サポーター体験記
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芸術に触れる、クリエイティブな若者に出会う。 元気をもらう、地域大学の新たな活用術。

芸術に触れる、クリエイティブな若者に出会う。 元気をもらう、地域大学の新たな活用術。
普段、なかなか入ることのない大学のキャンパス
学園祭シーズンは普段にも増して盛り上がりを見せています
皆さん、シニアになっても時々、学生の日々を懐かしく感じたりする事はありませんか?
練馬区には、江古田エリアに、日本大学芸術学部、武蔵野音楽大学、武蔵大学の3つの大学があります。
今回は、日藝の愛称で親しまれる日本大学芸術学部を訪れ、学校の歴史やこれから、
練馬やシニアとの関わりを伺いました。
学園祭の準備が進む校内と、学園祭初日の様子を、レポートします!
教職員の皆さんの熱心な指導、学生たちの個性溢れる活動に注目です。

日本大学芸術学部 

庶務課 課長 樋口 肇さん/長部 純平さん
※以下、文中敬称略

所在地
176-8525 練馬区旭丘2丁目42番1号
電話
03-5995-8201
URL
www.art.nihon-u.ac.jp

練馬区との関わりもさまざまで、区や区民の皆さんとの 接点を持ち、協働していく姿勢です

練馬区との関わりもさまざまで、区や区民の皆さんとの 接点を持ち、協働していく姿勢です 庶務課の樋口さん(手前)と長部さん(奥)。
私たちの素朴な疑問に丁寧に応えてくださいました
庶務課の樋口さん(手前)と長部さん(奥)。
私たちの素朴な疑問に丁寧に応えてくださいました

―――学校の成り立ちについて、簡単に教えてください。

樋口 「本校の始まりは、そもそも大正10年(1921年)に、日本大学の法文学部に、『美学科』が誕生したことが始まりです。
昭和18年頃でしょうか、戦時中は学問としての芸術がなかなか難しい状況であったので、『板橋工科』として、芸術科は、創作科と宣伝芸術科を合併して宣伝文芸科に、美術科と商工美術科を合併して工作美術科とし、宣伝文芸科では、映像などをメインに教えた時期もあったんですよ。

―――パンフレットにある「8つのアート、1つのハート」について教えてください。

樋口 「まず最初に、これは本学部の特徴でもあるのですが、他の芸術系大学と異なるのは総合大学の一学部である点です。全国に16もの学部を抱えるなかで、独自の芸術教育を行っています。8つのアートというのは、日藝にある8つの学科を指します。それが1つのハートである、つまり簡単に言えば、様々な表現の方法はありますが、目指すところは一つ、同じなのだ、という意味です。教育理念にもあるように、学生の自主性を最も重んじていまして、自分で考え、自分で壁を乗り越える。そういう学生を育てるために、それに向けた教育を、16学部のネットワークを生かして実践しています」

―――江古田や練馬区とのかかわりは、どのようなものがありますか?

樋口 「平成元年に所沢に校舎を開設して、1、2年生の授業を行ってきました。移動や交通の面等で授業を受けていた1、2年生は、必ずしもベストでなかったかもしれませんが、広々とした施設や静かな環境など、メリットも多かったと思います。次年度より1,2年次生の授業は江古田に移行します。4年間通じて同じキャンパスで授業を行える点は、学年間の分断を防ぎ、よりクリエーティブな環境となるでしょう。現在通年化に向け、新校舎を建設しています。江古田にお住まいの方は、建設地がもともと練馬総合病院の跡地であった所で、懐かしく思われる方もいるかもしれません」

樋口 「練馬区とのかかわりですが、本当に様々です。学生たちが個別に活動し、区役所や区の事業者さんと独自に接点を持つこともありますし、例えば区の文化活動等の委員としての教職員の協力、他には催し物への参加や区の関連団体への協賛なども行っています。
公開授業も行っていますし、色々と区にお願いすることもあったりなど、直接・間接問わず、区や区民の皆さんと接点を持っています。しかし、主従の関係ではなく、協働していく、そんなイメージかと思います」

―――来年は都市農サミットが開催されますが、その関わりはありますか?

長部 「本学部の教員が都市農サミットの委員としても参加しています。有事の際の臨時災害放送局における活動支援の協定も結んでいます。練馬にある3大学が手を取り合って、合同で学園祭を盛り上げていく『江古田カレッジトライアングル』という企画も学生主体で実行しており、例えば学園祭などの模擬店でも、練馬産の野菜を使い、地域の振興やPRに寄与しています」

開かれた芸術資料館と美術学科生の、制作現場に潜入

開かれた芸術資料館と美術学科生の、制作現場に潜入 ギャラリーの壁には作品が掲げられおり、
落ち着いた雰囲気で、誰でも気軽に楽しめる
ギャラリーの壁には作品が掲げられおり、
落ち着いた雰囲気で、誰でも気軽に楽しめる

長部さんに案内していただき、芸術学部芸術資料館にお邪魔しました。取材時は、『―オリジナルプリント展― 原 直久 時の遺産』が開催中。原氏は日本大学芸術学部写真学科を卒業し、2016年まで日本大学の教授として教鞭を執っていました。十分な広さのある落ち着いた空間に、モノクロの大判写真が数々、並びます。こちらは、無料で見学ができます。(守衛所で入校の手続きが必要です)
長い歴史に育まれた“時の遺産”、ともいうべき重厚な質感を持った建造物や街並みが、光と影を独自に捉えた写真家の感性として展示されています。一つひとつの写真に迫力があり、写真に詳しくなくとも、思わず見入ってしまいました。

 どこで何を撮影し、何を訴えるのか
年齢を重ねると不思議と魅かれてしまう
どこで何を撮影し、何を訴えるのか
年齢を重ねると不思議と魅かれてしまう

続いて、東棟の地下へ。長い廊下には、彫刻や作りかけの造形物が所狭しと並んでおり、いかにも芸術学部の制作現場と言った様相です。まずは教授の鞍掛(くらかけ)純一さんにご挨拶。鞍掛さんは、練馬美術館の美術の森緑地にあるさまざまな彫刻制作にも携わり、新潟の現代アートの国際展『大地の芸術祭』にも出展する、現役のアーティストでもあります。鞍掛さんも案内に加わり、制作をしている学生さんに直撃します。

 取材に快く応じてくださった、鞍掛教授
美術の森緑地の彫刻制作者という事実に驚き
取材に快く応じてくださった、鞍掛教授
美術の森緑地の彫刻制作者という事実に驚き

―――大がかりな作品のようですが、今は何を作ってるのですか?
(保坂さん/美術学科彫刻コース4年生)

保坂 「ソツハク、と言われる卒業博覧会、5美大展のために作品を制作しています。これは『水の波紋』をテーマとした作品で、現在はその骨組みを作っています。鉄を素材として用い、まずは大きな形を作り、徐々にあそこに置いてあるような、水に映る光や波紋のような模様を作ります」
材料が鉄。当然溶接が必要です。バーナーのゴウという音とともに勢いよく噴出される炎に驚きました。芸術系の学校というより、工場のような印象すら受けます。

 芸術作品の制作現場のはずだが、炎や音に
大の大人がなぜかワクワクしてしまう
芸術作品の制作現場のはずだが、炎や音に
大の大人がなぜかワクワクしてしまう

―――芸術作品は、必要日数とか、完成までにどのくらい、というような基準があるのでしょうか?

保坂 「この作品は大体、10週間の制作期間を考えています。本日現在で3週間目くらいかなと思います」
鞍掛 「制作期間は生徒がそれぞれ決めていますので、『どのくらいかかるか』という基準はないですね。彼(保坂さん)は随分とマイペースでして(笑)。頑張って仕上げてほしいですね」

彼の作品も、美大展などで鑑賞することができますが、その裏側とも言える制作現場の見学は初めての経験でした。これだけの大きさのものをたった一人で作り上げるのは、技術はもちろんのこと、相当な熱意と覚悟がないと難しいと感じました。彼のような芸術家の卵が他にも多数在籍することを考えると、やはり日藝は個々の力を存分に発揮できる環境のある大学と言えそうです。

門戸を開くことで、シニアはもちろん、一般の方との 接点も意欲的に参加が可能な環境

―――次に私たちシニアと大学の関わりについて、お伺いします。やはり社会人は、なかなか関わりは持てないようなものでしょうか?

樋口 「いえいえ、そんなことはありませんよ。先ほどの地域との関わりも、もちろんそこに住まわれるかたも含まれますから、無関係ということはありません。特に本校の芸術分野においては年齢は一切関係なく、例えばシニアのみなさんが退職後、趣味の絵や音楽を真剣に学びたいと興味を持って入学する、なども全く問題はありません。事実、入学される方も、わずかながら存在します。また、公開講座も開催しており、一般の方が来ています。大学としてもそんな意欲的な参加者に配慮して、なるべく仕事の無い時間帯や、夏の前に開催するなど、門戸は広げています」

―――それはありがたいです。大学が身近に感じます。気軽に楽しめる催しはどんなものがありますか?

長部 「卒業博覧会等では作品や映像、展示や上演などを公開しています。また、学生が主催しているものもあります。例えば演劇学科のでは年末の文化センターでの上演や、5、6月には映画学科の卒業制作の上映会などもあり、『シニアの皆さんが大学と接点を持つチャンス』というものもあります。そこから興味を持ち、関心を持っていただけたら嬉しいですね。催しについては学部/学科のホームページをご確認いただきたいと思います」

樋口 「もし、本気で入学されるのであればそれなりの覚悟は必要だと思います。『シニア特別枠』などの概念は、学部には存在していないため、どなたでも一から挑戦しなければならないからです。逆に言えばやる気さえあれば入学することは可能ですが、『自分は何がしたいのか』という意思が明確にないと意味がないですし、続かないと思います。本校では、理論も大切ですが創作を重視していますので、学費等は決して安価ではありません。しかしその分、例えば映像・音響の専門機材からバーナーなど工業用機材まで、実践に即したあらゆる機材と環境を揃えています。そういった環境を十分に活用しながら、日々の積み重ね=手を動かすこと、作品に触れている事が、ある面において、科目の履修よりも大事なのです」

―――ありがとうございます。我々シニア世代にも門戸が開かれていること、接点がかなり多い事でなんだかワクワクしています。最後に、現在の学生について、少しお聞かせください。例えば、私たちが大学を受験した当時では、放送系は大変な人気があり、入学倍率も50~60倍、などの時もありました。今はどのように変わっていますか?また、学生自身の熱意などに変化はあるのでしょうか?

 大学に通った当時を思い出すと、不思議と
気持ちも若くなり、質問にも熱が入ります
大学に通った当時を思い出すと、不思議と
気持ちも若くなり、質問にも熱が入ります

樋口 「街も人も時代もどんどん変わっています。あらゆるものが便利になった反面、ある部分はとても窮屈な世の中になっている感じもしています。今の学生は大変だなと感じることもあります。放送系でいえば、まさに時代の変化のスピードが著しいと思います。昭和と平成の違いはもちろんですが、あらゆるメディアに出る人が、必ずしも専門家でなくても、露出できる世の中です。
そんな状況もあってか、『まず就職ありき』で入学する学生も多い。漠然とした憧れよりも、『僕は私は、こういうことがしたいのだ』という、本当にやりたいことが絞られているイメージです」

「芸術家の育成をする立場から言えば、色々な個性の学生が居たほうが良いとは思います。育て甲斐もありますし、教科でも人物でも、ある一点にのみフォーカスしてしまうと、どうしても小粒な人間になってしまうと考えるからです。ですので、例えば放送学科では結果的に将来は放送/映像/広告営業などの世界に入る学生が多いですが、この4年間は本当に好きなことに打ち込んで、それから決めても良いと思います。色々な学び方があって良いと思いますし、その個性を育てるのが本学部でもあるのですから」

日藝が、ツールとしてITなどの技術を使いこなすことよりも、何より創作を大事にしている事が話の一つひとつから良く分かりました。マンツーマンや学生一人ひとりに合わせた教育環境を用意している印象で、「基本は教えるけど、あとは自分で考えるんだよ」という姿勢が徹底されていることに感心しました。

希望に満ちた若者たちが盛り上がる! 日藝の学園祭を見学

希望に満ちた若者たちが盛り上がる! 日藝の学園祭を見学 美術学科彫刻コース有志による「脱皮する家」との
コラボレーションモデル(シューズ、バッグ)を発売した
アウトドアシューズメーカーのKEENのブースを発見!
美術学科彫刻コース有志による「脱皮する家」との
コラボレーションモデル(シューズ、バッグ)を発売した
アウトドアシューズメーカーのKEENのブースを発見!

取材時期は学芸祭シーズン真っただ中。練馬に住む住民としては、学園祭を体験しないわけにはいきません。今年の日藝は「夜芸祭」と銘打って、光と影の二面性を妖怪に例えて開催されます。3日間で4万人を超える来場者の大人気イベントです。昼の広大なキャンパスに足を運んだこともあり、目的の大ホールが見つかりません。。。偶然歩いていた学生さんに道案内をお願いしました。(神田さん/芸術学部写真学科3年生)

 穏やかな日差しの中、夢ややりたいことを
しっかりと語る若者は、なんだか頼もしく感じます
穏やかな日差しの中、夢ややりたいことを
しっかりと語る若者は、なんだか頼もしく感じます

イベントでは顔写真をバッチにするサービスを行っていた神田さん。彼女は趣味が高じて写真の学科に入ったそうで、将来は報道カメラマンではなく、スタジオでゆったり撮影をする、そんな環境に近づけたらいいなと夢を語ってくれました。自分の孫のような年齢の若者が、何かを探し、頑張る姿は、素直に応援したくなります。イベントに最中に丁寧に道案内をしてくれ、とても親切でした。

せっかくなので来場者にインタビューも敢行。同世代とお見受けできるシニア世代の方に直撃します。

 沢山の来場者から本音を聞きたく、
ベンチで休憩するご夫婦に突撃インタビュー!
沢山の来場者から本音を聞きたく、
ベンチで休憩するご夫婦に突撃インタビュー!

―――今日はなぜ夜芸祭にいらしたのですか?
来場者 「娘が千葉から通っていまして。私たちも一度、見学に来てみたんです。キャンパスから楽しい雰囲気が伝わるので、在学の残された時間を頑張って過ごして欲しいと思っています」

よく見ると、入り口付近で、前日のインタビューで聞いた「江古田カレッジトライアングル実行委員」の看板を発見しました。3大学のうち、日藝の責任者小田さん(映画学科2年生)にお話を伺います。

 3大学合同で「春雨スープ」も販売
もちろん練馬産野菜を使用している(左が小田さん)
3大学合同で「春雨スープ」も販売
もちろん練馬産野菜を使用している(左が小田さん)

―――所沢から江古田にキャンパスが移りますが、感想はありますか?
小田 「今は1、2年が所沢キャンパスで、もともと3年になるとこちらの江古田キャンパスに移る仕組みだったので、私としては大きな変化はないですね。噂によると単位を落とすと体育の時だけは、所沢に行くとか。。。そうなるとちょっと大変かなー、とは感じます」

―――映画学科に在籍されていますと、例えば制作する作品のエキストラなどで、区民のシニアが協力できることはないでしょうか?
小田 「今、私は2年生ですので、外部の方にお願いすることはなく、学生や関係者にお願いしています。しかし、3、4年生になると、学校外のエキストラも手配しますので、その部分ではコラボレーション的なことができる可能性もあると思います」

やはり、学園祭で生の声を聞くと、学校側が考えていること、実践していることが、私たちの想像以上に根付いていたり、その一方で自由に活動しているさまを実感できます。近所から毎年来られているシニアの方もいらっしゃいますので、手軽に楽しめる地域との接点の一つが学園祭と言えます。興味深い公開授業や、学校の姿勢がわかったことで、私たちなりに情報をキャッチアップし、私たちの生活の彩りとして、もっともっと上手に活用したいと感じた取材でした。

サポータの取材後記

mick
今回の日藝取材は、クリエイティブな人々に出会えてたいへん楽しいものでした。
学園祭は、毎年11月初旬開催のようです。今回も、大盛況。かつ、地域住民も歓迎してくれます。現地にいた、練馬シニアのみなさんも、みなさん笑顔でした。
みなさんも、公開イベント、学園祭などに参加してみませんか?若返ること、間違いなし!オススメですよ。
KKK3
「日本大学芸術学部」。通称“日藝”と呼ばれ、その名は全国にも知れ渡っています。70年代のラジオの深夜放送全盛期には、その人気ぶりが影響してか、放送学科の受験倍率が全国でずばぬけて1位だった印象があります。私も憧れた一人ですが、芸術のセンスがないので他の道に進みました。20年ほど前に、日藝まで徒歩で15分ほどの場所に引っ越してきて、あの頃憧れた日藝の傍を通る機会も多くなったのですが、今回の取材に同行して初めて足を踏み入れました。敷居が高いと感じていたことは確かです。しかし、そんな不安も吹っ飛び、誰もが参加できる公開講座などを行う開かれた大学だと感じました。欲を言いますと、実習を伴った公開講座などを月1回定期的に開催し、シニアが足を運びやすくする工夫、環境を整えていただけるとありがたいですね。

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