サポーター体験記
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おとなのための朗読と絵本の塾 ――楽しく認知症予防、嚥下(えんげ)障害予防、オーラルケア――

おとなのための朗読と絵本の塾 ――楽しく認知症予防、嚥下(えんげ)障害予防、オーラルケア――
大人のための朗読塾リヴ、
普段のレッスンの様子
石神井公園駅からほど近い「朗読と絵本の塾リヴ」は、
ストーリーテラーの渡部佐和子さんが主催する、
今を自分らしくイキイキと生きることを目指す塾。
幼児から80代の方々が健康朗読・絵本遊び・読み聞かせなどを通して楽しんでいます。

朗読と絵本の塾リヴ

取材ご担当:代表 渡部佐和子(わたなべ さわこ)さん
※以下、文中敬称略。

所在地
〒177-0041 練馬区石神井町3-25-2 イシカワビル301
電話
090-9806-2161
URL
http://www.roudoku-live.com

元気が出るリヴの活動

「朗読と絵本の塾リヴ」の設立は2017年1月。
それ以前は、2002年に「絵本から言葉力・表現力を育成する幼児教室」を自由が丘に設立し、
同時に「朗読教室」を品川に設立しました。そして2009年、石神井公園の公共施設を借りて、
「幼児教室リヴ」「小学生クラス」、生涯学習団体「おとなのための朗読サークルかたらい」を設立し、
年2回、「朗読と音楽と子どもとのコラボ公演」も渡部さんが企画・演出されました。
そして自前の教室を立ち上げた今、新たな楽しい活動が展開しています。


――新たに「朗読と絵本の塾リヴ」が出発して3年ですね。
そもそも練馬で朗読塾をはじめられたきっかけと現在の活動について教えていただけますか?

渡部 「練馬は文化・芸術・教育環境が整っていて、高齢者に対する行政の取り組みも手あつく感じます。
何より練馬は私の育った地元ですから、ここで何か地域貢献できる活動をしたいと思ったのです。

現在の活動は『おとなのための朗読教室』が7クラスと、個別指導。会員は合わせて36名です。
右脳体操やエチュード、早口言葉などの朗読基礎練習をして、詩やお話の朗読練習をします。

『親子のための絵本コミュニケーション塾』は、幼児と親5組、小学生8名が定期的に来て、
絵本遊びによる言葉のキャッチボールで問答する力、分析力、考える楽しさ、そして絵や工作もしますから、
表現する創造力等を養っています。
小学校受験をするお子さんも多くて、試験の時の行動観察で日頃培っていることが発揮され、効果があるようです。
小学生クラスに上がると、問答力を文章にまとめる力に変えていくことをしています。
問題提起されたことを自分たちで考え、結果を出すんです。
その過程で、《答えは一つではない》ということを自ら知ります」

 絵本をテキストにし、対話によって様々な創造力を養います
(ちなみに本のセレクトも渡部さん自ら行います)
絵本をテキストにし、対話によって様々な創造力を養います
(ちなみに本のセレクトも渡部さん自ら行います)

――公演とか朗読会、また塾としてのイベントや講座を行っていますか?

渡部 「ここは、『火』『花』『星』『宙』『月』の普通クラス、そう、宝塚のような命名ですが(笑)、
それと『初級コース』『なりきり朗読塾』があって、各クラス年一回、カフェ朗読会を開催しています。
協力してくださる喫茶店を借りて、詩や民話、物語やエッセイ・小説の一部を朗読します。

やはり、朗読というのは、ただ自分一人で声を出して読む音読とは違って、聞き手に聴いてもらってこそのものです。
言葉で表現することによって想像し合い、豊かさを享受し合います。
プロとかアマチュアとか関係なく、上手い下手もなく、その人がそれまで培ってきたものがそのまま出ますから、
聞き手と共有している時間がとても素敵で楽しいんです。

他に音楽など他の団体とのコラボレーションで舞台公演もします。これは年に一、二回ですね。
これまで、
『知られざる練馬の昔話』『女たちの戦争』『人権問題―わたしはマララから―』『自然と人間』
『落語・小咄』『伝えること』『話と和の鼓動』等々を公演しました。

 コラボ公演、「私はマララ」の様子
コラボ公演、「私はマララ」の様子
 子どもと大人のコラボ公演、
「落語」の舞台の様子
子どもと大人のコラボ公演、
「落語」の舞台の様子

それから練馬区主催のイベントへの参加も積極的に行っています。
『男女共同参画センターエールフェスティバル』には6年連続で、朗読公演をしました。
他には、練馬区商店街主催の『まちゼミ』への参加、
『練馬区主催みんなでUDパーク』で朗読ワークショップ、
そして『練馬区創立70周年記念』に関連した舞台公演もしました。

夏休みには特別講座として『小学生のための夏休み宿題おまかせ講座』や
『しゃべりながらスラスラ書ける読書感想文講座』
『夏休み自由工作・自由研究講座』を、それから大人向けには
『リヴOB・OGの親御さんによる人材発掘講座』として
『おとなのための夏リース作り講座』等も開催しました。
おかげさまで盛況で、私自身の夏休みはありませんでした(笑)」

練馬区70周年の公演では、練馬の昔話を取り上げたとのこと。
参加者全員がプロのつもりで演じるそうで、度胸を養うのにも朗読は良いのかも、と感じました。

テーマは言葉と想像・創造、そしてふれ合い

渡部さんは、小柄ながらとてもエネルギッシュで、しかも思いやりに満ちた優しい方とお見受けしました。
このお人柄も朗読など表現することによって培われたものでしょうか。


――差支えなければ、経歴などプロフィールを教えていただけますか?

 渡部さんにはやはり、演ずること・感じることに
関する数々のご経験がありました
渡部さんにはやはり、演ずること・感じることに
関する数々のご経験がありました

渡部 「中学、高校と演劇部で、大学2年の時に何かやりたい、自分の想いを伝えたいと、朗読の勉強を始め、
オーディションを受けたのです。そうしたらNHKの連続テレビ小説のレギュラーに抜擢され、そこからですね。
いろいろな方との出会いがあって、市原悦子さんが所属するプロダクションに入り、
市原さんが廻るところについていったりして、演技を学びました。

また私は東京学芸大学地学科を卒業しているものですから、
科学番組のレポーターや司会、各局のドラマ等にも出演していたんです。
そうしたマスコミでの経験が8年くらいあるんですが、
それが今、活かされているのかなぁと思います。
とても楽しかったんですよ。
舞台にしてもテレビにしても、みんなと一緒に作るということでいろいろと学びましたし、
本当にワクワクする日々でした。
それとは別に、教育の方面でも、幼児から大学受験までの一貫塾で16年、講師を勤めました。
そこで勉強を教えるだけでなく、子供とのふれ合いの中で気づいたことがありました。
想像力とか考える力、物事を分析してとらえる事等、やる気につながる力が年々欠如してゆくように感じたのです。
そして、自分が子供の頃、母から絵本を読んでもらった経験から、『絵本の読み聞かせ』をしてみたんですね。
すると、絵本に興味を持った子というのは、すごく面白くて、しゃべっていることが楽しいし、豊かなんです。
そしてそういう子のほうが最終的に勉強の面でも伸びているのです。

人間の脳というのは、幼児から小学校3年までに90%くらい出来上がるのですが、
その間に言葉のシャワーを浴びて、たくさん考えて、
発見や感動を味わいながら自分らしく表現することを楽しむ、
その繰り返しが、人間性とか人間の豊かさを培うのではないでしょうか。
それで『絵本から言葉力・表現力を育成する幼児教室』を自由が丘に立ち上げ、
同時に大人のための「朗読教室」を品川に設立したのです」


――ご自身の公演はあるのですか?

渡部 「1998年の『第2回国際芸術連盟朗読オーディション』に合格して、
その後10年、年に2回くらい舞台に立ちました。
音楽とのコラボ公演にも出演したんです。
ただ、今は皆さんの舞台を演出するということで手一杯でしてね。
内心は“やりたいなぁ”とムズムズしているんですけれど(笑)。
表現をずっとしていきたい気持ちはあるので、いずれ何かしたいと思っています。
特に、練馬ビジネスサポートセンター主催の『本気の起業塾』を受講して、補助金を頂き、
3年前にこの教室を持ってからは、ともかく維持していかなくてはならないし、
地元のお役に立つことをしたいと思って、自分のことは後回しです(笑)」

 渡部さんご自身の公演の様子、
現在は生徒さんのサポートに全力を注ぐ
渡部さんご自身の公演の様子、
現在は生徒さんのサポートに全力を注ぐ

目指すのは、楽しく健康な身体を維持するお手伝い

練馬区は高齢者が暮らしやすいという評判がありますが、それでも健康に不安があったり、
足が悪いし、何もする気が起きないと家に閉じこもりがちな高齢者がおられます。
渡部さんは朗読することによって健康寿命は延びるとの思いから、
積極的に地域の方々の健康に関心を寄せています。

――朗読が健康に役立つというのは、どういうことですか?

渡部 「人生100年時代に入りましたね。
最近特に、『認知症予防のために朗読を学びたい』とか『絵本の読み聞かせの仕方や題材を学びたい』
という方が増えているのです。ここの会員から聞いた話ですが、
『一人暮らしの中高齢者が多くなり、家ではあまり声を出さない環境になった』
『50代くらいから認知症予防対策を考えている』
『70代~80代は切実。それでも気持ちは前向きで健康志向が強い』
『仕事を減らし、第2、第3の人生を考えて、生き甲斐探しを始めている』
『仲間と共に楽しく学び、できれば社会貢献したい』
といった声が多くあります。

フレイルという言葉、最近よく聞くでしょう。
『加齢により心身が老い衰えた状態』のことを言い、身体フレイルとか、
フィジカルやメンタルのフレイルというのはよく言われていますね。
そして歯医者さんなどは『オーラルフレイル(口腔内の虚弱)予防』ということを言っています。
要するに飲み込み、嚥下障害を起こさないように予防することが、
健康に、生命の維持に直接かかわるのです。

朗読はメンタルに関していいだけでなく、早口言葉、発声などによって、
舌の付け根が鍛えられます。
実際はロレツを良くするために練習するのですが、実は舌の筋肉を鍛えています。
それから顔の体操は表情筋も良く動くようになりますから、笑った顔がすごく明るくなるのです。
とはいえ各自で行うのは難しいでしょ。
仲間と共に、体操や呼吸、発声を学びながら、楽しく健康促進が可能になると思いますよ。

 フレイル予防や健康維持に関わるとなると
私たち世代の関心は、さらに高まります
フレイル予防や健康維持に関わるとなると
私たち世代の関心は、さらに高まります

来年度から、少子高齢化に伴い、国をあげてフレイル検診が
健康診断に導入されると聞いています。
社会保障費の軽減、要介護にならないための対策として行われるとのことです。
これまで20年に亘り、リヴが取り組んできたことがお役に立てるように思います」


――健康のために朗読するコツというのはありますか?

渡部 「ともかく、楽しく・無理なく・長く続けることです。
『継続は力なり』といわれますが、健康朗読にもあてはまります。
声には年齢がありませんから、お腹(丹田)を意識して声を出し、
想像豊かに、自分らしい表現を楽しんで欲しいと思っています。

群読という、一人ではなく、二人以上での朗読がありますが、
お互いの声を聞きながらするので、とても集中して、楽しい時間を共有することができるんです。
また、他の楽器とのコラボで、リズムにあわせるとまた楽しさが増します。
朗読ではいくらでも楽しい時間の過ごし方があって、心身共に健康になるのです。

声に出してしゃべることは、親子間、仲間同士で、様々な考え方や表現の仕方を発見しながら、
内容を深く知ることができ、コミュニケーション力が養われるのです」

次々と始まるリヴの講座から目が離せない

「地元の役に立ちたい」という渡部さんの情熱はとどまることを知りません。
アンテナを高く張って、様々な声に応えて、「高齢者のための健康朗読講師養成講座」と
「子どものことば力・創造力を育成する絵本読み取り活用術講師養成講座」も新しく発足させました。
そこには、還暦を迎えた者として、次の世代に良いものを繋ぎたい、
身につけたものを自己満足で終わるのではなく、できるだけ多くの人に伝えていきたい、という思いがあります。

 講師養成講座の案内は、定期発行の
『リヴ新聞』にも掲載されています
講師養成講座の案内は、定期発行の
『リヴ新聞』にも掲載されています

――2つの養成講座はどのようなものを目指しているのですか?――

渡部 「いろいろな方からお話を聞くと、
『最近、食べたり飲んだりするとよくむせるようになった』
『固い物が食べられなくなった』
『食べていると、口からよくこぼすようになった』
『今日は誰ともしゃべらなかった』
など、この状態をそのままにしていると、いつの間にか介護支援が必要になり、
嚥下障害や誤飲性肺炎を起こす危険性が高まるようなことばかりです。
いつまでも美味しいものをしっかり噛んで楽しく食べて健康寿命を伸ばしていただきたい。
リヴでしてきた舌の体操や表情筋を鍛える体操、早口言葉や朗読は必ず役に立ちます。
そのノウハウを健康朗読に興味ある方に提供します。

また、絵本のほうは、これまで主に小学校受験生と
親のために始めた『絵本読み取り活用術』でしたが、
受験の『行動観察力』で、その効果が発揮されただけでなく、
『表現する楽しさ、コミュニケーション力、忍耐力』そして『前向きに取り組む姿勢、自信』などの効果が10年後の子供たちに現れているのです。
この力は、IQでは計れない「非認知能力」と呼ばれ、将来の自立や、
経済力にまで影響するという追跡調査も発表されています。
そして、子どもは遊びの中から学ぶことも実感しています。
日本の将来を担うより多くの子どもたちに、絵本遊びから、
楽しくそれらの力を身につけて欲しいと願いつつ、
『リヴの絵本活用術』のノウハウに興味ある方を対象に講師を養成したいと考えたのです」


――養成講座を受けた後、受講生はどのような資格を得るのですか?

渡部 「朗読においては、公式の資格というものはありませんので、受講証明が資格的な扱いになります。
ただ、当塾の受講生が公の機関等で受講証明を提示するような場合には、
私が責任をもって受講内容などを説明しています。

健康朗読は、ボランティア活動や講師として高齢者の健康維持のために、
共に活動していただきたいと考えています。
絵本のほうは、当塾やご自分の教室、また高齢者施設や保育園等の“おはなし会”などを通して、
その力を発揮していただきたいと思っています。
小学校受験をお考えの保護者、孫に絵本の読み聞かせをしてあげたいとお考えの祖父母様など、
ぜひ聞いていただきたいと思っています。
実は、講座発足に先立ってセミナーを11月末から12月初めに4回行ったのですが、
定員いっぱいとなり、皆さんの関心の高さが伺えました。

ともかく、一人でも多くの方が健康になり、自分らしい人生を楽しんで欲しいと思います。
朗読がそのお役に立てれば本当に嬉しいです」 

サポーターの取材後記

なかなか
加齢により「逆流性食道炎」を患い、医師より咽頭を鍛えることを勧められていましたが、生来の怠け者である私は長続きしません。どうにか楽しく鍛える方法はないものかと思っていたところ、「街ゼミ」で「リヴ」を知り、早速体験させていただき、即、入塾。レッスンを重ねる毎に、朗読の、そして渡部先生の魅力にとり憑かれています。
GEN
「舌の付け根を鍛える運動を推奨」「楽しい健康朗読を教える先生になりませんか講座」「上達の近道は発表。そのための練習」いろいろ教えていただいた中で、特に魅力的に思えたのは、この3つです。誤嚥を防げたら一つ安心です。先生とまではいかなくても、朗読塾で身につけたことを仲間と共有できたら良いだろうなぁと。そして、群読発表にギターを抱えて参加するなどできたら、きっと楽しいだろうと想像したのでした。

サポーター紹介