サポーター体験記
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ふるさとは、私の中にある・・・シニアだからこそ楽しめる、石神井公園ふるさと文化館を取材!
- 取材日
- 令和元年6月25日
- 更新日
閑静な場所にふるさと文化館はあります
近くにある公共施設だから、なんとなく見過ごしていたけれど
実は私たちシニア世代だからこそ満喫できる企画や展示が目白押しなんです。
常設展示と、6/22(土)~8/12(祝)まで開催中の企画展
「のぞいてみよう 昔のくらし」を早速取材してきました。
練馬区立 石神井公園 ふるさと文化館
取材ご担当:管理係主任/岩田 典子さん
学芸員:奥野 友美さん、相川 詩織さん
ボランティアスタッフ:木島さん、阪本さん、越さん
※以下、文中敬称略。
- 所在地
- 177-0041 東京都練馬区石神井町15-12-16
- 電話
- 03-3996-4060
- URL
- https://neribun.or.jp/furusato
実は、わたし、初訪問なんです!ふるさと文化館ってどんなところ?

細かな点まで丁寧に説明してくれました
奥野 「ご来館、ありがとうございます。
ふるさと文化館は、名称になぞらえてコンセプトがあります。
1.「ふ」・・・ふれあう、交流する
→サポーターと呼ばれるボランティアスタッフが常駐しています。
お客さんと展示物の橋渡しをすることで、気づきを提供する役割を担っています。
ボランティアスタッフは約100名います。
2.「る」・・・ルーツを知る
→区立の博物館施設ですので、事実と根拠に基づいた練馬の歴史を紹介しています。
3.「さ」・・さわれる
→自由に触ったり、体験できるコーナーを積極的に設置しています。
サポーターがやり方など丁寧に説明しながら体験をしていただいてます。
参加していただくこと、感じていただくことで結果的に学びに繋がっていければと考えています。
4.「と」・・とりかえられる
→常設展示室などは、通常の場合「同じ展示なら、一回でいいかな」という感想を持たれるお客様も多いと思います。
そのため、なるべく頻繁に展示替えを行える設計にしており、
いつ来てもどこかが新しいような状態を心がけています。
館内には非常にたくさんのコーナーがありますので、
それぞれのコーナーで数か月に一度、といったペースで変更をしています。
常設展示室全体のテーマは『江戸・東京近郊のまち、練馬』となっており、
決して大都会ではないですが、中心部からもそれほど遠くない位置にあった練馬の地理的な特性などから育まれた文化などを紹介しているのが特徴なんですよ」
まさに感じる展示!原寸大ジオラマで「昭和の街並み」にタイムスリップ
――大きな大根の樽を越えて奥に進んで行くと、天井が急に高くなり、TVセットのようなブースに出ます。
奥野 「こちらが昭和の街並みのコーナーです。
この広場ですが、ちょうど前の東京オリンピックが始まる直前、昭和30年代後半の街並みを再現しています。
例えばタバコ屋さんのショーケースに”オリンピック寄付金付きタバコ”なんて商品の広告が掲示してあったり、以前はどこでも見かけた街角のゴミ箱も、東京オリンピックを境に、より清潔な環境を目指してどんどん入れ替え、使われなくなっていきました」

忠実に再現したダミーです
奥野 「この写真は昔の石神井公園駅です。
昔を知る方にはとても懐かしい写真ではないでしょうか?

どこか人の温かさを感じますね
この写真が撮影されたすぐあとに線路をまたぐ跨線橋(こせんきょう)が誕生しました。
昭和37年から工事が始まり、平成21年まで使われました。
このコーナーは全て仮想世界ですが、
ところどころに現実的なものを加えることで見られた皆さんに『あぁ懐かしいな』と
感じていただけるようにリアリティを出す工夫をしています」
――前の東京大会では、『タバコ』でオリンピックを応援していたのに、今度の大会では『禁煙大会にしよう』なんて気運もあり、時代の流れを感じますね。

見かける事すら殆どありませんね
奥野 「こちらのミゼットは、このコーナーのために用意した本物です。(動きません)
ちなみに街並みに飾ってある看板も、全部本物です。
中央のコーナーには、お子さんが触って遊べる昔のオモチャ類が置いてあります。
すごろくやコマ、けん玉、メンコに万華鏡、あやとりなどが置いてあり、ボランティアスタッフが一緒に遊び方を教えてくれます。

今のお子さんは使い方、わかるかな?
――この場にいると、知らない人同士でも、会話も弾み、不思議と仲良くなれるそう。
きっとこのコーナーでは、お孫さん世代にシニア世代が教えたり、なんて世代を超えた交流が生まれていることでしょう。
お茶の間におじゃまします!座れる・触れる「柴田家」へようこそ
――こちらは?一般家屋のようですが?
奥野 「東京オリンピックが終わり、大阪万博が終わった後、
昭和40年代後半の家屋の再現ですね。
建物自体は、昔ながらの農家を再現していて、そのため茅葺(かやぶき)屋根になっていますね。
建物の外観は変わらなくても、中に住んでいる人は、時代に合わせてどんどん新しい家電などを買っていきますから、そうした時代の流れを表しています。
こちらは入ることができますから、あがってみましょうか。
もちろん中にあるものは全て手にとってご覧いただけますよ」

取材なのにくつろいでしまいますね
――テレビも今みたいに平らではないですね。このカレンダーは・・・?当時の歌手の方ですかね。
ゴルフしてますけど、プロゴルファーではない、という(笑)。
奥野 「そういった細かい調度品に気を配ることで、ここに来ると、小さなお子さんでも田舎のおばあちゃん家にいるみたいな感覚で、意外と楽しんでいただけるんですよ。
ふるさと文化館の外にも”旧内田家住宅”がありまして、
そちらの方には本物の茅葺(かやぶき)屋根の民家を移築しています。
旧内田家住宅は明治20年代の建築で、
復元するときは、あえて昭和の戦前頃の状態にしました。
建築当初の状態に戻した場合、改装を重ねて使っていますから、かなり推測の部分が多くなってしまいます。
この位の年代が、今のシニアの皆さんが本当に『ああ懐かしいなぁ』と
感じる年代ですので、その点も意識しています。
ご年配の方が見ても、比較的若い方が見ても楽しめるような絶妙な時代を再現しています」
――なるほど。。こちらはお勝手ですかね。台所、と。電化製品もかなりそろっていますね。
奥野 「そうですね。
こちらに配置してある資料のほとんどは、区内にお住まいの方から寄贈いただいたものです。
最近では使わないものは断捨離などと言って処分するケースも多いと聞きますが、
昔って、まだ使えるものや使ってないものは、捨てられませんでしたよね。
色々な意味で、モノを大切にしていたといいますか。。。

しかしみなさん、物持ちがよいですね
ですので、保存状態も良く、買った当時のまま、なんていうものもかなり多く、
本当に大切に保管されていたものを寄贈いただいているんですよ」
奥野 「そうだ!もう一つだけとっておきの秘密を。
この住宅は”三世代の同居”という設定なんです。
おじいちゃん、おばあちゃんは明治末~大正初めの生まれ、農業を生業としています。
練馬のこのあたりも古い時代では多くの方が農業に従事していらっしゃいましたから。
その息子と息子のお嫁さん、息子さんはサラリーマン、奥さんは専業主婦です。
生まれは昭和10年くらいの設定です。
名前は、当時に多くつけられた名前を参考に命名しているんですよ。
そして、お孫さんが2人。昭和30年代後半の生まれ、となっています」

緻密に作りこみリアリティを演出
――おお!あの茶の間の奥にあった机の持ち主が浩くんなんですね!
いやあ、この細かい設定は、聞かないとわかりません。実によく考えられています。
奥野 「特に若い世代の皆さんですと、どうしてもお仕事が忙しく、
練馬区に住んでいても、職場と家との往復で、なかなか地域を知る機会は少ないと思います。
そんな皆さんのためにも、楽しみながら地域を知る仕組みや、
お子さんに興味をもってもらうイベントなどは、重要だと考えています。
お子さん向けには毎週土曜日に、『ふれあい土曜事業』という講座も行っています。
ふれあい土曜事業には特に年齢制限はありませんので、シニアの皆さんもお気軽にご参加ください!」
――地域のことや、自分の知らない時代の生きた知識は、
まさにお客さんであるシニア世代との交流から得るものも多いのだとか。
自分も勉強になるし、お客様に本気で喜んでもらえる仕事は嬉しい!と語る奥野さん。
その笑顔が印象的でした。
続いて企画展、「のぞいてみよう 昔のくらし」展を(一部)覗いてみます!

寒い地方では案外、身近だったのかも

時代の流れとともに、機能も追加されます

小さい頃はなんとなく怖かったなぁ

熱心に研究されてます!
昔どこかで見たことのある品々に興味も話題も尽きません。
間違いないです!
この企画展は、私たちシニアのための企画展といっても過言ではないでしょう。
(実際にはどなたでも楽しめる企画展です)
ボランティアスタッフのお三方を直撃!私たちと同世代の本音に興味津々

三者三様のきっかけでこちらでご活躍中
――ボランティアスタッフに応募したきっかけを教えてください。
木島 「私は練馬区にきて40年近くなるんですけど、
この建物ができて2年目の時に区報で募集があったんです。
そこで応募したのがきっかけです。ですのでもう、、、8年くらいになりますかね。
練馬区に嫁いできたものですから、この土地の事を知りませんでして、
歴史も好きですし、植物も好きですので、興味を持ったことが始まりですね」
阪本 「私は応募する前にふるさと文化館に行く機会があって、
別の方がボランティアスタッフをしているのを見て
お客さんと楽しそうに接している姿に、いいな~、と思ったのがきっかけです」
越 「私は実はまだ、ボランティアスタッフになって2年なんですよ。
三宝寺池がとにかく大好きで、三宝寺池を守る会の活動もしています。
国の天然記念物でもあるあの池は、地元にいても、その植生が古くは1万年も前から続くもの、
ということが案外しられていないんです。
幸いふるさと文化館は池のすぐ側です。ここで池のことを話せば、
ふるさと文化館にも、三宝寺池にも興味をもっていただけるかな、と」
――それぞれに練馬区への、歴史への関わり方や思い入れがあって、面白いですね!
今までの活動で印象に残っているものはありますか?
木島 「地元の来館者の方ですと、やっぱり私よりも練馬区の事を知ってる方が圧倒的で、
勉強になる、というのが第一印象ですね。
専門知識が必要な場合は、100人からなるサポーターで誰かしら詳しかったりしますから、
その方から教えてもらって、みんなで対応している、という感じでしょうか」
越 「そうですね。。。昔このあたりではたくあんを作っていたんですね。
常設展示室の入り口に大きな樽があります。
たくあんを作られている方の話を聞くと、昔はかなり儲かったと言われます。
これはつまり、昔と今とでものの価値が違う、ということなんですよ。
調味料も調理法も今ほど発達していなかった時代では、味がしっかりとあり、
それだけでおかずになるたくあんは、ごちそうに近いレベルのかなりランクが上の総菜だったんです。
歴史書を見るとそんなことが書いてある本もあり、印象深いですね」
阪本 「私はふれあい土曜事業で”ちがや馬飾り”を作ったことです。
練馬区では七夕の時に五穀豊穣を願って『ちがや馬』を飾る風習があります。
私も、練馬区に嫁いできて、初めてしったんですよ。
何度か開催しているのですが、楽しみにされている常連さんもいらっしゃって
励みになります」

資料写真もあって分かり易く展示されています
※期間限定展示のため変更の可能性アリ(2019.6.25現在)
――このほかにも、
昔の洗濯機は、脱水がローラー式のため、圧力で衣類等のボタンがよく割れる、、とか
どの家庭にもあったカゴのバックはボロボロになるまで、補修しながら使っていたり、、とか
アルマイト素材の弁当箱を使っていた(今も使ってます!)、、など、
ボランティアスタッフの皆さんならではの実体験を交えた話に
やはり、会話は途切れませんでした。
皆が同じように過ごしてきた共通の時間は、どうしてこんなにも人と人とを繋ぐものなのでしょうか。
ボランティアスタッフの皆さんの楽しそうな話しぶりを見て、
昔の友人に会いたくなるような、
わけもなくおしゃべりを愉しんでいたあのころを思い出すような、
不思議な感覚に包まれた取材でした。
サポーターの取材後記
- シルク
- 取材であることを忘れて楽しんでしまいました!
展示が大変興味深く、空間そのものにどっぷりと浸りながらのひとときを過ごしました。円卓や茶箪笥のある畳の間に座り、見て、触れて、子どもの頃にタイムスリップ、懐かしさで一杯になり、心和む半日となりました。
展示物はもちろんですが、館そのもののロケーションも大変素晴らしく、目の前に石神井公園や三宝寺池などもあり、のんびり散策する一日お散歩コースもお薦めです。
- パイレーツ
- 今回のオリンピック招致のキャッチフレーズは「今、それがニッポンには必要だ」。なんとも印象深い言葉だが、これは、前の東京オリンピックから大阪万博までの、ある種の高揚感にあふれた時代の記憶から出たものであろう。『今日より明日は必ず良い・良くなっているはず』を信じられる不思議なエネルギーに満ちたあのころ。そんな古き良きニッポンにタイムスリップできる空間が、こんな身近にあったなんて。ここ練馬のふるさと文化館の縁側でたたずむと、たとえそれがセットであっても、子どもの頃の希望に満ちた日々を思い出す。
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