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練馬大根が“幻”の理由とは!?
~丸ごと練馬大根を知り尽くそう~

取材日:平成29年1月6日 更新日:平成29年2月27日

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「練馬といえば練馬大根!」といったイメージが定着していると思いますが、実は、現在ではほとんど出回ることのない希少な品種なのです。“幻”と呼ばれるようになった練馬大根の歴史、栽培や収穫、おいしい食べ方、区内で開催される練馬大根のイベントまで、丸ごと紹介します!
すずしろ農園 渡戸 章(わたど あきら)さん・正(ただし)さん
■所在地 練馬区平和台4-8-8

練馬区 都市農業課 農業振興係 梶山 奈緒(かじやま なお)さん
■所在地 練馬区豊玉北6-12-1
■電話 03-5984-1403

練馬大根を作る農家は苦労が多い?!

 まずは、練馬大根を作っている農園を訪ねました。お邪魔したのは、平和台駅から徒歩5分ほどの「すずしろ農園」。農家の6代目で練馬大根の「顔」として有名な渡戸章さんの畑では、平成2年から区と提携して練馬大根の栽培をしています。今回は、7代目を継いだ次男の正さんにお話を伺いました。

 「この畑では毎年、3,500本〜4,000本の練馬大根を作っています。大根の生産にあたっては、練馬区から依頼を受け、9~10月に種まきをし、12月〜1月頃に収穫をします」

 練馬大根は、普通の大根と何が違うのでしょうか?
 「成長すると1メートル以上にもなるので、抜くのが大変なんです。さらに真ん中が膨らんでいて全然抜けないから、30分も抜き続けているとイヤになってしまいますよ(笑)」

 それなのに、価格は他の大根と同じ。青首大根がスポッと楽々抜けるのに比べると、生産数を簡単に増やせない事情がわかってきました。“抜く苦労”が減れば、生産は増えるのでしょうか?
 「抜くお手伝いをしたいという人がいれば、歓迎ですよ! ただ、大学生5人が手伝いに来たことがありましたが、つらそうでしたね(笑)。大根を抜く専用の機械を開発した業者もいたのですが、10分でバッテリーが上がってしまい、使い物にならず(笑)」

 我こそはという猛者や体を鍛えたい方、手伝いを申し出てみてはいかがでしょうか!?

復活した練馬大根。練馬ブランドを全国に!

 次に、練馬大根の歴史と現在の区内での生産状況について、練馬区都市農業課農業振興係の梶山さんにお聞きしました。

 「江戸時代から作られるようになった練馬大根は、昭和初期までは栽培も盛んでしたが、干ばつや病気、時代の移り変わりの中で、ほとんど生産されなくなってしまいました」

 それを練馬のシンボルとして復活させようと、地元生産者やJA東京あおばと連携し、区が練馬大根育成事業を開始したのは平成元年。練馬大根の魅力を区内外に発信するとともに、都市農業への関心を深めてもらうことを目指していると言います。

 「平成28年度は、渡戸さんを含めた18軒の区内農家さんに、合計14,100本の練馬大根の生産をお願いしました。栽培していただいた練馬大根は、JA東京あおば農業祭やJA共同直売所での販売のほか、練馬大根引っこ抜き競技大会、収穫体験などのイベントを開催して、多くのメディアで取り上げてもらい、さらなる知名度の向上に努めています」

 そのかいあってか、練馬大根の生産本数は年々増えているそう。地方からの注文も多く、「畑のここからここまで」と、まとめ買いするお客さんもいるとのことです。

 収穫の苦労を考えると、生産数を増やすことは簡単ではないと思いますが、練馬ブランドが全国に広がったらうれしいですね。

練馬大根はどうやって食べるのがおいしい?

 練馬大根は身が締まっているため歯ごたえが良く、昔から沢庵(たくあん)にされてきました。渡戸さんのところでも、「たち編み」と呼ばれる昔ながらの方法で大根を天日干ししているそうです。

 「昔は電動洗い機がなかったので、サメハダを使って手洗いしていました。大根を育てるのに3~4か月かかり、それを干してさらに手間暇かけて沢庵に…。沢庵1本500円が高いという人もいますが、この工程を考えたらそれだけの価値はあるんです」と、胸を張る渡戸さん。
 「練馬大根は、沢庵かおでんで食べるのが一番おいしいですね」

 その沢庵は、毎年2月上旬に開催される『ねりま漬物物産展』で買うことができます。
 「練馬大根を丸々一本使った沢庵漬けは毎年人気が高いですね。この時期にしか味わうことのできない味をぜひ楽しんでほしいです」と、梶山さんも太鼓判を押す人気の逸品です。

 さらに、区内のレストランや飲食店では、練馬大根を使った季節限定の料理を提供しているところもあるとのこと。

 また、毎年12月上旬に開催される「練馬大根引っこ抜き競技大会」では、抜かれた大根約4,000本が区内の全小中学校に配られ、学校給食に登場します。特に、大根おろしをたっぷり使った和風味の「練馬大根スパゲティ」は、練馬オリジナルの学校給食メニューとして人気なんだとか。練馬大根が、食育や地産地消に一役買っているとは、うれしい限りですね。

身近に練馬大根を!

 毎年8月には練馬大根の種が区内で無料配布されるので、自宅で栽培に挑戦してみてはいかがでしょうか。ただし、普通の大根の倍くらいの長さになるので、プランターでは栽培できないそうです。ご注意ください!

 練馬大根について、「一般的に“大根足”と言うと怒られてしまいますが、スラッと長くて真っ白な練馬大根に限っては、すごいほめ言葉なんですよ!」と、渡戸さん。

 地域の多くの人たちの努力によって復活を遂げた“幻”の練馬大根。これからイベントや販売など積極的に情報収集をして、練馬大根をもっと身近に感じたいと思いました。

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寒い午後、渡戸さんの畑で、大根に触れ、お話を伺いました。何事も、見て、体験すると新たな「発見!」があるなあーと実感しました。今度自分でも練馬大根を植えて、実食してみたいと思います。

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今回の取材で、練馬大根を保存する意味は何なのかと考えさせられました。例えば今後、練馬大根で中学生が農業体験実習を行うなど、さらに新しい意味づけも加えた保存の仕方をしてもよいのではないでしょうか。

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すずしろ農園7代目の渡戸 正さん。サラリーマンを辞めて10年前に農家に転身しました

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サポーターも大根抜きに挑戦! 青首大根の3〜5倍の力が必要と言われています

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渡戸 章さんは、現在83歳。練馬大根について語ったら、右に出る人はいないかも…

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平成28年12月で10回目を数えた「練馬大根引っこ抜き競技大会」は、練馬区ならではのイベント。抜く本数や収穫した大根の長さを競います

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練馬大根引っこ抜き競技大会で抜かれた大根は、次々とトラックに積まれ、区内の全小中学校へ運ばれて子どもたちの給食に!

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JA東京あおばが主催する「農業祭」では、1本200円で販売される練馬大根を求めて長蛇の列。午前中で完売するほどの人気ぶり!

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練馬特有の「たち編み」と呼ばれる昔ながらの大根の干し方

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毎年2月初旬に開催される「ねりま漬物物産展」。人気の本干沢庵は1本540円(税込)。30本の大量注文や、1年間待っていた!という熱烈なお客さんも