サポーター体験記
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練馬から3Rを発信!区民ボランティアと取り組むちいさな環境改善のあゆみ

練馬から3Rを発信!区民ボランティアと取り組むちいさな環境改善のあゆみ
循環型社会実現に関連した、様々な講座が 掲載される広報誌「ゆずりは」
練馬区には4つのリサイクルセンターがあります。
“もったいない”を様々なアイデアで形にしたり、啓発し、
循環型社会の実現をめざして取り組む、豊玉リサイクルセンターにお邪魔しました。

練馬区立豊玉リサイクルセンター

取材ご担当:所長 石川壽一(としかず)さん / 副所長 平野芳典さん
※以下、文中敬称略。

所在地
176-0011 練馬区豊玉上2-22-15
電話
03-5999-3196
URL
http://www.nerima-rc.jp/

時代は3R(スリーアール)、資源を広げて考えると地球環境から薬膳にまで繋がる

――豊玉リサイクルセンターはどのような経緯でつくられましたか?
開設当初から「循環型社会の実現のために」というコンセプトで運営されているのでしょうか。

平野 「センターの設立は平成21年(2009年)です。
皮切りは、関町、そのあと春日町のリサイクルセンターが完成し、平成21年に豊玉、という流れですね。

実はセンターの設置に際しては、練馬区立リサイクルセンター条例、というものがありまして
この中で設立の目的が『循環型社会の形成に寄与すること』と、明記されています。
噛み砕いて言えば、子供たちの世代に環境等で借金を残さない社会を築いていこう、という
ことだと思います。

 副所長の平野さん、子どもたちの世代に
環境で借金を残さない、と力説
副所長の平野さん、子どもたちの世代に
環境で借金を残さない、と力説

“循環型社会”という言葉の中では、3R(スリーアール)、
リデュース(物を大切に使う)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(ゴミを資源として再利用する)、
という考え方・順番になっていまして、
リサイクルは最終手段という位置づけになっています。
そもそもゴミを出さない、という考え方ですね。

名前はリサイクルセンターですが、取り組みとしては3Rの精神に重きを置くように
取り組んでいます」

 一年越しで準備を重ねパワーアップした 布ぞうりづくり講座、生徒の作品
一年越しで準備を重ねパワーアップした 布ぞうりづくり講座、生徒の作品

――環境・リサイクルについて普及・啓発を目的として、いろいろな講座を開設しているようですね。
講座内容はどのように決定しているのですか。

平野 「まず講座やイベントの運営は“登録ボランティア制度”という体制で行っています。
『ボランティアとして環境について取り組んで行きたい!』と希望された区民の方が、
一定の研修期間を経て、登録ボランティアとして、活動します。

このように、トップダウン型ではなく、ボトムアップ型で様々な企画をしていきます。
また、登録ボランティアはそれぞれのセンターでの応募となりますので、
これらが多彩な講座内容に繋がっている理由になっているのだと思います。

さらに登録ボランティアだけですと、知識や活動に限界がありますので、
必要に応じボランティア以外に、専門的な知識をもった外部講師も登用しています。
これも、練馬区民やNPOなどの練馬区団体を中心に探してきます。
練馬区ですと、例えば練馬区在住の有名な薬膳の先生など講師として来ていただいています。

“なんで地球環境で薬膳なんですか?”という質問をいただくのですが、
現在の地球環境の話では、温暖化が起きたからCO2を減らそう、など、対処療法の
話が多いのですが、もともと先人は、循環型社会をずっと営んできたという面もあって、
その知恵の一つとしての、薬膳なんですよ」


――もう少し詳しく、地球環境と薬膳の繋がりについて教えてください。

平野 「環境と人類の進歩とのバランスが崩れ始めてきたのは、産業革命以降だと、よく言われています。
それまで人類は、自然と上手く共生していました。というより、共生しないと生きていけませんでした。
その知識の集大成の一つが、薬膳、というわけです。

例えば寒い時期は生姜を食べて温まる、とか、化学物質を極力避ける、とか。
エネルギーに頼らずに、知恵や工夫で快適に過ごそうという
自然との向き合い方、付き合い方の一つの形が薬膳なのです」


――なるほど!わかってきました。4つのリサイクルセンターでは、すべて同じ講座を実施しているのでしょうか。

平野 「いえ、各センターで様々な講座・イベントを企画してますので、
センターごとに内容は異なります。

豊玉の特色として、“自然と共生をしてきた先人達の知恵や文化にスポットを当てる”という
テーマで運営していますので、
例えば五節句をテーマにしたクラフト、アロマや薬草講座など、
対処療法でない先人の知恵をテーマにした講座が多いかもしれません」

多彩で魅力的な講座はどうやって作られるのか?大人気だったのは「アノ」講座!

――講座講師役となるボランティア講師は何名くらいいますか?
また先ほど、ボランティア講師の研修があるとお聞きしましたが、これはどのようなものなのでしょうか?

石川 「ボランティア講師は一般公募をかけて、各センターで登録しています。
豊玉ですと、現在およそ34名でしょうか。

 石川所長、楽しい講座に繋がるように
現場にどんどんまかせている
石川所長、楽しい講座に繋がるように
現場にどんどんまかせている

研修は、過去からですと色々と内容が変わってきているのですが、
今は、他の講座の準備あるいは見学に複数回参加していただく場を
設けたり、集合研修として基本的な知識を座学で勉強していただいています。

ボランティアになりたい方も、この期間でイメージを固めていただく目的もあります。
ちなみに、ボランティアは、練馬区民であればいつでも受け付けています」


――ボランティアの講師さんになられる方の年齢などに特徴はありますか?

平野 「やはり、リタイアされた世代の方が多いですよ。
30~40際代の方も若干いますね。
ある男性は、新婚でまだ小さなお子さんがいらっしゃるのですが、
“地域と関わりたい”ということで、お休みの日限定なのですが、ボランティア講師として
活躍されている方もいますよ」


――多彩な「講座」のうち、人気のあった講座はどのようなものでしょうか。

平野「ううーん…一概に言えないのですが、裁縫・クラクト系とお料理系ですかね。

どれも人気があるのですが、過去の実績から人気が高かったのは
『味噌づくり』ですかね。こちらは多い時は倍率が10倍以上、という時もありました。
それから『苔玉づくり』も人気がありました。
こちらも100人以上の応募がありました。

これらは一見、リサイクルとは関連が薄そうなのですが、
先ほどの3Rを拡大していくと、地産地消、あるいはCO2対策、
という意味でも、緑に親しみ、緑を増やしていこう、という趣旨で行っています。
一般の皆さんには、まず緑を好きになってもらうところから始めています」

平野 「また、人気の料理講座と一口に言いましても様々な切り口があります。

ひとつは地産地消系(フード・マイレージ※)をやります。
それから、食品ロスを減らす、という切り口、あとは省エネクッキングですね。
極力エネルギーを使わずに料理をしよう、という切り口です。
※フード・マイレージ…食の輸送量と輸送距離を定量的に把握することを目的とした考え方。輸送に伴い排出される二酸化炭素が地球環境に与える影響に着目したもの。当然、地元で採れたものを地元で消費することが、こうした影響は少ないと考えられる。

 講座情報とともに伝えたいテーマを
特集する、10月は食品ロスについて
講座情報とともに伝えたいテーマを
特集する、10月は食品ロスについて

一見、普通のカルチャーセンターのように見えるのですが、
必ず、地球環境問題に対するなんらかの切り口・意図をもって講座を構成しています。
ですので料理教室の冒頭に自給率の座学が入ったり…とそんな内容になっています」


――人気の講座・コンテンツはどのようにして作成しているのですか?

平野 「ボランティア自身の企画によるところが大きいですが、
彼ら、彼女らのアンテナは素晴らしいものがあります。

企画会議での会話は
『この間、パリでこういうことがあって…』とか『あのニューヨークの演説、聞いた?』
など、関心の幅と感度がとても高いです。

また私もよくこんな図式を描くのですが、
“環境として大切”という軸と“おもしろさ”という軸です。
環境として大切で、面白いのが理想ですよね。
で、その逆の、環境に重要でなくつまらないものは、やりません。
面白いものは黙っていてもお客さんは集まります。

“環境として大切だけど、(今は)あまり面白くないもの”これをどうするか?が
重要です。

 どうやれば区民がより興味を持つか?
を常に考えているそう
どうやれば区民がより興味を持つか?
を常に考えているそう

大切なテーマをいかに面白くするか?をボランティアの皆さんと考えます。
例えば、バーチャル・ウォーターという概念があります。
これは、食料等を輸入する消費国が、『仮に自国でそれらを生産すると仮定した場合』
必要な水の量を推定したものです。

日本は多くを輸入に頼っていますから、実はこの考え方ですと、
水不足なのです。・・・という話をしても、難しいじゃないですか(笑)。

ですので、小笠原で育てたコーヒー豆でコーヒーを飲んでもらおうと企画しました。
しかし、この年は小笠原のコーヒーが不良だったので、農園様のご好意もあり、コーヒー豆が育たなかったので、
コーヒーの葉っぱで作った『コーヒーのお茶』を飲みませんか?という講座を考えたんです。
興味をもっていただいて、一人でも多くのお客さんが集まれば、
バーチャル・ウォーターの話も知らせることができます。

また、先ほどのふたつの軸にさらにターゲット軸を入れて考えます。
どうしても、比較的時間に余裕のある世代の方が講座への参加が多くなりやすいですが、
幅広い世代を呼ぶためには、どういう内容の講座がいいのか?を
日々考えています」

気になる講座は広報誌「ゆずりは」をチェック!新聞折り込みや区立施設で手に入れよう

――お話を聞いて、とても興味がわいてきました。
これらの情報はチラシやホームページで確認できるのでしょうか?

平野 「練馬区立リサイクルセンターでは、「ゆずりは」という広報誌に力を入れています。
ふた月に1回、奇数月の21日に発行しています。約11万部を新聞折り込みと
区立施設への設置で配布しています。

 平野さん自作のチラシ、全くの未経験だが
見よう見まねでここまでのウデに!
平野さん自作のチラシ、全くの未経験だが
見よう見まねでここまでのウデに!

ただ、新聞ですと購読している層が50代以上が中心となりますので、
豊玉では、『学校チラシ』を作成し、同じ日に、区内の小学校11校程度に
6,000部くらい配布させてもらっています。
※頻度はマチマチだそうですが、各センターとも、学校チラシは行っているとのこと。

実際にお子さんを対象にした講座の申し込みは、11万部の「ゆずりは」よりも
6,000部のチラシのほうが、多いんですよ。
ホームページも伸びてきてはいるのですが、まだ認知経路としては弱い面もありますので、
これをさらに伸ばしていくのが課題の一つですね」


――ゆずりはを通して伝えたいこと、などはありますか?

平野 「ゆずりはには2つの機能があると考えています。
1つは講座の内容をお伝えして、参加を促していくという機能、
もう1つは、環境全般に関する情報を特集形式で伝えていく、例えば食品ロスというテーマとともに、
各センターを紹介していくという環境啓発の役割も担っています」


正直、こちらに来るまで広報誌「ゆずりは」の存在も、豊玉のリサイクルセンターでやっている内容も
知りませんでした。
ボランティア講師の皆さんのように少しでもアンテナをのばし、世の中の情報をキャッチしたいですし、
やっぱり外にでることは、新しい出会いにとっても重要なんだなと感じる取材でした。

 食器類は区民の寄付で集まる、
中には掘り出し物も?!
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 粗大ごみ再使用家具はどんなに高くとも上限5,000円、
人気のものは抽選になることも
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サポーターの取材後記

シルク
「むずかしいこと(環境問題)を、いかに楽しく皆と考え、取り組んでいくか」と話す副所長さんのことばに、並々ならぬ熱意を感じた取材体験でした。
取材後、家具・食器販売所を見学。たまたま見つけた掘り出し物のグラス2脚を購入。新聞紙に自分で包み、持ち帰る。「プラゴミなし」に納得。こんなところでも小さな、そして嬉しい実践の機会がありました!広報誌「ゆずりは」には、葉が交代するように、次の世代へ夢と希望をつなげていきたい、という想いが込められていると知り、我が家の庭にもある「ゆずりは」が一段と愛しく感じられました。
らいな
実は、わが家ではリサイクルに積極的ではありません。以前使っていた携帯電話は棚のはじっこにころがっているし。
古着回収もやっているのはよく知っていますが、近所に改修トラックが来るのは月に2回なので、あえなく挫折。
フライパンも1回取り替えたけれど、たぶん不燃ごみになっています。「わかっちゃいるけど」なんです。
それを誠実に実行している人々がいらっしゃって、その窓口となっているのがリサイクルセンターだということを、あらためて知ることができました。
講座やイベントが、区役所から降りてくるトップダウンではなく、区民ボランティアさんの発想に基づくボトムアップであることで、それらの発想は確実に実行できるものだとわかります。「わかっちゃいるけど」の言い訳は、ここでは成り立たないでしょう。
見学当日、布ぞうり作成講座が開かれていました。着なくなったTシャツが、6時間後にぞうりに姿を変えます。肌ざわりのよい、たったひとつの布ぞうり。手間がかかったからこそ、使っていこうとする愛情もわくことでしょう。
そろそろ高度成長期に子どもだった方がシニアの仲間入りをする頃です。どちらかというと「使い捨て」の世代になるシニアたちが、リサイクルセンターを通して、ボランティアさんたちの「リユース」に学び、「リサイクル」に積極的になり、廃棄するものを減らす「リデュース」を心がけていけるようであってほしいと思います。
衣替えで気づいた、もう着ないTシャツを古着回収に出すことから、あらためて取り組んでいきたいと考えております。
最後に…リサイクルセンターの食器売場はすごいです。思わぬ掘り出し物があります。初めて見せていただいて、正直驚きました。食器をお求めの方、ぜひ一度お立ち寄りください。

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