サポーター体験記
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地域に寄り添い80年、世界を相手に生姜で挑む、若き社長の信念

地域に寄り添い80年、世界を相手に生姜で挑む、若き社長の信念
社内の一角、ご近所の方との重要な
交流の場として小売り対応も行っている

お寿司でおなじみのガリ。言うまでもなく生姜の甘酢漬けですが、
そのガリを専門に作っているメーカーが練馬区にあります。
地域との共生を重んじ、世界に商品を供給する地元企業の
熱き若社長にお話しを伺ってきました。

取材ご担当:代表取締役/高山 幸治さん

※以下、文中敬称略。
※取材はコロナウイルス感染症の予防対策に十分配慮し、行われています。

名称
株式会社 高山商店
所在地
〒179-0075 東京都練馬区高松3-21-15
電話
03-3990-1261
URL
http://takayama-shoten.co.jp/

先代に先見の明アリ!食文化の大衆化が練馬にガリ屋を誕生させた

高山 「まず、当社は“生姜屋”です。
取り扱うのは生の生姜ではなく、お寿司などの付け合わせのガリですね。
それから牛丼などと一緒に食べる紅生姜など、生姜の漬物を専門に製造しているメーカーです。

 自らを生姜屋と言う高山社長、
生姜のことなら何でもご存知!
自らを生姜屋と言う高山社長、
生姜のことなら何でもご存知!

ここ練馬には戦前から何十社と漬物のメーカーがありました。
練馬で連想するものの1つに練馬大根があると思いますが、
どの会社もこの大根を本干したくあんといって、天日でよく干して塩とぬかで漬ける
伝統製法のぬか漬けたくあんを売りにしていました。


しかし、都市化が進み、人口が増えるにつれ畑の面積が減り、地場で大根が穫れなくなります。
また、大根は土の中に深く根を張る深耕野菜ですから、収穫がとても大変なんですね。
農家さんの高齢化が進み、収穫が比較的簡単な葉物野菜にどんどんシフトしています。


当社も、先々代から先代の時代までは、練馬大根のたくあんを製造していましたが、
戦後、たくあんの需要が下がり、材料である大根の区内での調達が難しくなってきました。
一番の消費地とも言えるここ東京で、どんな漬物が今後、皆さんに愛され、食べていただけるのか?
そして、地場の野菜にこだわらないのであれば、どういったものが求められるのかを考えます。


戦時中の事ですが、私の祖父が台湾に駐留していたことがありました。
生姜というのは、作物のなかで連作が効かないと言われていて、
国土の狭い日本だと、(土地を有効活用するために)畑を回さないといけませんから、作りたい農家さんも少ない。
ですので、関東では手に入りにくい野菜だったんです。
そこで南国の台湾で、質の良い生姜に目をつけ、当時はまだ珍しかった貿易をして
日本に無い大きい生姜の輸入に成功します。


それを外食産業に展開しよう!と考えたのが、ちょうど1970年の大阪万博の時くらいです。
ここで一気に、寿司店だけでなく、牛丼チェーンなどで、生姜の需要が大衆化していきます。
そうなると、供給が足りなくなりますので、当社もこのタイミングで生姜にシフトしたというわけです。
今も世界各地に質の良い生姜を求めて出向いているんですよ」



――現在は主にどこから輸入しているのでしょうか?


高山 「現在は主に中国・山東省と福建省ですね。その次がタイです。
先ほど話に出た台湾は今はほとんどなくなっています。
台湾も日本と同様に、都市化が進み、畑が少なくなっているためです。
それ以外ですと一部国産も取り扱っています。
お隣の埼玉、栃木、高知県などからも入手していますが、
やはり業務用で大量に消費するとなると輸入に頼らざるを得ない状況です。


中国産というと敬遠されるお客様もいらっしゃるのですが、
あれだけ大きな国ですので、正直、質の良いものも悪いものもあります。
しかしこれは私どものプライドにかけ、実際に現地に出向き、農家さんと話をし、
肥料から土壌まできちんと検査をして、安心・安全をお届けできるもののみ畑を指定して輸入しています」



――パンフレットを見ますと昭和10年創業、とあります。
ほぼ、私が生まれた年です・・・!


高山 「それでしたらこの写真が懐かしく思われるかもしれません。

 写真にお父さん・お祖父さんが写る
歴史の長さを物語っている
写真にお父さん・お祖父さんが写る
歴史の長さを物語っている

これは創業間もないころの写真ですね。練馬区の60年史にも提供しています。
左の端で三輪車に乗っているのが私の父ですね。そして祖父、当時の番頭さん、
父の兄弟や母が写っています。
着物を着ているので、お正月か、何かの記念で撮影したものと思われます。


創業時ですから、後ろの樽にはたくあんが漬かっています。
この写真は、まさにこの場所です。ですから70-80年経っている、ということですね」

今後の生姜・漬物文化発展のヒントはお客様から

――外国の話が出ましたが、海外にも商品を展開なさっているのでしょうか?


高山 「壁に時計があるのですが、左からロサンゼルス、東京、タイの時間を示しています。
輸入は主に東南アジアからなのですが、売り先は、アメリカ、ハワイ、グァムなど、
日本人が居る場所には世界中お届けしています。


残念ながら漬物は、良くも悪くも“名脇役”でして、決して主役にはなれない。
例えば若い世代であれば、漬物からは離れていますし、進んで食べてもいません。
ただ、絶滅するかというと、そうではないと思います。
メイン食材を際立たせるものとして、絶対に誰かの役に立っていますし、ゼロにはならないと思います」

 世界を相手に輸出入を行うため、
主要各国の時間を示している
世界を相手に輸出入を行うため、
主要各国の時間を示している

――最近では、発酵食品などが注目を浴びて言いますが、その辺に活路があるのでしょうか?


高山 「おっしゃる通りですね。一部の漬け物は発酵食品でして、今後のキーワードの一つかもしれません。
生姜の成分にも注目されています。ショウガオールとかジンゲロールなどがそうです。
体を温める成分が血行を良くし、冷え性の対策になると。
美味しさはもちろん、体に良いから食べる、という文化が出来つつあります。


私どももかつては外食産業の伸びに合わせて事業を拡大したため
業務用一辺倒だったのですが、今から30年ほど前、この建物ができたころ
やはり近所の方が、“この建物はなんだろう?”と興味を持ってくださいまして。
それで入口に小さな売店を設け、少しずつ、小売りも対応していったんですね。
おかげさまで地域の方にもご好評で、生姜を日常的・習慣的に食べていただけるよう、宣伝もしています」

 社屋外観、30年前と基本的に一緒
当時はさぞかし斬新に映ったはず
社屋外観、30年前と基本的に一緒
当時はさぞかし斬新に映ったはず

高山 「対面で販売しますと、美味しいですとか、懐かしいですとかの声をたくさんかけていただいて、
とても嬉しく思います。それから、いろいろ勉強にもなります。


例えば『固くて食べられない』というお声をいただくこともあります。
それは、クレームとも言えますが、商品開発のヒントでもあるんです。
たくあんでも生姜でも、スライスを薄くするとか、細かく刻むなど、歯が悪い方でも
安心して食べていただけるようなヒントをいただけます。
※高山商店では現在、たくあんの取り扱いはありません。


ですので、この場所で小売りを始めたのも、売上だけではなく、
ご近所の皆さんと様々なコミュニケーションを取らせていただくことが目的です。
お買い求めいただかなくとも、散歩がてら来ていただいて、
しかも沢山のヒントをいただけています」



――新型コロナウイルスの影響というのは、やはり大きいものなのでしょうか?


高山 「そうですね。過去にも様々な困難がありましたが、かつてない影響だと思います。
ただこれは、当社だけが厳しいわけではなく、やはりお客様お一人おひとりが厳しい、
それが当社にとって、とてもつらいですね。
お客様が元気でいらして、食事を楽しむ。この日常生活があって、初めて当社が潤うわけですから
安心して外食が出来ない、飲食店さんが通常の営業が出来ない、というこの状況は、大変なものだと思っています」

ガリの由来は大工?!日本中で食され、世界に広がる生姜

――話は変わるのですが、なぜ生姜の事を“ガリ”と言うのでしょうか?


高山 「諸説あるのですが、“音”だと言われています。


今では完全に機械化されているのですが、創業当時は、生姜は大変固い作物ですから、
大工道具のカンナで薄く削ったそうです。
その削るときの音が、ガリガリするので、、、という説が有力なようですよ。
ですので、紅生姜の事は、ガリとは言いません。スライスされた薄切りの生姜をガリ、といいます。


お寿司屋さんで出てくる甘酢漬けがガリですが、江戸時代のガリは甘くなかったそうです。
酒粕を発酵させてつくるのが赤酢ですが、寿司のシャリ切りに使っていました。
これに生姜を漬けたものがガリの始まりだそうです。
その後、口に合うように、また箸休めとして食べやすいように徐々に甘さが加えられていきます。
現在では回転ずしなど、お子様からお年寄りまでさまざまな世代の方がガリを食べますので
ガリは年々甘くなる傾向があるようですよ。


面白いもので、ガリの形状も東京と大阪で違うんですよ。
東京はスライスした薄切りの形状、大阪は、千切りなんです」

 お客様の要望に応え、丸ごと
漬けた紅生姜も販売している
お客様の要望に応え、丸ごと
漬けた紅生姜も販売している
 漬け物だけでなく、様々な商品も開発
こちらはドレッシングで生姜を楽しめる
漬け物だけでなく、様々な商品も開発
こちらはドレッシングで生姜を楽しめる

――そういえば、京都の駅弁のお寿司に入っているガリが千切りでした!
生姜は日本全国、どこの地域でも食されているものなのでしょうか?


高山 「先ほどのように形状や食べ方は微妙に異なりますが、日本中、食べていますね。
当社が練馬で勝負できるのは、一大消費地である築地・豊洲が近くにあるからです。
東京で、ガリ専門のメーカーはもう何社も廃業しているのですが、
この市場があるからこそ、成り立っています。


北海道は紅生姜を多く消費します。赤飯を炊く時などには付け合わせで使います。
大阪や九州もそうですね。たこ焼きやとんこつラーメンに、紅生姜が使われます。
生姜の天ぷらも有名ですね。
いままで関東には無かった新しい食べ方がどんどん入ってきている状況でして、
その意味では地域性は無くなってきており、どこの地域でも色々な食べ方で楽しめるように
なっています。


ちなみに、原産国の中国では、生姜は調味料や薬味として使うことが多いです。
川魚やにおいの強い魚介類の臭みを取るものとしての利用ですね。
その先のインドでは、乾燥させて香辛料・スパイスとして使用します。
さらに遠く、ヨーロッパでは、シナモンなどと同様に、クッキーやお菓子の材料として
香りが楽しまれています。そう考えると、生姜は世界中で使われている食材の一つだと思います」



原材料も、販売先の一部も海外という商品を取り扱う中で、どのようにして地元・練馬と共生していくか。
近所の皆さんに愛される商品を作り続けたい、そう話す高山さんの挑戦は続きます。
練馬から、世界に羽ばたく商品・事業者さんを見つけ、誇らしくなった取材でした。

サポーターの取材後記

ヨスケ
最近ではB to Bと言った業務用の取引だけでなくB to Cの商売も増えてきて高山商店のラインナップも賑やかになった。
例えば「甘酢生姜」、「紅生姜」、に「生姜のしょう油炊き」、甘納豆風の「生姜のおかし」、「ヤシザトウ・ショウガ」、それに健康的なドレッシング「みそ」と「しょう油」。バラエティに富んだ新製品が続々と誕生している。
帰り際、ショーウィンドウに「南高梅 梅干し」と書かれたものが置かれていた。「これも新製品?」「イヤ!それは紅生姜を作るときに必要な梅干しの廃液を和歌山の南部から頂いているので南部産の梅干しを売らせてもらっているんです」と。共存共栄思想の本物ぶりを見せてもらった。ガリの高山商店は社長以下従業員の皆さんも気持ちの良い方ばかりでした。地元にこんな素敵な、シニアの健康維持をサポートしてくれる商品を作ってくれている会社があることを知った、喜びに溢れたインタビューでした。
2番さ~ん
高山社長は、培われた80余年の伝統を守り続ける決意の基・その最大の信念は、地域との共生だとお話されました。その一つとして、漬物の生産にはにおいと工場の騒音がありそれを避ける為、竣工時はもとより、今でも近代的な社屋で、全て地下で操業する構造にするとか、また社員皆さん練馬区民である事など、周辺への配慮とともに、練馬と共生しています。
また、若い人の漬物離れはあるも、その反面、健康志向の需要と活路は無限で、お客様の声を聴き、地域と共に培った伝統を守り続け、更なる会社の発展に努める熱い決意を伺いました。この様な堅実な企業、会社が練馬にあること、それも80余年もあることは、私達、練馬区民の誇りでもあります。生姜漬の奥の深さやひたむきな企業姿勢を改めて学びました。本日の取材で、高山商店は「生き残る事でなく、勝ち続ける」会社である事を、私は感じ取りました。

サポーター紹介

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