サポーター体験記
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カタクリだけじゃない!オフシーズンだからこそ味わえる、練馬の豊かな自然スポットを訪ねます

カタクリだけじゃない!オフシーズンだからこそ味わえる、練馬の豊かな自然スポットを訪ねます
吸い込まれそうな秋晴れの中、公園散策が始まります(北入り口広場の木々)
石神井公園駅と成増駅のちょうど中間地点、さらさらと流れる白子川沿いの閑静な住宅街にある「清水山の森」。
23区唯一の大規模なカタクリ群生地として有名ですが、区民の皆さんは、訪ねてみたこと、ありますか?
カタクリの最盛期は3月下旬~4月上旬ですが、豊かな自然のオフシーズンを覗いてみましょう。

練馬区西部公園出張所 高島さん/清水山の森カタクリガイド 市川さん

名称
清水山の森
所在地
178-0062 練馬区大泉町1丁目6
電話
03-3904-7557(練馬区西部公園出張所/直通)

意外と知らない身近な自然、カタクリ群生で有名な「清水山の森」をご案内

良く晴れた11月の朝、私たちは清水山の森に到着しました。
ここは、春の時期のカタクリ群生が有名な場所ですが、秋の森はどのようになっているのか?との疑問から今回はボランテイアガイドの市川さんに、お話を伺ってみます。

 軽妙な語り口が楽しい市川さん
説明で多くの木々の名が簡単に出るさまに感動
軽妙な語り口が楽しい市川さん
説明で多くの木々の名が簡単に出るさまに感動

―――早速、公園について、教えてください。
市川「この『清水山の森』は、白子川の河岸段丘に位置する公園です。清水山自体が北向きであり、夏はとても涼しい場所なので、これがカタクリの生育環境上、適しているのです。カタクリはそもそも高山地域にも生えるため、少し涼しいくらいが一番良いのです。この場所ははるか昔、洞窟だったようですよ。入定塚と言いまして、僧侶である禅海法師(ぜんかい)の墓所でもあります。法師が洞窟で念仏を唱えながら、1657年に亡くなられたそうです。ほど近くには『中里の富士塚』もあるんですよ」

 公園内にある祠には、誰かが花を飾っている
住民に愛されている証拠だ
公園内にある祠には、誰かが花を飾っている
住民に愛されている証拠だ

なるほど、入り口付近にひっそりと佇むあの小さなほこらには、そんな謂れがあったのですね。昭和49年に区民の方から寄せられた情報がもとで、保護・整備されたのが清水山の森ですが、この豊かな環境とカタクリが守られたのは、もしかすると禅海法師のおかげとも言えるのかもしれません。取材中にひっきりなしに鳴くヒヨドリの声。食べ物が豊富なこともあるでしょうが、豊かな自然を喜ぶ声にも聞こえます。

――カタクリについて、詳しく教えてください。
市川「カタクリは種子から開花まで、7~8年かかると言われています。わずか2ヵ月しか咲かないので、気づいて見に来よう!と思った時にはすでに咲いていない、なんてこともあるんですよ。春に花を咲かせ、太陽を浴び、次の種子をつくります。虫媒花(ちゅうばいか)ですので、単体で繁殖することはありません。ああ、ほら、あそこ。あのロープで小さく囲ってある場所が見えますか?あれが観測スポットで、A点~I点の9か所を観測しています。ちなみに、様々な状況の中、ここのカタクリの花は毎年、少しずつ増えているんですよ。カタクリは名のとおり、片栗粉の原料でした。大昔、りん茎から取れる良質なデンプンを精製し、粉にして利用していたんですよ。現在の片栗粉はじゃがいものデンプンから作られたものです」

 公園内には約100cm四方を囲った9か所の「生育観測地」が
この地点の観測でカタクリを管理する
公園内には約100cm四方を囲った9か所の「生育観測地」が
この地点の観測でカタクリを管理する

清水山の正式名称は「稲荷山公園 清水山の森」です。2017年3月23日からこの名称になりました。カタクリガイドは市川さんを含めて合計で3名。市川さんは12年以上活動する、ベテランガイドさんです。カタクリの開花時期にはガイドさんたちは、基本的に公園に常駐しているため、どなたでも案内を楽しむことができます。カタクリ最盛期のおおよそ30日くらいの期間を3人で交代制で対応しています。

―――これだけ広大で見どころがあると、シーズンには多くのお客さまがこられるのでしょうね。。。
市川「アクセスは石神井公園駅と成増駅のちょうど中間くらいで、やや不便かもしれません。バスが便利だと思いますが、たくさんのお客さまがいらっしゃいますよ。カタクリの最盛期には、例えば2018年の3/25(日)、晴天のカタクリ日和で、570人訪れていただいた、という記録があります。シーズンでは1日平均して4~500人来ることもあるんですよ。では、公園内を廻ってみますか」

公園内はまさに自然の宝庫!10数種類の植物の説明も、ほんのさわり、10数種類の植物を説明してもらいました

白子川沿いの北入り口から入りましたが、公園内は南側に向かってせりあがる斜面になっています。空に向かって伸びる木々に囲まれ、葉音に身をゆだねると、ここが23区内であるという事を忘れてしまいそうです。私たちが昔のころは、こういう里山・裏山が随所にあり、身近に感じられました。どんぐりを拾って遊んだり、葉っぱを集めてみたり。文字通り自然の宝庫であり、遊び場でもありました。

 かわいらしい木の実たちが、そこここに落ちています
丸いシルエットもあり、手に乗せると暖かな気分に
かわいらしい木の実たちが、そこここに落ちています
丸いシルエットもあり、手に乗せると暖かな気分に

この時期にはもちろん、カタクリは咲いていませんが、市川さんの説明で様々な植物を発見・鑑賞できました。

 「クロガネモチ」→モチノキ科の常緑高木
野鳥が食べて運ばれ、ここから森が産まれるのです
「クロガネモチ」→モチノキ科の常緑高木
野鳥が食べて運ばれ、ここから森が産まれるのです

「ヤマユリ」→日本特産のユリ。近畿以北の山地や草地に分布します。球根のイメージですが、種でも育ちます。

 「サワフタギ」→ハイノキ科ハイノキ属の落葉低木
木漏れ日に照らされると、鮮やかな紫色が美しく映えます
「サワフタギ」→ハイノキ科ハイノキ属の落葉低木
木漏れ日に照らされると、鮮やかな紫色が美しく映えます

「ミズキ」→ミズキ科ミズキ属の落葉高木。別名クルマミズキ。地域によってはお盆で使用したりする。メジャーな植物です。

 「セキショウ」→ショウブ科ショウブ属の常緑多年草
花はガマの穂のようなカタチです。ろうそくのにおいけしにも使われたそうです。このような植物は、庭造りにとても便利なのですが、いざ探すとなるとなかなか見つけられません
「セキショウ」→ショウブ科ショウブ属の常緑多年草
花はガマの穂のようなカタチです。ろうそくのにおいけしにも使われたそうです。このような植物は、庭造りにとても便利なのですが、いざ探すとなるとなかなか見つけられません

「ミサキカグマ」→オシダ科オシダ属。シダ植物の一種。『自生しているのは都内でもここだけ、かもしれないですね』と、市川さん。
「ニリンソウ」→キンポウゲ科イチリンソウ族の多年草。可憐な白い花ですが、咲く直前はほのかに赤みを帯びます。2つセットで咲くためこの名がつきました。

 「ムラサキシキブ」→クマツヅラ科の落葉低木
その名のとおり、紫の小さな実が連なります
「ムラサキシキブ」→クマツヅラ科の落葉低木
その名のとおり、紫の小さな実が連なります

「キンラン」→ラン科キンラン属の多年草。黄色の可憐な花をつけることからこの名前となっています。同じような場所で開花する同属の白花、ギンランもあります。
「ヤマブキソウ」→ケシ科ヤマブキソウ属の多年草。『東京ではずいぶん減ってきていると聞きますが、それもここには咲いているんですよ』

好きこそものの上手なれ。植物の鑑賞も説明も「好き」から入るのがイチバン

3月から、年中何かは咲き続けていますし、季節ごとに様々な楽しみ方がありそうですが、それにしても市川さんの植物の知識の豊富さに驚きました。お好きなのもあるのでしょうが、体系的に学んだりされたのでしょうか?

市川「熱意があれば説明しているうちに、植物にはどんどん詳しくなります。皆さん、好きなところから入っていけばよいと思います。花が好き、草が好き、この種類が好き。それを調べてるうちに詳しくなり、同じ植生のものや季節の植物に関心も出てくると思いますよ。もし野草に興味がある方は『みどり会』を訪ねてみるといいですよ。『みどり会』は月に2回、活動しています。私は自然が好きなので続けることに苦労を感じたことはありません。案内して喜ばれることが、何より嬉しいですし。ただ最近は心無い人がこの森を荒らすのを心配しています」
練馬 大泉みどり会:http://www.geocities.jp/ooizumidori/

 清水山の自然は今だからこそ、その価値を見つめ、再認識する必要があります
(練馬区の高島さん)
清水山の自然は今だからこそ、その価値を見つめ、再認識する必要があります
(練馬区の高島さん)

高島「カタクリが生えるこの環境はもちろんですが、カタクリの花を毎年観賞できること、その環境が身近にある事実がとても素晴らしいものだと思います。ここは練馬区だけでなく、今や東京都にとっても重要で貴重な場所。近隣の住民の皆さんの理解もあり、維持出来ています。だからこそ、この貴重な場所を、区民はもちろん、都内の多くの方に見て欲しいのです。武蔵野の風景を、森を残していきたい想いがありますね」

 蝉の抜け殻は、生命の営み、自然のサイクルがあることを
改めて感じさせてくれます
蝉の抜け殻は、生命の営み、自然のサイクルがあることを
改めて感じさせてくれます

当たり前の様ですが、すべての植物には名前がついており、由来があることに、感心しました。ここ、清水山にはカタクリだけでなく、東京都内でなかなか見られなくなった植物も自生しています。大きな花やびっしりと咲く花、香りの良い花は、もちろん鑑賞向きで楽しめますが、年齢を重ねると可憐に咲く花や、草木にも尊さを感じます。ハイシーズンだけは勿体ない、と感じる取材でした。

サポータの取材後記

かもめ
お天気に恵まれ、首を最大限後ろに曲げなければ見上げられないほど、背の高い樹々がそよぐなか、いろいろな鳥の鳴き声に溢れた清水山の森は、心底気持ちの良い場所でした。
初めて行き、一度で虜になった私ですが、長い間、日常的に関わっている西部公園出張所の高島さん、大泉みどり会の市川会長のこの森に対する深い愛情が、ご説明や振る舞いから伝わりました。また、職員と区民という立場の違いを超え、この自然を愛し、守るという一点で結び付き、深く信頼しあっている様子が、とても印象的でした。素晴らしい環境と人間関係にほっこりした取材でした。
ベジタブル
カタクリが自生している森として有名な「清水山の森」を取材しました。
秋晴れの青空、木々が風に揺れるざわめきの音、鳥のさえずり、耳に心地よくきこえてきます。
涼しく、空気がやわらかく澄んでいる酸素たっぷり、温暖化を忘れそうです。
森を残していく大切さを痛感し、森を守っている方々に感謝申し上げます。
区民のみなさんもぜひ足を運んで自然を堪能してください。

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