サポーター体験記
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練馬の地下水の事を知ろう!練馬に名水あり?! みどりの風だけじゃない、『練馬の水』を探る

練馬の地下水の事を知ろう!
井戸の内部の清掃中の写真
皆さんが小さい頃は、練馬にも大小さまざまな川がありました。
時代を経て川は姿を消しますが、現在でも井戸という形で私たちの生活用水などに恵みをもたらしてくれています。
さて、そんな練馬の地面の奥に、豊かな水源があるのはご存知でしょうか?
今回は、練馬の地下水について探ります。

健康部 生活衛生課 環境衛生監視担当係

係長 小柳 武(こやなぎ たけし)さん
係長 角田 直人(かくだ なおと)さん
主査 新田 耕嗣(にった こうじ)さん
※以下、文中敬称略。

住所
〒176-0012 東京都練馬区豊玉北6-12−1 練馬区役所東庁舎6階
電話
03-3993-1111

地下水を守る!生活衛生課の仕事内容、水質などについて

地下水を守る!生活衛生課の仕事内容、水質などについて 取材スタート!おいしい練馬の地下水についてお聞きします
取材スタート!おいしい練馬の地下水についてお聞きします

――東京都環境局のホームページを見ますと練馬区のような高台では関東ローム層の下の礫層に奥多摩などからの地下水が流れているとあります。また練馬区の防災用井戸ホームページを見ますと、深井戸が23か所くらいあるようです。区はそれらをどう活用されているのか?また今後についても教えてください。

小柳 「区として、地下水の飲用水・生活用水としての利用について、具体的な施策があるかというと、現状ではありません。井戸水のくみ上げ利用の仕方についても法的な制限はなく、逆に言えば個人・団体が自由に使ってよいことになっています。そのかわり、使う人が責任を持つというスタンスです。

ただし、都内ではポンプで水をくみ上げる場合は地盤沈下が起こる可能性も考慮して、揚水規制があります。これは国の法律や東京都の条例によって規制されますが、区では環境衛生監視担当係で対応しています。練馬区の地下水利用量は地盤沈下を起こす事ではないのが現状ですね」


――生活衛生課の仕事について、水に関する内容を改めて教えてください。

小柳 「環境衛生監視の水に関連する担当では水道施設に関して、深井戸の中の一部は、水道法で専用水道、という区分けがあります。専用水道とは、101人以上の居住者が飲用する水を供給する施設、ということですね。生活衛生課は、専用水道の届け出をしていただいた施設に対し、監視・指導を行う立場、となっています。飲料用の水道水として利用する場合、水道法によって51項目にも及ぶ厳しい検査を受けることになっているんですよ」

新田 「生活衛生課の主な役割は、衛生面の管理ですね。大泉名水会※さんが供給する水は、定期的に検査されて、私たちは報告を受ける、これは、水道法で義務付けられていることです」
※大泉名水会について・・・練馬区東大泉3丁目に住む518世帯(平成25年9月現在)の会員によって管理運営されている、地域の水道事業団体。昭和16年、市ヶ谷にあった陸軍予科士官学校が朝霞に移転したとき、その職員の住宅に水を供給するために
作られました。水源は地下125mと232mの深井戸で、水量豊富な水脈からポンプで汲み上げ、供給しています。


――練馬区ではどのような場所が検査対象の井戸水なのでしょうか?としまえんのプールの井戸水ですがこれは検査してますか?

小柳 「現在、その監視の対象としている井戸は12ヶ所あります。大泉名水会さんもこの中の一つです。田柄水道組合(6ヶ所)、大泉名水会(2ヶ所)、仲町台住宅給水管理協会、慈雲堂内科病院、などです」


――としまえんは確か、昔から深井戸の水をプールに使っていますね。

小柳 「プールで利用する場合は、水質検査はプールの基準となり検査項目は少なくなっています。プールの水質は、飲用のためではなく、遊泳に適した水質を保つために設定されています。プールや公衆浴場(銭湯)や温泉の水なども私たちのチェック対象です。夏になると、プールに出かけて行って、水質の検査をしているんですよ」


――東京都のホームページには、200mくらいの深井戸を掘ると、水質がかなり良くなると書かれていたのを見たのですが。

小柳 「確かに、基本的には深ければ深いほど、浅井戸に比べて地表の影響を受けにくい、ということは言えると思います。地下深いので地表から浸みこみにくく、また濾過する距離が長いわけですから。しかし、逆に深いと、場所によっては地中深くにまぎれた有害物質などが、時間をかけて地中に浸みこみ、流れ込む可能性もありますね

地下水の流れ方ですが、一般に皆さんが想像されるのは、地下に川や巨大な空間、鍾乳洞や地底湖みたいなものがあるのでは?というイメージかと思いますが、実際には、水が流れているわけではなく、砂をはじめとした目の粗い層(礫層)に染み込んで、毛細管現象などで長い時間をかけて動いていると言われています。1m動くのに何か月、場合によっては10~20年かかって移動する場所もあると言われています」

角田 「砂の層も川のようにまっすぐまとまっているわけではなく、地面の中を広がっている中を少しずつ、重力に従って移動している感じです。地面の中も山あり谷ありですから、移動に時間がかかるケースもある、というわけです」


――移動時間が長い、流れ方も変化する、ということは、途中でもし溶け出した悪い成分があるとしたら、いつまでもとどまると。だから定期的な水質検査が必要なのですね。

 見えない地下水のことが、だんだんと解ってきました・・・!
見えない地下水のことが、だんだんと解ってきました・・・!

小柳 「そうなんですよ。地表に工場などがあると、汚染されるリスクがあります。雨水などに溶けて、地下水を汚染してしまうこともあるのですが、水源は場所によって流れの速さも違えば、場所ごとに含まれる物質も異なりますので、井戸水の検査を”今”して、何もなくても、それは検査時点での水質ですから、1年後、10年後も同じ水質とは限らないのです。地震などによる地殻変動で水の流れが変わります。ですので、水質検査はあくまで『その時のその場所の水質』しか確認できないのです」


――規則としてはどの位の頻度で検査する、と規定されているのですか?

小柳 「個人で掘っている浅井戸については、年に1度、基本的な水質検査項目をチェックすることを推奨しています。水道法に基づく検査が可能な業者に委託するなどして、検査をおねがいしています。区の中では、揚水規制については環境課、防災井戸の管理については、防災課が担当しています。防災課は、防災井戸を飲用として考えています」


――水質検査の違いについて教えてください。プール用と飲用とでどの位、差があるのですか?

 田柄水道組合の浄水設備
田柄水道組合の浄水設備

角田 「水質の基準がプールの場合は7項目です。飲用の場合は先にお話したように水道法に従って多くの検査項目がありまです。飲用水ですと、長期間、継続的に利用し続けますので。いずれも塩素消毒しています。塩素臭が嫌なので井戸を使う、という方もいらっしゃいますが、実は専用水道の井戸水では配水管から蛇口を出る状態まで塩素が残るようにしています。それは衛生面から水道法で定められています。残留塩素濃度、0.1ppm以上※が基準です。ただ、個人で持っている井戸については、おそらく塩素を加えていませんので、そのままの可能性は高いです。衛生管理は自己責任ということで注意が必要ですね。
※正確な表示は「0.1mg/リットル」となります。

ちなみに都の水道水も専用水道でも塩素殺菌に使用しているのは、分かり易く言うと家庭でいうところの漂白剤と同じ成分の次亜塩素酸です。飲用しても十分安全な量濃度で使用しています」


――実は我が家にも井戸があり、ポンプでくみ上げています。飲用せずに、メダカの水や花にあげています。この水については規定はあるのですか?

小柳 「ありません。ご自由に使っていただいて大丈夫です。
井戸で使う水道料金は、上水道料金は当然、徴収されませんが、下水道料金に関しては、使用量に応じて料金が決められています」

練馬の豊かな水源を知る、上水道ヒストリー

練馬の豊かな水源を知る、上水道ヒストリー 小柳さん 自身の経験も含め、練馬の水源の歴史を教えていただきました
小柳さん 自身の経験も含め、練馬の水源の歴史を教えていただきました

――田柄水道は、田柄川と関係性はあるのでしょうか??

小柳 「詳細は分かりませんが、水源で見ると、何らかの関係性はあったと思いますよ。田柄川は、戦時中に今の光が丘に飛行場が作られたとき一部が埋められ、現在ではその下流は地下に設けた水路=暗渠(あんきょ)になって、その上は緑道になっていますが、その付近は水が豊富で、井戸も掘り易かったと思いますし。田柄水道では、広範囲に6本の井戸をもっています。今でも田柄水道さんに加盟してこの水を使っているかたが数千名いますからね。井戸の深さは、田柄水道さんが180から200m、大泉名水会さんが125mと235mでいずれもかなり深いと言えますね」


――練馬区の歌で、みどりの風が吹いて~土のにおいが~、という歌詞がありますが、これほど水源も豊なのに水の表現が無いのが不思議です。

「確かにそうですね、、、笑。白子川の先、大泉井頭公園付近に行くと、ちゃんと川があって、小さいながらなかなかの景観です。ここは白子川の水源のようですね。石神井川はもっと西の小金井付近とされています。さらに西に行けば国分寺付近では、谷戸の崖から清水が流れ出ていますね。
季節によっては蛍も飛ぶようです。地下水が豊富なことと関係していると思います。田柄川は今、暗渠(あんきょ)ですから、田柄川緑道となっていますね。歴史の変遷を経て、都会化があったり、氾濫したりしないように、主に堤防を増強する護岸工事をするなど、整備をして街とともに変わっていってます」

小柳 「話は変わりますが、温泉ですと1000mくらいの掘削になります。豊島園にある庭の湯さんや、桜台の久松湯さんなどは、1000~1300mですから、水脈は全然違います。日本では、深く掘れば大抵温泉が出る、とも言われています」

 新田さん たくさんの資料を準備し、私たちの疑問に丁寧に応えていただきました
新田さん たくさんの資料を準備し、私たちの疑問に丁寧に応えていただきました

――千川上水も50年程前は、豊かな川が流れていたのですが、今は姿を消してしまいました。。。

新田 「一部、関町南、関町東、立野町あたりには”千川上水”がありますよ。小川のようになっていますが、川が流れています。上石神井体育館の交差点あたりで、下にもぐりますね」


――練馬区に深井戸が多く残るのは、上下水道含めた整備が遅かった、、、などの理由はあるのでしょうか?

小柳 「正確なところは不明ですが、水道を含めたインフラの整備は、遅い方だったかもしれません。歴史を調べると、そういった事実も出てくるかもしれませんね。私が役所に勤務しだしたのが平成元年なのですが、その当時まだ、石神井あたりの一部では汲み取り式のトイレもあり、浄化槽がありましたから、遅かったのかもしれません。昭和40年代くらいに上水道の本管から支管を自分の敷地に引っ張る際、これは自費で工事しなければいけないのですが、その費用をかつて練馬区が助成していた時期もありました」


――ある程度掘れば、今でも練馬から井戸水はでるのでしょうか?

小柳 「実際には、水源が分布していますので、どこでも、というわけではないと思います。
練馬区はたまたま田柄の近辺に豊かな水源があり、このあたりは水が出やすかった、という背景で集中したのだと思います。浅井戸より、深井戸のほうが地表の影響を受けにくい、という事実はありますので、練馬の深い井戸=比較的良い水ということは言えると思います。また、水温も変化しづらい特性があります」


――私の友人なんかは、調布の水は地下水だから夏は冷たく、冬は暖かいのだと自慢されたこともあります。上水に地下水を利用している自治体はあるのでしょうか?

 シニア世代は、井戸や生活用水で長く関わってきた分、水にこだわりも多い
シニア世代は、井戸や生活用水で長く関わってきた分、水にこだわりも多い

角田 「あります。実はこれには歴史的な経緯がありまして、水道の供給は原則市町村事務で、本来は市の単位で行うのですが、東京の特別区は都が直接やる、という決まりがあるのです。

区部では、多摩川や利根川・荒川から、東京都水道局が直接水を浄化して供給することが主流になっています。現在では、水源の川の水質もずいぶん良くなり、高度浄水処理もされて良質な美味しい水道水が供給され、それが97%を占めていると思います。

一方、東京の市部では河川の水より井戸水を利用するケースが多かったのです。今は市部も殆ど東京都に水道事務を委託していますが、市営水道時代からの井戸水と河川の水を浄化したものを使う、という状況のようです。

今でも羽村市、昭島市などは、100%地下水で水道を運営しています。
国分寺などでは、畑の真ん中に突然”東京都の水源井戸”というのがあったりします。
昔、国分寺市が運営していた名残の井戸で、今は東京都が管理しています。都が供給している水道でも水源が、井戸ということもあるのです」

新田 「練馬では、殆どの方が都水道を引いています。が、井戸の水が好きだ、ということで併用されていることが多いようですよ。近年、自然災害が多いので、いざという時のために水源を確保したいので、井戸を掘りたい、という問合せが増えています」

練馬の地下水のこれから

――生活衛生課と環境課、防災課、との連携などはあるんでしょうか?

小柳 「問合せなどがあった際に、連絡調整をすることはあります。
今後、区として地下水、井戸水をどうするか?などを考える際は、私たちや関係部署を集めて会議を設けることになるでしょうね。現在は、それぞれの問合せに応じて、各課が連絡・調整を迅速に行っています。ただ、昨今の災害頻度や影響などから、防災課からの問い合わせは増えていますね」


――井戸水や地下水はおいしい、といわれますが、東京の上水道は比べるとどうなのですか?そこまで差はあるものなのでしょうか?

 飲用水の水質は、大きく改善されたと語る、角田さん
飲用水の水質は、大きく改善されたと語る、角田さん

角田 「最近では、塩素の量を工夫し、カルキ臭を減らすなど、高度浄水処理によって、よりおいしく感じるような対策をとっています。

昔は、川の水質も悪かったので、塩素臭やカビ臭い、などあったのですが最近では、そもそもの川の水質もかなり良くなっていますから、大元の水自体キレイになっている事もおいしい水が使えるようになった要因と言えます。東京都水道局の方は、水道水もミネラルウォーターのように冷やしてもらえれば、井戸水と同様においしいと言ってます」


――東京の西の方では、市民全員が飲用に使える、豊かな水源がある、というような話も聞きます。練馬区は都区内のなかでは、それに匹敵する可能性を秘めているようにも思えますが、この点いかがでしょう?また、地下水は枯れてしまうこともあるのでしょうか?

小柳 「練馬区は井戸の数は多い方です。23区で井戸を使った専用水道を持っている数は練馬区が一番多いです。その意味では特徴的だと思います。

地下水の枯渇についてですが、これはあると思います。
例えば地殻の変動などで流れが変わる場合もあると思います。地中なので見えませんが、流れが来なくなったり、流れが遅い場所などもありますから、たまたまそこに井戸を掘ってくみ上げますと、水の供給が追い付かなくて結果、枯れてしまうこともあると思います。

東京都が環境規制面で調べた、おおざっぱな地下の状況、図面のようなものはあります。地下水は資源と言えます。だからこそ、環境確保条例であったり、揚水規制があるのだと思います」


今まで大泉名水会などでのお話から耳にするものの、改めて地下水のいろいろを知ることができました。普段何気なく使う水も、地下での流れは1年でわずか数cmしか進まないこともある、という意外性に、雄大さや神秘、憧れのような感情を覚えます。
野菜や緑を育む、その大本となる地下水。昨今の災害対策としても、その価値には、大きな可能性があると感じます。私たちの暮らしの変遷で川は姿を消してしまっても、練馬の大事な資源の一つとして、今後も上手に活用していきたいと思います。

サポーターの取材後記

みずすまし
練馬の多くの地に見られる湧水は、長い時間をかけて、「地下水」として旅をした後に人々に出会う事を考えると、流れの始点や経路・いつ地上に注がれ地下に滲みたのかとても興味がわきます。更に、地表から異なる深さを進む事で、地層により出会う物質も異なり、水資源として活用される水・飲用が可能な清らかな水・鉱物質を多く含む温泉等に大別され、立派な地下資源として、役割を持ち、私達の生活に豊かさを与え続けている様に思います。人が関心を持ち易い空や海とは違い、地味な「地下」の存在や出来事には、謎や不思議さを感じ、魅力さえ感じます。この地下資源がいつまでも絶える事無く練馬の地下の旅を続け、数多くある湧水が枯れる事が無く、資源としての活用が絶える事が無い様願っています。
オーパちゃん
豊島園のプールが昔から地下水を使用していることは、何となく知っていましたが、昨年末の練馬ローカルTV放送で「大泉名水会」が紹介されていました。それでも、その他に幾つもの水道組合団体が地下水を利用し上水道の供給活動していることは知りませんでした。地下水の利用は、常時に美味しい水を供給するだけでなく、災害時の対策に役立つ、そのために、区の防災課ではこれらの水道組合に発電エンジンを提供して災害時に備えるようにしている事は素晴らしいと思います。
東京都の上水道は、97%が河川水を水源とし高度浄水処理がなされて、海外の主要都市の水と比較しても安心して飲める美味しい水として海外から高く評価されています。残りの3%が地下水源と言うことになりますが、練馬区には大泉井頭公園を水源とする白子川が清流として流れるように地下水源豊かな自然環境が保たれていることは、都区内随一を誇れましょう。そして区内のほぼ全域には、秩父や多摩川の伏流水が100m以上の地下深くに礫層に染み込むように流れている良質な地下水源がある事、それらを何時までも環境保全しながら活用することは私達住民にとって大切だと思います。区として各水道組合を指導し、厳しい管理に基づいて美味しい水を供給している事が今回伺って良く分かりました。幾つかの管理組合のホームページを開いて見ましたら、ほぼ例月のように水質管理の報告が載っていて良く管理されているようです。今回の取材で、練馬の地下水の現況を深く知るとともに、区行政でも、生活衛生課・防災課・環境課がそれぞれ役割分担して、その活用と保全に取り組んで頂いていることが理解出来ました。

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