サポーター体験記
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シニアとペットの暮らしについて~高齢者のペット飼育支援を行うVESENAに聞く~

シニアとペットの暮らしについて
仕事や子どもから手が離れ、シニアになったらペットを飼いたいと考えている方も多いのではないでしょうか。家庭の中にペットがいると、心がなごみ、豊かな生活が送れそう…。その一方で「ちゃんと世話ができるだろうか」「自分が病気になったらどうしようか」などの心配もあります。シニアとペットの暮らしについて、専門家にお話を聞いてきました。

VESENA(ベセナ)

特定非営利法人 高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワーク
副理事長:親跡 昌博(ちかあと まさひろ)さん

所在地
足立区東和4-12-17-102
電話
03-5849-3126
ホームページ
http://www.vesena.org/

ペットを迎える前に考えておくこと

ペットを迎える前に考えておくこと 親跡さん 「飼い主が高齢になってからペットが亡くなると、『次にペットを飼ったら、最後まで世話ができないかもしれない』と、飼うのをやめてしまう方が多い。でも獣医師から見ると、先々を見据えて考えられる方ほど、飼育のスキルがあり、飼い主としては優秀な方が多く、その力が途絶えてしまうのはもったいない」と語ります
親跡さん 「飼い主が高齢になってからペットが亡くなると、『次にペットを飼ったら、最後まで世話ができないかもしれない』と、飼うのをやめてしまう方が多い。でも獣医師から見ると、先々を見据えて考えられる方ほど、飼育のスキルがあり、飼い主としては優秀な方が多く、その力が途絶えてしまうのはもったいない」と語ります

生活のゆとりもできて、シニアがいざペットを飼おうと思ったら、楽しみな反面さまざまな不安もわいてきます。シニアとペットの暮らしについて、お話を伺ったのはVESENAの副理事長を務め、「まるち動物病院」の院長である親跡昌博さんです。

――シニアがペットを飼う場合、おすすめの動物はありますか?
「戸建なのかマンションなのか住環境から選ぶ、ご自身にアレルギーがあるかどうか体質で考えるということが、まず前提にありますね。マンションの場合、インコや金魚などの鳥類、魚類も飼いやすいペットです。初めて飼う場合は好み重視で、これまでペットを飼ったことがあれば、同じ動物の方が飼いやすいでしょう。犬なら抱きかかえられる小型犬の方が体力的に飼いやすいし、猫なら子猫の方が懐きやすい。毛が抜けにくい種類の方がおすすめですね。小さいうちは驚くようないたずらをすることもありますが、家族が増えたという広い心で楽しむ気持ちが大切です」

犬を選ぶ場合、保護犬などを新しい飼い主として受け入れることもおすすめだと言います。その理由は、しつけが済んでいる場合が多い、動きが落ち着いている、ご自身の寿命を考えて…といった点。その一方で悩ましいのは、譲渡会では新しい飼い主は60歳以下など条件が設けられている場合が多いということ。「保護犬を探している」と、動物病院などに声をかけて情報収集をしていけば、紹介してもらえるケースもあるそうですよ。

――ペットを飼うための費用についても教えてください。
「健康な5kgの小型犬だと、エサ代や予防ワクチン接種などで、年間およそ7万円かかります。犬種ごとに平均寿命がありますから、それを掛け算した額が最低でもかかるものとして最初に見積もっておくといいでしょう。また、ペットは人間のように公的な保険はないので、病気やけがによっては高額な費用がかかることも念頭に置いておいてください」
責任を持って飼うために、お金のことも大切なポイントですね。

飼うことで育まれる心や人との交流

飼うことで育まれる心や人との交流 子犬から飼う場合は、成犬になったとき5kg以内の小型犬で、毛が抜けにくいタイプがおすすめとのこと。例えば、ミニチュアダックスフンドやトイプードルなど
子犬から飼う場合は、成犬になったとき5kg以内の小型犬で、毛が抜けにくいタイプがおすすめとのこと。例えば、ミニチュアダックスフンドやトイプードルなど

――ペットと一緒に暮らすことで、得られる効果などはありますか。
「生き甲斐、散歩や食餌の世話で生活の中にリズムが生まれ、どんなペットを飼ったとしても、プラス効果はあります。ペットと言葉のやり取りはできなくても、話しかけたり触ったりすることで目や表情、態度などから心の交流ができ、癒しなど多くのものが得られます。犬のお散歩でご近所に犬仲間ができたり、猫を飼っている人同士で会話が弾んだり、ペットが人とのつながりも作ってくれるというメリットも。ペットがいることで認知症の進行を遅らせたり、介護者の疲弊を減らす効果があるといった学会報告もあります」
さらに!「夫婦の潤滑油にもなりますよ。我が家がそうですから」と親跡さん(笑)。

頼りになる「かかりつけ動物病院」を見つけよう

頼りになる「かかりつけ動物病院」を見つけよう 親跡さんが院長を務める、まるち動物病院。院内には生花やドライフラワーがたくさん飾ってありました。「飼い主さんがゆったりできるように」という心遣いとのこと
親跡さんが院長を務める、まるち動物病院。院内には生花やドライフラワーがたくさん飾ってありました。「飼い主さんがゆったりできるように」という心遣いとのこと

――シニアがペットを飼うことで将来考えられる心配ごとには、どのようなことがありますか。
「飼い主が施設に入るなどの諸事情で飼い続けられなくなり、新しい飼い主を探さなければならないことですね。それ以外にも、飼い主の体力が落ち、日常の散歩や動物病院への通院がままならないという状況も出てきます」

――そうした場合、どうしたらよいのでしょうか。
「ペットのことで困り事があったら、動物病院に相談することをおすすめします。どこでも飼い主とペットのためにサポートをしたいと考えていると思うので、何かアドバイスをもらえたり、動物病院間のネットワークもあるはずなので、解決の糸口が見つかるのではないでしょうか。人間の場合でも近所にかかりつけ医がある方が多いと思いますが、動物の場合でも同じです。相談のしやすさや明瞭な費用、ご自分との相性などから『かかりつけ動物病院』を見つけておくことが、ペットを飼うには大切なことですよ」

 院内に取材を受けた新聞が掲示してありました。「老後をペットと過ごすには〜子犬よりしつけすみ成犬を」(毎日新聞 平成29年10月26日夕刊)
院内に取材を受けた新聞が掲示してありました。「老後をペットと過ごすには〜子犬よりしつけすみ成犬を」(毎日新聞 平成29年10月26日夕刊)

――考えたくないことですが、ペットロスについても気になります。
「ペットが亡くなった場合、ペット霊園に埋葬したら完結するのではなく、飼い主の喪失感はそこから始まります。それを想定して、動物を飼うべきだと考えます。いずれは亡くなる、別れの悲しみの覚悟も忘れないでいてほしいと思います」

VESENAの思いや活動について

VESENAの思いや活動について VESENAのホームページ(http://www.vesena.org)。VESENAの活動内容や思いなどが掲載されています
VESENAのホームページ(http://www.vesena.org )。VESENAの活動内容や思いなどが掲載されています

――親跡さんが活動するVESENAとはどんな団体なのでしょうか。
「シニア世代の飼い主をサポートする仕組みがあれば、ペットのいる豊かな生活が長く続けられるのではないかという思いから、同じ志を持つ獣医師で立ち上げたのがVESENAです。活動内容は、外出が困難になった高齢者からの依頼を受けて、動物看護師を派遣しペットの散歩をしたり、動物病院に連れて行ったりケアを行うこと。ペットを飼えなくなった場合、獣医師のネットワークにより、新しい飼い主を探すことなどです」

 サポーターの取材の様子。まるち動物病院にて
サポーターの取材の様子。まるち動物病院にて

現在、会員となっている動物病院は全国でも20ほど。残念ながら練馬区にはありませんが、VESENAの取り組みを知ってもらい、「動物病院のスタンダードになれば」と、親跡さんは講演会を開いたり、取材を受けたりして啓蒙活動にあたっています。
ペットを飼うための心構えやポイントを知ることができました。ありがとうございました。

サポータの取材後記

かぐや姫
お訪ねしたのは下町の小さな動物病院。診療を終えた親跡先生は、汗を拭きながら、高齢者のペット飼育支援活動に対する熱い思いを語ってくださった。ペットを飼うことによって得られる温もりや安らぎは、高齢者にとって大切なもの。VESENAのような支援があれば、高齢になっても、安心してペットとの温かい時間を楽しめると思う。高齢化・核家族化が進む中、このような動物病院やVESENAの存在は、今後、ますます重要になってくるだろう。取材中、近所の方が親しげに惣菜を差し入れに来た。動物の診療に忙殺される先生を気遣って、よくあることだそうだ。温かい気持ちになって、帰途に着いた。
あさぎり
VESENAの活動内容は、独居シニアでペットを飼育する方の悩み解決の手助け、身体的・経済的の理由で病院に連れていけないなど、深刻な状況を抱えている飼い主の支援です。また、放置されたペットの保護や次の飼い主探しなど、多岐にわたる活動に驚きました。ペットを飼うシニアの一人として、とても安心いたしました。親跡獣医師は笑顔いっぱいで優しさにあふれる方でした。今後も支援活動の拡大に向け努力されていくとのお話に、心から「ありがとうございます」と言って医院を後にしました。

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