サポーター体験記
238
人と人とを繋ぐ奇跡の「糸」?!楽しく創作活動を行う「まゆの会」
- 取材日
- 令和2年12月7日(月)
- 更新日
マスク越しでも笑顔なの、わかります?
皆さんは習い事の経験はありますか?
時間を忘れて夢中になったこと、なんとなく嫌気がさして途中で止めてしまったこと。
そんな思い出の一つ二つは、誰しもあるかもしれません。
NPO法人健生会が主催する「まゆの会」は、総勢30名を超える生徒さんが和気あいあいと教室に通っています。
その楽しさや明るい雰囲気の秘密を聞いて来ました!
まゆの会(N P O法人 健生会)
取材ご担当:代表/濱 寿美子さん、スタッフ/中加 博子さん、柳瀬 紀子さん
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。
形を変えて35年、3代目まゆの会とは?
――まゆの会の生い立ち、いつ位からどんな経緯で始まったのか、教えてください。

先生の明るい雰囲気が教室の空気を作っています
濱 「実は私たちが最初から“まゆの会”を主催していたわけではなく、前任者の中村さんという方がお年を召されて、活動を続けることが難しくなったんです。健生会の名誉会長の青木さんと私は、練馬区のパワーアップカレッジ※で福祉の勉強をしていた仲間でして、その時に『できれば私の代わりに濱さんがやってくれないか?』と頼まれまして。一人ではできませんが、仲間がいれば何とかやれると思います、と言って引き受けたのが始まりです。
※…パワーアップカレッジ 通称:パワカレ(つながるカレッジねりま)についての詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/kuseisanka/kyodosuisin/tsunagaru.html
元々私自身は、染めとか織とかのリフォームの教室を開いていました。
古布(こふ)を使ったり、着物の材料である絹や着なくなった着物を捨てちゃうのはもったいないなと思い、
教室を始めたんです。先代である中村さんはビーズを使っていましたし、
一番最初の方は皮を使ったクラフトをされていたそうですよ。
ですので同じまゆの会でも形を変えながら継続しているんです。
私も資格などを持っているわけではありませんので、
モットーとしてただただ、”誠意を持って一生懸命にやる”ということを掲げました。
できなかった時は、ごめんなさい!(笑)って素直に謝ります。
生徒さんをそのまま引き継いだ形で、もうかれこれ5年くらい活動を続けていますが、
とにかく生徒さんみなさんが本当にいい人ばかりで、
私たちの失敗を責めず色々お教えしてくれるんです、ありがとうって。
それが続いている秘訣ではないかと思います」
――まゆの会の特徴やポイントを教えてください。
濱 「正直、この5年の中でも、例えば認知症になってしまったり、
体の具合が悪くなって来られなくなった生徒さんもいらっしゃいます。
そうかと思えば、もう80代の生徒さんも頑張っていらして、私たちが教えたことを応用して、
自分でベストなんか作って着て来てくれたり、ブローチを教えたら次の週には実際に身につけていらしたり。
『面白いわ』って一生懸命に取り組んでくれる方もいらっしゃいます。
みんなが一つのものを作る中で、集まって、おしゃべりして。
この会に参加しなければ、家でゴロゴロしていただけの時間が、来るためには髪もとかさないといけない、
洋服も選んで着替えなきゃいけないから良いわって言って下さいます。
でもこの「出かけてくることが目的になる」ってとても大事だと思うんです。
パワカレで福祉のことを学んだ際に、こういった“場所の提供”の重要性はもちろん、
手を動かすことによる認知症予防の意義も感じていましたので、
楽しみながら物を作れる場所として、まゆの会を運営している感じですね。

手先を使う細かい作業の繰り返し!
生徒さんはもちろん、私も、年をとってくると針に(糸が)通らなくなったり、
同じことでも時間がかかるようになってしまいます。
この組織も段々とリニューアルしていかないといけないと思い、
この度、若いスタッフの柳瀬さんにアシストしてもらおうと思っていた矢先に、
シニアナビの取材というお話しをいただきました。
今日まさに、『これからこの3人で色々楽しく活動を仕切り直して行きます!』
という発表を皆さんにしたところでしたので、本日サポーターの方とお話ができて、
ああ、ラッキーなタイミングだな、なんて思っていたんですよ」
プログラムや材料調達の工夫で面白さ倍増!でも一番大切なのは・・・
――ところで生徒の皆さんお元気ですよね!どんなところに秘訣があるのでしょうか?

おひとりに気を配り、サポート
中加 「生徒さんの平均年齢は70歳・・・80歳近くなるんじゃないかしら?
75歳以上なのは間違いないと思います。
それでも皆さん、ここに来られる時は、何かしよう!という強い意思が感じられて、
とてもはつらつとされていますから、年齢は感じませんね。
やはり常に会話が生まれる環境が良いのだと思います」
濱 「元々、(健生会の)青木さんからまゆの会を引き継いだ時には、
まゆから出る細い糸がありますよね?それを紡いでいくように、人の輪を作っていくことが目的なんだ、
というようなことを聞いて、当時は私もよくわかっていませんでしたから、
ああ、それならば単純に糸とか針とか使う教室が良いのかな?なんて考えてやって来たのですが、
最近ではそれよりも“繋がる”ということを意識するようになりました。
生徒さんとの人間関係の繋がりも大事ですし、元々の発端であるパワカレの繋がりというのも、
とっても大事なんだなとしみじみ思います。
こんな(コロナ禍の)状況ですが、それでもこうして
この場所に皆さんが集まってくれることに本当に感謝ですよね。
一番の若手である、柳瀬さんはどう感じますか?」

また一つ、世代を超えた繋がりが生まれます
柳瀬 「私も、元々、パワカレでご一緒させていただいていた仲間なんです。
お二人のように裁縫などのスキルは全くありませんが、先ほどお話しがあったように
“人と人との繋がり”を私自身も大事にしながら、スタッフの一員として
楽しく明るい環境を作れたらいいなと思って参加しています」
――今日はつまみ細工のくす玉とまゆ玉の制作ですが、
教室では他にはどのようなものを作ってらっしゃるのですか?

お正月に玄関先を華やかに彩ります
濱 「織もやりますし、木を束ねて額を作ったりブローチも作りますし、色々なことをしています。
次の1月にはチュニック(ワンピースよりも短く、ブラウスよりも長い丈のトップスのこと)を、
この前はメッシュ織をしました。バッグも作りますよ。
今まではほぼひと月に1個のペースで何かしら作っていましたね。
ただペースは人それぞれですので、最近は、皆さん全員がついて来れるように
1~2ヶ月に1つくらいのゆったりとしたペースで作成しています。
教室は13時から16時の開催ですが、手元で集中しながらチクチクとやってるとくたびれちゃうでしょ?
だから大体15時くらいが集中力のピークなんですよ。
ここで深追いせずにパッとやめる。
そうすると皆さん『またやりたいわ』なんて言って帰られます。
いつまでに作品を完成させられるか?を全部計算してこれは2回でできるな、
これは3回は必要だな、と逆算して授業を設計しています。
簡単なものの次には難しいものを、など波を作るのもポイントですね」

ようなクオリティに驚きです!

身の回りにあるだけでぐっと華やかに
――なるほど!飽きさせない工夫もあるのですね。
今日のプログラムは、濱先生が考えて設計されたのですか?
また、まゆの会は濱さんが引き継がれる前から同じことをされていたのですか?
濱 「プログラムは、私がアイデアを出すことももちろんありますが、
それでいきなりO K!ということはなくて、試作品を作る中で、
そもそも皆さんができそうかどうかを考えます。
難しすぎれば当然ボツです。
また私たちはボランティアでやってますが、材料費は皆さんから1,000円ほどいただいています。
生地の調達や通信費、ボンドやハサミなどの消耗品など含めると、
採算が合わないこともありますが、私たち自身も楽しいですから。
先程の話のように、制作物の難易度と教室のプログラムを設計して、
逆算して、必要な材料を揃えに行きます。骨董品(の着物)を探しに行ったり、
ぼろきれを見つけてきたり、原価を計算しながら、年間で平均になるように上手くやりくりしています」
人と人とをまゆの糸のように繋ぐ、これからのまゆの会のカタチとは?
――濱先生やスタッフの皆さんも、イキイキと楽しまれているのが印象的です!

なんだか元気な気持ちに…!
濱 「生徒の皆さんだけでなく、私たちも授業の内容に知恵を絞ることで、脳が活性化していると思います。
例えば授業で使う生地もアルモノばかりではなく、時には雨の中骨董市に出向き調達して来たりもします。
それを細かく裁断して、色々なパーツを作って生徒さんに提供した時に
『わあ、面白い!』ですとか『いやだぁ、こんなの難しくてできないー』なんて言われながら、
でも出来上がると嬉しい!と言ってくださるのは、企画する私たちも楽しいことなんです。
ですので、教える私たちも、教わる生徒さんも、お互いに良いバランスが取れていると感じています。
特別なことはしていなくても、グループが育ってくれていることに、私自身感謝しています。

運営する上での大きな励みに
全部教えるのもいけないと思っていて、細かいことをアレコレ指示されると嫌になりますよね?
ですから、おおよその作り方を教えたら、『後は自分の感性・センスでやってみてね』と手を離しています。
皆さん自分で工夫されて作ったものが、別の友達や別の場所で
「え!あなたが自分で作ったの?」なんて褒められれば、それが一番嬉しいですよね。
その経験がまた、この教室でもっといいものを作ろう!という気持ちにつながることを見聞きしていると、
正直、お金のことなんか忘れちゃいますね(笑)」
――最後に、今後はどのような活動をされる予定ですか?

注目して行きたいと思います!
濱 「もうこの活動が5年になりますし、やはり私たちも生徒のみなさんも年齢が上がっていきますから、
どういう形で継続させていくか、という問題は、よその団体同様に、大きな課題です。
私たち3人で、アレコレ会話しながら、お茶を点ててお茶会を開いたり、
私の友人の琵琶奏者を呼んでコンサートをしたり、美顔の講座を開いたり、
柳瀬さんのアイデアで香り(アロマ)の勉強はどうか?なんてアイデアも出てますし、
他にも粘土や皮を使ったブローチ作りなど、今後の展望はいくつも考えています。
縫い物だけでなく、幅を広げて面白くしていければ、
若い世代の皆さんにも楽しんでいただける活動になるのでは?と思っています。
生徒さんの中にもとてもすごい技術や経歴をお持ちの方がたくさんいらっしゃいますから、
そんなみなさんに先生として活躍の場にしても良いかもしれませんね!」
――濱さん、スタッフのお二人の先生方、ありがとうございました。
サポーターの取材後記
- Zenさん
- まゆ玉から一本のシルクを撚り、糸にし、さらに美しい織物に仕上げる、その素材着物生地(友禅染等)を裁断し、超高齢者が幾本の針と糸で根気強く、思うように動かない指で、美しい芸術的完成品に加工する。まるで、まゆの会の会員一人一人の育成・教育過程を見ている様でした。
健康長寿社会において後継者不足をよく聞く事が多くなってきた現代で、まゆの会は順調に後継者委譲が出来ている団体で、高齢者達が代表者や後継候補者を良く盛りたて育てておられる事に大変感銘を受けました。会の運営基軸が「人と人」に置き「友愛」「絆」を非常に大切にしている事を「ひしひし」と感じ、私にとっては有意義な取材でした。
- リツさん
- 最初に目に飛び込んで来たのが、玉飾りで1.5~2cmの花弁パーツを作りそれをボンドやまち針で玉に留めながら付ける、75個の花弁と4枚の葉っぱを、懸命に素敵な玉飾りを作っておりました。
代表の濱さんは、前会長より「まゆの会」を5年間は担当してほしいとの約束で引き継ぎました。毎月新しい作品を考え続け5年経過しましたが、その間パワカレ同期の「中加」さん「柳瀬」さんの2人や生徒さん達がみんな楽しく作って、協力してくれました。今は、ゆっくり進めていけば良く、皆様の「居場所作り」にもなっていますし楽しくおしゃべりをしながら、作品を完成させるのも自分達の息抜きにもなる。加えて生徒さん達も化粧しておしゃれをして、お出掛け出来るという事が、元気の源とボケ防止になると話して下さっていますので、あと少し続けようと変化しつつあります、との事でした。是非とも「まゆの会」の継続と活躍を切に願っております。
おすすめの体験記
-
現代の町家?!練馬の街に新しいコンセプトの店舗兼住宅が誕生!
練馬駅から徒歩15分。閑静な住宅街に現れる、開放的なテラスを伴うモダンな建物、
それが欅の音terrace(テラス)です。
とかくプライバシーが重視されがちな現代の賃貸物件において、都会の真ん中で住人同士、
そして地域と触れ合う独特の空間の詳細を、入居者さんと企画担当者に取材してきました! -
健やかに、楽しく人生を謳歌する。そんな生き方のヒントを健生会で見つけた
誰でも、少しでも健康で、出来れば楽しい人生を送りたいもの。
仕事がひと段落した方も、まだまだ現役の皆さんも、第二の人生に
仕事では得られなかった経験や人脈を期待するのは当たり前のことだと思います。
健康と生きがいの会と書いて、健生会(けんせいかい)という団体があります。
35年を超える歴史を持ち、会員の年齢幅も広いその理由の一端を聞きに行きました。 -
練馬に名品&名スポットあります!練馬のお土産と観光を知る
練馬区は暑いとか、練馬大根が有名・・・は知っていても、練馬区のお土産や観光スポットをすぐに思いつくでしょうか?今回は、住んでいるのに意外と知らない、そんな情報を聞きに、ココネリビルの3Fにある「産業・観光情報コーナー」を訪ねてみます。ご家族にも区外のお友達にも、きっと自慢したくなる魅力がたくさん見つかるハズ?! -
いつまでも子ども心を持った大人たちの集まり!頼れる救世主「おもちゃドクター」
誰でも一度は手にしたことのある、おもちゃ。 懐かしい想い出の反面、壊れてしまった、動かなくなってしまった、 なんて、ちょっと切ない記憶もあるのではないでしょうか。 今回はそんな子供たちの救世主、ねりまおもちゃクラブの 「おもちゃドクター」にお話を聞いてきました。