サポーター体験記
242
人と人とを繋ぐ交流の場「虹のカフェ大泉」の魅力
- 取材日
- 令和3年2月4日(木)
- 更新日
皆さんの笑顔が素敵です
大泉の特別養護老人ホームの一角に、誰でも入れる素敵なカフェがあります。
パワーアップカレッジねりま(現つながるカレッジねりま)の卒業生が作った憩いの場。
つながりが希薄になりがちな世の中に加え、新型コロナウイルス感染症対策
としての外出の自粛。厳しい状況が続く中ですが、その運営を行う浦嶋さんに
今の気持ちをオンライン取材で聞いてみました!
虹のカフェ大泉
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。なお、全ての写真は取材先から提供いただいたコロナ禍以前のものとなります。
取材ご担当:代表/浦嶋 正男さん
- 所在地
- 〒178-0063 練馬区東大泉2-11-21 大泉特別養護老人ホーム 1Fデイサービス食堂
- 電話
- 090-3471-4727
- URL
- https://nijinoka.amebaownd.com/
決め過ぎないから遠のかない、ゆるやかな運営が秘訣!

人を惹きつけます
――まず、虹のカフェ大泉を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
浦嶋 「私はパワーアップカレッジねりまの10期生なのですが、同期に山口という仲間がいました。
彼が練馬区で主催“高齢者支え合いサポーター育成研修”を受けており、
大泉特別養護老人ホーム(以下、大泉特養)で行った打ち上げの場で彼が知人に
『(カフェをやりたいので)どこか場所を貸してくれないか?』と言ったのがきっかけです。
私が施設に知り合いが多かったので、紹介したという経緯です。
まずはパワカレの同期生が集まって語らえる場にしよう!となり、場所を借り、
実行委員会を作ってスタートしました」
――そこから組織が大きくなっていった背景やポイントを教えてください。
浦嶋 「現在、常時来ているスタッフは約20名ですが、実はあまり細かな決め事をしてないんですよ。
もちろん、実行委員会がありますから、会としての規約はしっかり作らなければいけません。
しかし運営にあたっては、メインの5−6人が中心となって、あとはサポートメンバーとして自由に参加してもらっています。
ですので、常時出席の義務もないですし、出勤簿のような管理もしていません。
逆に言えば、こういった福祉関係の活動で、ガチガチに決め事を作ってしまうと、かえって足や気持ちが引けちゃうと思うんです。
だから来られるときに来て、できることをやろうじゃないか、くらいの感じで運営して、4年経っています」
――あえて決め事を作らずに運営するのは面白いですね!
そのくらいのルールと声がけが会を大きくする秘訣かもしれませんね。
何もしない日を作ることが、アイデアが生まれるポイント?!
――ホームページを見ますと、毎週何らかのテーマを持って取り組まれている様子がわかります。
この辺りの企画はどなたが考えていらっしゃるのでしょうか?毎週って結構大変そうなのですが。。。
浦嶋 「そうですね、僕と手芸担当が2人、折り紙の担当、イベントの担当の5人で行っています。
このメンバーで3ヶ月単位くらいのイベントスケジュールを立てて、考えています。
毎週やってはいますが、コツは“何もしない日を作ること”でしょうか。
ぎっしりイベントを入れてしまうと運営側の負担になってしまいますので、何もしない日を設けて、
その日はみんなでゲームをしたり、歌を歌ったり、ハンドベルをしたりとその場の発想で行っています。この案はスタッフの方から提案があったのですが(笑)」

――詰め込み過ぎないことで、利用者さんとの交流も生まれるんですね。
何かエピソードみたいなものはありますか?
浦嶋 「4年やっていると、結構ありますよ(笑)。
例えば、もう3年くらい前かなぁ。認知症のおばあさんが、ふらりとカフェの前を歩いていたんです。
我々の仲間には介護士さんや看護師さんがいますので、『あれ?ちょっと様子が変じゃないか?』と
すぐに気づきました。そこで中に入って座ってもらったんです。
質問してもやはり要領を得ない。弱ったなぁと話をしていると、娘さんが追いかけてこられたんです。
色々と話を聞いて、『じゃあ、ここは毎週水曜日にやっているから、よかったら遊びに来てくださいね』、って
お声がけしたら、その次の週から頻繁に来られるようになりました。
仲良くなってから詳しく話を聞くと、そのおばあさんは元々一人暮らしで、徘徊しがちだったらしいんです。
だから面倒を見るために、今は娘さんが一緒に住んでいると。施設に入れるのは忍びない、と話してくれました。

(※写真は一例です)
最初はおばあさんの表情も固かったのですが、カフェに来て手芸をやったり折り紙をやったり、
半年くらい色々していくと、ものすごく明るくなったんですね。
みんなでいいね!良かったね!なんて言って喜んでたところ、急に来なくなりました。
その後少し経ってから、娘さんが顔を出してくれて、『ありがとうございました。母も喜んでいました』と。
みんなで残念だったなぁ、と思いつつ、でもちょっとの時間だけど、触れ合うことができたし、
あの最高の笑顔は私たち虹のカフェにとっても宝物だね、なんて話すんですよ。
今でもその笑顔の記念写真は大切にとってあるんですよ」
人が来なくても開けておく、おもてなしの気持ちを届けたい
――いま、新型コロナウイルス感染症がありますから、例えば認知症の方などは、
普段以上にコミュニケーションが取りづらくなっていると思うんです。心配ですよね。
浦嶋 「そうですよね。そんな状況ですから、私たちの活動も、今はいったんお休みしています。
それでも、(認知症の方は習慣で)時々いらっしゃる方がいます。
だから水曜の午後は私だけ、カフェに出向いているんですよ。
昨日も私ともう一人来たメンバーとで、『ヒマだから枝おろしでもやろうか』となって、
ボランティアしてましたよ(笑)。
そんなことをしていると、通りかかった利用者さんが『まだぁ〜(開かないの?)』なんて声をかけてくれてね。
今はこういう小さな接点でコミュニケーションを取るしかないですよね。
虹のカフェのシステムとして、参加費(=利用料の意味)として100円いただいているんです。
本当はタダでも良かったんですが、メンバーで話し合って、『いや、100円払ってでも来たい、
来たんだ、っていう気持ちを持ってもらおうよ』となって、いただいています。
今はコロナの影響で、万一があると大変ですからきちんと受付で連絡先などを書いてもらっていますが、
それまではニックネームでもなんでもいいですよ、ってしてたんです。
ただ、こういう事態になると、例えば長期のお休みのときに、お便りで連絡することもできると思うんです。
だからよくいらっしゃる皆さんの連絡先を把握してなかったのは、悔やまれる点ですね。

カップでいただけます!これは嬉しい!
仕方がないので、表のポストにこちらからのメッセージ、例えばいついつまでお休みしてます、
なんて書いたものを入れておいて、気づいた方に取ってもらうようにもしています。
意外とすぐになくなっちゃうんですよ。
この間のクリスマス会は、カフェが長い期間お休みしていたので、
利用される方にあまりにもご不便をおかけしているなぁと思い、手作りのプレゼントを50個作って、
新型コロナ対策を十分に行った上で配布会を企画したんです。
ただ、宣伝する方法がない。それで表にポスターを貼って、携帯でアクセスできる二次元バーコードを作って、
と工夫をしたら、あっという間に35人予約が来ました。
様々な利用者さんたちから『私は聞いてないよ!』なんて怒られちゃいましたけど(笑)」

ツールで活動を告知!
――素敵ですね。プレゼントはどんなものを作られたのでしょうか?
浦嶋 「大したものじゃないですよ。お菓子とか折り紙とか、クリスマスカードとか。
特養では施設利用者さんが大勢いますから、施設内感染を避けるために、今の時期は一般の方も
ご親族も中に入れないので、表の大きな藤棚を飾り付けして、そこで配布したんです。
私たちもコロナで約1年、何もできていない状況ですから、悔しさはありますね。
その中でなんとかして繋いでいかなくちゃいけない。スタッフもそうだし、利用者さんもそうです。
ずっと家の中に篭りきりだとどこか気持ちがおかしくなっちゃいますよ。
特養の施設長さんもなんとかしないといけない、とは常々考えてくれています。
そこまで言ってもらい、(練馬区社会福祉事業団さんには)本当にありがたく、こころより感謝しています。
だから早く状況が好転して、皆があつまれるようになる日を心待ちにしていますよ」

ものが人気が高いのだとか
再開後は、とにかくコミュニケーション!温かく迎えられる場を取り戻す
――活動の再開はコロナ収束後になると思うのですが、最後にカフェの今後の目標などあれば教えてください。
浦嶋 「カフェとしての大きな目標はまだなく、まずは安全性の確保、
それからスタッフとのコミュニケーションの再構築、これを最優先に行うことが目標でしょうか。
今もL I N Eなどを利用してスタッフ間で連絡は取り合っていますが、最初こそなんとかなりますけど、
ここまで長引くと仲間も篭っている人が何人もいますから、段々と疎遠になってしまいます。
嫌がられてもなんでも、『おーい!返事しろよー』とかポンポン連絡しています。
ビデオ通話なんかも考えているんですが、部屋が汚いから映ると困る、なんてみんなで言ってますよ。
私もそろそろ背景として使う、グリーンバックを買わなきゃな、と考えてます(笑)
とにかく、T Vをつければ暗いニュースばかりですから、それだったら例えば韓流ドラマの一つでも観て、
気を紛らわそうよ、なんて声を掛けあっています」
――浦嶋さんのお話を聞いていると、人との繋がりをとても大切にされていると感じました。
老いや体の変化は誰にでも平等にやってきますが、こうした繋がれる場所があると、なんだかとても安心します。
カフェが再開したら、今度はお客さんとして立ち寄ってみたいと思います!
サポーターの取材後記
- ynishi
- 緊急事態宣言中によるZOOMでの取材だったので、実際に現場を見る事が出来なかったのと、「虹のカフェ大泉」自慢のコーヒーが飲めなかったのは残念でした。しかし、浦嶋さんのお話や、事前に配布のあった紹介資料を見る限り、数々の子供からお年寄りまで楽しめるイベントや、地域での繋がりが伝わってきました。このように地域が繋がる場所が練馬区内の方々にあると、練馬も、今以上に活気づくのではないかと感じました。
また、パワカレ(地域福祉パワーアップカレッジねりま(現:つながるカレッジ))の同期の絆。これは、パワカレ後輩としては見習いたいものです。コロナが落ち着いてカフェも再開したら、絶対に遊びに行きたい場所です。
- ヨスケ
- 「虹のカフェ」の成功はなんといっても「パワカレ」と”浦嶋さん“の存在でしょう。コツは“何もしない日を作ること”でしょうかとのことですが、ぎっしりイベントを入れてしまうと運営側の負担になってしまいます。それで, 何もしない日を設けて、その日はみんなでゲームをしたり、歌を歌ったり、ハンドベルをしたりとその場の発想で行っている。ゆるいけど しっかり人を見る心が浦嶋さんと中心メンバーの中に息づいている。こんなカフェが練馬のあちこちに出来ると良いな!と思いました。
おすすめの体験記
-
社会的な自立を本気で支援する町の製菓店、店に工場に流れる心地よい風
練馬駅と自宅を往復するつど、なんとなく目が行く小さなお店があります。
その佇まいや雰囲気がとてもおしゃれな焼き菓子屋さんです。
緑に囲まれたテラスと庭には、四季折々で輝く花たちが目に鮮やかです。
ここは社会福祉法人花水木の会が運営している、知的ハンディキャップを持つ方の働く場、「かすたねっと」です。 -
身近な氷川神社の長い歴史を、地域との繋がりから紐解く
石神井公園のほとりにある氷川神社。
私たちも、公園同様身近に感じており、日々、お参りに行かれる方も少なくないと思います。
三宝寺池には厳島神社や宇賀神社(穴弁天)、水神社もありますが、これらの神社の繋がりとは?
また氷川神社創建の歴史は?度々目にする場所でも意外と知らないことだらけです。
今回は、そんな、地域と共に歴史を紡ぐ氷川神社についてお話を伺いました。 -
紙芝居は総合芸術?!練馬の歴史を伝える「紙芝居サークル」
シニア世代には懐かしい、紙芝居。実は練馬区の歴史、「ねりまの昔ばなし」を区内12の図書館に、紙芝居として制作し、届けているサークルがあるのはご存じですか?
お話を伺って驚いたのは、1作の制作を全て一人で行うこと。実は奥深い、紙芝居づくりの裏側を、取材して来ました。 -
練馬に息づく伝統工芸「手織り」、魅力は自然の力と作家の人柄にあった!
草木染め作家の小熊素子さんは、機織りを始めて半世紀。
練馬区で染めと織りを、たった一人でこなしながら、温かく優しく、
そして上品な織物を作成しています。
小熊さんの手によって丹精込めて作られた着物やショールなどの作品たちは
私たちシニアが思わず手に取って触れて慈しみたい優しさに満ち溢れています。
そんな奥深い手織りの魅力をオンラインで探りに行きました。