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一人暮らしシニアの新しい暮らし方
~「世代間ホームシェア」~

取材日:平成29年8月22日 更新日:平成29年9月25日

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昔は家族で暮らした家も、子どもの独立などで空き部屋ができる。その一方で、東京で学ぼうと上京する大学生がいる。両者が対等な立場で助け合い、社会とつながりながら楽しく暮らそうというのが「世代間ホームシェア」。シニア一人暮らしの万一の不安を解消し、住み慣れた自宅で安心して生活を続けることができます。日本での先駆的な取り組みは、実は練馬から始まっています。その活動についてお話を伺いました。
NPO法人リブ&リブ
代表理事:石橋 鍈子(いしばし ふさこ)さん
■所在地:練馬区石神井町1-21-4
■電話:090-6301-1115
■ホームページ:http://liveandlive.org/

シニアと大学生が共に暮らして助け合う

 NPO法人リブ&リブが行う「世代間ホームシェア」。代表理事の石橋鍈子さんに、その仕組みや思いなどをお聞きしました。

 「『世代間ホームシェア』とは、シニアの一人暮らし(または夫婦二人暮らし)と大学生の『世代間同居』です。祖父母と孫でもない、親戚でもない、血縁を超えた絆を作ることで、お互いが楽しく支えあう生活を送り、豊かな気持ちになってほしいと思い、平成25 年から始めました」

 具体的には、都会で暮らす元気なシニアの自宅に、親元を離れて上京する大学生が同居します。昼間は学業など、それぞれの時間を過ごし、週に何日かは夕方から夜の時間帯を共に過ごし親交を深めます。下宿ではないので、シニアから大学生に食事を提供することはありませんが、一緒に食事を作ったり、食べに出かけたりすることはあります。実際にはどんな方々がホームシェアを行っているのでしょうか。

 「練馬区内ですでに何人かの学生さんとホームシェアをされている宮本幸一さんのご自宅は、以前は3世代6人でお住まいでした。でもお子さんが独立したり、奥様を亡くされたりして、今は一人暮らしとなり、リブ&リブの行う世代間ホームシェアに興味を持たれ、名乗りを挙げてくださいました」

 宮本さんの娘さんの部屋を学生さんの個室にあてて、それぞれの生活空間を確保した上で、キッチンなどは共同で利用。食後の時間には、学生さんが宮本さんに卒論発表について相談するなど、まさに世代間の交流が生まれています。

心と心の「絆」を大切にしたい

 若い世代との同居には、期待も不安もあると思いますが、実際に生活された方からはどんな声が寄せられていますか。

 「シニアの方からは、学生さんからエネルギーをもらい、気持ちが若返り、生活にハリが生まれたとおっしゃる方がほとんどです。何年かぶりに一緒に美術館に行ったという方も。同居は面倒だからやめたい、という方はいませんね。学生さんからも『風邪を引いた時に心強かった』など、安心感のある生活が喜ばれています」

 なるほど。そのためには双方のマッチングが重要ですね。

 「はい。私がシニアの方とも学生さんとも何度もお会いして、趣味嗜好、習慣、性格などをよく考えた上でお引き合わせしています。これは単なる不動産屋的な仲介でもなく、シェアハウスとも違い、あくまでホームシェアなんです」

 気になる費用について。学生さんからシニアの方に毎月お支払いするのは、光熱費・生活雑費等2万円で、住居費は無料。その他、参加者はNPO法人リブ&リブのホームシェア会員となり、入会金2万円、月会費3千円がかかるとのこと。

 「シニアの方のお小遣い稼ぎという考えはなく、経済的な理由で上京ができずに諦めてしまう学生さんを支援したいという思い、何よりも双方の『絆』を大切にしたいと考えています」

 とはいえ人と人…。趣味が合えば相性が良いということでもなく、趣味が全く違っても互いに発見があったり、絶対的な方程式はないと言います。宮本さんは現在、5人目の学生さんを受け入れ中。「これまで一緒に暮らしてきた学生はいい方ばかり!」と、石橋さんのコーディネート力に太鼓判を押します。石橋さんは、これからも成功事例を作り、地道に活動を続けていきたいと言います。

これからの日本に根付かせたい

 そもそも日本ではまだ前例の少ない「世代間ホームシェア」。石橋さんはどうしてこの活動を始められたのでしょうか。

 「アメリカ大使館に約30年間勤め、国際交流などを担当していました。定年になって、『これからは自分の時間』と思い、周りを見渡すと元気のないシニア世代が多かった。豊かな老後を過ごしたいと思っていたところ、『世代間ホームシェア』がスペインやフランスで行われていることを知りました。バルセロナの団体を訪問してみると、90歳を超えた方でもシェアメイトを得て、暮らしを楽しんでいる。そこで日本でも始めてみようと思ったのがきっかけです」

 ただ、日本人は他人を家に入れることに抵抗を感じる人が多く、シニア本人がやる気になっても、子どもや親族の反対にあって話が頓挫することもあるとか。

 「これからのシニアの生き方として新たな選択肢になることは確かです。この活動を知った50代のミドル世代から『こんな暮らし方もあるのか、楽しみになってきた』という声もあり、時代の流れにより、意識も変わってくるものだと思います」

 若い世代から刺激を受けて自分自身も楽しい。そして、学生さんの生活を支えているという社会貢献の一環としてもやりがいを実感できる「世代間ホームシェア」。

 「仕組み自体はとてもシンプルですが、主旨をわからずして形だけ真似をしても難しいものだと思います。私たちの活動を理解してくださる方と共に、少しずつその輪を広げていきたい」と、お話を締めくくった石橋さんから、やわらかく温かい心が伝わってきました。

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かぐや姫

一人暮らしの自立したシニアの自宅に、親元を離れて都会で勉強する大学生が同居するというホームシェア。シニアは若い世代と同居する楽しさを得て、学生は経済的に助かると同時に、シニアの知恵と人生経験も学べる。少子高齢化が進む現在、急増している一人暮らしのシニアにとって、新しい魅力的な生活スタイルの一つだと思いました。健康寿命が伸びそうです!

小路(こみち)

「世代間ホームシェア」のことはテレビ番組を通して知っていましたが、石橋さんから直接お話を伺うことができ、大変有意義な時間でした。シニアの孤立と不安を取り除くとともに、若い世代を経済的に支え「血縁を超えた絆」を作り、対等な立場で支え合うというのがこの取り組みの基本的な理念でしょう。同居が成立するまで、そして生活が始まってからも実にきめ細やかなサポートをしていることに頭が下がりました。シニアと若い世代の輪が広がっていけば、元気で笑顔のシニアが練馬に増えていくのではないかと思いました。

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包み込みような笑顔の石橋さん。「世代間ホームシェア」の取り組みを知って、先駆けとして行っているヨーロッパ各国を見学してきました

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かつての子ども部屋を学生さんに提供し、ホームシェアを実践している宮本さん。年齢差50歳以上のシェアメイトです

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一緒に夕食の買い物をする宮本さんと学生さん。夕食を共にするのは基本的に週2〜3回程度

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60代の夫妻と女子大生のホームシェアの様子。シニア一人暮らしだけでなく、ご夫妻での受け入れもOKです

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リブ&リブ主催のランチ会の様子。参加するのは登録しているシニアと大学生で、出会いと交流の場になっています

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ホームシェア説明会の様子。リブ&リブでは、登録したシニアと大学生の面接、事前審査、ペア構成をして実際に生活が始まった後も、月に1回訪問するなどアフターケアも行っています

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スペインで訪問した世代間ホームシェアの様子。部屋を提供しているシニア(左)は94歳、大学院生と楽しそうに生活していました

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サポーターの取材の様子。いつかは自分もチャレンジしてみたい…と思いを抱き、様々な質問を石橋さんに投げかけました

*ホームシェアおよびそれに関連する交流の写真などはすべて、リブ&リブからの写真提供です。