サポーター体験記
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次世代の学習、「プログラミング教育」について学ぶ

次世代の学習、「プログラミング教育」について学ぶ
小学生の学習関連ですので、練馬区の
教育委員会がご担当、お話を伺います
私たちシニアからはずいぶん遠い話のような「プログラミング」。
令和2年度から、練馬区の小学校でも教わることになるそうです。
考えてみれば、昨今のあらゆる電子機器には多かれ少なかれ、
プログラムで制御されたコンピュータや回路が組み込まれています。
身近なようでよく知らない、プログラミング教育について、調べてきました。

練馬区教育委員会 教育指導課

取材ご担当:指導主事/原 僚平さん
※以下、文中敬称略。

所在地
〒176-0012 練馬区豊玉北6丁目12番1号
電話
03-5984-5759

近未来の日常を描く『ソサエティ5.0』から、プログラミング教育を読み解く

――まず、プログラミング教育とはどういったものか教えていただけますか?

原 「最近、文科省や内閣府等で『society(ソサエティ)5.0』という言葉が
キーワードになっています。
これは具体的に、今後こんな世の中に、あるいはこういう未来になっていくんじゃないか?
という事を、内閣府が※動画で出しているんですね。まずはそれを見ていただきましょう。
まもなくやってくる、近未来20XX年の日本の日常イメージ映像です」
(※現在、内閣府からの動画は見られなくなっております。)

原 「・・・という感じです。
この映像の中には、一部、すでに日本でも始まっている取組がありますが、
こういう世の中が近い未来にやって来るだろうと予想されています。

要するに、今の子どもたちが、将来どんな仕事・どんな職業に就いたとしても、
おそらくコンピュータは切っても切り離せない世の中になるだろうと。
そういう世の中で、コンピュータが動く仕組みを理解したうえで
それを活用していけるような子どもたちを育てよう、
というのがプログラミング教育を小学校で行う根底の考え方です。

プログラミングそのものを“教える”のではなく、“プログラミング的思考”、
つまりプログラミングの考え方を小学校教育で身に付けさせることを目的としています」

 お話していただいた原さんは
元小学校の教員、説得力があります
お話していただいた原さんは
元小学校の教員、説得力があります

――その“プログラミング的思考”について、もう少し詳しく教えてください。

原 「例えばマス目があって、それに沿ってロボットを動かし、
ゴールまで移動させるとしましょう。
そのためにはロボットを制御するコンピュータに指示をしてあげないといけません。
『何歩前に進みなさい』
『次に右に曲がりなさい』
『さらに何歩すすみなさい』
という具合にしないと、ロボットは人間とは違いますから、
自分で考えて動いてくれないわけです。

このように、ある目的(ここではゴールに行くこと)に対し、
どうやったらロボットを上手く動かせるか?
スタートからゴールまでの先を見通す過程(プロセス)を考える力、
これがプログラミング的思考です」


――対象というのは何年生から、と決まっているのでしょうか?

原 「学習指導要領というものがありまして
ここに小学校ではどういう勉強を教えなさい、ということが書かれています。
この中でプログラミング教育についても触れられているのですが、特に何年生に教えなさい、
とは明記されていないです。

 学習指導要領、普段私たちが
目にすることは殆どありません
学習指導要領、普段私たちが
目にすることは殆どありません

この中では3つの例が示されていて、
『5年生の算数』
『6年生の理科』
『総合的な学習の時間』
の中でやりましょうとなっています。

これは、5-6年生の算数と理科では実際にプログラミングを体験してみましょう、
という意味なのですが、1-4年生で何もせず、5年生になってから急にやるのは難しいですから
小さい学年からプログラミングを体験する、または、実際にコンピュータを使わないとしても
プログラミング的思考を育成する活動が推奨されています。
ちなみに“プログラミング”という教科はありません。
一例として算数や理科が挙げられていますが、国語や社会の中でもできることはあります」

あらゆる教科に含まれる、プログラミング的思考の要素とは?

――なるほど。今までの教科をなくして新たに加える、ということではないのですね。
学習指導要領で明確に書かれていないと、例えばお隣の区と教えている内容に差が出る、
なんてことは起こるのでしょうか?

原 「そこは課題の一つです。
子ども達がどんな環境で授業を受けるか、という事も大きく関わります。

例えば、都内においても児童生徒1人に1台コンピュータがある自治体もあれば、
まだまだ整備が整っていない自治体もあります。
これは全国的に見ても同じ状況で、こういった環境の差が現状では生じています。
ですので、最近では国の方でも、児童生徒に1人1台コンピュータを持たせよう!と予算取りに動いている状況です。
練馬区でも予算を確保し、端末やプログラミング教育教材の整備などに充てる予定で進めています」


――今までの教科にプログラミング教育を取り入れることで、
もっと深くその教科を学習できる、
という効果もあるのでしょうか?

原 「まさにその通りですね。
各教科で教える内容が増えるということではなく、
例えば算数の図形の問題の理解を深めるために、
習った図形をコンピュータにかかせてみよう、ということです。
こうすれば、コンピュータへの命令の方法だけでなく、
図形を正しく理解しないとそもそも命令が出せませんので、
子どもたちの図形に関する理解が深まります。

もちろん、分度器やコンパスを使って子供たちが図形をかくという作業は無くなりません。
ただ、皆さんも大人になってから、分度器やコンパスを使って図形をかくってなかなかないですよね?
仕事でかくことがあっても、コンピュータなどを使って行うことが多くなるというわけです。
それを子どもたちがいち早く体験することで、
『自分で正三角形をかくのはなかなか大変だけど、
コンピュータに指示をすればすぐに何個でもかいてくれる』
というコンピュータの良さに気付いてもらえるんですね。
まさに、三角形のかき方を学ぶとともに、便利さやその仕組みの理解につながるのです」


――人が行う作業をすべて代替させる、ということなのでしょうか?

原 「いいえ、そういうことではありません。
例えば家庭科の授業の中で調理実習をします。
それをコンピュータにさせることは(少なくとも小学校の授業では)不可能です。
プログラミング的思考の視点から家庭科の授業を考えますと、
何かを調理するときに、いかに短時間で効率的に調理できるかの手順を考える、ということだと思います。

 私たち世代には無かった授業ですので
内容をイメージするのも大変!
私たち世代には無かった授業ですので
内容をイメージするのも大変!

具体的には、4人の班で誰か1人が材料を刻んでいて、
残りの3人がそれを待っているのはとても効率が悪いですよね?
それよりは、空いている3人が別の作業をしたり、
そのうちの1人が切るのを手伝ったりしたほうが効率的です。
早く正確に、そして美味しく作るためにどうするかを考える、という点では、
家庭科においてもプログラミング的思考の視点を入れられるのではないかと思います。
ただし、小学校でのプログラミング教育全体において、
児童がコンピュータをほとんど用いないということは望ましくないことに留意する必要があります」

――いままでも手順を整理する、より効率的に作業を行う、
という学習は論理的思考という言い方で存在していました。
これをより、コンピュータ・プログラミングに取り入れていこう、
寄せていこう、ということがプログラミング教育の根本のようです。
私たち世代では、すこしとっつきにくい印象でしたが、段々と理解してきました。

機械が人間に変わることはない理由、命令にひと工夫が不可欠

――機械に、自分が学習したことをそのまま移して実行させる、
という理解だとどうでしょうか?

原 「少し近づきました(笑)。しかし、微妙に違います。
例えばですね、正三角形をかくとしましょうか。内角はそれぞれ60度ですよね?
子どもたちは定規で線を引き、分度器で60度を測ってつなげて正三角形をかきます。
これをコンピュータにかかせようとすると、ちょっと考え方を変えないといけません。

 図形パズルのような話ですが、よく聞くと
確かに60度の命令ではおかしいです
図形パズルのような話ですが、よく聞くと
確かに60度の命令ではおかしいです

コンピュータ上のロボットに線をかかせるとして、
子どもたちはそれをまっすぐ進ませる命令を出し、次に60度回転させようとします。
しかし実際にはまっすぐ進んでいる線に対して60度の命令ですと、
左右どちらかに少しズレてそのまま前進するだけなんですね。
正三角形をかこうとすると、今かいてきた線に対し、
ロボットを120度回転させないといけないんですね。

ここで子どもたちは
『あれ?60度って習ったのに、なんでコンピュータは理解しないんだろう?』と思うわけです。
直線は直角2つ分の180度であると事前に習っている子どもたちは、
『そうか!60度だと思ったけど、正三角形をかくには180度から60度を引いた、
120度を命令しないとコンピュータは正しく動かないんだ!』
という、自分の考えと同じことを機械にさせるときのコツを知る、
思考の違いを学ぶことにつながります」


――やろうとしていることは理解できました。
ところでなぜロボットが出てくるのでしょうか?

原 「いまの子ども達の世代が大人になった時、
コンピュータに何らかの指示をする世の中であることは間違いありません。
コンピュータを、よくわからないままただ便利だなと使っている、
ある意味で使われている状態と、多少なりともプログラムの流れや仕組みを
理解したうえで使いこなすのとでは、大きな違いがあると思っています。

現代の子どもたちは、先を見据えたり予想して動いたりすることが苦手とも言われています。
そのような子どもたちが、プログラミングを体験しながらロボットに正確な命令を与えることは、
論理的思考の育成につながり、プログラミング的思考を鍛えることでもありますので
近未来を見据えた体験を小学校から行おう、という趣旨なのです。
その分かり易い例として、ロボットが出てきています」

小学校の先生は大変?!自分が教わっていないものを設計して教える難しさ

――これらを教える先生方は大変だと思いますが、
他の国では同じような動きはあるのでしょうか?

原 「私が把握しているだけでも、海外ではすでに
プログラミングの学習を取り入れた授業を必修化している国もあります。

東京都は数年前からプログラミング教育の全面実施に向けての取組を進めていまして、
2年前※には、プログラミング教育を先進的に進める学校が7校選ばれました。
そして昨年度から、都内の55地域75の小学校で、
来年度からの全面実施に先駆けてプログラミング教育の取組がスタートしています。
ここでは練馬区でも2校、推進校として選ばれています。
※・・・取材は令和元年です。年度は取材当時で数えています。
プログラミング教育の全面実施は令和2年度からとなります。

この2校は、昨年度、研究の中間報告を行っています。
今年の11月末(令和元年)には練馬区立谷原小学校が、
小学校の先生方向けにプログラミング教育ってこんなことですよ、
こんなことをやってきましたよ、と報告発表をし、もう1つの練馬区立大泉北小学校も
2月(令和2年)に同じように報告を行う予定になっています。

令和2年度の実施に向け、急にやりましょう!では先生方も困ってしまいますから
先んじて取り組んでいた2校の報告を受け、それぞれの学校で準備を進めながら、
区としても令和元年の夏に講師の先生を招いて、
各校から1名以上プログラミング教育の研修に参加していただくなどし、準備をサポートしています」

 小学校の先生にご理解いただくための
その仕組みや元を作るのも大変です
小学校の先生にご理解いただくための
その仕組みや元を作るのも大変です

――プログラミング教育は何時間、などの目安は決まってるのでしょうか?

原 「残念ながら、決まっていなんです。教科ではない、ということの難しさでもあります。
担当の先生というのも決まっていませんので、担任の先生がやることになると思います。
実際には先の研修にいらした先生からさらに学校の中に展開し、、、となりますので、
先生方の中には教えることに自信のもてない先生もいるかもしれません。
ですので、研修講師のご厚意で、研修につかった資料・スライドなどもそのまま各校に提供するなどし、
なるべく現場の負担が少なくなるような取り組みも行っています。

来年度からは、3-4年生から外国語活動が始まり、5-6年生は外国語科となるなど、
変化が大きいです。
そのため、先生方の多忙感は全国的な課題でもあります。
プログラミング教育が入る分、何か減るものはないのか?
という問い合わせもよくいただくのですが、これもない状況です。
ですので、令和2年度も早い段階で、プログラミング教育の研修を行う計画などもあり、
区としても支援を続けていくところです」

シニア世代の新たな活躍の場に?現場の知識が活かせるかもしれない

――我々シニア世代でも、例えばプログラムに関係した職業に就いていた人も多いと思います。
先生方のご負担を減らすために、サポートできそうな気がしますが。

原 「そうですね。それは非常にありがたいお言葉です。
現状、区ではプログラミング教育に特化したサポーター制度のようなものはないのですが、
地域と一体となりながらよりよいものを目指すべきとは思いますので、
ぜひご経験がありご興味のある方は、近隣の小学校にお声がけいただいたり、
一度こちらにご相談いただけたりすると、大変ありがたいとは思います。
ただ前述の通り、決められた時間割があるわけでもないので、今度は学校側が
『どんな内容でお手伝い・サポートいただくのか?』を決めなければいけないのも難しい所です。

 もしかすると、プログラミング教育の現場は
私たちの新しい活躍の場になるかも?!
もしかすると、プログラミング教育の現場は
私たちの新しい活躍の場になるかも?!

いずれにしても令和2年度から“スタート”ですので、
教える側も教わる子どもたちも一緒に試行錯誤しながら取り組んでいくことになるのだと思います。
現在準備されているものをどう使って、アップデートしていくのか、
大きな課題であると思います。

プログラマーやシステムエンジニアなどそのものを育てる事、
小学生全員にそうなって欲しい、ということがプログラミング教育の目的ではありません。
何かあった時にプログラミングの流れや手順をある程度理解しておけば
対応が可能になるかもしれない。
そういう考え方や視点が、これからの世の中では、より重要になってくると思います」


――私たちシニア世代では、例えば自動運転の車やロボットによる医療などが
暮らしや社会を支える未来が想像できます。
プログラミング教育を受けた新しい世代が、
その延長として技術者やプログラマーに成長するかもしれません。
かまどでごはんを炊くことや、山で虫を捕まえる知恵、そういうものと全く同じ次元で、
現代人の知恵としてプログラミング教育というものが存在することを発見しました。

サポーターの取材後記

なみ
急速に技術革新が進み教育現場で、令和2年度からプログラミングの教育が必修化される説明を聞きました。
具体的な教科書があるわけでもない現場の先生にプログラミング教育の対応が任され、試行錯誤のスタートになる不安を感じました。プログラミング教育の専門の先生がいるわけでないようで、聞く限りでは、先生にかなり負担がかかるように感じ、このような状況でプログラミング教育が軌道にのるのに時間が必要であろうことにも心配に感じました。しかし、現在の先生方は最新の教育を受けているので、我々高齢者が心配するまでもないのかと思いました。
プログラミングの世界に高齢者も少し足を踏み込み理解ができました。
なかなか
人が人らしく生きていくには、国や社会に文化があり、人に想像力と創造力がきちんとあることが大切だと考えている者にとって、プログラムされた国や社会、プログラミングされた人生はどうなんだろうと疑問に思っていました。今回、「プログラミング教育」について基本的なお話を聞き、いや、もしかしたら、次世代はさらに広い視野からの文化が成り立ち、さらに深い想像力や創造力が養われるのかもしれないと思い始めました。
ただ、併せて、肌身にふれる自然や人とのかかわりから、物事を直に感じ、心を育てる教育が尚一層大事になるのではないかと思いました。
ynishi
IT業界のソフトウェア企業に在籍していましたので、小学生に対するプログラミング教育はどのように行われるのか興味があり取材に参加しました。最初は端末を使わずに「プログラミング指向」から教えるとの事で、ある程度ホッとした感じです。
私が40年前にプログラミングを勉強した際は、先ずはプログラムの基礎部分であるアルゴリズム(プログラムの流れ)からであった事を思い出し、小学生に対しても、いきなりScratchの様なプログラミングからではなく指向部分からというのは忠実ではないかと思います。
ただ、かつてプログラミング教育を受けた身としては、小学生なので個人差が出てしまうのではないか?とか、教える側の教員の負担も大きくなるのでは?という問題が想定出来、何かサポートでも出来ればと思っています。また、小学生のプログラミング教育と、シニア世代の認知症予防の脳トレが、何らかの形でコラボが出来れば?とも考えてしまいます。

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