですから、家族皆が食べられるものを買う、という利点もありますね。
萩原 「その通りです。災害時に大人は我慢して食べることができますが、お子さんは食べ慣れないものを出されるとなかなか口にしませんから、普段食べ慣れているものを多めに備蓄しておくことは大変重要です。
その一方で、いわゆる非常食と呼ばれる、カンパンなども用意しておくに越したことはありません。
ローリングストックは、普段食べ慣れている野菜や飲み物など要冷蔵のものも含まれますので、基本的に日持ちはしないことが多いためです。非常食も合わせて準備しておけば、より万全に近い対応となります。
ただ、例えば停電した時に、日持ちのしない食品がすぐだめになるか?と言えばそんなこともなくて、できるだけ冷蔵庫のドアの開け閉めをなくしたり、冷凍庫のものを冷蔵スペースの上段に移し保冷剤代わりに使うなどし、足が速い食材からどんどん消費していくやり方はあります。
またクーラーボックスなどがご家庭にあれば、そこに冷凍庫の食材を1つ2つ入れてあげれば、より高い保冷効果を保てます。
小さめなものに移し替えて保存するということも災害時の対応方法の1つです」

練馬区における、川の氾濫などの水害リスクの現状を把握する
――いま日本中で水害が多発しています。練馬区のハザードマップを見たことがあるのですが、練馬の水害のリスクはいかがでしょうか。

萩原 「練馬区の場合は、川の氾濫より内水氾濫の危険性が高いです。
規模は大きくないものの毎年のように数件の報告があり、床下浸水やそれに近い被害が出ています。川沿いの地域は、どうしても地形的に水が集まりやすいですから、川が氾濫しなくてもマンホールから水が上がるなどのケースが多いです。
下水道の処理能力は1時間あたり50mlと言われています。
ゲリラ豪雨や、雨が線状降水帯になり、平均して50mlの雨が継続すると、処理しきれなくなり、水が地上に上がってきてしまいます。
また、石神井川は、以前より下流の方から拡幅工事を始めており、現在は石神井清掃事務所(上石神井3丁目)のあたりまで工事が進んでいますので、練馬区の場合は川が溢れるということよりは内水氾濫するというのが現状です」
――それを聞いて安心しました!では、体験コーナーご案内をお願いいたします。
最新の設備で、自宅での災害発生から避難拠点までの避難をリアルに体験!
萩原 「では設備を案内します。
V R(バーチャルリアリティ・仮想現実)ゴーグルをつけての地震の体験から始めます。
この4月に、家の中での地震体験から、地域の活動を学び、避難拠点まで避難する一連の流れをイメージしていただく発災体験ツアーを導入しました。
場面場面での情報ももちろん重要なのですが、実際の災害時により近い状況で流れを体験していただくことでリアルな防災を学んでいただけます」



萩原 「体験いただいた後、原寸大の室内模型を使って具体的に説明をします。
天井部分が透明になっていますが、これはわざとこのようにしています。食器棚に、いわゆるつっぱり棒を設置する場合、梁の部分に設置しないと効果がありません。
どうしても梁が見えない・わからない場合は、直接天井につけず、一枚、板を噛ませることで状況を改善できます。梁が無い場所ですと天井をつき抜ける可能性がありますので」



マイコンメーター(ガスメーター)復旧のシミュレーションも可能です


※ただし、クラッシュシンドロームと言って、重たいものに2時間程度挟まれると、その部分の血流が止まり、救出の際、溜まってしまった毒素が急に全身に回ることで、最悪の場合、死に至ることも。
講習ではその説明も十分に行うそうです。

画面の火が大きくなる前に食い止めます

※時間がかかると「消火剤がなくなりました」の表示が出るそうです

備蓄されている資器材が展示されています

――詳細なご説明、ありがとうございます。
最後に、私たちはシニア向けのホームページで情報発信しているのですが、シニアのグループなどに向け、防災学習センターがアクションされていることはあるのでしょうか?
萩原 「昨年度はコロナ禍で防災学習センターが閉館した時期もありましたが、状況に合わせ、徐々に出前防災講座などの対応も増えてきました。
例えば地域包括支援センターを通じて地域の皆さんに防災について学んでいただいたり、デイサービスの現場にお呼びいただいたりしています。防災は、いざという時に忘れてしまっていては意味がありませんので、年間プログラムなどに組み込まれて、継続し定期的に呼んでいただくのは大変ありがたいことだと思っています。
防災の話をしたり、元消防署員と一緒に出向き、消火器の取り扱い訓練や応急手当てなどのレクチャーもしています」
この他にも萩原さんからは、避難のための非常持ち出し袋の中身について、通電火災を予防するためのブレーカーO F Fの重要性、災害時に現場を狙う空き巣対策のための戸締り、さらに東京都の指定避難場所(=避難拠点とは役割が異なり、火災から身を守るための一時的な避難場所のこと)などなど、実践的かつ具体的なアドバイスや知識をたくさんご説明いただきました。
練馬区では「防災の手引」を全戸配布しています。コロナ禍のおうち時間を上手に利用して、いま一度、ご自身やご家族で目を通してみるのも良いかもしれません。
サポーターの取材後記
- ヒロちゃん
- 「シニアナビねりま」として、防災学習センターへの取材は約5年半振りとなります。有難いことに、地震発生を視覚的に学習するVRコーナーの新設等、更に分かりやすく、面白く(アミューズメント性アップ!)、体験コースが進化していました。丁度、家で災害用に備蓄していた缶詰が賞味期限となり、順に食べていたタイミングでもあり、備蓄食料のローリングストックの考え方もお勧め頂きました。毎年、防災関連の備えを啓蒙・斡旋する活動をポスター等を用いて行っているそうで、食料や水のほかにも家具の転倒防止器具など、大切なものがいろいろあるので利用して欲しい点、また意外と認識されていないトイレの対策、さらにコンビニ・100円ショップ等でも買い揃えられる防災ポーチを持ち歩くのもお勧めとのこと。
災害対策は、まず常日頃の意識が大切なため、防災学習センターへの訪問・見学だけでなく、各地域や施設からセンターに出張をお願いして、学習機会を設けるのも良いと感じました。
おすすめの体験記
-
ものづくり等を通じて居場所も作る!長年続く風通しの良さが自慢の地域の共同体
最近よく耳にする“多様性”という言葉。人種や障害の有無だけでなく、個々の考え方においても、認識が広まってきています。
そんな考え方を根幹に、様々な活動をしているのが、今回取材した「庭のちぐさ」。
お話を聞くと、決して難しいことではなく、お互いを認め合うことで色々なプラスの効果を生み出せるようです。 -
身近なお寺の深〜い歴史!日蓮聖人との繋がりをひもとく取材へ
お寺の創建や成り立ちに興味はありますか?
身近にあるお寺について深く知る機会は少ないと思います。
南大泉にある妙福寺は、「練馬区文化財あんない」にも
掲載される、文化的な価値もある梵鐘(ぼんしょう)が有名ですが、
日蓮宗の開祖である日蓮聖人との深い縁(ゆかり)があることは
ご存知でしょうか?壮大な歴史の流れをひもときにいきました。 -
練馬区にも息づく、文化の潮流 「能」の魅力に迫る
観阿弥・世阿弥に能舞台。歴史やT Vでも良く観る、日本の代表的な
芸能・文化のはずなのに、知っているようで知らない、能の世界。
実は練馬区にもとても身近なところでその文化はずっと継承されています。
どこか敷居の高いイメージですが、
今回の体験記で少しでも身近に感じてもらえたら嬉しいです。 -
糀づくりは科学と経験!丁寧な米糀づくりの作業現場を見学
私たちの生活に欠かせない、醤油や味噌、みりんに納豆、ヨーグルトにチーズ、キムチ、、、これらは全て「発酵食品」です。
都内で唯一の味噌蔵、練馬の「糀屋三郎右衛門」も米糀と味噌を中心に製造しています。
米糀とは?発酵食品が体に良い理由、そもそも米糀はどうやって作るの?
そんな疑問を解決しにいきました。