サポーター体験記
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現代の町家?!練馬の街に新しいコンセプトの店舗兼住宅が誕生!

現代の町家?!練馬の街に新しいコンセプトの店舗兼住宅が誕生!
店舗兼住宅、名前のとおり
大きなテラスが際立つ場所です

練馬駅から徒歩15分。閑静な住宅街に現れる、開放的なテラスを伴うモダンな建物、
それが欅の音terrace(テラス)です。
とかくプライバシーが重視されがちな現代の賃貸物件において、都会の真ん中で住人同士、
そして地域と触れ合う独特の空間の詳細を、入居者さんと企画担当者に取材してきました!

欅の音terrace

取材ご担当:住人調整役(管理人)/岸本さん、企画担当者/スタジオ伝伝 藤沢 百合さん
※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。

所在地
練馬区桜台5−11−18
URL
https://narimanowa.com/estate/keyaki/
SNS
https://www.facebook.com/narimanowa

小学校の真裏に魅力的なオープンスペースが登場?!

――この建物をご利用になって、ご存知のこと、第一印象などをお聞かせください。


岸本 「1Fは店舗兼住宅、2Fはアトリエのように利用して住めるようになっています。
住みながらちょっとした“生業(ナリワイ)”ができますよ、というのが特徴の場所です。
この物件が、一昨年の11月くらいですかね、元々古いアパートだったのですが、
リノベーション(大規模改修)が終わって、入居者募集が始まったと記憶しています。

 岸本さんは、入居者のみなさんの活動を
まとめる調整役を担当されています
岸本さんは、入居者のみなさんの活動を
まとめる調整役を担当されています

私がちょうどその時、店舗物件を探していたのですが、子供向けの教室をやっていますので、
不動産屋さん側から見ると、子供の声がうるさかったり、思わぬ怪我等のリスクもあるため、
貸し手さんがよく思わないケースも多くて、なかなか物件が見つかりませんでした。
そんな中、たまたまこちらを見つけて、教室も可ということでしたので、引っ越して来ちゃいました。
私の場合はまず店舗ありきで探していたので、割と即決でした」



――なぜここなのか?というのがすごく疑問でしたが、
岸本さんが子供向けの教室をされてると伺って、ピン!ときました。
小学校の真裏ですものね。納得です。

 休日やイベント時には近所の方や、
店舗の常連さんが覗きにきます
休日やイベント時には近所の方や、
店舗の常連さんが覗きにきます
 こんな可愛らしいチョコバナナなら
小さなお子さんも嬉しいでしょうね!
こんな可愛らしいチョコバナナなら
小さなお子さんも嬉しいでしょうね!

岸本 「ここは見通しもよく、開けている場所なので、ご家庭のお母さんたちも預けやすいみたいですね。
今日も午前中、講座をやっていたのですが、別の小さい子も覗きに来てくださいました。
住宅街の中にありますから、私のような教室をやっている店舗と、飲食や物販の店舗さんは、
また細かな事情は異なると思いますが、環境としてはとても良いと思っています」

入居者が集まる場所は、お客さんも地域も繋がる場所

――ところでこのスペースは、明るくてとても居心地が良いですね。
庭にはみかんも生えてますし。。。入居されてる皆さんが集まる場所なのでしょうか?

 今回、お話を伺った場所は
入居者が自由に使えるスペース
今回、お話を伺った場所は
入居者が自由に使えるスペース
 光が差し込み風の通りが心地よい、
開放的な空間です
光が差し込み風の通りが心地よい、
開放的な空間です

岸本 「ここはDo Spaceと呼んでいまして、フリースペースのような形で
住人同士の交流などに自由に使えます。
他にも講座とかワークショップなどを開催する時に借りることもできます。
先日私も、自分の教室、算数など学習系の他に、図工の教室もやってますので、
子供たちの作品の展示会をこの場所で開催しました。
ちょうど白い壁なので、作品がとても映えました。
お客様が飲食のお店さんで買ったものを、ここで自由に食べて頂けるスペースでもあります。


正直、大家さんの立場で考えると、ここも他の部屋と同じように店舗兼住宅として作り、
貸した方が(収入の面では)良いと思うのですが、
欅の音terraceの意図でフリースペースにしていただいているのは、ありがたいですね。
それ以外にもこのスペースがあるのはすごく意味があると思っています。
ここの住人同士は、とても仲が良いのですが、なかなか自宅のプライペートな空間に招き入れるのって、
ハードルが高いですよね?
こういうスペースがあると、気軽に一緒に食事したり、日常的に会話したりが自然とできますので」

自由にのびのびと子供に教える、建物の在り方と同じ?!

――先ほどお話しに出ました図工の授業というのは、具体的にどのようなことをやっているのでしょうか?


岸本 「もちろん絵を描いたりもしますが、あまり普段使わない材料と言いますか…、
例えば今日は布の端切れを貼ってそれで絵を描く、なんてことにチャレンジしたり、
実験っぽいことをやってみたり。私の父が野菜を作っているのですが、
新鮮な野菜が届いたときに『あ、これは使えるかな?』と思って、まずは野菜の写生をして、
その後に例えばスナップエンドウのスジ取りをみんなでして、茹でて食べる、とかやっています。
結構自由気ままですね(笑)!図工好きなお子さんたちが集まっているので、
図工メインではあるのですが、学問のジャンルはなくて、
“図工+総合”というふうに位置づけています」

 岸本さんの教室のお子さんの作品、
よく見ると、卵の殻を利用!
岸本さんの教室のお子さんの作品、
よく見ると、卵の殻を利用!

――海外でのご経験があると伺っています。それは授業に取り入れたりしないのですか?
昨今、小さいお子さんの英語学習のニーズは高そうなのですが。


岸本 「私自身、語学は得意なのですが、個人的に言語は“ツール”だと思っていまして、
それよりも話すための情緒的な部分を豊かに育てないと、たとえ英語や他の言語が使えても、
伝えたい内容が乏しくなると思うんです。
土台の部分をしっかりやりたい、という気持ちがあります。
ツールは後からでもやる気になればいくらでも手に入れることができます。
それよりも『これは何?』とか『これをもうちょっとやってみたい!』とかの気持ちが大事なんです。
今の子供たちは習い事がすごく多くて、自由に、好きなように、
ふんわりやれる時間って意外と少ないと思います」

欅の音terraceを作った意義を企画担当者にも直撃!

――まず藤沢さんと欅の音terraceの関わりを教えてください。


藤沢 「私の前職が設計や不動産の会社でして、そのお客様に、こちらの大家さんがいました。
その時は、別の案件で何回か提案をさせていただいていましたが、
この時はタイミングが合わずに実現しませんでした。
その後、私が独立した後も個人的なお付き合いが続き、ある時、ご相談がきたのがここでした。
ただその時は私がもう、岐阜県の郡上八幡にメインの設計活動拠点をうつしておりまして、
東京と行ったり来たりでなかなか現場を見る時間が取れないため、
設計デザインをつばめ舎建築設計さん(設計事務所)にお願いし、一緒にやろう、という流れになりました」

 企画を手がけた藤沢さん、
ライトアップされた欅の音terrace前で
企画を手がけた藤沢さん、
ライトアップされた欅の音terrace前で

――設計のコンセプトについてお伺いします。街に馴染むデザインや、
これだけ贅沢にテラスを使っているのには、藤沢さんの特別な思いがあるのでしょうか?


藤沢 「大家さんはチャレンジングな方でして、
“普通の賃貸住宅にはしたくない”、“街の方々に喜んでもらえる場所にしたい”
というオーダーをいただいていました。
また、大家として、自分たちも歳を取っていく中で、細かいメンテナンスだけでなく、
都度現場に飛んでいき対応するのはなかなか難しい。
そこで、入居者の皆さんと上手に運営していけるような、そんな関係性の物件にしたいと言われました。
この建物は、元々あったアパートを改修したのですが、昔の作りなので敷地をゆったり取っていたり、
日当たりが良かったりと良い面が多いです。現代にありがちな経済設計で敷地いっぱいに建物を建てて、
効率的に経営をしようという感じではなく、ゆとりを持って建てられているんですね。
でも、現代では物件探しはネット検索が主流ですので、どんなに魅力的な物件でも、
例えば築年数ですとか、駅から徒歩何分というスペックだけで検索から外れてしまい、
現地を見てもらうまで至らないのです。現地を見れば、物件の良い点を実感できるのですが・・・。
物件の価値というのは、スペックだけではなく、大家さんとの関係性であったり、
地域とのつながりだったり、年月が経っても、そういうことにも価値を見出せるような建物にしたい
という願いが大家さんと我々の間にありました」


藤沢 「デザインに関して言いますと、私は現在、郡上八幡を拠点に設計の仕事をしているのですが、
ここはまさに古くからの町家が今も立ち並ぶ街並みです。縦に細長く、前の母屋で生業(商売)をし、
中庭を挟んで、奥の離れに住まうという形です。
一戸が店舗兼住宅なんです。街の様子を見ていても、みなさん商売をされていますので、
店の前は清掃しますし、当たり前のようにお隣さんの前もついでに綺麗にしてあげて。
みなさん、ほとんど個人事業主ですから、ちょっと買い物に出るときに、
お隣さんに『店を空けるから、見といてくれんかな?』なんて出かけたり、
古き良き日本のお互い様の文化が残っているんです。
介護の問題などでも、町内全体で気をつけて見ていたりして、
万一おばあちゃんが出歩いてても、家に連れて帰ってあげたりと街全体が支えている感じです。
清掃もそうですが、一緒に季節の行事や商売を盛り上げるイベントをやることでの
共同意識・お互い様の精神がとても強く、関係性が育まれていることを感じます。


これが現代の東京のアパートにピッタリなんじゃないかなと思いました。
町家と同様、アパートはお隣同士がくっついていて、
生活の様子はある程度伝わってしまうデメリットはありますが、
そのある種の"生活が分かる感"が、逆に安心感もつながるのではないかと。
また別の生業でも一緒に商売をする仲間として、一緒に盛り上げていこう、とか。
そういう意識が生まれれば、建物自体に愛着を持ち、綺麗にしたり、お互いに助け合って
商売や場を盛り上げていくことができるんじゃないかと思いました。
この町家のスタイルを現代風に解釈してつばめ舎建築設計さんがデザインしてくださり、
広いテラスはマルシェの時など、住民と町の人の交流するスペースになっています。」



――藤沢さんの欅の音terraceに対する願いや思いをお聞かせください。


藤沢 「生業(ナリワイ)暮らし、ってこれからの時代、重要になってくると思います。
特に今はコロナ禍ですから、地域の小さな商店の役割って、とても大きくなっていると思います。
例えば外出自粛と言われていても、ちょっと近所に買い物に行って、
そこで少し世間話をするだけで元気になれたり、何かあった時に『あの人に情報を聞きにいこう』と
頼りにできたりという場があるというのは、ものすごく大きいことだと思います。
これは生業をする店主にとってもありがたいことだと思います。
これから先は、一つの会社にずっと勤務し続けるというのではなくデュアルワーク※もそうですし、
人口減少で人手も足りなくなって来ますから、二足・三足の草鞋が当たり前になってくると思います。
そうなって来たときにこういう暮らしの形は必然といいますか、
一つのスタンダード(標準)になってくるんだろうなと思いまして。
ある時は生業として場やものを提供する側、あるときは消費者として利用したり買ったりする、
そういうフレキシブル(臨機応変)で緩やかな関係性や交流が地域のみなさんも
巻き込んで広がっていく場になれたならな、と思います」
※…2つ(dual)、働く(work)、を組み合わせた造語。
例えば、二つの企業や二つの職種、また二つの拠点や場所などで働くこと。
ここ数年、今までに存在しなかった新しい働き方の価値観として注目されている。

 シンプルでモダンなデザインの外観だが、
不思議と街に溶け込んでいる
シンプルでモダンなデザインの外観だが、
不思議と街に溶け込んでいる

岸本 「この場所は、色々な意味でオープンな場所であると思います。
私が以前住んでいた物件は、オートロックがついていたり、宅配ボックスがあるなど、住居としては確かに快適でした。
でもここは、例えば荷物であれば、私の不在時でも別の部屋の店舗さんが受け取ってくれ、
このフリースペースに置いて連絡をくれたり、赤ちゃんが生まれたときは、お母さんがご飯を用意する間、
『1時間だけ面倒をお願いできる?』なんて相談が来たり。
最初の1年間は、ここを設計したつばめ舎建築設計さんが、
週に1度いらしてくれて、D I Y※ができる物件なので、そのことを聞けたり、
月に1度は食事会を開催してくれるなど、掃除や庭や畑の手入れなどの会議を先導してくださっていました。
そういうのもあって、住人同士がお互いのことを知り、関係性がよくなったと思います。
※…do it yourselfの略。本来は「やってみよう」の意味。
何かを自作したり修繕したりを素人が行うことを意味する。


正直、人付き合いが濃密なので、合わないという方もいらっしゃると思います。
本当に疲れたり、一人になりたい時は、住居のスペースがありますから、
プライベートはきちんと確保できます。それよりも誰かと話したい時に外に出る、
テラスにいく、フリースペースを使う、という使い方に、私はメリットを感じますね」



――私たちが住む町の町会が減っている今の時代に、目に見えない信頼感を前面に出し、
入居者全員で物事を相談し、決めるというスタイルは、とても新鮮で、また貴重なものに感じました。
別々の生業を行う別々の入居者が、それぞれの意思で生活を行い、その生活の中で接点を見出す。
入居者を繋ぎ、地域とも繋がる欅の音terraceの可能性を感じる取材でした。

サポーターの取材後記

2番さ~ん
結論から言えば、今回、お話を伺った岸本さんのお人柄、そのまじめさが全てであり、私たち高齢者に勇気と自信を頂いた取材となりました。
お話の中で、「夢は、叶えるもの。人はやってくれない、でも自ら動くことで必ず成就する」といった趣旨のエピソードがありました。岸本さんは、その控えめな印象とは裏腹に、自信と充実感に満ち溢れています。人柄に魅力がある人には、自然と人が集まるのだと感じました。決して人通りが多い場所ではありませんが、この欅の音terraceに岸本先生の「よりみち教室たねっこ」があり、多くの人(お子さん)が集うのは必然であると感じました。
私達高齢者も、人柄、自信、日々の充実感と笑顔と人のお話をよく聞くことで、やれば出来る、決して能力だけでない直向きな態度、姿勢が全てと感じました。そのような、自信と気持ちを頂いた時間と取材でした。まだまだこれからですね!「老~い、ドン」!!
モナカ
欅の音テラスは、周囲の閑静な住宅街に溶け込みながら、よく見ると広いテラスや羽を広げたような二つの階段や道に面した椅子があって、斬新な建物でした。
お話を伺った1階中央のフリースペースは、床から天井までの大きな窓ガラスを持つ木造りの部屋で、窓の向こう側に見える庭には、たわわに実る夏ミカンの木があり、庭からテラスに吹き抜ける風が心地いい明るい部屋でした。
説明してくださった岸本さんは、この部屋が住民同士を繋ぐ場になっていて、その交流が楽しいとのこと。取材後、岸本さんが隣の方と睦まじく話している様子から、日頃の温かい人間関係が窺えました。幼いころ、母が隣の酒屋のおばさんと楽しそうに話していた情景が思い出されました。
 先日、ある新聞で見た、「お隣の顔を見ずにもう数ヶ月経つなぁ」と言った投稿に納得してしまう昨今、
昔あった隣近所の近しい温かい人間関係が、ここでは育まれていると感じ、温かい思いで帰途に就きました。

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