サポーター体験記
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地域の結びつきを大切にしたい ――関町千歳会・宗形会長夫妻の取り組み――

地域の結びつきを大切にしたい
ご主人から引き継いで、現在
会長職を務める積さん(右)
練馬区には約130の老人クラブがあり、10地区に分かれ、それぞれの地域に密着した社会奉仕活動や生き甲斐を高めるための活動、健康づくり活動等を行っています。
なかでも石神井西地区の「関町千歳会」は、創立58年、現在315名の会員を擁す活気ある老人クラブです。その元気のもとを学びたく思い、宗形会長夫妻を訪ねました。

関町千歳会

会長 宗形 積さん
所在地:〒177-0052 練馬区関町東2
電話:03-3929-3006
※以下、文中敬称略。

老人クラブとあなどるなかれ

「関町千歳会」の前会長は現会長・宗形積氏のご主人、宗形貢氏です。平成29年度までの6年間で会員数を倍に増やし、会の活性化に力を尽くしました。現在は相談役としてご活躍です。会長夫妻の誠実さ、面倒見の良さ、そして仲の良さは会員の誰もが知るところであり、信頼を寄せる要因となっています。

――「関町千歳会」はどんな活動をしているのですか?――

積 「定期的に行われる7つのサークル活動の他に、新年会、敬老大会、芋煮会、健康に暮らす知恵をテーマにした健康講座、そして春秋2回行われる親睦旅行など、楽しいことをいろいろとしています。もっと多くの方々と楽しんで、地域を盛り上げる会にしたいのですが……。
千歳会って何?って訊かれるから、60歳以上の方のための老人クラブですと言ったとたん、70歳をとうに過ぎたような方でも『私、もう少し、やめとくわ』なんて(笑)。自分はまだ老人ではないと思っている方が多い。『老人クラブ』という名前が良くないんでしょうか(笑)。
 何か一つでも自分が気に入ったサークル活動に参加してみれば、楽しいということは実感してもらえると思いますよ。コーラス、カラオケ、エンジョイダンス、農園、輪投げ、民謡、足踊りの7つのサークルそれぞれに、声を出したり身体を動かしたり、頭も少し使って考えたり、何より皆さんとのふれあい、結びつきが元気のもとになります」

貢 「私が千歳会に入ったのは、先に入って活動していた家内に引っ張られたわけですが、やはりまだ若かったので抵抗を感じましたよ(笑)。それでも会長を引き受けてから、『老人クラブといえども老人じゃないんだ』という意識で活動していかないとダメだと思い、誰もが気軽に興味を持って参加できるサークルを立ち上げて、いろいろな人に声かけようと、指導者、場所等々を準備して始めた。輪投げ、コーラス、エンジョイダンス等ですね。コーラスは家内がピアノ教師で歌唱指導などもしていましたし、エンジョイダンスはたまたま近所にいい先生が越してこられたのでお願いして、輪投げは年を取っていてもできるスポーツとして最適だと考えて始めました。今では輪投げの大会で練馬区内トップクラスとなりました。また、今最も盛んなカラオケは私が長になっており、農園部も責任者をしていました。現在、農園は私より10歳若い方に責任者になってもらっていますが。いずれにしてもサークル活動というのは、率先してやってくれる人がいないと盛んになりませんね」

 輪投げの機材、公式ルールでは、5mの距離で投げるが
想像以上に、棒に引っ掛けることは難しい
輪投げの機材、公式ルールでは、5mの距離で投げるが
想像以上に、棒に引っ掛けることは難しい

積 「主人が会長になった当初は、会員が160名ほどだったんです。それがどんどん増えて、多い時には330名くらいになりました。その頃、全国の老人クラブで百万人増強という目標が掲げられて、練馬区の老人クラブ連合会の増田会長さんは全国の副会長もしておられたから、主人も本気で皆さんに入会を勧めていたんです。私はちょっと抵抗があったんですけれどね(笑)。というのは、私は民生委員をしていたので、ただ人を集めればいいというのではなくて、親族がいない、友達がいない、いろいろと困っているといった人々の助けになるような『結びつき』を大切に声かけしていたんです。でも、そんな生易しいやり方では人は増えません。主人のように機会ある毎に声かけなくては」

貢 「千歳会の平均年齢は80歳くらいで、8割方が『自分が楽しみたい』と言う人々です。それでも『楽しい』『健康にいい』と実感した人が他の人に話してくれます。会員が増えたのはそのおかげです。たとえば輪投げは5~6人でスタートしたんですが、今は20人ほどが集まり楽しんでいます。
 民謡部も津軽三味線のいい先生に指導してもらえて、十数人が声を張り上げて歌っていますし、足踊りは床に寝て両足にお面をつけて踊りますから、結構ハードですけど面白いです。サークル活動はそれぞれ日にちが違いますから、幾つかのサークルを楽しんでいる人もいます」

様々な行事に参加し、友人をつくり親交を深める

カラオケ、エンジョイダンス、民謡、足踊り、コーラス等のサークル活動は、関区民センターのホール(200人収容)を借りての新年会や敬老大会で披露されます。そしてコーラス部のように、デイサービスの施設や老人ホームの慰問に出向き、共に楽しんでいるサークルもあります。そうした生き甲斐をみつけるサークル活動の他に、千歳会では会員すべてに呼びかけ、共に楽しむ行事も、回を重ねる度に充実し、心待ちにしている方が大勢おられます。

 コーラス披露の様子 衣装はもちろん、積さんの
指導も本格的で、毎年多くの方が楽しみにしているそう
コーラス披露の様子 衣装はもちろん、積さんの
指導も本格的で、毎年多くの方が楽しみにしているそう

――「芋煮会」はどんな催しなのですか?――

積 「毎年、超満員で楽しく、お腹いっぱいになる会で人気がありますね。会費は700円で、芋煮はおかわり自由、おにぎりと果物とビールが一本つきます。肉や豆腐は市販のものを買うのですが、農園部が作った大根、里芋、ネギ等、練馬産の野菜をふんだんに使って作ります。参加者は100人ほどで、一年の収穫を祝い合い、健康で頑張ろうと励まし合います。
 千歳会の会費は年間1000円です。区から会員数に応じた助成金があります。使い道はとても厳格に管理しています。きちんと領収書を付けて報告しなければなりません」

――「新年会」や「敬老大会」は誰でも参加できるのですか?――

積 「会員なら誰でも。午前10時から始まって午後3時まで、演芸大会やお楽しみ抽選会で盛り上がります。見るだけの人もいますが、サークル活動している人は舞台で演じたり、皆で楽しみ合う行事です。1000円の会費は昼食のお弁当代ですが、いろいろとお土産も付きます。
 敬老大会の時には、77歳、88歳、99歳の方にお祝いの金一封が出ます。ほんの気持ちですけれど(笑)」

貢 「こうしたルールは、私が会長時代に作ったものですが、わずかな金額でも、皆さん喜んでくれるんですよ」

――春秋の旅行など、他にもいろいろと企画されているのですね。――

 会員名簿には、多くの会員の役割が細かく網羅されている
こういった管理の細やかさも、会の活動を支えているのだ
会員名簿には、多くの会員の役割が細かく網羅されている
こういった管理の細やかさも、会の活動を支えているのだ

積 「それぞれ担当者がいて、役割を担っています。旅行は旅行担当が早くから企画を練って、バス等の手配をし、皆さんが一日存分に楽しめ、親睦をはかれるスケジュールを組んでいます。参加人数はその時々で違い、昨年秋の『都庁と東京湾名所見学』はバス2台で行きました。
 その他、健康講座も多くの方が参加してくれますが、大切にしているのが、年に2回、80歳以上の方に小さな花鉢を届けることです。これも主人が会長の時に制度を作り始まったのですが、お届けしながらそれとなく、お元気か、暮らしに困っているようなことはないか、見届けてくるのです。それに花鉢をもらった人は水やり等、花の世話をする気遣いをするようになり、それが健康な暮らしにもつながると思うのです。『一声運動』と名付け、大事なことだと実践し、1年に1回では間が空いてしまうので、春と秋、2回行っています」

貢 「花鉢といってもパンジーやベコニアの小さなもので、花屋で120円くらいで売っているものです。けれど、金額じゃないんですね。届けるついでの『最近、身体の調子はどうですか』の一声だけでも、励みになると思うんです。昨年は該当者が169名。千歳会は余裕あるわけじゃないから、市場から直接、安く仕入れていますけれど。協力してくださる方もいて助かっています」

 積さんの女性ならではの細やかな気配りが
声がけや鉢植えの配布に温かみをもたらす
積さんの女性ならではの細やかな気配りが
声がけや鉢植えの配布に温かみをもたらす

積 「サークル活動に参加せず、行事にも来られない方でも、花鉢が届くと、自分も千歳会に入っている、仲間がいる、気にしてくれている人がいるっていう自覚に繋がっていると思います。私にしても、何班の誰々はと、様子がわかりますね。これも花鉢の担当がいて、配るのは班長と副班長が担っていますが、その後の役員会で報告し合いますから、千歳会内の会員の様子はだいたい掴めています」

夫婦の心が一つになっての活動

同じ方向に心を注ぎ活動する宗形さん夫妻の素晴しさは、お話を聞けば聞くほど深まります。これほど他人のために働ける方のこれまでの人生はどのようであったのか、気になるところです。

――ご夫妻の千歳会入会はいつ頃のことですか?――

積 「私は60歳になるとすぐ入らされた。というのは私、武蔵野音大のピアノ科4年の頃には既に家でピアノを教えていて、卒業の頃は生徒が何人もいましたから、そのままずっと今年で60年になります。そして主人とはお見合いで結婚したんですが、専業主婦のようにいつも家にいますでしょ。だから、町会の用事が回ってきたり、民生委員は26~27年しました。ですから千歳会入会は私が先輩。主人は会社一筋で、家と会社にしか知り合いがいないというような感じだったんですよ。で、周りの人たちが『宗形さんのご主人、そろそろ定年だけれど、会社を辞めたらどうするのかしら』って心配してくれて(笑)」

貢 「私は68歳で会社の役員を降りて、顧問になったので、勤めていた期間は長かったんです。でも会社を辞める前から『千歳会の会長になってくれ』と声がかかっていましてね(笑)、やるなら本気でやろうと」

積 「真面目のかたまりなんです、この人は。融通が利かないというか(笑)。でも、おかげで千歳会の組織が整ってきたんです」

貢 「会社では総務畑が長かったものですから、老人会も会社組織に準じたものにしないと続かないと考え、必要と思われる制度を作りました」

 大手企業の総務係として、数々の社内提案・
改善をしてきた実直さが、千歳会の運営に活かされる
大手企業の総務係として、数々の社内提案・
改善をしてきた実直さが、千歳会の運営に活かされる

積 「いいのか悪いのか、老人クラブなのにキチッとしたものを作って、時々書類等で『業務上は~』なんて言葉を使うから(笑)、それは合わないって私、削ってしまうんです。それでもやはり、役員会の議題等の書類はいつも主人に見てもらうんです。すると、これはどうのこうのと文句言うんですよ」

貢 「それを文句と取るようじゃ、ダメだね(笑)。ただ、皆さんに協力してもらうには自分たちが犠牲にならざるを得ない。これは夫婦共通の思い。ここが違っていたらお役に立たないでしょう」

――ご夫妻の、その誠実さが千歳会の根底にあるように思います――

貢 「誠実ということは一番大切ですね。これは親譲りかもしれない。私の親父はすごく真面目な人でした。会社でも社長が大変きちんとした人だったので、どんな状況でもデタラメは許されなかった。それが千歳会の運営に生かされて来たかもしれません」

積 「近所でもまだまだ、一人でポツンと暮らしているお年寄りがいます。一日誰とも話さずにいるということもあるようです。そういう方にぜひ、千歳会に入っていただき、楽しい仲間と結ばれて欲しいと思うんですよ」

貢 「人それぞれの性格があるから強制はできないけれど、なるべく機会を作って話をして、その人に合った声かけをしないと…

 同じ会長職の、先輩・後輩として、志を同じく
千歳会を運営するお二人には、夫婦を超えた絆を感じさせる
同じ会長職の、先輩・後輩として、志を同じく
千歳会を運営するお二人には、夫婦を超えた絆を感じさせる

結び結ばれる明日の千歳会へ

共に80歳を超えた宗形夫妻ですが、大変お元気でまだまだ活躍される余力が十分ありながら、近頃はいつも、後継者について心を砕いておられるようです。

――会長様は老人給食のお世話もされていると聞きましたが――

積 「これは民生委員のかかわりでしていることです。関町北地区区民館に『なのはな』という老人給食を作るグループがあって、週に1回、一人暮らしのお年寄りに60食~70食を作っているのです。それを配るのを民生委員が手分けしてやっている。私はもう20年くらいしているのですが、今年から娘が担ってくれることになりました。娘もピアノ教師ですが、デイサービスの施設で週5日、朝から午後3時か4時まで手伝い、ここに来て(宗形会長宅は『宗形音楽教室』)、7時、8時までピアノを教えています。それから月に2~3回、自宅でパン教室をしています。とても忙しく動きまわっているところは、私の若い頃に似ていますね。そうそう、デイサービスで手伝っているのは、ゆくゆくは私達の世話をすることになるから、その練習なんだそうですよ」

――将来、千歳会の活動にもかかわってもらえるのでしょうか――

積 「そうですね。今、50歳で民生委員もしています。この地域の民生委員には年齢に関係なく千歳会に入ってもらっているんです。頭数というわけではありませんが、民生委員として地域のお年寄りと結びつくためには入ってもらったほうが双方にいいと思うのです。新年会、敬老大会、芋煮会には準備等から入ってもらい、会員の皆さんには『この方々がこの地域の民生委員ですよ』と紹介します。そうした結びつきをつくるのが、長年にわたって民生委員をして来た私の役目だと思っています」

貢 「おかげさまで、千歳会はイザコザがないんです。大勢の人間が寄ると、どこかで歯車が狂うことがあるものですが、幸いにしてそれがないのです。有難いですね。この良い状態を続けていくためにも、次にやってくれる人を心がけて探しています」

――今後の千歳会はどのようなことを目標にしているのですか?――

積 「もう2つくらいサークルを増やして、皆さんが楽しめる場を作りたいと思っているんです。書道とか麻雀とか、いろいろと希望もありますし、考えてはいますが、指導者や場所のことを考えなくてはなりません。それでも4月か5月にサークルが増えれば、それを目的に入る人もいるんじゃないかと思うのです。
 千歳会を通じて、隣近所の人々の結びつきができ、地域が明るく楽しくなって、皆で人生を喜び合えたらいいですね。」

 現会長の積さんは、現役のピアノ教師でもある
この感性が、千歳会のサークルを生み出すのかもしれない
現会長の積さんは、現役のピアノ教師でもある
この感性が、千歳会のサークルを生み出すのかもしれない

関町千歳会」の宗形会長夫妻にお話を伺っていると、「年取ったから」と人生を諦めたりせずに、「年取ったからこそステキな、意味深い人生がある」「シニアも捨てたものじゃない」と思え、積極的に地域の「老人クラブ」に入り、充実した人生を自分のものにしたいと切に考えました。宗形ご夫妻は、私達シニア世代の素晴しいお手本だと感じました。

サポーターの取材後記

なかなか
人は年を重ねれば重ねただけ様々な体験が心を豊かにし、人様のお役に立つツールとなることを宗形夫妻様から学びました。
お話を伺うと、お二人は“赤い糸”ならぬ“ビアノの音色”で結ばれたようです。
貢様が学生時代に下宿していた家の一軒先の家からいつもピアノの音が聴こえており、心に留めていたところ、ある時、その真ん中の家の方がお見合いの仲人になってくださったのだそうです。川端康成か立原正秋の小説に出てきそうな清らかな出会いと結婚が想像されます。
なるほど、ステキなご夫婦は小説のようなステキな出会いがあったのかと、ほっこりとあたたかい気持ちになりました。

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