サポーター体験記
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いつまでも子ども心を持った大人たちの集まり!頼れる救世主「おもちゃドクター」

いつまでも子ども心を持った大人たちの集まり!頼れる救世主「おもちゃドクター」
偶然、男性ばかりの取材に!
子ども時分の想い出話に花が咲きます
誰でも一度は手にしたことのある、おもちゃ。
懐かしい想い出の反面、壊れてしまった、動かなくなってしまった、
なんて、ちょっと切ない記憶もあるのではないでしょうか。
今回はそんな子供たちの救世主、ねりまおもちゃクラブの
「おもちゃドクター」にお話を聞いてきました。

日本おもちゃ病院協会 ねりまおもちゃクラブ

おもちゃドクター 鈴木 雅幸さん/おもちゃドクター 安藤 信義さん
※以下、文中敬称略。

所在地
〒177-0041 東京都練馬区石神井町2-14−1(石神井公園区民交流センター内)
電話
03-5910-3451
URL
なし

60歳からが本番!文系からコンピューター技術者まで集まるクラブ

――それではまず、発足の経緯からお聞かせください。

鈴木 「聞いているところでは30年前と言われています。
実質的に、ここ(石神井)でやっているのは20年くらいですかね。

関町の方で、ある大手メーカーの幹部だったかたがはじめられたそうですよ。
彼は技術畑の人間だったそうです。
そのあとは、学校の校長先生だった方が引きついで運営されていたそうです。
僕は入ってまだ5年です。

 広報担当の鈴木さん、まだ新米なのだと
謙遜されています
広報担当の鈴木さん、まだ新米なのだと
謙遜されています

僕は文系の出身なんですが、小さいころからプラモデルだとか30歳過ぎてからラジコン飛行機とか
をやっていて、おもちゃが好きだったんですね。
で、定年退職をしたあとに、ここに入ったというわけです」

安藤 「現在のメンバーで、技術屋!という方は殆どいないんですよ。
強いていうなら、昔、時計を修理していた方、歯科技工士がいるくらいで。

 安藤さん、何より「好き」が原動力
安藤さん、何より「好き」が原動力

ちなみに私は昔、コンピューター関連の仕事をしていました。
昔は今のように作業を分担してないですから、
プログラムから設計、製造まで、全部ですよ。

極端な話、この建物(フロア)一杯くらいのコンピューターが、
今のパソコンよりも性能が悪いっていう、そんな時代だったんですよ」


――お二人の出会い、と言いますか、一緒に活動されるようになったのは
いつ頃からなんでしょうか?

鈴木 「だいたいみんな、60歳過ぎてからここにくるんですよ」

安藤 「私も65歳まで勤めて、定年退職して、妻が『こんなのあるよ』って
紹介してくれたのがきっかけですね。
練馬区の区報かな?募集が掲載されていたんですよ」


――奥様がオススメになるくらいですから、安藤さんもおもちゃがお好きだったんですか?

安藤 「いや私は、名刺の裏を見ていただくとわかるのですが、
2004年にこのDIYアドバイザーという資格を取得しています。
筆記→実技→面接を経て合格となります。

 安藤さんの名刺の裏面には、
DIYアドバイザーの認定番号が!
安藤さんの名刺の裏面には、
DIYアドバイザーの認定番号が!

私の父は、焼玉エンジンからディーゼルエンジンを扱う機関科の船乗りだったんですよ。
そんな環境で育っていたので、大工道具は家にゴロゴロありましたし、
もともと興味はあったんですよ。
DIYアドバイザーの実技が、比較的簡単に受かったのはそういう背景もあるからかも
しれません」
※焼玉エンジンとは・・・焼玉(やきだま)と呼ばれる独特の球形をした、
 鋳鉄製の内燃機関の一種。焼玉機関とも言われている。

パーツを求め東奔西走、昨今のおもちゃ事情とは?

――やっぱりそこまでお好きですとお二人ともガレージとかお持ちなんでしょうか?
工具や道具類って、ある意味男のロマンですよね・・・。

安藤 「私の部屋には工具がいっぱいで、妻にはいつも怒られてましたね(笑)」

鈴木 「秋葉原まで出向いて工具を買ったりね。
で、それを持ってきて、皆で見せっこするんですよ。
『こんなの見つけてきたぞ!』って(笑)」

安藤 「工具だけでなく、修理する部品も探します。
それも、『いかにいいものを、安く手に入れるか』、です。
例えばICやダイオードなんかも、普通にパーツショップで売っています。
しかし、単品(1個)だけ買うと、極端な話、新しいおもちゃが買えちゃうんですよ。

ロットが100、200、300個となると、値段が下がりますが、
1つだけだと割高なので、うまいこと見つけるわけです」


――なるほど!ご苦労なさっているんですね・・・。
専門医、といいますか、ある分野のプロフェッショナルなドクターは
いらっしゃるものなのでしょうか?

鈴木 「ウチでしたら、青山さんが電子関係に強いかな。

おもちゃは中国製品が多いのですが、最近はベトナム製も多くなってきました。
種類はほとんどが電子関係ですね。
全部がそう、とは言わないですが、粗悪な作りのものも、結構ありますね」

 様々なケーブルと多数の工具が
つまったツールボックス
様々なケーブルと多数の工具が
つまったツールボックス

安藤 「例えば普通、日本のケーブルは、中が7芯なんですね。
細い線が7本で、1つの線になって、ゴムなどの被膜で覆われています。

ところが一部の中国製品はこれが5芯なんです。2本少ない。
だから、安くできるんです。
これは強度も下がりますし、電流の流れも当然悪くなります」

鈴木 「他にも繊維に金属を巻いて、ケーブルにしているような例もありますよ。
木綿とか絹とかの普通の糸です。
あれに金属を巻いて、ケーブルに代用されてたりするんです。
こうなると、ハンダゴテが付きづらくて困ります。
だから修理に持ってこられても、
もとからそっくり入れ替える、なんてこともありますよ」


――我々の時代とおもちゃもの製造国も構造も様変わりしてるんですね。
知識に追いつくのが大変そうです。

おもちゃドクターの診療の様子を、特別に作業部屋を見学しました

――取材中、運よくお客さんがやってきました。

一緒に部屋の中に入ると、他にも「ねりまおもちゃクラブ」の会員
(つまりおもちゃドクター)が数名いらっしゃいます。
皆、揃いのエプロンをつけ、大きな作業机に待機しています。
そこここにツールボックスに入った工具や予備のパーツが散乱しており、
修理を待つ様々なおもちゃが所狭しと並んでいます。

モーターの動く音、アニメのヒロインが使うステッキのピコピコという電子音。
「こうしたらいいんじゃないか?」「いやこれではダメでしょう」
ドクターが相談しあう声が入り混じる、さながら研究室のような現場です。


――今回のお客さまは、修理完成の連絡をうけ、引き取りに来たようです。
彼女によれば、ぬいぐるみのスイッチが入らずに動かなくなってしまったとのこと。
ちゃんと動けばトコトコ歩いた後にクルリ!と宙返りをするギミックの様です。

安藤 「鈴木さんがこのぬいぐるみを修理したんですよ。
全部被覆(体を覆っている、毛のような布地)をはがして修理しました。
さて、ちゃんと動くかな・・・」

(トコトコ、、、クルリ!)――成功ですね!!

 修理されたぬいぐるみ
どこか誇らしげにも見える?
修理されたぬいぐるみ
どこか誇らしげにも見える?

鈴木 「今はツルツルの机ですから、宙返りの動きで滑っていますが、
ちょっと抵抗のある家の絨毯やマット、畳の上ではちゃんと回りますよ」

『ありがとうございました!!』

女性の感謝の声です。自分のものなのか、それともご家族のものなのか不明ですが、
元通りになって、ニコニコしながらおもちゃを持ち帰る彼女の表情が印象的でした。


――月にどれくらいの修理依頼があるのでしょうか?

安藤 「すぐ直る時は書かないですが、ここに履歴があります。
例えば今年の1月12日には20件、
26日が24件、一番少なかったのが6月22日で3件です。
ただ確かこの日は台風が来てたと思います。
月にすると30-40件くらいでしょうか。

 びっしりと問診票が挟まれたファイル、
いくつもある
びっしりと問診票が挟まれたファイル、
いくつもある

この問診票に必要事項を書いて手続きします。
それで、番号で管理しています。
これを今いるメンバーで割り振って修理していきます」

 特殊なねじ山を開けるドライバー、
先が三角なのが分かるでしょうか?
特殊なねじ山を開けるドライバー、
先が三角なのが分かるでしょうか?

直したり作ったり!手作りのおもちゃも教えます

安藤 「修理だけでなく、手作りおもちゃ、折り紙の先生(女性)もこのクラブにいますよ。
折り紙を教えたり、実演したりするメンバーです。
つくるものは割りばし鉄砲やブンブンゴマ(丸、四角)、それからひっくりカエルなど、です」


――随分素朴なものもされているんですね。
プラスチックや電子関係のおもちゃだけかと思いました。

鈴木 「これは手作りおもちゃと言って、子どもたちに教えています。
ここ消費生活センターでも教えてますし、光が丘で開催する練馬こども祭りでも行います。
みんなで一緒に作るイベントです。

今の子供達はすぐに電子ゲームをやっちゃいますが、
意外とこういう素朴なものも楽しんでいますよ。すぐ飽きちゃいますけどね(笑)。
と言っても僕らの本分は、遊ばせることではなく、
ものを作る・直すという精神を子供達に教えたいと思っています」

「パチン!!」突然音がしました!

安藤 「それが”ひっくりカエル”ですよ。
皆さんに一つずつ用意しましたから、作ってみましょう。

これは本クラブの齋藤さんが作っているのですが、よく見てください、
厚紙・薄い紙・布と張り付けてありますよね?これで柔軟性と耐久性を出しています」

私たちも早速作ってみます。

 横からゴムを通し、クロスさせて・・・、
折り曲げて机に置くと飛び上がります
横からゴムを通し、クロスさせて・・・、
折り曲げて机に置くと飛び上がります

こちら、お土産にいただきました!

 「修理前」電極端子,配線ケーブル、ハトメ部分が漏れた液で腐食し破損しています。
「修理後」それを修理し、新しい端子をしっかりとネジ止めし、新しい配線ケーブルにしたもの。
「修理前」電極端子,配線ケーブル、ハトメ部分が漏れた液で腐食し破損しています。
「修理後」それを修理し、新しい端子をしっかりとネジ止めし、新しい配線ケーブルにしたもの。

安藤 「液漏れを防止するために、使わない電池は抜くのが鉄則です。
今は男の子のおもちゃも女の子のおもちゃも、
電池が入っていることが殆どです。

液漏れしてしまうと、電池ボックスの端子がダメになってしまいますから、
端子(電極の部分)を外して、スプリングに変えてあげるんです」


――今までで印象に残った修理依頼や想い出はありますか?

鈴木 「大人の方が、電動スクーターが持ち込まれたことがありますよ。
あれはおもちゃの部類に(持ってくる人の中では)入ってるんでしょうね。
ただ、高額なものは全て『自己責任ですよ』と断りを入れています。
修理にはチャレンジしますが、やってみてダメなことも
当然ありますからね。

現役時代に、児童館の行事で洗剤を使った”スライム”作りをしました。
こども達がうっかりシンクに流して詰まっちゃってね。。。
配管の掃除に行ったこともありますよ(笑)」

安藤 「あとは、けっこう高齢のご夫婦が持ち込まれたのが、
山小屋風のデザインのオルゴールでした。
『結婚の記念旅行で、北欧で買ってきたものだ』と言われまして。

昔のものは、がっしりと作ってあるものもあって、
接着剤がこう、ドン!と盛り付けてあるわけですよ。
一度剥がすともう、部品ごと全部とれちゃう感じで。

だから修理が必要な部分や、修理の方向性は分かるんですが、
その部分までどうやってたどり着くのかを、2、3人であれやこれやと
考えたりしてね。
まあ結局直しちゃうんですけどね(笑)」

鈴木 「難しいものは他にもありますよ。
ぬいぐるみです。素材に起毛した布などが覆われているでしょう?

接着剤で貼っているケースもありますが、結束バンドで括りつけてる場合もあるんです。
長くて細い結束バンドなんて一般には売ってなくて、
建築資材を売ってるお店くらいしかないんです。
でも長さがでるとどうしても幅も出てしまいます。強度が必要になりますからね。
ですので、細くて長い結束バンドを求めて、
ネット通販で見つけてみたり、わざわざ地方のホームセンターまで出かけて、
修理のパーツを確保することもありますよ」

安藤 「ホームセンター、あそこは楽しいですね。
もう、一日中居られます(笑)」

練馬区が誇るおもちゃドクター、ますます高まるその需要

――最後に今後の展望を教えてください。

鈴木 「やはり若い人に、この会に入って欲しいなと思います。
定年後の60代はまだまだ大丈夫なのですが、
僕の場合はあと10年、さすがに80歳を越えると、視力もそうですし、
そもそも長時間、ものを押さえることが難しくなりますから」

安藤 「ただ、歳を取るのも悪いことばかりではないですよ。
今いるメンバーも、何か故障したものが入ると、みんなでワーッと寄ってきて、
あれがどうだ、こうじゃない、とか始めるわけです。
要するに、ものの見方や考え方が一つではないということです。
それに気づくのは、経験がなせることだと思います。

 皆の視点で問題がより早く
片付くこともしばしば
皆の視点で問題がより早く
片付くこともしばしば

私としては、頼ってくれる方がいる限り、続けたいと思いますが
事務担当を作り引退することが夢ですかね(笑)」


――失敗談も、パーツを手に入れる苦労さえも生き生きと語るお二人。
その瞳は、まるでいたずらっ子のように、輝いています。
遊ぶことやおもちゃが大好きなことが伝わって来るようでした。

持ち込まれるおもちゃは、西東京市や新座など区外からのものもありますし、
今いるおもちゃドクターの中には、中野区で同じドクターとしてご活躍していたり、
また、県外でその技術を活かして別のことをしていたり。。。

練馬区のマイスターとも言える人材の需要はまだまだ高いと感じました!
腕に覚えのある皆さん、おもちゃドクターの扉を叩いてみませんか?

サポーターの取材後記

なみ
好きなおもちゃを「おもちゃ病院」で直してもらった子供さんの喜びが、その子の成長過程の中できっと良い影響として芽生えて来るのではないか、と期待します。現代は使い捨ての時代で、社会問題化している中「おもちゃ病院」で大事な大好きなおもちゃがよみがえることが、物を大切にすることに繋がればいいかなと思います。「おもちゃ病院」担当の方は、子供さんたちに喜びを与えることに携わり、すばらしい社会貢献をされていることを大変うらやましく思いました。
パイレーツ
昔、大手ゲーム会社数社の開発担当の役員と話す機会があり、ある一致点に驚いたことを、この取材で思い出しました。全員が、電子系とか数学の専攻ではなく機械科出身だったのです。設計図から具体的なものを想像し創造できる能力をそこで叩き込まれたという内容を、ほとんど違わず、それぞれが話してくれました。「おもちゃ」を仕組みから想像できるなんてなんて素晴らしい才能なんだろうと再度思いました。私は、ただ遊ぶだけなのに。
豆柴
知人がおもちゃドクターとして30年活動し、かねがね興味あり訪ねた。
院内は熱気に包まれ和気藹々、これぞ趣味を同じくする仲間の集まりである。最近のおもちゃ事情、電池の豆知識なども交え予定の時間も瞬く間に過ぎ、まだまだお話を聞きたかった。特に事務長さんは大病を克服しながらも情熱を注ぎ頼りになるドクターである。ぬいぐるみ人形が動き出し、大事そうに持ち帰る親子はほほえましい。物を大切にする心、手作りの楽しさ、いつまでも引き継がれるべきである。会員は閉院後、大事そうに愛用の道具、部品類をバックに詰め三々五々帰途に着かれた。皆さん充実感にあふれ、これぞ元気の源でしょう。また元気をもらいに行ってみよう。

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